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MAMA / Mama

72点/100点満点中

ギレルモ・デル・トロ製作総指揮による2013年のスペイン・カナダ合作ホラー。主演は『ツリー・オブ・ライフ』『ゼロ・ダーク・サーティ』のジェシカ・チャステイン。彼女の夫に『ヘッドハンター』で敵役だったデンマーク人俳優ニコライ・コスター=ワルドー。監督脚本はアルゼンチン出身の新人、アンディ・ムスキエティ。DVDスルー作。製作費1500万ドル。

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深刻な不況で精神を追い詰められた経営者ジェフは同僚ふたりと妻を殺害し、幼いふたりの娘ヴィクトリアとリリーを連れ逃げ出す。雪山での無謀運転で事故を起こしたジェフたちは森をさまよい、朽ちた山小屋に辿り着く。無理心中を図ろうとするジェフを何者かが襲う。それから5年。兄と姪を探す弟ルーカスの執念がついに実り、ふたりを発見。彼女たちに強い関心を抱くドレイファス博士の協力でルーカスと恋人のアナベル、それと姪たちの4人で暮らし始めるが・・・。
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ギレルモ・デル・トロ監督の作品は非常にユニークで、毎回期待を裏切らないが、それでも彼は裏方に回ったときの方が面白い映画を作っている印象がある。少なくとも私の趣味では本業の監督作よりもプロデュース作──『タブロイド』『永遠のこどもたち』『ロスト・アイズ』『ダーク・フェアリー』──に軍配を上げたい。しかも今回は、当初はスペイン人監督による超自然スリラーと紹介されていたので、俄然期待させられたし、2013年1月21日付の米国興行収益ランキングでは初登場第1位を記録している。映画の趣味は合わないけれど、スティーヴン・キングの「2013年映画トップ10」でも7位と高評価だった。

ほとんど内容を知らずに見始めたため、父親が巨大な力を持つ禍々しい何者かによって連れ去られる序盤はこの手の映画なのかと驚かされた。徐々に深まっていく恐怖映画と想定していたからだ。その衝撃的な"掴み"に続いてオープニングクレジットになると、背景では子供たちの稚拙な絵で5年間の時の流れを表していく。とてもデル・トロ的だ。

文明と隔絶した土地で狼に育てられ野生児となった少女を"狼少女"と呼ぶが、それに近いような4つ足で行動するようになっているふたりが山奥の小屋で発見される。必死になって探していたのはふたりの叔父のルーカス(ジェフと一人二役だったよう)。その恋人でロック・ミュージシャンのアナベルに扮するのがジェシカ・チャステイン。『ツリー・オブ・ライフ』での清楚なお母さん役とも、白人社会の中の天真爛漫な異物を演じた『ヘルプ 心がつなぐストーリー』や、資料の分析を通してビン・ランディンを探し出すという実際に行動しない故に難しい役柄だった『ゼロ・ダーク・サーティ』とも違う新たなキャラクターを今回も演じている。振り返ってみるとあの女優かと思い出せる役に扮していながら、注目していないことも確かにあったが、役によって表情を変えられる芸達者な女優のようだ。今後注目していきたいと思った。次回作は期待の『インターステラー』とのこと。

アイライン濃い目で爪も黒く塗っているやや古風なロッカーのアナベルにとって、突然10歳と8歳の子供の母親をやれといわれても困るわけで、しかも彼女たちと暮らし始めてから不可解な出来事が起き始める。さらには当のルーカスが原因不明の大けがを負い入院してしまう。ヴィクトリアとリリーに関心を寄せるドレイファス博士は、数度の診察を経てふたりが"ママ"と呼ぶ存在と5年間一緒にいたことが分かり始める。その"ママ"の謎を解き明かすことと並行して、次第にアナベルに母性が芽生え始め、そのことが"ママ"の嫉妬を生み出していく。

アメリカで量産されるB級ホラーのような短絡的な恐怖は本作にはない。どちらかといえば、メジャーが制作するホラーに近く、恐怖よりもテーマをしっかり据えたドラマを重視している。『呪怨』の伽椰子を彷彿させる"ママ"の子供を思う気持ちの強さと、アナベルの育ち始めたばかりの母性が最後に激突するわけだけど、日本人の感覚ではこの手の母子の関係だと"大岡裁き"がすぐに思い出されるためか、自分を犠牲にしても子供の幸せを願うことを尊いとする価値観を強調する展開が望まれる傾向にあると思うので、本作のクライマックスでの痛み分け的なオチは興味深い。アベルとカインの姉妹版のようなエピソードがキリスト教、あるいはギリシャ神話にあったりするのだろうか。こういうところが洋画を見ていて面白いところだ。

ヴィクトリアは事故に遭う前の5歳の時点ですでに眼鏡をかけている。雪道の自動車事故でレンズが破損し、その後に父が預かるため彼女は5年間裸眼で過ごすことになる。保護された後に新しい眼鏡を渡され、彼女は次第に心を開いていく。しかし、部屋で"ママ"と遊ぶ際には眼鏡を外すなど、眼鏡が文明の象徴として描かれているのも面白い。

色調を変えたり、過去のシーンで劇画調にしてみたりと画面に変化を加えることで現代/現実との違いを際立たせる試みは良いが、終盤でCGにやや頼り過ぎて、安っぽくなるのはもったいない。また、ルーカスとアナベルが終盤に向けて合流するのが性急になり過ぎた感もある。でも物語の骨格に限っていえば、そのテーマやミステリー的な要素がよく絡まり、子役たちの演技も含めて俳優陣が奮闘していることもあり、見応えあるホラーになっている。新人監督でこれは十分及第点だろう。
2014.06.05 Thursday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
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2019.08.20 Tuesday 23:58 | - | - | -
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