すばらしくてNICE CHOICE

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谷和野 『魔法自家発電』

2015年8月発売。

日付をまたぎ、すでに19日土曜日の終電で駅に着き、深夜のラーメン屋でかすかに流れる国会中継を聞きながら麺を胃袋に流し込み、家に帰り、罪悪感をいくばくか抱えつつ温かいベッドに倒れ込んだ。朝起きて見るのは怖くはあったけれど、それでも携帯のニュースサイトで事実を確認した。できるだけ何も考えないようにしながらトゥイッターのタイムラインを流し読みした時、そこには打ちひしがれるのではなく、笑ってすらいる表情の若者の写真がアップされていて、ああまだこれからなんだ、始まったばかりなんだと、もうずいぶんと年の離れた彼らから、こう書いては本当にかっこ悪いけど、力を貰い、嫌な失望感にさいなまれずに済んだ。

溜まってた洗濯物を回している間に駅前の書店で買ってきたのがこの漫画だった。表題作でもある冒頭の短篇で物語の世界に浸るという何ものにも代えがたい時間を得ることができた。心がまた少し軽くなった。それは私にとってとても大事なことだった。だから、そのタイミングでこの1冊だったのは本当に偶然ではあるのだけど、この先読み返すたびに著者への感謝の念がよみがえるだろう。

2010年に小学館新人コミック大賞で佳作を受賞し、デビューした漫画家で、この『魔法自家発電』で2冊目の単行本となる。自分をバケモノと認識している男子高生が電車の中で天使に出会う表題作。両親のひどい夫婦ケンカに悩む少年のベッドがある夜、空高く飛び出して、同じ境遇の少女と出会う「ソファベッド・ツアー」。フーと名付けられた女性ロボットは博士に長年献身的に仕えるうちにある感情を抱くようになる中篇「Whoにつける名前」。お天気売りのショートショート「おてんきはんばい」。そして、水のある部屋で暮らす少年と女性の話「2人時間」の5本が収録されている。

単行本の名前になっているだけあって「魔法自家発電」の完成度の高さは申し分ないが、「ソファベッド・ツアー」やロボットの話にしても、最後までこれは一体何の話だろうとニブチン過ぎて分からなかった「2人時間」だって、読み手に強くある感情を押し付けるのではなく、じんわりとした淡い思いでそっと包み込んでくる。それは大島弓子を連想させる。絵柄も当然あるのだけど、彼女のあの不思議な空気感ととてもよく似ているのだ。この先が楽しみな漫画家に出会えた。その意味でも朝ニュースを見た時に一瞬抱いてしまった悲壮感や無力感を帳消しにしてしまえる本当に嬉しい発見だったのだ。
2015.09.19 Saturday 23:58 | 漫画 | comments(0) | trackbacks(0)
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2020.02.18 Tuesday 23:58 | - | - | -
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