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アナと雪の女王 / Frozen

63点/100点満点中

前年のディズニー長編アニメ『シュガー・ラッシュ』に続き、ジェニファー・リーが脚本を担当し、今回は共同で監督にも携わった3DCGアニメ。第86回アカデミー賞では長編アニメ賞と歌曲賞に輝く。主役のひとり、アナ役の声にはTVドラマ「ゴシップガール」で謎の人物ゴシップガールを担当するクリステン・ベル、雪だるま・オラフに『恋人はセックス依存症』のジョシュ・ギャッド、ウェーゼルトン公爵役は『シュガー・ラッシュ』や『42 〜世界を変えた男〜』での人種差別者の監督など憎まれ役といえばこの人なアラン・テュディック。製作費1億5000万ドル。2014年公開作品。

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アレンデール王国の幼い王女エルサとアナは仲の良い姉妹だったが、氷の魔法を使う姉エルサはその力で妹アナに怪我を負わせてしまう。力を制御できるまでとエルサはひとり閉じ籠る。数年が経ち、両親である国王夫妻も亡くなり、美しく成長したエルサが女王に即位。戴冠式後のパーティで、エルサは妹との再会に喜ぶも、アナのハンス王子との結婚報告に戸惑う。やがて彼女が必死に封印してきた魔法の力が解放され、人々から追われるように城を出る。エルサは北の山に氷の城を築き雪の女王に。アナは冬に閉ざされた国に夏を取り戻そうと姉の元に旅立つ。
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今年3月14日に公開され、現在も記録を伸ばし続けている大ヒット映画。公開19週目となる先月19日の段階で興行収入251億円を記録し、累計動員は1973万人。この数字は『千と千尋の神隠し』の304億円、『タイタニック』262億円に次ぐ、日本歴代第3位だそうだ。しかも、いまだ劇場でかけられている中、その人気、評判の勢いに乗ることを意図したのか、ヒット作としては異例のわずか3ヶ月でのソフト化。おかげでいち早く見られるのは嬉しいけれど、映画会社としてはまだまだ金を搾れるコンテンツをソフトにするのはかなり思い切った戦略に映ったが、これが功を奏し、発売初週で200万枚を突破のこれまた大ヒットを記録し、3週目の現在は250万枚に到達した。テレビをつけても繁華街を歩いてもレリゴーレリゴーとオスカーを取った主題歌が流れ、見る前から斜に構えたくもなる状況ではあるが、日本では珍しい試みである映画館内で歌が流れた時にみんなで一緒に歌うといった企画が行われたりするのは、自分が見ている回でそれは勘弁して欲しいが、それでも子供にとっては楽しい企画だろう。

物語はシンプルで、国に夏を取り戻そうとする王女アナの奮闘(エリサ女王に会うための北の山への道程と、続けて胸に打ち込まれた魔法の力をなくす取り組み)と、王国で密かに進行する策略が描かれ、結果として真実の愛に気づき、アナとエリサの姉妹を始め国に幸福が訪れるというものだ。一応、『塔の上のラプンツェル』のようにミュージカル形式ではあるのだけど、くだんのあまりに聴き慣れ過ぎてもはや新鮮な気持ちでは聴けない「レット・イット・ゴー」以外はメロディに親しみを湧くものが少なく、特にデュエット曲では噛み合わせが悪い。一方、コメディパートは雪だるまのオアフが率先することでどれも面白く見られる。


これだけ大ヒットした映画となると、その評価はいやでも聞こえてくるが、できるだけ耳をふさいできたつもりだ。でも下に妹がいる長女が本作を見るともはや号泣を禁じ得ないという話は強く印象に残っていたので、鑑賞しながらなるほどと頷いたりもしたわけだけど、でも同時に親からきつくしつけられる長女と、それに比べ自由に伸び伸び生きているように見える妹というステレオタイプ的な見方を安易に本作に当てはめることは可能なのかなと思わなくもない。姉エルサに生来備わっている魔法をどう捉えるかによるのだろう。

そのエルサの魔法の力は当初ある程度コントロールできたものの、成長するにつれて力が強くなっていく。そして、アレンデールの城を出て、北の山に自分ひとりの城を築き、それまで制御しようとしてきた本来の自分を思う存分"レット・イット・ゴー"(解き放つ)させる。この時に歌われる主題歌はそれだけ切り取れば、本当の自分を取り戻すという良いテーマの歌なのかもしれない。が、前後の流れの中で見ると、為政者が無辜の民を傷付け(この時点ではまだ知らないわけだけど)、それにも関わらず自己肯定する開き直りの歌であり、しかも代償としてひとり孤独に生きていくという決意表明でもある。そんな曲がヒットするというのもすごいと感心する。

妹アナが姉エルサの説得に失敗し、反対に胸に氷の魔法を打ち込まれる。その魔法を解くには"真実の愛"が必要となる。アナを結局助けるのが、ディズニー定番の"白馬の王子様"ではなく、姉妹愛というのは確かに興味深い。物語は次に、愛が氷を融かすのだと悟ったエルサが"そうよ、愛よ"と呟き、自分の持つ力の使い方を学び、国に夏を取り戻す。

本作で描かれる真実の愛とは、"自分のことより他者を想うこと"とセリフではっきり定義される。極限の他者愛の発現ともいうべき自己犠牲によって、"孤独が好き人はあなただけよ"なんて言葉を屈託なくいえてしまう生粋のネアカ人間アナからエルサは"真実の愛"を学ぶ。だけど、エルサはそもそも自分のことよりも他者に害を及ばないよう気を配り長年生きてきた女性だ。事情を知らされなかったアナは不満だったかもしれないが、エルサは幼い頃の事故以来、他人を傷付けないよう、自らの青春期を犠牲にしてでも部屋に籠り、力のコントロールに勤しんだ。妹や両親、当時から意識してたのかは不明だが王国という他者への被害を案じ続けた。つまり"真実の愛"は彼女の中に常にあったいえる。

それでも完璧に御しきれなかったからこそ、アレンデールが冬の国になったわけだけど、妹アナから"真実の愛"を見せつけられ、彼女も同様に発揮することでアナにかけられた魔法を消し去る。ここで見ていて飛躍に思えたのは、王国に降り積もる大量の雪をも一気に融かしてしまうほどの魔法の力を彼女が完全にコントロールすることだ。ここではエルサが元から持ちえた"真実の愛"の再確認以外の新たな悟りだったり、能力をステップアップさせる行動/心理的な変化が必要と思うのだ。

青春映画や小説の定番としては、自己憐憫(孤独でもいいから自由に生きる)を克服し、どんな自分をも受け入るというより大きい自己愛の形成などの人間的な成長が描かれることが多いが、それはこの映画で重要視し続ける"真実の愛"とは一見対極にある。己と向き合い、自己をもしっかり認める/愛することができるようになって初めて可能なことだ。氷上でのあのシーンからそう深読みしてもいいのかもしれないが、ただ真実の愛の定義をセリフにして明確に提示している分かりやすい子供向けアニメ映画の中で、いくら大人の鑑賞に堪えるクオリティとはいえ、はっきりと描かれないということは違うのだろうし、やはりテーマが複雑になり、ブレてしまうことにもなる。従って、ウィキペディアが説明するように、"魔法の力をコントロールする術が「恐れ」ではなく、相手を心から思いやる「真実の愛」だと知ったエルサは、王国を覆っていた雪と氷を空へと蒸発させる"と単純に見るのがいいのだろうけど、それでもやはりどうなのだろうという思いは消えない。


いずれにせよ、『シュガー・ラッシュ』では年甲斐もなく涙がちょちょぎれたのと比べると、今回は決してつまらなくないけれど、これがそんなにもヒットするのかという違和感や「レット・イット・ゴー」の勝手さ、あるいは歌物のまずさに終始ハマりきることなく見ることになった。

一応吹き替え版もざっと鑑賞したところ、エルサ役の松たか子は当然としても、神田沙也加がアナをしっかり自分のものにしていることに驚いたし、最初は戸惑いしかなかったのに次第に慣れもあり不思議な味を出していたオラフをピエール瀧が担当していたのを最後のクレジットで知り驚愕した。『凶悪』での残忍な殺人鬼、「あまちゃん」での鮨屋の大将とずいぶん器用にこなし、意外な才能だ。



【追記】2014.11.27
・『アナと雪の女王』にみる社会の姿 →記事
・論壇誌に掲載拒否されたといういわくのある中森明夫の『アナと雪の女王』論 →記事
・「Let It Go」の古文訳 →呟き
・その古文訳で歌われた「Let It Go」 →YouTube
2014.08.06 Wednesday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
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2019.08.20 Tuesday 23:58 | - | - | -
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