すばらしくてNICE CHOICE

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ミッドナイト・イン・パリ / Midnight in Paris

86点/100点満点中

2011年のウディ・アレン監督作。主演はオーウェン・ウィルソン。共演にレイチェル・マクアダムス、マリオン・コティヤール、『フロスト×ニクソン』でフロストを演じたマイケル・シーン、前フランス大統領ニコラ・サルコジの奥さんで、ミュージシャンやモデルでもあるカーラ・ブルーニがそのシーンとカミュの話でいい争う美術館員役で出演。実在の人物役にキャシー・ベイツ、エイドリアン・ブロディも登場。アカデミー賞とゴールデングローブ賞の両方で脚本賞を獲得。製作費1700万ドル。

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脚本家ギル・ペンダーはハリウッドで成功するも、小説家への転身を夢見る。婚約者イネズの父ジョンの出張旅行に便乗して憧れのパリを訪れる。スノッブ臭が鼻につくイネズの男友達ポールの出現に興をそがれ、ひとり街を彷徨う。旧型プジョーに誘われるまま乗り込むと、ジャン・コクトーが主催するパーティに到着。フィッツジェラルド夫妻やヘミングウェイと出会い、1920年代のパリに迷い込んでしまったことを知る。ピカソの愛人アドリアナとの出会いが彼を変える。
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ウディ・アレンの映画で評価の高い70〜80年代の作品群は一切見たことがないにも関わらず、90年代のいくつかの作品をつまみ食いしただけで彼とは肌が合わないとずっと思っていた。が、これは名作。これまで商業的に最も成功していた1986年の『ハンナとその姉妹』が5900万ドルだったそうだが、本作は大幅に上回る1億5千万ドルに到達しているそう。納得だ。

誰にだってタイムマシーンがあったならば行ってみたい時代があると思う。文化の黄金時代というやつだ。私なら60年代のアメリカで一度でいいからジミ・ヘンドリックスのライブを小箱で聴いてみたいし、90年代初頭のシアトルにも行ってみたい。50年代のニューヨーク52丁目のジャズクラブに行けたら小便ちびってしまうだろう。

本作の主人公ギル・ペンダーにとってパリは成熟した文化都市であり、特に1920年代に強い憧れを抱いていた。そして真夜中のパリで彼は当時にさまよいこむことになる。コクトーのパーティではコール・ポーターがピアノを弾き、F・スコットとゼルダのフィッツジェラルド夫妻と出会い、どこまでも男らしいアーネスト・ヘミングウェイからは文化人サロンを開いていたガートルード・スタイン(キャシー・ベイツ)を紹介してもらう。そこではパブロ・ピカソやその愛人アドリアナ(マリオン・コティヤール)と知己を得る。女性作家ジューナ・バーンズと踊ったかと思えば、アドリアナからつれなくされたギルは失意の中でサルバドール・ダリ(エイドリアン・ブロディ)や写真家マン・レイ、眼球に剃刀で有名な映画監督ルイス・ブニュエルと言葉を交わす。

知っている人も不勉強のため初めて名前を聞く有名人も出てくるが、西洋のアーティストたちが集まっていた輝かしい20年代のパリの興奮が伝わってくる。ここから生まれた文化や表現は世紀をまたぎ今日にも大きな影響を強く与え続けている。その中でギルは自分の小説を見てもらい、助言を得ることに成功し、ますますパリの街と小説にはまっていく。

ある文化・ジャンルにとってあの頃は熱狂が渦巻いていたとされる時代がある。音楽でいえば、ジャズは今も続いているが、20年代〜30年代のスィング時代から40年代、50年代のモダンジャズ時代の熱はもはや失われて久しい。ロックも70年代までの狂乱はもはやないし、今では細かいジャンルの巡回に終始している。黒人音楽の中では比較的新しいヒップホップが元気といえる。しかし、東海岸、西海岸、そして南部と熱狂の中心地域を変遷しながら新しい流行の音を生み出し、それが広く受け入れられた時代はもはや終わりを告げ、今はネットを介して薄く広く浸透していくのみで以前のような大きな潮流を作り上げるところまではいっていない。

だから、あの時代は良かったとなる気持ちはすごく分かる。ギルのように文学が好きな人にとっても、また他の文化でも同じようにあの頃にいたかったという憧れの時代はあると思う。そんな気持ちを叶えてくれるところに本作の良さがあり、ノスタルジーと文化の揺籃期の熱さを堪能できる。

ただ、本作が気に入っているのはその栄光の時代に思いをはせ、賞賛することで終わらないことだ。私はいつだって今がいい時代だと思いたい。自分が生きているこの時代を否定して過去を懐かしんでも何もならないからだ。ビートルズが奔放にロックとポップスを一緒くたに鳴らしていた時代も確かにいいが、もっと様々な音楽要素を取り入れることができる今のロックも面白い。偉大なアーティストを否定するのではなく、尊敬の念を忘れはしないけれど、今この時、どこかで20年代のパリと同じような熱い場所があるかもしれない。本当はその居場所を自分で作れることが理想だろうが、そんな才能がないことは端から知っているわけで、できるだけアンテナを鋭敏にしていきたいと思っているが、ギルもまたそう決断したことが嬉しい。

同時に、ウディ・アレンが心憎いのは、マリオン・コティヤールを使って、反対に自分にとって夢中になれる時代に移り住むというファンタジーも描いているところだ。正直うらやましい展開でもある。

しかし、そのコティヤールの魅惑的な表情はすごい。決して美人な女優ではないのだけど、いつの間にか恋に落ちているギルや、周囲の偉大なアーティストたちを虜にしてしまう香しい華の咲き誇る様は見事だ。それと関係ないが、アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックがあんなに小柄だとは知らなかった。何でも幼い時の足の骨折が原因らしい。あと、ルイス・ブリュエルが後に撮った"部屋から誰も出られなくなる"映画は1962年の『皆殺しの天使』とのこと。

ゴシップネタ。スノッブクソ野郎ことポール・ベイツを演じるマイケル・シーンは同じ英国人のケイト・ベッキンセイルと結婚していたのだけど、ふたりで出演した2003年の『アンダーワールド』で監督のレン・ワイズマンに彼女を奪われてしまう。その彼が、本作ではギルのフィアンセ役だったレイチェル・マクアダムスと本当に実生活で付き合い始めたというのは何だかいい話に思えてくる。
2013.11.26 Tuesday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
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2019.08.20 Tuesday 23:58 | - | - | -
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