すばらしくてNICE CHOICE

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ダラス・バイヤーズクラブ / Dallas Buyers Club

74点/100点満点中

マシュー・マコノヒー主演映画。実話ベースの人間ドラマ。共演にはジェニファー・ガーナー、ジャレッド・レトー。製作費500万ドル。2014年公開作品。

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1985年、テキサス州ダラス。酒、女、麻薬と放蕩三昧の日々を送るマッチョなカウボーイ、ロン・ウッドルーフは、医者からHIVの陽性で余命30日と宣告される。エイズは同性愛者がかかる病気と信じていた彼にとって、また周囲にとっても受け入れがたい事実だった。ロンは生きるために病気について猛勉強し、アメリカでは未承認ながら有効な薬を求めてメキシコへ向かう。やがてゲイのエイズ患者レイヨンの協力を得ながら、大量の代替治療薬を国内の患者にさばくために"ダラス・バイヤーズクラブ"を立ち上げる。
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マシュー・マコノヒーはヘボ作品ばかり出ているという偏見がなくなったのは、昨年ようやく見た『リンカーン弁護士』からだった。とはいえ、実のところその前作に当たる2009年の『ゴースト・オブ・ガールフレンズ・パスト』でも本作のヒロイン、ジェニファー・ガーナー相手に憎たらしい独身男を演じていて悪くないし、その前年の『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』でも彼が好演しているとこのブログでも書いていた(当然のように忘れていた)。

でも、彼の活躍ぶりに目を見張るのはやはり近作で、『リンカーン弁護士』と同年の『キラー・スナイパー』がまあすごい。フライドチキンぶらぶらの演技をする彼はキレキャラの範疇になるのだろうが、映画界でそこそこの地位にいるのに下手したらそのキャリアを台無しにする演技をわざわざやることないのにといらぬ心配をしてしまうほどに物騒な雰囲気を体中から発散させていた。

彼の場合はキレた演技というよりも強烈なアクの強さといった方がいいのかもしれないが、続けて鑑賞した『ペーパーボーイ 真夏の引力』では共演のザック・エフロンやジョン・キューザック、そして何よりあのニコール・キッドマンをひと皮もふた皮も剥けさせていて、その濃ゆい磁場は共演陣にも影響を及ぼすんだなと変なところで感心したのを覚えている。エフロンはあの映画でアイドル上がりという偏見を完璧に粉砕したはずだ。

その後も『マジック・マイク』で男子ストリッパークラブ店長を熱演し、冒頭しか出ていない『ウルフ・オブ・ウォールストリート』でも鮮やかなまでに見る者を釘付けにする演技を披露していた。いまや彼がクレジットされているだけで劇場に行った方が良さそうだと思わせるだけの役者になっている。

長身でそれなりに見れる顔をした男がパンツ一丁での腰振りを厭わず、全てをさらけ出す演技を見せる。もちろん確固たる演技理論だったり研究があるのだろうけれど、そういったある意味で小手先の技を全て取っ払って生身の役者として全身全霊をかけて役に入り込むところが彼の魅力だと思っていた。

だから、本作で大幅に減量しエイズ患者役に挑んでいる彼は、まるでダニエル・デイ=ルイスかクリスチャン・ベールかのようだ。"役者"をしっかりやっていることに驚く。彼がこれまで演じていた役柄も俳優として演じていたと理解はしているが、それでもどの作品でも"マコノヒー"でしかなかったと思う。世間が思うマシュー・マコノヒー像を利用しつつ演技していたというか。それでも、リミッターを取っ払った演技をしていたからこそ強く惹きつけられたのだ。でも本作での彼は演技をしている。マコノヒーではなくロン・ウッドルーフという実在した人物を、本人にどれだけ似ているのかは知らないが、演じている。そこが本作の唯一の良さだ。

マコノヒーやオカマのエイズ患者レイヨンを演じたジャレッド・レトー(多分初めて見る役者なのだけど、マコノヒーに負けないかなりいい演技をしている)は顔をげっそりさせるだけではなく、腰回りや太ももといった部分まで病的に細らせていて大変な仕事だなと感じ入る。

問題は脚本と演出だ。1987年にプリンスがリリースした社会問題に言及したシングル曲の中で、小さい名前の重い病で痩せた男が死んだと歌っていたように、当時のエイズ患者は根強い偏見にさらされていた。そうした中で発病してしまったマコノヒー演じるロンは、異性愛者ではあったのだけど、見境なく女性とベッド(だけではないけどね)を共にし、セーフセックスという概念自体持ち合わせていなかったために感染してしまう。

30日の命と医者に宣告されるが、当時未承認のAZTという抗エイズ薬を裏で入手し必死に生き延びようとする。やがて、エイズ患者の免疫にもっと効くはずの薬が政府と薬品会社のずぶずぶの関係のためアメリカでは未承認のままだということを知り、あの手この手を使いかき集め、それをエイズで苦しむ他の患者たちにも配ろうとする。もちろん慈善事業ではないし、許可を得ない彼がましてや国が認めていない薬を売ることは当然違法であり、当局とのいたちごっことなる。

自分の命に関わることで、国に抗ってでもより有益な薬を手に入れようとした男の実話であり、ある意味で感動もの(となりでは女性が終演後泣いていた)ではあるのだけど、エピソードがどうにも飛び飛びで、まるで当時のことを思い出すままに映像化している印象すら抱く。時系列をはっきりさせろということではないのだけど、マコノヒーやレトーが熱い演技を繰り広げているのに、物語そのものはふわふわし続けているのは残念だ。

終盤、アニメ版の碇シンジのように突然祝福されるが、その時のロンと同様にきょとんとしてしまう。映像化されていない行間を読ませるにしても、もう少しうまいやりようがあるはずだ。


劇中でゲイの俳優として名前が出てくるロック・ハドソンは、『北北西に進路を取れ』(1959)には出演しておらず、ジェームズ・ディーンの遺作『ジャイアンツ』や『武器よさらば』などに出ていた二枚目俳優。ウィキペディアによれば、"193cmと大柄でありながら均整のとれた美しい外見で、まさに理想のアメリカ男性像として存在感抜群"、だったとのこと。また、亡くなる直前の1985年にゲイであることを公表し、その"カミングアウトは演劇界で好意的に受け入れられた。著名人としては世界で初めてエイズ患者であることを公言した人物である"そうだ。


【追記】2014.03.03
現地時間の3月2日に発表された第86回アカデミー賞で、作品賞・主演男優賞・助演男優賞・脚本賞・編集賞・メイクアップ&ヘアスタイリング賞の6部門で候補となり、主演男優賞(マシュー・マコノヒー)と助演男優賞(ジャレッド・レトー)の2部門で栄冠に輝く。1月の第71回ゴールデングローブ賞でもドラマ部門の男優賞でマコノヒーが、助演男優賞でレトーが受賞している。
2014.03.01 Saturday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
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2019.08.20 Tuesday 23:58 | - | - | -
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