すばらしくてNICE CHOICE

暇な時に、
本・音楽・漫画・映画の
勝手な感想を書いていきます。
09 / 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30
<< 無料配信ミックステープ6月号(2014) | main | スノーピアサー / 설국열차 / Snowpiercer >>
フォーリン・フィールズ / På fremmed mark

64点/100点満点中

デンマークの戦争映画。共同脚本のイェンス・ダールがニコラス・ウィンディング・レフン監督のデビュー作『プッシャー』で同じく共同で脚本を担当していたことで気になった作品。"1999年の第52回カンヌ国際映画祭で政治的な配慮から上映中止となった問題作"らしい。本国では翌年の2000年に一般公開された。主演のペレ・ヴェネゴーは彼が11歳前後の時に出演した1987年の『ペレ』でカンヌ国際映画祭パルム・ドールを始め、アカデミー賞とゴールデングローブ賞で外国語映画賞を受賞。軍曹役は『MAMA』にも出ていたニコライ・コスター=ワルドー。

************************************
デンマーク人の青年ヤコブは自ら志願し、国連軍の兵士としてボスニアに赴任し3ヶ月が経つ。フランス外国人部隊上がりの新任軍曹ソレン・ホルトから射撃の腕を買われ目をかけられる。ある日、ヤコブは彼から休暇を一緒にどうだと誘われる。それは奇特にも戦争のスリルを肌で味わいたいと願う金持ち軍事マニアの戦場ツアーガイドだった。ひと晩でセルビア領内の村まで行くとだけ聞かされるヤコブだったが・・・。
************************************

つい先日、今年のブラジルでのサッカー・ワールドカップにボスニア・ヘルツェゴビナが出場できたのは、元日本代表監督イビチャ・オシムが分裂の危機に瀕していた母国のサッカー協会をひとつにまとめ上げたからだと彼の功績を称えるテレビ番組を見た。そこで流された当時のボスニア紛争(wiki)の映像を目にして、改めてその悲惨さ、苛烈さを思い出した。20世紀の後半も後半で(1992年から1995年にかけて)、しかもアジアやアフリカではなく、ヨーロッパ大陸のほぼ真ん中であれだけの泥沼状態に陥った内戦が起きたことはいまだに信じられなくもある。3つの民族がそれまで仲良く暮らしていたのに、ある日突然隣人を殺す凶行を犯してしまう。今もって地中から多くの虐殺体が発見されているそうだ。

本作は紛争を背景にしてはいるものの、内容的には非常に地味だ。詳しくなければ何がどうなっているのか理解するのも難しい。そもそも、主人公ヤコブがデンマーク人という説明すらない。どこの出身かという説明がなくても、デンマーク語を話していれば自国の人間ならそれと分かるだろうが、その国の言葉を知らないとなるからこれが難しい。

ともかく、出征前の主人公ヤコブが親友ヘルゲから"ユーゴに行くのか"と問われ、"ボスニアだ"と答えるシーンがあるように、かつてユーゴスラビアと呼ばれた多民族国家から民族ごとにそれぞれ独立を果たしていく中で、ボスニア・ヘルツェゴビナではボシュニャク人(上記したNHKの番組ではムスリム人)、クロアチア人、セルビア人の3つの民族が血で血を洗う激戦を繰り広げることになった。当時も複雑すぎて覚えられなかったが、今も便利なウィキペディアあってもなかなか飲み込みにくい。派遣された国連軍はとりあえず治安維持が目的だったのだろうが、本作ではセルビア人やムスリム人を敵とみなしている。

大事なのは新兵ヤコブの内心だ。先日まで平和だった孤児院が襲撃に遭い廃墟と化しているのを目の当たりにし、また自分に銃口を向けられる事態に陥り、経験豊かな本職の軍人でさえ命を落とす本物の戦地にいることをリアルに感じ始めた矢先に隊長のホルト軍曹から何も知らされず休暇に誘われる。そして行った先が金持ちたちの戦場ツアーで、しかもその真の目的を悟り愕然とする。

これは実際にあったことなのか不明だし、終戦から時間が経っていない時期にどちらかに肩入れする物語であるため"配慮"されたのも仕方ないといえるが、過酷で非情な戦場ドラマと同時に寓話としても機能する。

戦闘経験豊富である故に感情の回路を欠落させている兵士ホルトは、戦争とは"人が人ではなく獣"になる場所と正しく理解している。一方、兵士ヤコブは大義ばかりに目を奪われていてその事実から目を逸らし、のっぴきならない事態に陥っても何もできない。自分が今まさに命を狙われているにも関わらず、それでも惑う愚かさも含めて(最後の川から上がるシーン)、今の日本が歩む道に後者ヤコブを重ね合わせてしまう。そうならないために老いた戦争経験者たちがどれほど戦地の恐ろしさ、無意味さを語ろうとも耳を傾けようとしないのは愚かしいにも程がある。戦争に汚いも汚くないもない。あるのは人が死ぬという現実だ。
2014.07.01 Tuesday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
スポンサーサイト
2017.09.06 Wednesday 23:58 | - | - | -
コメント
コメントする











この記事のトラックバックURL
http://gogonyanta.jugem.jp/trackback/4973
トラックバック
Profile
Search This Site
Category
New Entries
Comment


Archives

今日も愚痴り中