すばらしくてNICE CHOICE

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舟を編む

81点/100点満点中

川の底からこんにちは』の石井裕也監督による2013年の人間ドラマ。主演は松田龍平。ヒロインに宮崎あおい。共演にはオダギリジョー、小林薫、加藤剛、池脇千鶴(オダギリの彼女役なのだけど、クレジット見ても気づかなかった)、黒木華ら。原作は2012年の本屋大賞第1位に輝いた、直木賞作家三浦しをんの同名小説。

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1995年。玄武書房に勤める馬締光也はコミュニケーション能力に乏しく、営業部でも浮いた存在だったが、言葉に対するセンスを買われて辞書編集部に異動となる。老国語学者・松本を監修人とした"今を生きる辞書"『大渡海』の編纂に、定年間近のベテラン編集者・荒木やお調子者の先輩・西岡らと取り組むことに。馬締が辞書作りの魅力に取りつかれ始めた頃、下宿先の早雲荘に大家・タケの孫娘の香具矢(かぐや)が越してきて、ひと目惚れする。
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劇中で紹介されているように三省堂の『大辞林』(本作のヒットを受け当時の担当編集者へのインタビュー記事がある)は22万語を収録し、28年もの歳月をかけて完成した大事業だった。主人公・馬締(読みは"まじめ"で、実在する苗字だそう)が編纂に携わることになる『大渡海』は24万語を目標に言葉集めの地道な作業から始めていく。

企画が1995年に始まるという時期的なことも興味深い。PHSが出回り始め、その年の秋には「Windows 95」が爆発的ヒットを記録し(劇中には出てこないけど)、インターネットが普及し始めた頃だ。それまでも新しい言葉は次々に生まれ、また以前は誤用とされていた語が一般化されるということはもちろんあったろうが、ネットは新語をより爆発的に誕生させたわけで、そんな言葉の海を漕ぎ出すのに必要な舟として編み出された辞書が『大渡海』となる。

特に面白いのは前半だ。対人関係の構築が下手な馬締をユーモアいっぱいに描きつつ、オダギリジョーが生き生きと演じる先輩編集者・西岡を筆頭に個性的な編集部の面々や、下宿先のおばちゃんがいい味を出している。長年にわたり大岡越前を演じたことで有名らしい加藤剛が扮する監修の松本も実にいい顔をし、その声音は非常に魅力的だ。気の長い仕事らしく、映画自体ものんびりと進むため、ヒロイン香具矢の登場が30分過ぎと遅いのだけど、いざ宮崎あおいが出てくれば物語に光が一気に差し込み、馬締の朴念仁ぶりに笑い転げることになる。

いよいよ後半で辞書作りの佳境に入り、一気に12年も飛ぶ。そこからはそれまでのコメディドラマのノリから「プロジェクトX」へと変わる。それはそれでモノづくりの厳しさや面白さがあり、大変な事業を成功させるドラマを楽しめる。ただ、そうなると今度は香具矢の魅力に影が差す。自らの腕で確かな地位を勝ち取ったひとりの社会人と一応演出されているものの、馬締を陰ながら支える内助の功にばかり向かいがちとなる。本作は辞書編纂という大事業に関わる人間のドラマであり、原作ではもっと書き込みがあるのかもしれないが、尺に限界がある映画では他の要素は軸のブレに直結するわけで仕方ないのだと理解しながらも、結局のところ香具矢の役目は"恋"の項目を作るためだけの存在に思えてしまうのだ。端に私が宮崎あおいのファンということも大いにあるが。

でも、季節の移り変わりをセミの鳴く音だけでさらっと描写したり、企画の廃止を主張する局長と交換条件として交わした様々な事典を実は並行して作っていたことを編集部に貼られたポスター(スウィーツ事典)で何気なく表現したりと、原作は未読なのだけど、そこにある様々なエピソードをうまくまとめているのだろう。それに非常に地味な作業を積み重ね、長い歳月をかけて完成させるプロジェクトを真摯にやり取げる物語はなんだかんだいって面白いし、前半のコメディ要素は目を見張るわけで、ヒットしたのもよく分かる。


"恋"は、手元の角川の古い辞書で、"男と女のあいだで、相手のことが好きになり、いつもいっしょにいたい、独りじめにしたいと激しく思う気持ち。恋愛。"とある。偶然にも1995年の辞書だ。今では、というよりも当時だって誤りだったろう。劇中の『大渡海』では"ある人を好きになってしまい、寝ても覚めてもその人が頭から離れず、他のことが手に付かなくなり、身悶えしたくなるような心の状態。成就すれば、天にものぼる気持ちになる。"となり、まさに"今を生きる辞書"なのだろう。ちなみに、私のこの辞書で"右"は、"南を向いたとき西にあたるほう。また、そちら側の手や足。"とある。なお、"ダサい"はなかった。
2014.09.29 Monday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
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2017.11.22 Wednesday 23:58 | - | - | -
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