すばらしくてNICE CHOICE

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ゼロ・グラビティ / Gravity

98点/100点満点中

『天国の口、終りの楽園。』『トゥモロー・ワールド』のメキシコ人監督アルフォンソ・キュアロンの最新作。サスペンス。主演はサンドラ・ブロック。共演にジョージ・クルーニー。3D作品。製作費1億ドル。2013年公開作品。

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地上より600km上空の地球周回軌道で、初参加となる女性医療技師ライアン・ストーン博士はベテラン宇宙飛行士マット・コワルスキーの助言とおしゃべりを受けながら船外作業を行う。ロシアが自国の衛星を爆破処理したことで大量の破片が軌道上に散乱。猛烈な速度で彼らに襲いかかる。衝撃で宇宙へと放り出されたふたりは互いを繋ぐロープを頼りに、帰還を信じて母船に辿り着こうとするが・・・。
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まさに2013年宇宙の旅。クソッタレで最高の宇宙旅行を疑似体験できる。

本国アメリカで公開されるやいなや賞レースの有力候補に躍り出たそうだけど、それも納得の出来栄え。賞賛の言葉しか出てこない。まずテーマがいい。どんな過酷な状況下でも現状に妥協し屈するのではなく、最後まで生き抜こうとする強い意志を持ち続けるという非常にシンプルで力強いテーマを、人間がそのままの格好では生きられない、これ以上ない厳しい場所=宇宙を舞台にすることで、よりくっきりと浮き立たせている。

サンドラ・ブロックとジョージ・クルーニーは確かに大物ハリウッド俳優でどちらかひとりだけでも十分観客を見込めるドル箱スターとはいえ、ほぼふたりだけの出演(NASA管制塔からふたりに根気強く指示を送るのは、今回は声だけの出演となるが、同じ宇宙での危機を扱った『アポロ13』でも同じ役だったエド・ハリス!)となる。しかし、どうやって作り出したのかは不明だが、その約20年前に製作された『アポロ13』よりもさらに自然な無重力描写や、宇宙船内外のセットの本物らしさ(この点では『アポロ13』の数十倍素晴らしい)を作り出す質の高いCG描写でもって、高速で襲い掛かる宇宙のごみ・デブリに襲われる米国人宇宙飛行士たちの絶体絶命のピンチをこれ以上ないほどの迫力をもって描いている。

デブリといえば、これまた傑作といえる近未来SF漫画『プラネテス』で主人公たちがその回収を生業としていることでもお馴染みな宇宙ごみであるのだけど、宇宙船へのわずかな損傷であっても人は危機的状況に陥る。今後もし人類が本格的に宇宙に進出するようなことがあれば、本作で描かれる事態は今以上に想定されることであり、ただの絵空事と見ることはできないだろう。未来のアポロ13号的事故をこの2013年時点でもう撮ってしまったのかもしれない。

IMAX3Dで見るのが最適のようだけど、近所に設置館なく、今回はXpanD方式の3D鑑賞となった。それでも普段3D映画を見る時に覚える不満(本作でいえば、"天宮"に着艦(?)した直後にデブリの濁流に巻き込まれそうになる様子を映すのに一気にカメラを引く際、人物が不自然に小さく見えてしまう現象)すらも、宇宙空間でのSFということで上手に解消できている。3D作品はできるだけ避けているが、本作のようにその良い面を積極的に打ち出すのであれば、安易な導入こそ賛成しかねつつも、3Dもいいものだと思える。

そうしたまるで自分も宇宙にいて素晴らしい景色を見ている気分を味わえるCGや3D描写に血肉を通わせるのは、なんといってもふたりの演技力だ。サンドラ・ブロックとジョージ・クルーニー。後者の巧さは織り込み済みなので驚きはないが、ブロックがここにきてこれほどまでの名演を見せるとは思わなかった。『スピード』でブレイクして以降、節目節目でしっかり話題作に絡んでくる女優では確かにあったが、見ていて巧いとは一度も思ったことがなかったので、今回の完全にライアン・ストーンになりきった演技には息を飲む。失った幼い娘への気持ちを話し、赤い靴が見つかったことを伝える場面には喉を締め付けられた。

本作に不満があるとすれば、『アポロ13』ではクライマックスとなるミッションだ(角度の問題)。アポロ計画当時の宇宙船に搭載されていたコンピューターは初代ファミコンの処理能力ほどだったといわれているし、本作のCPUがかなり優秀だということで解決されることなのかもしれないが、生と死を分かつその境界を突っ切ることの難しさをあの映画があれだけ描いていただけに、本作ではずいぶんスムースなんだなと思ってしまう。

ラストシーンが終わり、エンドロールが流れ始め、それまで前のめりで見入っていた体を椅子にぐったりと深くもたれさせた時に思うことは邦題がまたやらかしたということだ。わずかに1語、"ゼロ"を加えただけではあるが、物語の主人公ライアンが感じたように、また鑑賞していた私たちも同じように実感できていることを思えば、それが余計なひと言だというのは明らかだ。題名はとても大事だ。監督を始め、製作者が必死になって考えたものを安易に壊すことだけは止めて欲しい。

音楽が良かったことも忘れないで挙げておかないと。冒頭での耳を圧する音の洪水から、宇宙空間で作業する飛行士たちが映し出されると一気に音が消え去り、まさに音のない宇宙空間が演出される場面で始まる。音によってさらに臨場感を得られる仕掛けにもなっているのでそれを堪能できる劇場で見た方が良い作品であるのは間違いない。



【追記】2013.12.26
・メイキング動画が公開された→YouTube
 ワイヤー撮影だったとはね!
・アルフォンソ・キュアロン監督による7分のスピンオフ『Aningaaq』も→YouTube
 これは楽しい。

【追記】2014.03.02
「サンドラ・ブロック、『ゼロ・グラヴィティ』大ヒットでギャラが70億円に」→記事

【追記】2014.03.03
第86回アカデミー賞に、作品賞・監督賞・主演女優賞・撮影賞・編集賞・美術賞・視覚効果賞・作曲賞・音響賞(編集)・音響賞(調整)の10部門で候補となり、監督賞・撮影賞・編集賞・視覚効果賞・作曲賞・音響賞(編集)・音響賞(調整)の7つで栄冠に輝いた。

【追記】2014.11.26
「『ゼロ・グラビティ』に見る新しい3D映画の可能性」→記事
もう1年も前の映画になるわけだけど、"3Dカメラを一切使っていない"とは知らなかった。監督と共に"3D映像の演出・ディレクションを担当した"人が技術的なことを詳しく語っている。記事にもあるが、"2D-3D変換"には今までダメというイメージしかなかった。でも、使いようということなのだろう。"目的は「より良い映像表現」なのだから、変換がベストな方法"が3Dカメラの使用ではなかったとのこと。
2013.12.18 Wednesday 23:57 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
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2019.08.20 Tuesday 23:57 | - | - | -
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