すばらしくてNICE CHOICE

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ラウンド・ミッドナイト / Round Midnight

57点/100点満点中

ジャズ映画。先日南極公演を成功させたヘビーメタルバンド・メタリカのドラマー、ラーズ・ウルリッヒの代父としても有名な(去年知ったんだけど)テナーサックス奏者デクスター・ゴードンが主演した実話ベースの1986年の人間ドラマ。出演もしているハービー・ハンコックが第59回アカデミー賞の作曲賞を受賞。ゴードンも主演男優賞候補に。共演には『最強のふたり』や『君のいないサマーデイズ』などフランス映画界で長年活躍しているフランソワ・クリュゼ。多くのミュージシャンが参加しているが、ヴァイブラフォン奏者ボビー・ハッチャーソンは結構セリフがある。残念なことに今年は『ウルフ・オブ・ウォールストリート』で監督賞や作品賞を逃がした名匠マーティン・スコセッシがNY編で興行師グッドリーに扮し、よくしゃべっている。

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1959年フランス・パリ。ニューヨークから初老のテナーサックス奏者デイル・ターナーがジャズクラブ"ブルーノート"にやって来る。何度も酒に溺れるが、演奏は素晴らしい。彼の古くからのファンで、クラブに入る金もない貧しいイラストレーターのフランシスとデイルは知り合う。彼の献身的な気遣いに、やがてデイルは酒を断つまでになる。
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冗長な映画。ジャズを扱った作品を見てみようと思い立ち、色々ピックアップし始めた時に、本作の内容や出演陣を知り一番期待していたが、なんてことはない凡庸な仕上がりでがっかりさせられた。130分と長尺なのがまず問題で、蛇足だらけの無駄に長いシーンを省きたい思いに駆られるし、80年代特有の平坦な陰影やセット臭さも大いに不満だ。でも一番がっかりなのはデクスター・ゴードンの音自体の魅力のなさだろう。

パリのクラブ・ブルーノートに初登場する際、ピアニスト・エディに扮したハービー・ハンコックに伝説のサックスプレイヤーとして紹介され舞台に出てくる。そしておもむろに吹き始めるのだけど、それがからっきし魅力に乏しい。序盤は期待に添えるような出来ではないのだけど、物語の後半で次第に全盛期の彼の良さが戻ってくるという演出なのかと最初勘違いしたほどだ。でも、どうもそういうことではなく、アルコールさえ含まなければ今でも立派なサックス吹きという設定で、これがあのデクスター・ゴードンなのかと思わされる。

そのままの彼を演じればいいわけで(ヘロインからアルコールに変わっただけ)、演技自体は悪くない。演奏の出来に問題はあるものの、ラストシーンでの娘に向けて作ったという「チャンの歌」(作曲はハンコックとスティービー・ワンダー)は良いパフォーマンスだ。

"実話ベース"というのは、1959年パリに生活の拠点を移し1966年に帰国、その年の7月31日に亡くなったビーバップ期の偉大なピアニスト、バド・パウエルがモデルになっているからで、パリでの彼の生活を助けたフランス人実在しているそうだ。そのフランシス・ポードラについてはこのブログ記事に詳しい。ゴードンは1963年にスタジオ録音された『Our Man In Paris』で当時パウエルが同地で組んでいたピアノトリオThe Three Bossesと共演していて、そのトリオのベーシスト、ピエール・ミシェロは本作のクラブでの演奏シーンに何度も顔を見せる。

パウエルと共にエンドクレジットの冒頭で映画を捧げられているテナーのレスター・ヤングは、劇中でも名前が幾度となく出てくるが、彼の有名なエピソードのひとつ──人種差別が酷かった時代に白人女性と結婚していたため、黒人の彼は軍隊で白人の上官から執拗な暴力を振るわれた──はデイルの口から自分の体験談として披露される。

"まあ聞けよ、フランシス。スウィングバンドの音はどれもこれも同じだった。セヴンス・コードだ。そこへカウント・ベイシー楽団、そしてレスター・ヤングが現れた。頭をドヤされたような気がした。なぜなら彼のあのカラフルな音、シックス、ナインス、メジャー・セヴンス。ドビュッシーかラベルのようだった。そしてチャーリー・パーカーがやってきた。彼はさらに音を広げ、ついにイレヴンスからサーティンス、マイナス・ファイヴも(取り入れた)"というデイルのセリフは、スウィング期からモダンジャズ期を浮き沈みはあってもしっかり生き抜いたデクスター・ゴードン自身の言葉として聞けて良い。

ロン・カーターやどこか恥ずかしそうに俯いてソプラノサックスを吹くウェイン・ショーター、フレディ・ハバード等の実際のジャズマンたちが出演しているという意味では確かに楽しんで見られるのも事実ではある。

マイルズ・デイヴィスの『Bitches Brew』にも参加していた凄腕ギターリスト、ジョン・マクラフリンのソロ中に、ピアノの端に置いていたエディの酒のグラスをデイルが取ろうとしたら、ひょいとエディが奪って飲ませないようにするシーンもコミカルで優しい笑いがある。フランシス宅での女傑バターカップの歌いっぷりも最高だ。

デイルが、昔からの友人エースの名を呼ぶ時に、"レディ・エース"としていて、彼はゲイという設定なのかなと最初思ったのだけど(いつもローブ羽織っているし。演じているのはボビー・ハッチャーソン)、子供がいるフランシスにも"レディ・フランシス"と語りかけていて不思議に思い、アメリカでの暮らしが長かったネット上の知人にそういうスラングなりがあるのだろうかと質問したところ、彼も初耳らしく、"Lady"は女性の意味でしか聞いたことがないという。デイルの"性格の深い部分に関係"しているか、"彼なりのこだわり、ユーモアあっての事"ではとのヒントもくれた。仮にジャズ特有のスラングだとしたらこの先このいい回しに再び出会うかもしれず、楽しみではある。


<本作に出演しているジャズメン>

[Club Blue Note]
Dextar Gordon - tenor sax
Herbie Hancock - piano
John McLaughlin - guitar
Pierre Michelot - bass
Billy Higgins - drums
*guest
Wayne Shorter - tenor sax
Bobby Hutcherson - vibraphone
Eric Lelann - trumpet
Lonette McKee - vocal as ダルシー・リー

[Recording Studio]
Palle Mikkelborg - trumpet
Wayne Shorter - soprano sax
Dextar Gordon - tenor sax
Herbie Hancock - piano
Ron Carter - bass
Mads Vinding - bass
Billy Higgins - drums

[Club in NY]
Freddie Hubbard - trumpet, flugelhorn
Dextar Gordon - tenor sax
Cedar Walton - piano
Ron Carter - bass
Tony Williams - drums

[Concert in Lyon]
Wayne Shorter - soprano sax
Herbie Hancock - piano
Michel Pérez - guitar
Mads Vinding - bass
Tony Williams - drums
Cheikh Fall - percussion
2014.03.14 Friday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
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