読了。
☆☆☆☆/5点中
うまいなと思う。
とてもうまい。
6本からなる連作短編。
各編のタイトルが「死神の精度」のように、
「死神」と「2つの漢字の熟語」で作られているが、
その二つの単語を繋ぐ助詞がそれぞれ違うのがいい。
「死神の精度」「死神と藤田」「吹雪に死神」
「恋愛と死神」「旅路に死神」「死神対老女」
最後が「対」というのがすばらしい。
内容的にも「対」なのだが、すべてを助詞にしないというのが、うまい。
それまでに張っていた伏線がここに活きていくるのもきれいだ。
それぞれ導入部もオチも面白いし、
ホロッと泣かせられる話が多いい。
同居人は、上っ面、表層的で中身がない、深くないと批判していたが、
この作家はそこがいいのだと思う。
すべての作家が重い作品を書いていたら、読者がつらい。
さらっと読めて、なおどこか心に残る作品を
書き続けているのは、大事なことだと思う。
それと、いわゆる比喩表現に満ちた文学的表現というのがあるが、
伊坂幸太郎は効果的に使うのがいい。
技巧におぼれないので、そのうまさに嫌みを感じさせない。
この前に読んだ『夜市』が一生懸命そういった表現を作ろう作ろうと
努力していたのが読めてうんざりだった。
だから、余計によく見えてしまったのかもしれない。
まあ、誰か死神に辞書を買い与えよということだね。
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伊坂幸太郎(いさか こうたろう)
1971年、千葉県生まれ。
1995年、東北大学法学部卒業。
1996年、『悪党たちが目にしみる』で第13回サントリーミステリー大賞佳作受賞。
2000年、『オーデュボンの祈り』で第5回新潮ミステリー倶楽部賞受賞。
2003年、『アヒルと鴨のコインロッカー』で第25回吉川英治文学新人賞受賞。
『
重力ピエロ』で第129回直木賞候補。
2004年、「死神の精度」で第57回日本推理作家協会賞短編部門受賞。
『
チルドレン』で第131回直木賞候補。
『
グラスホッパー』で第132回直木賞候補。
2005年、『死神の精度』で第134回直木賞候補。
2006年、『
砂漠』で第135回直木賞候補。
2008年、『
ゴールデンスランバー』で第21回山本周五郎賞受賞。
第5回本屋大賞受賞。
2000.12 『
オーデュポンの祈り』(新潮社)
→新潮文庫
2002.07 『
ラッシュライフ』(新潮社)
→新潮文庫
2003.01 『
陽気なギャングが地球を回す』(祥伝社)
→祥伝社文庫
2003.04 『
重力ピエロ』(新潮社)
→新潮文庫
2003.11 『アヒルと鴨のコインロッカ−』(東京創元社)
→創元推理文庫
2004.05 『
チルドレン』(講談社)
→講談社文庫
2004.07 『
グラスホッパー』(角川書店)
→角川文庫
2005.06 『死神の精度』(文藝春秋)
2005.07 オムニバス『
I love you』(祥伝社)
→祥伝社文庫
2005.10 『
魔王』(講談社)
→講談社文庫
2005.12 『
砂漠』(実業之日本社)
→新潮文庫
2006.03 『
終末のフール』(集英社)
→集英社文庫
2006.05 『
陽気なギャングの日常と襲撃』(祥伝社)
→祥伝社文庫
2007.01 『
フィッシュストーリー』(新潮社)
→新潮文庫
2007.10 対談集『絆のはなし―伊坂幸太郎×斉藤和義』(講談社)
2007.11 『
ゴールデンスランバー』(新潮社)
→新潮文庫
2008.10 『
モダンタイムス』(講談社)
→講談社文庫
2009.08 『あるキング』(徳間書店)
→徳間文庫
2009.11 『SOSの猿』(中央公論新社)
→中公文庫
2010.03 『
オー! ファーザー』(新潮社)
→新潮文庫
2010.06 『バイバイ、ブラックバード』(双葉社)
→双葉文庫
2010.09 『マリアビートル』(角川書店)
→角川文庫
2010.12 『3652 伊坂幸太郎エッセイ集』(新潮社)
2012.02 『仙台ぐらし』(荒蝦夷)
2012.03 『PK』(講談社)
2012.05 『夜の国のクーパー』(東京創元社)
2012.12 『残り全部バケーション』(集英社)
2013.03 『ガソリン生活』(朝日新聞出版)
2013.07 『死神の浮力』(文藝春秋)
2014.01 『首折り男のための協奏曲』(新潮社)
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