93点/100点満点中
ポール・ハギス監督の最新作。2008年公開作品。
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2004年11月1日、元軍警察のハンク・ディアフィールドのもとに、イラクから帰還したばかりの息子・マイクが行方不明だとの連絡が入る。無断離隊などあり得ないと確信するハンクは、息子の行方を捜すため基地のあるフォート・ラッドへ向かう。女性刑事エミリー・サンダースの協力を得て、捜索するハンクだったが・・・。
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父親役のハンクにトミー・リー・ジョーンズ、シングルマザーの女刑事がシャーリーズ・セロン、息子をふたりも軍で失い悲しみにくれる母親をスーザン・サランドンが演じる。脚本はもちろんポール・ハギス。撮影はコーエン兄弟作品でお馴染みのロジャー・ディーキンス。
地味といえば確かに華やかさはないけれど、うまい俳優が最高の脚本をもとに完璧な演技をし、それを上質なカメラワークで切り取った作品。ポール・ハギスは裏切らない。
去年ぐらいから公開され始めたイラク戦争への反省ものではある。ベトナム戦争後もこの手の作品は何本も作られたし、自然な流れではあるのだろうけれど、ここから何も学ばないアメリカは一体と思ってしまう。おそらく30年後にもまたどこか他国に攻め入って、同じ失敗、同じ教訓映画を撮るのだろう。
そんな冷ややかな目で見ていても、トミー・リー・ジョーンズの名演に次第に引き込まれていく。Tシャツがまだ肌着で、人前で着るものではなかった頃に育った人間を細かいディテールをいくつも挟み込み、丁寧に演じるので、ハンクという役に厚みが生まれ、見る側は彼と次第に同化していく。だからこそ、息子の無惨な死には強く憤り、その真相を知っても、加害者に怒りをぶつけられない現実まで分かってしまう。
自身のベトナムでの体験を顧みて、あの地で学んだ地獄を後世に伝えなかった後悔が、最後のシーンに繋がるのだろう。アメリカが「世界の警察」という地位を捨てるべきだし、そこに居座るだけの力もないとい描くハリウッド映画はこれまで何本も見てきたけれど、ここまで弱っている米国というのは初めて見たように思う。結構衝撃だった。米国人はどういう思いで見たのだろうか。
【追記】2008.07.01
2008年6月27日の夕刊の映画コラム「プレミアシート キネマBOX」から引用。
"ラストのアメリカ国旗に、だれもがこう思うに違いない。ああ、この映画はもうひとつの「
父親たちの星条旗」なのだ、と。"
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シャーリーズ・セロン(Charlize Theron)
1975年、南アフリカ生まれ。父はフランス人、母はドイツ人。
2003年、『モンスター』でアカデミー賞主演女優賞ノミネート。
2004年、『モンスター』でベルリン国際映画祭銀熊賞(女優賞)受賞。
2005年、『スタンドアップ』でアカデミー賞主演女優賞ノミネート。
1996年 2 days トゥー・デイズ
1996年 すべてをあなたに
1997年 Mr.ダマー2 1/2
1997年 ハリウッド・コンフィデンシャル
1997年 ディアボロス/悪魔の扉
1998年 セレブリティ
1998年 マイティ・ジョー
1999年 サイダーハウス・ルール
1999年 ノイズ
2000年 裏切り者
2000年 ザ・ダイバー
2000年 バガー・ヴァンスの伝説
2000年 レインディア・ゲーム
2001年 スコルピオンの恋まじない
2001年 スウィート・ノベンバー
2001年 15ミニッツ
2002年 コール
2003年 モンスター
2003年 ミニミニ大作戦
2004年 トリコロールに燃えて
2004年 ライフ・イズ・コメディ! ピーター・セラーズの愛し方
2005年 イーオン・フラックス
2005年 スタンドアップ
2007年 告発のとき
2008年 ハンコック
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