愛してる、愛してない... / À la folie... pas du tout

70点/100点満点中
2002年のオドレイ・トトゥ主演作。サイコサスペンス。製作費620万ユーロ。
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フランス・ボルドー。美術学校に通うアンジェリクは心臓外科医ロイックと不倫の関係ながらも付き合っている。現在妊娠中の彼の妻ラシェルとは離婚寸前と聞かされている。ところが、裁判所の前で寄り添うロイックとラシェルを目撃し、やがてアンジェリクの様子がおかしくなっていく。
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先日の『ゾンゲリア』と同じく、まとめサイトの記事「最後にどんでん返しがある映画が好きな俺にオススメの映画教えてくれ」で知った作品。本作は『ゾンゲリア』のように"最後に"どんでん返しがあるわけではなく、中途に出てくるのだけど、なるほどでも楽しんで見られた。
不倫の間柄ながらも出会った記念日にバラを送ったり、デッサンの授業中にはモデルの顔を彼氏にすげ替えて描いてしまったりと美大生アンジェリクと医師ロイックとの関係はうまくいっている。ひとつ気がかりな妊娠中の奥さんラシェルとは別れると聞かされている。前半の40分はふたりの良好な関係が描かれる。そして後半、宮藤官九郎のTVドラマ「木更津キャッツアイ」(ちょうど同じ2002年)のようにキュルルルとそれまでの40分間の出来事が巻き戻され、ロイックの視点で全く違う事情のドラマが語られ出す。そして『羊たちの沈黙』のごとく狂人が世に放たれて終わる(特典映像にはまんまそっくりな別バージョンも収録)。
本作は世界的に大ヒットした『アメリ』のほぼ1年後に公開されている。オドレイ・トトゥが当時どう思っていたのかは知らないが、プレッシャーはかなりものがあったと思うし、『アメリ』のイメージが定着するのを嫌ったとしても不思議ではない。本作の冒頭は『アメリ』でのファンタジックな印象をかなり踏襲して、不倫ではあるけれど、幸せな女の子を振る舞っている。そうしてファンを安心させつつ、後半で一気に『アメリ』を剥ぎ取りにかかる。しかし、アメリにしたって不思議ちゃんで、よくよく考えればちょっと危ない子でもあり、本作のアンジェリクの要素は十分あったのかもしれない。
前半のエピソードを違う角度から明らかにするのが後半ではあるのだけど、もう少しああそういうことだったのかという巧さが欲しいところではある。クドカンはそれが上手だった。とはいえ、本作でのオドレイ・トトゥはかわいい。彼女の最新作『ムード・インディゴ』でも普遍の愛らしさはあったが、時の流れを感じたのも事実だったわけで、怖い女性を演じているとはいえ彼女の魅力に溢れた1本なのだろう。