すばらしくてNICE CHOICE

暇な時に、
本・音楽・漫画・映画の
勝手な感想を書いていきます。
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2021.02.10 Wednesday | - | - | -
野中柊『マルシェ・アンジュール』

読了。
☆☆/5点中

*************************
24時間営業の高級スーパーマーケット「マルシェ・アンジュール」。
店を巡り描かれる人間模様を描いた短篇集。
*************************

「初恋」「予感」「記憶」「距離」「星座」「聖夜」の6篇。
最後の「聖夜」以外は「マルシェ・アンジュール」自体はちょい役で、
ところどころに出てくる程度。

片手間とまでは言わないけれど、手癖で書かれた短篇が並んでいる印象。
悪くはないけれど、決して悪くはないんだけど、
プリズム』のような傑作を期待してしまうので裏切られる。
飛行機の座席に置いてある冊子に載っている軽めの読みやすい物語のよう。

ボーイ・ミーツ・ガールものには弱いので、「予感」が良かった。
「聖夜」には少女漫画の趣があって、それが野中柊の良さでもあるのだろうけれど、
ちょっと予定調和で、やはり『プリズム』のような読んでいて身が切れるような気分になる、
物語を読みたいなと思う。


「星座」で登場のカクテル・アドニス(Adonis)

ドライ・シェリー    45ml
スイート・ベルモット 15ml
オレンジ・ビターズ  1dash

ステアして、カクテルグラスへ。
ベルモットをスイートからドライに変え、シェリー40ml、ベルモット20mlにすると、横浜生まれのカクテル・バンブー(Bamboo)に。
2007.10.31 Wednesday 23:59 | | comments(0) | trackbacks(0)
NITRO MICROPHONE UNDERGROUND『NITRO MICROPHONE UNDERGROUND』

2000年10月7日リリースのファーストアルバム。

確かこの年の夏に日本語ラップを聴き始めて、完全にはまったのがこのアルバム。
飽きずにこのジャンルを聴き続けているのは、このファーストアルバムがあったからだと思う。

今でも覚えている。
渋谷HMVで、1曲目の「NITRO MICROPHONE UNDERGROUND」を聴いたときの衝撃。
"HeyYo!MICROPHONEから調子はどうだ / いくぜ百戦錬磨のFLOWが"
有無を言わせないフックとシンプルだけど体が揺らすトラック。

それまでに聴いていた『リスペクト』は駄洒落の一歩手前だなと感じていたし、
『STILLING, STILL DREAMING』は長らく聴いてたタイプのロックと同じで重すぎた。
アーティストの生い立ちや思想、もろもろの引きずっていることよりも、
もっと音楽を気楽に楽しみたいと考え、いろいろ捜していた頃で、
この音はまさに私の心に"ドンピンシャン"だった。
DABOのヴァースにあるように、ニトロのリリック・音には"あって無いようなもんさ目的は"、
といった具合に、ラップにメッセージなんてものはなくて、
ただラップすることを楽しんでいるのが伝わってきて、それが良かったのだ。
8人の軽快でスムーズかつノリのいい音は最高に面白かった。
今聴いてももちろん良いけれど。

分かりやすいうまさでいえば、DABOは8人の中でもダントツのラップ巧者で、
M2「BAMBU」のあざやかなホストっぷりを聴いてもよく分かる。
SUIKENのハチャメチャな日本語の使い方は、最近になってネットでリリックを見つけて、
ああ、こんなこと言っていたのかと今になって理解できたりして、楽しい。
S-WORDの声のかっこよさ。
"おいおいおい かなり面倒臭えな"で始まるM3「MISCHIEF」のヴァースなんてホントいい。
MACKA-CHINのすっとぼけたラップもまた味わいだけど、時々、
"愛し合うのは順番待ち 二人乗り込むボート"と詩情溢れるリリックがあったりして、
それもまた他の7人と違うところで、いいんだよなぁ。
GORE-TEXは歌詞カードがないので、さっぱり意味が分からないラップで勢いだけはあって、
それが8人の中に入るとちょうどいいアクセントになる。
DELIの甲高い声は聞き分けやすくてとても良かった。
M10「JUS' PLAYIN'」でのXBSもたまらない。
XBSを引き立たせるためのトラック。
彼自身のソロ作でもここまでの曲はなかった。
それと、XBSに繋げるところのDABOのかっこよさもまた。

ニトロはトラックの明るさも含めて、リリックに暗さがないのがいい。
M6「ASAMA131」に代表される、明るいエロ要素も魅力だ。
"出発進行ASAMAで発射 / 発射! 発射! どぴゅっと発射!"
ついつい口ずさんでしまう。
スキットも楽しいし。
コミカルであることを怖れていない姿勢も長所だと思う。

トラックといえば、DJ WATARAI。
M1もそうだけれど、M8「REQUIEM」のシンプルなんだけど、腰にグイグイくるグルーヴ。
これらの曲を聴いて私の中で、DJ WATARAIの名前は一種のブランドになった。
M8はラップはたいしたことないのに、いい曲と思わせてしまうのはトラックのなせる技だ。


これまで日本語ラップのアルバムを色々聴いてきたけれど、
こんなにマイクリレーを楽しめたアルバムはない。
まあでも、最初から完璧な曲(特にM1)を出してしまったが故に、
期待値が高く、自分たちでもそれを越せずにいる現状なんだろうけれど。


1.NITRO MICROPHONE UNDERGROUND
  lyric:GORE-TEX、DELI、BIGZAM、XBS、SUIKEN、DABO、MACKA-CHIN、
  S-WORD / music:DJ WATARAI
2.BAMBU
  lyric:DABO、GORE-REX、S-WORD、MACKA-CHIN /
  music:Mr.ITAGAKI a.k.aITA-CHO
3.MISCHIEF
  lyric:DELI、SUIKEN、GORE-TEX、S-WORD / music:YAKKO
4.3 ON THREE (三銃SH*T)
  lyric:DABO、SUIKEN、S-WORD / music:D.O.I
5.PYRAMID
  music:MUNEO 045
6.ASAMA131
  lyric:MACKA-CHIN、XBS、BIGZAM、SUIKEN、S-WORD / music:MUNEO 045
7.となりのお姉さんが…
  music:DJ WATARAI
8.REQUIEM
  lyric:S-WORD、MACKA-CHIN、GORE-TEX、SUIKEN / music:DJ WATARAI
9.S.K.I.T.
  music:MACKA-CHIN
10.JUS' PLAYIN'
  lyric:DABO、XBS / music:DJ HAZIME
11.INFINITY
  music:AQUARIUS
12.HARDCORE
  lyric:MACKA-CHIN、XBS、GORE-TEX、DELI / music:DELI
13.UNSTOPPABLE (LIVE AT 江戸城ホール)
  lyric:DELI、GORE-TEX、XBS、DABO / music:DJ VIBLAM & GORE-TEX
14. ピコピコポン
  music:スリジャワラルダナプラ, テコ(?)
15. クチずさんでごらんよ
  lyric:XBS、SUIKEN、GORE-TEX、DELI、DABO / music:MACKA-CHIN
16. NICE DREAM
  music:GORE-TEX
17. ボクも
  lyric:MACKA-CHIN、GORE-TEX / music:GORE-TEX & MACKA-CHIN
18. SKIT
  music:DJ HAZIME
19. 45 FINGAZ OF DEATH
  lyric:DELI、GORE-TEX、BIGZAM、SUIKEN、DABO、XBS、S-WORD、
  MACKA-CHIN / music:DJ HAZIME
20. さきっちょだけですけれども
  music:MACKA-CHIN
【SECRET TRACK:3分間の無音後にスタート】
   LIVE '99
  lyric:DELI、SUIKEN、DABO、MACKA-CHIN、GORE-TEX、XBS、S-WORD /
  music:DJ VIBLAM


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1999.11.05 1st SG『NITRO WORKS』
2000.10.07 1st AL『NITRO MICROPHONE UNDERGROUND』
2003.02.26 2nd SG『NITRICH / SPARK DA L』(新星堂数量限定)
2004.01.01 1st mini ALUPRISING
2004.08.25 2nd ALSTRAIGHT FROM THE UNDERGROUND
2006.04.07 未発表音源集『unreleased』(タワーレコード数量限定)
2007.05.30 3rd SG『SPECIAL FORCE』(web配信限定)
2007.09.19 4th SG『The Chronicle』(+DVD)(数量限定)
2007.11.07 3rd ALSPECIAL FORCE
2008.12.31 2nd mini ALBACK AGAIN
2009.08.05 best AL『NITRO X 99-09
2011.01.01 4th ALTHE LABORATORY
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2007.10.31 Wednesday 23:59 | 音楽 | comments(9) | trackbacks(0)
チャットモンチー『生命力』

2007年10月24日リリースのセカンドアルバム。

まだ売れていない頃に、某音楽思想雑誌が大々的に取り上げていて、
いよいよレコード会社と手を組んで商売を始めたのか、凋落の一途だなと思ったものだけど、
徐々に一般的な評価も高くなり、レミオロメンの時のように先見の明のなせる技だったのか、
と思い直し、ようやくセカンドアルバムを手に取ってみた。

M2「Make Up! Make Up!」でオッとなって、M3「シャングリラ」でオオッとなった。
メロディーラインがいい。
工夫を凝らしたアレンジも楽しく、誰の音が鳴っているのか分かりやすいのもいい。
演奏技術が特別うまいわけではないけれど、下手な小細工をしてないのも好ましい。
ホッと安心する歌声にサウンド。

秋の柔らかい日差しの下で午睡を楽しむ猫の毛並みのようなメロディー。
聴かず嫌いはいけない。
ファーストアルバムも聴いてみようと思った。


【追記】2008.07.03
2000年結成。当初6人組バンドだったが、ギターボーカルの橋本絵莉子だけが残る。2002年、ベースの福岡晃子が加入。2004年、サポートメンバーだったドラムの高橋久美子が正式加入し、3ピースバンドに。


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2005.11.23 1st mini AL『chatmonchy has come』
2006.03.01 1st SG『恋の煙」
2006.06.07 2nd SG『恋愛スピリッツ」
2006.07.05 1st AL『耳鳴り』
2006.11.15 3rd SG『シャングリラ」
2007.04.18 4th SG『女子たちに明日はない」
2007.06.20 5th SG『とび魚のバタフライ / 世界が終わる夜に」
2007.09.05 6th SG『橙」
2007.10.24 2nd AL『生命力』
2008.02.27 7th SG『ヒラヒラヒラク秘密ノ扉』
2008.06.25 8th SG『風吹けば恋』
2008.11.05 9th SG『染まるよ』
2009.02.04 10th SG『Last Love Letter』
2009.03.04 3rd AL告白
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2007.10.30 Tuesday 23:59 | 音楽 | comments(0) | trackbacks(0)
野中柊『ヨモギ・アイス』

読了。
☆☆/5点中

「ヨモギ・アイス」は第10回海燕新人文学賞受賞作品。
「アンダーソン家のヨメ」は第107回芥川賞候補作品。

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愛するジミーとアメリカで新婚生活を始めたヨモギ。
仕事も家事もせず暮らす若い日本人妻に、世間の風当たりは強いけれど・・・。
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デビュー作でもある短篇「ヨモギ・アイス」と中篇「アンダーソン家のヨメ」の2篇を収録。

どちらも米国人と結婚し、アメリカで暮らす日本人が描かれている。
意識的、無意識的に投げかけられる差別に真っ向からぶつかったり、うまくかわしたりしながら、
どうにか愛する夫と暮らしていく物語。
差別とはいっても、カルチャーギャップのようなもので、「排斥」とまではいかないので、
ある程度楽しみながら読める。アメリカ人って単純だよね、とか思いながら。

「ヨモギ・アイス」は短すぎて微妙だけど、「アンダーソン家のヨメ」は良かった。
福武書店版に大幅な加筆修正が加えられたらしい。
そっちのバージョンは未読なので、差異は分からず。

「アンダーソン家のヨメ」で顕著だけど、現在の著者の文体とは大きく違って、
一文が長く(1ページ半ぐらい句点がなかったり)、ああ、文学と思うところが多々ある。
でも、スラスラと読める文章であることは今と変わらないかな。
それと、視点がめまぐるしく変わるので慣れるのが大変だった。
まあ、しかし物語としては健気なヨメ(日本人)とそれを見つめる旦那(米国人)、
その心の内では意外に冷めていたりといった描写が面白く、楽しく読めた。

「アンダーソン家のヨメ」を読んでから、「ヨモギ・アイス」に行った方が楽しめるかも。
2007.10.30 Tuesday 23:59 | | comments(0) | trackbacks(0)
東京事変『娯楽(バラエティ)』

2007年9月26日リリースのサードアルバム。

東京事変の音はこれまでさらっと1、2回聴いたぐらいで、
けっこう骨太なロックをやっているなという印象があった。
今回のニューアルバムの新しい試みは、椎名林檎が作曲せず、バンドのボーカリストとして、
作品作りに関わるというものらしい。

ギターの浮雲が7曲、キーボードの伊澤一葉が5曲、ベースの亀田誠治が1曲を作曲。

グッドメロディなM4「私生活」に、刺激的な音に満ちたM5「OSCA」、
椎名林檎以外のボーカルが新鮮なM8「某都民」、音楽の授業で歌われてもおかしくない、
歌心のあるメロディがいい感じのM9「SSAW」、和な曲調がアクセントのM11「酒と下戸」。
小気味のいい演奏がたまらないM12「キラーチューン」。

バックの演奏陣の腕は確かで、緩急のつけ方、隙間の作り方、それぞれの音の見せ方、
どれをとってもプロの仕事で素晴らしい。
飽きることがない。
椎名林檎も様々な何とか風の曲調でも無難にこなし、安心して聴ける。

でも、やっぱり物足りないのは、椎名林檎のプロジェクトなのに・・・というところに行き着く。
ないものねだりのファン心理。
いつか壊れそうなテンションや張り裂けそうな叫び、なのに思わず歌いたくなるメロディ。
そんな魅力に満ちた『無罪モラトリアム』や『勝訴ストリップ』をいつまでも期待してしまう。


1.ランプ (作曲:浮雲)
2.ミラーボール (作曲:浮雲)
3.金魚の箱 (作曲:伊澤一葉)
4.私生活 (作曲:亀田誠治)
5.OSCA (作曲:浮雲)
6.黒猫道 (作曲:伊澤一葉)
7.復讐 (作曲:浮雲)
8.某都民 (作曲:浮雲)
9.SSAW (作曲:伊澤一葉)
10.月極姫 (作曲:浮雲)
11.酒と下戸 (作曲:伊澤一葉)
12.キラーチューン (作曲:伊澤一葉)
13.メトロ (作曲:浮雲)
【作詞は椎名林檎。但し、M2、5、13は浮雲、M3は伊澤一葉】
2007.10.29 Monday 23:59 | 音楽 | comments(0) | trackbacks(0)
SUIKA@代々木公園

ちょうど1年前の今日、同じ代々木公園で行われたエコなイベント「アースガーデン」で、
SUIKAを初めて見たのだ。
CDでは長く聴いていたグループだけど、生でも素敵で一層ファンになった。

1年ぶりのアースガーデン。
そこら中で人参を食べ歩きしている人たちが見られるイベント。
食べていない人でもよく見てみれば、カバンからワッサワッサと飛び出ているのは人参の葉だ。
体によろしいらしい何とかご飯もいろいろ売っているが、たいていまずい。
ハートランドを野外で飲めるのが良かったぐらい。

さてさて、すいかの演奏は陽が少し傾き始めた15時12分スタート。
totoのお腹がぽっこり膨らんでいた。
7ヶ月だとか。

「JETSET」〜「すいか」の流れは去年と同じだけど、バンドとしての一体感は全く違う。
前日の土曜日もライブがあったおかげだろうか。
ATOMの声の張り、totoの声の柔らかさが最高に素晴らしい。
ウーリッツアー、ウッドベース、パーカッション、ふたりの声。
それだけなのに「JETSET」では一気にすいかの宇宙に持っていかれた。
「すいか」では自然と体が動き出す楽しいグルーヴ。
"スイカのルールはノールール"
思わず一緒に口ずさんでしまうフレーズ。

3曲目はなんと新曲!
その名も「ピクニック」。
3MCの掛け合いが愉快なアップテンポな曲。

"ピクニックピクニック ホリデイライフ
 ウォーキンウォーキン サニーサイドサニーサイド"
語尾が上がる"サニーサイド"のところがキュート。

途中でヨガマスター・アトムによる簡単なヨガ体操を実践。
難易度が高いのはできなかったけれど。
この曲は早くCDで聴きたい。
メンバーの仲の良さが伝ってくるような、すいからしい1曲だった。

次は大好きな「うさぎのチャイ屋」。
totoの"藪から棒に"の直前のタカツキの間が微妙だった気もするけれど、この曲もいい。
コインサイド』版と違って、アトムがまずいチャイ屋で無茶するリリックが良すぎる。
今回のライブでは比較的タカツキが大人しかった印象があるけれど、
ここでははっちゃけぶりというか暴走ぶりというか、声を張り上げて盛り上げていた。
思いっきりテンションが上がる。

"俺が太鼓を叩くために作った曲"とタケウチカズタケが叫んで始まったのは、
「マッシュルーム マスマティック」。
ベンチを独り占めにして寝ていた人の耳元でタケウチカズタケが太鼓を連打。
大盛り上がり。

次も新曲で「つづれおり」。
"つづれおり 耐えることもなく どこまでも手を繋ぐ重なる物語
 つづれおり 例え離れても どこまでもひとつずつ重なる物語"
というコーラスで始まるメロウな曲。
アトム→toto→タカツキとまっすぐでポジティブな言葉が綴られる。
アトムのヴァースが特に良かった。
totoの声もやっぱりいい。
ミニアルバムぐらいの長さで、あの声だけが詰まった作品を聴いてみたくなる。

最後の曲も新曲。
フックで、"大きな大きな音で手を鳴らせ"と歌われる、SMRYTRPS後期のような曲。
4月にリリースされるというニューアルバムは明るくポジティブな曲が多めな作品になるのかな。

15時55分終了。

台風一過で、空は思いっきり秋晴れ。
そんな気持ちの良い日曜日の午後に、上質で、愉快で、快活で、伸びやかで、
心から笑える音を浴びることができた。
しかもただ。
本当にありがとうございますです。


1.JETSET
2.すいか
3.ピクニック
4.うさぎのチャイ屋
5.マッシュルーム マスマティック
6.つづれおり
7.手をならせ
2007.10.28 Sunday 23:59 | 音楽 | comments(0) | trackbacks(0)
ブレイブ ワン / The Brave One

98点/100点満点中

ジョディ・フォスター主演、ニール・ジョーダン監督による2007年公開作品。

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最愛の恋人を目の前で殺されたエリカが、自分の身を守るために拳銃を手に入れたのを機に、
処刑人のように悪人たちを倒しながら葛藤に揺れる姿とその顛末を描く。
************************************

理不尽な暴行により最愛の恋人を亡くし、一方で警察の調査は進まず、ふと手にした拳銃。
その圧倒的な攻撃力を身に纏うことで、エリカは生活を前に進めていく勇気をもらう。
ここまではいい。
小さい頃にモデルガンで戦争ごっこをした時に、似たような気持ちを味わったことがある。
銃には「力」がある。本物を持ったことがなくてもそれは想像できる。
やがて、エリカは銃で悪人を殺していく。
一度目はほぼ正当防衛、二度目はやや正当防衛、三度目は自ら危険に飛び込み、
四度目は明白に処刑目的で殺す。
ラスト、自分と恋人を襲った犯人グループを見つけたエリカは一人一人鉛玉を打ち込んでいく。
事件を追っていたマーサー刑事もまた隠蔽工作に手を貸してしまう。

エリカは何度か自分のしてしまったことの過ちの大きさに気づき、改心する場面もあるが、
結局は非情な瞳で相手を睨みつけ、弾丸を的確に相手の体に埋め込んでいく。
「復讐のためだけに銃を使うこと」と「社会正義というお題目のために銃を使うこと」が、
ごっちゃになってしまっているので、断罪するのが難しい。

復讐という激情に駆られ、犯人を撃ち殺す気持ちは分からなくもない。
実際に自分がその立場に立たされた時に同じように報復を図るかもしれない。

しかし、前半の4つの殺人が問題だ。
"許せますか、彼女の“選択”"という映画のキャッチコピーはここにかかってくる。
脚を投げ出して安穏と暗闇で映画を見ている身だからかもしれないが、
法や道徳の下で生きている現代社会において、許されないことだと断言できる。
嫌悪感すら抱く。
銃の使用を正当化し過ぎている映画に思えてならなかった。
タイトルからして『勇敢なる者』だ。
法を犯してでも私的制裁のために銃を使う。
それを肯定しているタイトルにしか思えない。

ラストの復讐シーンで、法を遵守するはずの刑事がエリカの行動を見逃した点も疑問だ。
自分はひどい暴行を受け重傷、恋人は殺された。その報復に相手を殺す。
その時点で同じ罪人ではないのか。法の番人であるはずの警察がそれを見逃す。
タイトルは『勇敢なる者』。

全く関係ないのだろうけれど、見ながらふと思ったのは、エリカはイスラエルで、
悪人がアラブ諸国、マーサー刑事が米国(世界の警察)なのかな、ということだった。
アラブ諸国から攻撃されたイスラエルは、独立を死守するため対立し四度の中東戦争があり、
米国はイスラエルを支援し、核保有さえ認めてきた。

戯れ言はさておき、社会派女優でもある聡明なジョディ・フォスターが製作も務めた作品で、
銃社会礼賛とはとてもではないが思えない。(実際の意見は知らないけれど)
見終わった後にかなりの違和感、嫌悪感を覚えることで、
その意味について考えて欲しいということなんだろうとは思う。
ただそれはタイトルか何かで伝えて欲しかった。


一緒に見ていた同居人は全然面白くない。とても嫌な映画だともらしていた。
確かにその通りだと思う。後味の悪い映画だ。
だけど、映画としては大変素晴らしい。
ブラボーだ。
感情的には許せなかったり、嫌悪の情を抱いても、俳優の演技力、ドラマは文句なし。
何よりジョディ・フォスターが復活!
『フライト・プラン』で株を落としたが、これで急上昇。V字回復もの。
暴行を受け、結婚直前の恋人を失い、失意のどん底を味わうも、そこから這い上がり、
銃を手にし、徐々に自信を回復していく、その演技は本当に本当に良かった。
唇や目元の小じわがあったり、こめかみの辺りにうっすら浮かぶシミが見えたりして、
アップになると老けたなと分かる。
でもそれがかっこいいのだ。年齢をそのまま見せられる自信がいい。
まったくセクシーさを感じさせない薄い唇がなんともストイック。
ジョディ・フォスターだからこそ、可能になった作品だと思う。
道徳的に許されない犯罪行為をやってのけるエリカに、(反発しながらも)見るものに共感や
必然性、リアリティを感じさせるのはジョディ・フォスターの演技力があったからだ。

それと、きっちりとした絵で撮り続けたニール・ジョーダン監督も良かった。
『クライング・ゲーム』しか見たことがなかったけれど、もっと見てみたい。
もし、これをクリント・イーストウッド、あるいはポール・ハギスが監督したらどうなるのか。
考えただけでもワクワクするし、見てみたいなぁと思ってしまった。


オープニングで、エリカが引用するエロイーズという女の子は、
1955年から刊行が始まったケイ・トンプソン著による絵本『エロイーズ(ELOISE)』シリーズの主人公。
5番街にあるプラザ・ホテルの最上階の部屋に、英国人ナニーと猫みたいな顔した犬ウィニー、カメのスキッパーディーと暮らしている6歳の女の子のお話。
日本版は井上荒野による訳。



【追記】2007.11.03
朝日新聞夕刊(11月2日)で、深津純子という人の批評が掲載されていた。
面白い見方だったので、一部を抜粋する。

"終幕の展開も唐突感が残る。神の目線で撮られた彼女の退場シーン、「勇敢なる者」という題名とは裏腹の情けない姿に、作り手の伝えようとしたものを見るのはうがちすぎだろうか。"


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<ニール・ジョーダン監督作品>
1982年 殺人天使【監督/脚本】
1984年 狼の血族【監督/脚本】
1986年 モナリザ【監督/脚本】
1988年 プランケット城への招待状【監督/脚本】
1989年 俺たちは天使じゃない
1990年 スターダスト【監督/脚本】
1992年 クライング・ゲーム【監督/脚本】
1994年 インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア【監督/脚本】
1996年 マイケル・コリンズ【監督/脚本】
1998年 IN DREAMS / 殺意の森【監督/脚本】
1998年 ブッチャー・ボーイ【監督/脚本】
1999年 ことの終わり【監督/脚本】
2002年 ギャンブル・プレイ【監督/脚本】
2005年 プルートで朝食を【監督/脚本】
2007年 ブレイブ ワン
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2007.10.28 Sunday 23:59 | 映画 | comments(2) | trackbacks(1)
野中柊『その向こう側』

読了。
☆☆/5点中

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母子家庭で育った鈴子。母が長年の恋人だった敏史と結婚することに。
恋人もいる鈴子だけど、なぜか胸がざわついてしまう。
思いつきで、東京の実家を出た鈴子は横浜の古い洋館に部屋を借りて暮し始めた。
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主人公・鈴子は最後まで何もしない。
"その向こう側"を読者に見せてくれるのは、鈴子の友人だったり、母だったり、
父になる敏史、鈴子が住むことになる洋館のオーナーたちだ。

すねたり甘えたりのんびりしたりという、まさに"猫になりた"を地でいくような生活が描かれる。
夏休みの間がメインなせいか、大島弓子の『毎日が夏休み』をちょっと思い出した。
そう、少女漫画っぽい感じがする。

読みやすい文章はすらすら目を倍速で動かすこともできるし、
逆にじっくりゆっくりまったり作品世界に浸りながら、端麗な文章を味わうこともできる。

もっと山あり谷ありの物語を期待していただけに、残念。
2007.10.28 Sunday 23:59 | | comments(0) | trackbacks(0)
垣根涼介『真夏の島に咲く花は』

読了。
☆☆/5点中

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クーデターで起きた南海のフィジーを舞台に、日本から両親と移住してきた良昭、
ガソリンスタンドで働く生粋のフィジー人・チョネ、父の土産物屋を手伝うインド人・サティー、
ワーキング・ビザで来ている茜(アコ)という人種の違う4人の若者が見つけたものとは。
***********************************

最後まで著者が何を描きたくて、この作品を書いたのか分からないままだった。

同じ日本に国籍を持つという意味では、アコに感情移入しやすい。
彼女がフィジーに来たのは、フィジーにこそ"妙に自分としっくりとくる感覚"を感じ、
また"今までの人生で知らなかったものが、絶対にある"という確信のもとにやって来る。
でも、"この国で見たかったものだと思う"と、ラストでアコが指すものにカタルシスはない。
取って付けたようなオチにしか思えなかった。

著者のこれまでの作品は、海外から日本にやって来た人々を主人公にすることが多いが、
逆にしてみたらどうだろうという発想のもとで、日本人が南の島に行った設定にしたのだろうか。
華僑の人々やかつて植民地支配をしていた英国人なども出てきて、
日本人の気質があぶり出されるシーンもあるけれど、それだけではぬるい。

4人の男女による青春群像劇というには、中途半端で特にぶつかり合うわけでもなく、
ドラマが少ない。いや、少ないというより、避けている。

まさか、フィジーの実態を描きたかったわけでもあるまい。
でも、主人公はフィジーという国家、あるいは国民のような感じもしてくるけれど。

一気に読ませる文章力がありながら、視点が4人の若者の中で順繰りに入れ替わるため、
定まらず、妙に落ち着きのない作品になっている。


幻といわれるフィジーの国花タンギモウジア(Tagimaucia)。
タベウニ島のほぼ中央、標高823mにあるタンギモウジア湖の周りに、9月の終わりから12月の終わりにかけて、小さな鐘型をした赤い花びらをもち、中心部が真っ白な花が咲く。
2007.10.26 Friday 23:59 | | comments(0) | trackbacks(0)
SEEDA『街風』

2007年10月17日リリースの4枚目のアルバム。

素晴らしいと感じた作品には賞賛の言葉が溢れるし、かたやあまりに酷すぎるものには、
罵倒の言葉が切れ目なく続いてしまう(昨日のZEEBRAのアルバム)ものだけど、
このSEEDAの作品は繰り返し繰り返し丹念に聴いてきたけれど、あまり言葉が出てこない。
どうしてだろう。
以前に比べ内容が聴き取れるし、何よりM10「AROUND MY WAY」やM16「MUSIC」では、
街の匂いやヒップホップへの確信が如実に感じられ、とても良いと思えた。
ILL BOSSTINOとのM3「MIC STORY」での真摯なスタンスはかっこいいとすら思う。
けれど、多分この先何度もリピートする作品ではないな、とも感じている。
初めてライブを見たときのような悪い印象はもうないけれど、
自分の自由にできる時間にわざわざ流すことはないだろうな。

発売前から話題だったM3「MIC STORY」は、最悪な出来も想像していたけれど、
思ったよりもふたりのラップがひとつになっていて安心した。
DJ WATARAIのトラックも悪くなかった。
下降線を描くキーボードの音色が、最近聞き返していたTM NETWORKを彷彿とさせて、
少し懐かしい(アルバムでいえば『CAROL』の頃か)。
イントロの語りを聴くと、気恥ずかしさの方が先立つが、
ボスはこのアニキぃキャラ路線でずっと行く気なのか。
CDではあまり気にならなかったが、ライブでは結構顕著で若干引いてしまったほどで、
かっこいいとは思えない。
ふたりのラップはどちらもいいと思う。
ボスに影響されたのか、熱い想いを内に秘め淡々とラップするシーダが特に良かった。

M4「ガリガリボーイズ」は四街道NATUREが客演。
KAZのラップがいいなぁ。昔よりもいいのでは。
このLBなフロウってやっぱ安心して聴ける。
なぜか「ゲームボーイズ」を久し振りに聴きたくなった。

M5「煙玉」のトラックはTHE ULTRA★MENのSTARWAX。
M13「山手通り」やM14「WE BE SMOOTH」も手掛けていて、どれも良かった。
まあM5は狙いすぎている感がものすごくするけれど。
トラックでいえば他には、VAXIMによるM4もいいし、
ジブラのニューアルバムで良品が多かったFOCISがこの作品でも、
M10「AROUND MY WAY」とM12「迷いの森」の2曲で参加していて、
どれも期待通りの良さがあった。
FOCISは音の抜け方やループの響きが好みでかなり気になる。

もう1曲、共演することでどんな化学変化があるのかと楽しみにしていたのは、
KREVAが参加したM11「TECHNIC」。
いきなりメジャーなトラックが流れてびっくらこいたけれど、
リリックを聴かせるシーダのフロウはいいし、何よりこの音を乗りこなしている。
自身のアルバムに入れてもいいほどのクオリティがあるトラックを提供したクレバの真意は、
日本語ラップを盛り上げるためにもメジャーにあげってきてくれってことなのか。
ただ、韻踏合組合たちとやっていたような、ラップが際立つシンプルなトラックで聴きたかった。

M14「WE BE SMOOTH」。
言葉のビートへの乗せ方が非常に気持ちいいL-VOKALのラップと、
lunaの、いわゆるディーバのようなこぶしの効いた歌声とは違い、
透明感のある伸びやかな声のおかげで、客演曲の中では気に入っている。
けれど、意図的ではあるのだろうが、リズムとの兼ね合いが悪いシーダのフロウは疑問。


ベテランと若い手の有望株がアルバムを同時リリースしたことではっきりしたのは、
ジブラが演じる"ロマン"でもシーダの語るリアルでもない、
その中間の言葉・スタンスを聴きたいってことだった。
そんな結論もどうかと自分でも思うが、どちらも乗れないのだからしょうがない。


1.INTRO (produced by Sac)
2.FLIP DAT (produced by BACH LOGIC)
3.MIC STORY feat. ILL BOSSTINO (produced by DJ WATARAI)
4.ガリガリボーイズ feat. 四街道ネイチャー (produced by VAXIM)
5.煙玉 (produced by STARWAX)
6.LOVE & HATE feat. BES & SMIF-N-WESSUN (produced by B-MONEY)
7.BAD TRIPY feat. BAY4K & OKI (produced by BACH LOGIC)
8.DICK RIDER (produced by I-DeA)
9.NO PAIN, NO GAIN feat. D.O (produced by :JASHWON & TKC)
10.AROUND MY WAY (produced by FOCIS)
11.TECHNIC feat. KREVA (produced by KREVA)
12.迷いの森 feat. K.N.Z (produced by FOCIS)
13.山手通り feat. 仙人掌 (produced by STARWAX)
14.WE BE SMOOTH feat. L-VOKAL & luna (produced by STARWAX)
15.街風 feat. GANGSTA TAKA, STICKY, NORIKIYO & 4WD (produced by BACH LOGIC)
16.MUSIC (produced by I-DeA)
ボーナストラック
17.また不定職者 feat. BES & 漢 (produced by BATH LOGIC)

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1999.09.10 1st mini AL『DETONATOR』
2003.08.10 1st AL『Flash Sounds Presents Ill Vibe』
2005.08.19 2nd AL『Green』
2005.10.30 【DJ ISSO】mix AL『SEEDA's 27 SEEDS』
2006.02.20 【SEEDA And DJ ISSO】mix AL『CONCRETE GREEN.1』
2006.07.10 【SEEDA And DJ ISSO】mix AL『CONCRETE GREEN 2』
2006.10.10 【SEEDA And DJ ISSO】mix AL『CONCRETE GREEN 3』
2007.02.10 【SEEDA And DJ ISSO】mix AL『CONCRETE GREEN 4』
2007.04.20 【SEEDA And DJ ISSO】mix AL『CONCRETE GREEN 5』
2006.12.23 3rd AL『花と雨』
2007.07.17 【16FLIP vs SEEDA】remix AL『ROOTS & BUDS』
2007.10.17 4th AL『街風』
2008.01.30 5th ALHEAVEN
2009.05.20 6th ALSEEDA
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2007.10.26 Friday 23:59 | 音楽 | comments(13) | trackbacks(0)
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