100点/100点満点中
素晴らしいの一言。
アレックス・プロヤスというエジプト出身監督による1998年公開作品。
この人のデビュー作『
スピリッツ・オブ・ジ・エア』を森見登美彦が絶賛していて、
興味を持ち、近くのレンタル屋を調べてみたら置いてなくて、では他の作品をと、
検索をかけたら、この作品も手掛けていたのだった。
公開当時見に行こうかなと思っていたのに、行けなかった映画。
スクリーンで見たかった。
この人の『アイ、ロボット』はあんまりなできだったけれど、これはホント良かった。
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暗闇の中、目覚めるひとりの男。自分が何者なのか思い出せないまま、
「早く逃げろ」という電話に追い立てられるように漆黒の街をさまよい続ける。
黒づくめの奇怪な集団が男に迫る。やがて男の目の前で街が奇怪に変形を始めた。
失われた記憶を取り戻した時、謎はすべて解けるのだろうか?
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面白かった。
100分というコンパクトな時間でよくまとまっている。
主人公が謎を追う中で、世界の秘密が徐々に明らかになり、
その秘密を握る集団と戦い、自由を勝ち取るという、とてもシンプルなストーリーではある。
だけど、小道具が格好良かったり、特殊効果の使い方が巧みだったり、
俳優がうまかったりで、もっと評価されてもいい作品だ。
(それとも結構評価されている作品なのか?)
世界観(というか世界の形そのもの)は1984年の押井守監督によるアニメ映画
『
うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』、
超能力での戦いのシーンは1983年の大友克洋の漫画作品『童夢』、
子供の追っ手が、永井護の長編漫画『ファイブスター・ストーリーズ』のちびっこダイバー、
などなどを思い出させるけれど、
でも、そんなことよりもそれらを実写として映像化させた手腕がすごい。
上記の作品もひょっとしたら、私が普段親しんでいないジャンル、
SF小説では既出のアイデアなのかも知れない。
けれど、この映画はそんなのは関係ないと思わせるほどの豊潤なイマジネーションに富んでいる。
ウィリアム・ハートの鋭利な顎が何ともクール。
キーファー・サザーランドの最後まで彼とは気づかせない、ばけっぷりにも圧倒させられた。
ジェニファー・コネリーの演技も悪くなかった。
主人公だけが少し弱かったのが残念か。
娼婦役のメリッサ・ジョージ、ちょい役だけど、印象的な肢体を見せつける。
1年後に公開された『マトリックス』(1999年)を彷彿させる設定や衣装だけど、
あっちもいいけれど(ファーストのみ)、こっちもよりダークで好きだ。
街の雰囲気がいいんだな。
近未来なんだけど、街の外観は戦前といった、どこか『デリカテッセン』に通じる舞台。
1999年にリリースされたTHA BLUE HERBのシングル『アンダーグラウンド vs アマチュア』収録の
「未来世紀日本」は、映画『
未来世紀ブラジル』というよりは、
"記憶を操作されている"、"太陽がない"、"当局"というネタから類推するに、
こっちにインスパイアされた作品なんだろうな。
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<アレックス・プロヤス監督作品>
1988年 『
スピリッツ・オブ・ジ・エア』
1994年 『クロウ/飛翔伝説』
1998年 『ダークシティ』
2002年 『
ガレージ・デイズ<未>』
2003年 『リバーワールド
』【製作総指揮】
2004年 『アイ、ロボット』
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