2015年8月同時発売。
"人と関わるのが苦手な女子大生・礼香はゲーム会社でバグ探しのアルバイトをしていたが、ある日気づくとルームメイトの庸子と共に木造迷路に迷い込んでいた"というSFミステリー漫画。10月初旬の朝日新聞の書評で見て購入したのだけど、すでに2刷だったし売れているようだ。
同じような部屋がどこまでも連なる設定としては映画『CUBE』が真っ先に思い浮かぶし、畳の部屋からは森見登美彦の小説『
四畳半神話大系』も連想できる。同時に、ネタバレ的にはなるが、"実世界"、"表世界"という世界観には映画『マトリックス』、あるいは最近ちょうど見たばかりの低予算ながらもなかなかよく出来ていたSF映画『シグナル』を思い出させもする。
しかし、そこにバグというゲームやコンピューターの要素を盛り込んだのがユニークだし(まあ『マトリックス』もそうか)、何より大事なのはオチで主人公はこの後どうなるのだろう・・・という逃げ(『シグナル』は仕方ないとはいえそういうオチだった)に出るのではなく、単行本2冊分の中でキッチリ描き切ったことだと思う。当初はただの不思議ちゃんなだけに思えた主人公・礼香の特質がよく生かされているし、彼女のいくばくかの成長(もともとの素質も大きい)を盛り込みつつ、少年漫画やラノベ(ほとんど読んでないから言及してはいけないのだろうけど)によくある実生活では冴えない主人公が大活躍するという夢見がちな妄想をも、女の子を主人公にするという変化球は加えられているものの、丁寧にすくいとり、なおかつSF設定もよく出来ているわけで(ちゃぶ台合わせ鏡)、ハリウッドで映画化されても面白そう。