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ル・コルビュジエの家 / El hombre de al lado

58点/100点満点中

2009年のアルゼンチン映画。人間ドラマ。

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アルゼンチン・ブエノスアイレス州の州都ラプラタ(ブエノスアイレス州の中に首都の"ブエノスアイレス"は位置するが、どの州にも属さなさい自治市扱い)。世界的な成功を収めた若き家具デザイナー・レオナルドは妻のアナとひとり娘ローラと共に、20世紀を代表する建築家ル・コルビュジエ設計の家で暮らす。ある朝、酷い騒音で目覚めると、隣の家のビクトル・チュベロが自宅の壁をハンマーで崩し、彼の家に向く形で窓を作ろうとしていた。
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ル・コルビュジエが1948年に設計し、アメリカ大陸では唯一の彼の建造物だというアルゼンチン・ラプラタの"クルチェット邸"で実際に撮影している。家の中に樹木がそびえ、いかにも"お芸術"な実に暮らしにくそうな邸宅が舞台となる(作中にも出てくる用語・モデュロールを実践することで、"人体における数学的な比率を見出だし、それを建造物の機能の向上のために利用した"そうだ。室内で坂ダッシュできるのは確かに魅力かも)。

そのレオナルド邸の向かいではなく、両脇でもなく、真裏に位置する隣家の住人ビクトルが問題の人物となる。レオナルドが暮らしている側の道には緑が多く、ハイソな一帯となるが、並行に隣を走る道は普通のアパートが並び、ビクトルとレオナルドの部屋が背中合わせで接することになる。江戸川乱歩の世界だったらきっと地下でひそかに繋がっていて、お屋敷町から下町に急に現れた怪人二十面相が明智少年探偵団を驚かせたことだろう。

閑話休題。ミラノのビエンナーレで発表した椅子(エンドロールで紹介されているが、"プラセンテロ・チェア"という実際にある椅子だそうで、実に座り心地が良さそうだ)が大評判をとり、一躍人気を集めたレオナルドにとって、それまでのアートやアカデミックの世界の住人とは真逆の印象を持たざるを得ない、外見からして粗暴で押しが強く不敵な隣人ビクトルと対峙することになる。

彼の望みはひとつで、窓ひとつない自分の部屋に太陽の光を入れたい、ただそれだけだった。しかし、レオナルドや妻アナにとってみれば、ちょうど居間が見られる位置に窓が作られるわけで、プライバシーの侵害以外何ものもでもない。しかも年頃の娘ローラ(ピンク色が好きなようで、ピンクのギターを弾き、ピンクのチェ・ゲバラのポスターが貼られている)までいる。

境界線トラブルを始め、隣人との問題は多種多様だし、お隣さんということでこじれることが往々にしてある。一昨年だったか世田谷で退職した元警察官が隣家の女性を日本刀で叩き切った事件があったと記憶しているが、対応を誤ると大きなしこりを残してしまう。そして、レオナルドもその例に漏れず、ミスを犯す。

映画自体は騒音に悩まされる描写がだらだらと無駄に長くたいして面白くはない。でも、いつの間にか行われている視点の逆転が興味深い。観客は主人公レオナルドの心中を察しながら見始める。つまり、文化人の家に野蛮人が難癖をつけてきたと。よくいえば、その冗長な描写のおかげで彼が抱える不快感や不安感の共有が図られる(もっとうまくできそうにも思うけどさ!)。デザイナーでインテリの彼の境遇に深い同情とビクトルへの憤りが最初はあったはずなのに、見終えた時にはその気持ちが真逆になっている。その趣向が面白い。確かにビクトルは教養がなさそうだし、態度が横暴に過ぎるかもしれない。でも、付き合ってみればそれほど嫌な奴ではなく、もしかしたらどこかの飛行艇乗りのように"気持ちのいい男"かもしれない。人としてクズであるのはひょっとしたら、レオナルドや特にその妻アナではないのかとなるのだ。

ハンマーを叩き込み少しずつ穴を開けようとしている内側の壁と、その逆側の徐々に穴が開けられる外壁のふたつを同じ画面でちょうど縦に二分割する形で映し出す冒頭のシーンがまさに、小賢しくもあるが、肩入れする登場人物がゆっくりと変わっていくその逆転現象を象徴していたのかもしれない。

そうした展開は悪くないといってもいいが、本編だけで98分はやはり不要だ。ル・コルビュジエの家も売りのひとつだとはいえ、それほど有効に使われているとは思えない。ただ、エンドロールは楽しめる。イラストを使っての配役紹介や、何よりイノシシのマリネのレシピを教えてくれるのが良い。


ビクトル特製イノシシのマリネ
1.イノシシの肉を細切りにし、ひと晩漬け込む。
2.漬け汁は白ワインとニンニク、月桂樹。
3.翌日、炒める時に小口切りのニンジンとタマネギを加える。お好みで黒コショウを少々。
4.漬け汁とワインビネガー(各カップ1杯)、レモン少々を入れ、しばらく火にかける。
5.全てを瓶に詰め、冷蔵庫に入れる(かなり日持ちする)。

マテ茶を何度か飲むシーンがある。日本でも最近は自販機に普通に入っているようになったが、"アルゼンチンにはマテ茶で意思を伝える文化がある"として"マテ言葉"なるものも紹介されている(wiki)。なかなか奥が深そうだ。
2014.06.30 Monday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
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2017.04.19 Wednesday 23:58 | - | - | -
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