すばらしくてNICE CHOICE

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モ'・ベター・ブルース / Mo' Better Blues

62点/100点満点中

ジャズ映画。出世作『ドゥ・ザ・ライト・シング』に続く1990年のスパイク・リー監督・脚本・製作・出演作。主演はデンゼル・ワシントン(tp)。共演にウェズリー・スナイプス(ss, ts)、リーの実妹ジョイ・リー、ブレイク前のサミュエル・L・ジャクソン、お馴染みジョン・タトゥーロも兄弟で出演。音楽を担当したのはリーの実父でジャズ・ベーシストのビル・リーとブランフォード・マルサリス。実際の音はトランペットのテレンス・ブランチャードが客演したブランフォードのクァルテットで、ドラムは映画でもバンドのドラマー役で出ている。製作費1000万ドル。

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1969年のニューヨーク・ブルックリン。小学生のブリーク・ギリアムは母親からトランペットを買い与えられ、友達の誘いをしぶしぶ断り練習に励む。二十数年が経ち現代。才能豊かなジャズマンに成長した彼は、サックスのシャドウを擁する人気クインテットを率い、クラブ"負け犬の下で"に毎夜出演している。自分の音楽を追求することのみに邁進する彼の性格こそが今の成功に繋がりつつも、メンバーの音楽的なエゴを抑えることにもなり、据え置かれたギャラへの不満やマネージャーで幼馴染のジャイアントのギャンブル狂いなど、問題が次第に表面化する。
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人種差別への意識がとりわけ高いことで有名なスパイク・リー監督ではあるけれど、ここ十年ぐらいは娯楽作品をよく撮っている(新作の『オールドボーイ』も楽しみ)。でも本作はまだギラついていた頃の初期作品だ。なのに社会問題への言及はなく、架空のジャズトランぺッターの人生を描く映画になっている。ジャズクラブ・オーナー(タトゥーロ兄弟が演じてるため、ありがちなユダヤ系ではなくイタリア系になっている)に賃上げを要求する際も、黒人だからとか搾取がどうのといったセリフは出てこない。

1957年にアトランタで生まれ、ブルックリンで育ったリー監督にとって、映画の冒頭で描かれる1969年はちょうど8歳。トランペットの練習に勤しむブリーク少年と同じ年頃だ。そして、後年ブリークは小学校教師と結婚し子供を授かるが、リーもまた父親が上記したようにミュージシャンで、母親が教師だったそうだ。自伝というわけではもちろんないが、彼の人生とどこかリンクする設定になっている。

ジャズマンの人生を描いているということもあるのか、初期の彼の作品にあった湿度のある絵ではなく、ジャズが一般的にイメージさせる大人びていて洒脱な音楽といったものを80年代末のオシャレを全面的に取り込み作り上げている。ややこしい問題意識を差し挟まないこともあり、非常に見やすい映画ではある。

才気立ってはいるが、どこまでも自分本位なブリークがその考えを改め、音楽家としての大成は不明ながらも、家族を得て、幸せに生きるという物語の流れの中、その転換点で彼はひどい落ち込みを救済して欲しくて、1年間連絡を取らなかった元彼女の家に突然押しかける。その行為やすがりつきがすでに自分本位であり、それで幸せを掴んだのであれば、結局のところ改心ではないのではないかと思ってしまう。

そのまま結婚式シーンとなり、今はなきツインタワーを背景に、家族、友人らがふたりを祝福する。ジョン・コルトレーンの「ア・ラブ・サプリーム」(例のメロディが最近は"カモ〜ネギ〜♪"にしか聴こえず困る)も流れる。当人たちが幸せなら、それでいいのだろう。その後の出産の場面では、赤ん坊がドロって出てくる瞬間を映していて、映画でそれができるんだという驚きを味わえる。

ただ、もうひとつ不自然を覚えることがあり、それは主人公ブリークがトランぺッターであることだ。映画内では著名なトランペット演奏者への言及がほとんどない(子供の名はマイルズ)にも関わらず、トレーンへの愛は頻繁に捧げられる。演じるデンゼル・ワシントンがトレーンに似すぎているので、ここでサックス奏者にしてしまうと、架空のジャズマンという設定に余計な色が付いてしまうと判断されたのだろうか。そういえば、トレーンと同じテナーサックスのソニー・ロリンズを彷彿させる、橋で練習するシーンもある。

ワシントンの当て振りはよく練習されたものでその点に不満はないものの、その音に色気がないのは残念だ。ウェズリー・スナイプスが扮するサックスプレイヤー・シャドウに人気が出るのもよく分かる。彼は分かりやすくも聴いて楽しい音を出しているからだ。一方で、ラップやトーキングブルーズというよりもポエトリーリーディング的にセリフがある「Pop Top 40」(YouTube)は現代ジャズがどういう進化を遂げているのかは知らないのだけど、この曲は言葉がありながらもこの1年間聴き馴染んできたモダンジャズの延長線上にしっかりある、まさに今のジャズという印象を抱く。

ヒップホップグループPublic EnemyのFlavor Flavが、"ヨー、スパイク!映画始めようぜ"と告げて幕が上がった本作はジャズの名曲が数多く流れ、そしてその最後を飾るのは、ジャズの孫でもあるらしいヒップホップというのは面白い趣向だ。もはや伝説といってもいいデュオGang Starrの「Jazz Thing」(PV / 歌詞)で、ラッパーのGuruは母なるアフリカまでさかのぼり、ジャズの歴史とその偉大さをラップで紐解いていく。
2014.04.06 Sunday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
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2019.10.16 Wednesday 23:58 | - | - | -
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