読了。
☆☆/5点中
2000年12月30日に起きた事件の真犯人を特定したと主張するノンフィクション。
事件を風化させないために一石を投じたという意味では、意味のある本だと思う。
けれど、一橋文哉の本ではないが、あまりにも主観が入りすぎて、
ノンフィクションというよりは、フィクション、著者の創作のよう。
講談師見てきたような嘘をつき、という感じで、
殺人現場での会話、行動を断定的に描写する。
ノンフィクションに読み慣れていないので、
ノンフィクションとは事実のみを描くものだと思っていたが、
こういうのもありなんだと知った。
現場での具体的な描写が書けるのも、主犯格の人間から直接聞いたとされる人間から、
著者自身が聞いたからだという。
裁判をするわけではないし、伝聞でもいいのかもしれないが、
それがさも真実であるかのように語られてしまうことに、強い違和感がある。
さてさて、スクープ内容とは、
・2001年10月半ばに起きた、炭坑研修生として訪日していたベトナム人3人が
失踪する事件があった。その3人が宿泊していたホテルの一室で、
世田谷の現場に残っていたのと同じ指紋が発見された(らしい)。
・著者はその失踪した(とされる)ベトナム人を捜し出し、
中国人と韓国人から犯罪グループへの勧誘があったことを聞き出す。
・2001年12月26日、大阪でホテトル嬢が中国人2人に惨殺される事件が起きた。
・2002年1月18日、大分で外国人グループによる強盗殺人事件発生。
・大阪の事件では1人が逮捕され、大分の事件にも関わったという証言が得られた(らしい)。
・大阪の事件を起こした2人は、新世界近くの韓国人が借りたアパートを
アジトにしていた(らしい)という情報を得た。
・アパートから世田谷の現場で残されたのと同じ指紋が発見された(らしい)。
・著者は、ある在日韓国人からアパートに出入りしていた(らしい)韓国人2人を紹介される。
・彼らは、大阪・大分の事件の犯人、失踪したベトナム人などが、
所属していた外国人犯罪グループの一員だった(らしい)。
彼らから世田谷一家殺人事件は、そのグループが行った最初にして最大の仕事だと聞く。
・主犯格は、アパートの賃借人で大阪のリーダーでもある韓国人だった(らしい)。
・世田谷事件の仲間として、大阪の事件で逮捕されなかった中国人ひとりと、
同じく大分の事件で捕まらなかった中国人もいた(らしい)。
・2002年12月4日に名古屋で起きた女性風俗店店長誘拐・殺人事件も、
同グループが起こした事件だった(らしい)。
・2003年2月になり、前々から調べてくれと依頼していた、
あるパチンコ業界の有力者から主犯格とその仲間の顔写真を手に入れた。
著者は見た瞬間、犯人だと直感する。
「これがH……。そうだろうな、いや、そうにちがいない」って、あんた……。
・先に話を聞いた同グループの一員やベトナム人に確認し、事実(らしい)と知る。
・現在この3人は行方をくらませたまま。
・他に、世田谷の犯人の遺留品から発見されたチタン酸バリウムという特殊な物質を
いつでも体に付着しうる工場で、大分の事件の犯人(とされる)がアルバイトしていた
という状況証拠がある。
まあ、突っ込みどころがたくさんあるノンフィクションで、
週刊誌で読むならまだしも、1470円を出して買う価値があるかは疑問。
警察のセクショナリズムを批判するのは真っ当だとしても、
謎の外国人犯罪集団について、あまりにも不確かすぎる。
・そのグループでは、自分たちの犯した事件について事細かく報告し合い、
その凶暴の度合いが高いほど仲間内のポジションが高くなる。
・相互に助けあるシステムがある。
・ネットなども利用し、綿密に計画し、戦利品は仲間内で平等に配分される。
で、その立派な犯罪集団が行った犯罪はというと、数が少なく、
動機の1つであるカネも対して得られていないようだ。
綿密な計画が聞いてあきれる。
何にせよ、草思社の販売戦略にはまった自分が一番バカなんだろう。
わかってるよ。
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齋藤寅(さいとう しん)
週刊誌記者を経て、現在はフリーランスで活躍するジャーナリスト。
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