すばらしくてNICE CHOICE

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her/世界でひとつの彼女 / Her

93点/100点満点中

『マルコヴィッチの穴』『かいじゅうたちのいるところ』のスパイク・ジョーンズ監督脚本の最新作。異色のSF恋愛映画。主演はホアキン・フェニックス。共演にはスカーレット・ヨハンソン、エイミー・アダムス、ルーニー・マーラ、『ザ・ワーズ 盗まれた人生』のオリヴィア・ワイルド。第86回アカデミー賞第71回ゴールデン・グローブ賞で脚本賞を獲得。製作費2300万ドル。2014年公開作品。

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近未来のロサンゼルス。手紙の代筆ライターをするセオドア・トゥオンブリーは、仕事は順調だが、離婚調停中の妻キャサリンとの思い出を1年経った今も断ち切れずにいる。ある日、最新式のAI型OS広告を目にしたセオドアはさっそくダウンロードするとスクリーンから"サマンサ"と名乗る女性の声が聞こえてくる。生身の人間のように会話できるサマンサに次第に魅了されていくセオドア。ふたりはいつしか恋に落ちる。
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スパイク・ジョーンズ。不思議な監督だ。長編作は『マルコヴィッチの穴』『アダプテーション』『かいじゅうたちのいるところ』、それに本作とわずか4作しかない。俳優としても活躍するが、それほど表だってこなしているわけでもない(近作だと『ウルフ・オブ・ウォールストリート』でのペニー株専門会社運営)。もともとは音楽ビデオやCM畑の人間で、有名なものだとBeastie Boysの「Sabotage」(動画)や、Weezer「Buddy Holly」(動画)、それにBjörkの「It's Oh So Quiet」(動画)も印象的だ。ヒップホップ的にはNotorious B.I.G.の「Sky's the Limit」(動画)、あるいはThe Pharcyde「Drop」(動画)、Ludacris「Get Back」(動画)もそうだったらしい。

同じPV監督上がりのデヴィッド・フィンチャーのような洗練された映像で魅せるわけでも、ミシェル・ゴンドリーの手作り感とも異なる、すごく大雑把ないい方をするとサンプリング世代らしい古い映像からのいいとこ取りをした上で自らのセンスで再構築し、より良い映像を作り出していたといえるのかもしれない。そして映画となると、今度は『マルコヴィッチの穴』のようにその奇抜なアイデアは一体どこから生まれてきたのだと不思議を越えて訝しむしかないような面白さを備えた作品を制作している。

本作でも幼馴染の女性キャサリンとついに結婚するも、積もり積もった互いの感情の行き違いで1年前に破局を迎え、いまだ立ち直れていない中年男性セオドア・トゥオンブリーが新しい恋に出会い、生き生きとした人生を取り戻す話が大枠であり、その新しい恋愛対象がコンピューターの対話型オペレーションシステム(いってみればより進化したSiriか)というのがミソになる。それだけならまだよくある近未来設定かもしれないが、ジョーンズは人間と機械の関係をどんどん掘り下げていく。冷静に考えれば半ば滑稽なやりとり(テレフォンセックスならぬ、Siriとの疑似性行為にまで発展するのだから)なのに、観客はやがて声しか聞こえない電脳空間のサマンサに確固たる人格をセオドアと同じように認めていくようになる。その話の持って行き方にやっぱりジョーンズ作品は目が離せないとなるのだ。

ひとりの人間のように対等な会話ができるOSが開発されている近未来を舞台にしているが、現代と陸続きの世界と感じられるところもジョーンズ監督の巧さだ。白人、黒人だけを配置するのではなく、背景を歩く人種にアジア系を多くしているのも不思議に未来感を醸し出す(エンドロールを見たらシンガポールでロケとあり、そのことが大きいのだろうけど)。また、どこか淡い色合いを好む服装や内装、ズボンをベルトで留めないというファッションで統一された街の様子は、ありがちなサイバーシティとは異色であるところも彼らしさがある。

男女感の別れと新しい出会いに伴う心の傷の受容(セオドアとキャサリン)。誰でも馴染みやすい設定だし、心の機微を丹念に綴ってはいるのだけど、テーマ的な部分で特に最後の突然の離別についてなどもう少し分かりやすくても良かったのかもしれない。

話に聞いていた通りに、サマンサの声役でしか出演しないスカーレット・ヨハンソンは素晴らしい演技を見せる。エイミー・アダムスもかわいらしく、背中に龍の刺青を入れていたのが嘘のようにルーニー・マーラはお嬢様然とした顔を披露する。リバー・フェニックスの弟などという注釈は見なくなって久しいが、ホアキン・フェニックスは例え天才と謳われた兄が生きていても、その背中を越していったのではないかと思うぐらいに映画ごとに違う表情を作り出している。
2014.07.13 Sunday 23:58 | 映画 | comments(4) | trackbacks(0)
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2019.08.20 Tuesday 23:58 | - | - | -
コメント
こんばんわ。もう梅雨明けですね。
気が早いかと思いますが、僕はこの映画が今年No.1なんじゃ?と思うくらい
素晴らしいかったです。
特に二人?がムーンソングを歌うシーンは感涙ものでした!
あの歌詞も、2人でどこまでも的な事を歌っておきながら
人は月には行けず、コンピュータだけがどこまでも行けるというような
行く末を暗示している歌詞とも取れて
切なかったです。
ただ、ホアキンファンでも何でもない女性は
この映画を観てどう思うんでしょうね?
キモっ!の一言なんじゃないかと不安になります
what's? | 2014.07.21 Mon 00:50
what's? 様

こんにちは。
どうもです。お恥ずかしい・・・。先のコメントにお返事もしていないうちに・・・。でも感謝です。

> 僕はこの映画が今年No.1なんじゃ?と思うくらい素晴らしいかったです

私が、彼の前作『『かいじゅうたちのいるところ』を見た時に抱いた強い確信と同種のやつですね。分かります。宝物と思える映画に出会えるのは本当に嬉しいものです。

> 特に二人?がムーンソングを歌うシーンは感涙ものでした!
> あの歌詞も、2人でどこまでも的な事を歌っておきながら
> 人は月には行けず、コンピュータだけがどこまでも行けるというような
> 行く末を暗示している歌詞とも取れて切なかったです。

あの歌、メロディも良かったです!雪深い山小屋でしみじみと歌われて、SF映画なのにアナクロさと今よりちょっと進んだ未来感が巧みに重なる意味でも素晴らしかったです。手掛けたカレンOは前作から引き続きですし、才能ある人なんですね。彼女が所属するYeah Yeah Yeahsってロックを聴かなくなってから出てきたバンドなので全然知らないのですが、『ドラゴン・タトゥーの女』での「移民の歌」のカバーも良かったですし、気になってしまいました。

> ホアキンファンでも何でもない女性はこの映画を観てどう思うんでしょうね?

隣りで見ていたのが初々しいカップルで、多分恋愛映画ということで選んだのだと思うのですが、他人事ながらちょっと心配しちゃいましたね。
gogonyanta | 2014.07.21 Mon 14:33
近くの映画館では上映しておらず未だに観れておりませんが、早く観たくなりました。。スパイクジョーンズ。センスの塊みたいな人ですね。
イケダ | 2014.07.21 Mon 19:36
イケダ様

こんばんは。
コメントありがとうございます!

> スパイクジョーンズ。センスの塊みたいな人ですね

はい。ホントそれ思いますね。かいじゅう〜と本作との間に短編もあるみたいなんで、そっちも見てみないとってなりましたね。
gogonyanta | 2014.07.21 Mon 23:49
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