すばらしくてNICE CHOICE

暇な時に、
本・音楽・漫画・映画の
勝手な感想を書いていきます。
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2021.02.10 Wednesday | - | - | -
ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト / Shine A Light

86点/100点満点中

マーティン・スコセッシ監督によるThe Rolling Stonesのライブムービー。2008年公開作品。

2006年に行われたストーンズのスタジアムツアー「A Bigger Bang Tour」の真っ直中、10月29日と11月1日の2日にわたってニューヨークは「Beacon Theater」という1927年に元々は映画館として建てられが、現在はコンサートホールとして使われることが多い、キャパ2800人の小さな会場にカメラ18台を駆使して撮影され、ストーンズの魅力を余すことなく伝える作品。

いやぁ、すごい。そのひと言につきる。彼ら4人は化け物だ。デビューしてから40年以上、必ずしもずっと一線で活躍していたわけではないけれど、アルバムはもちろんツアーに出れば必ず話題になるバンドである。これを見ればその理由がよく分かる。いまだに、六十を過ぎた男たちの奏でる音がかっこいいのだ。

花道を突進してくるミック・ジャガーはイグアナにしか見えなかったり、キース・リチャーズは妖怪、あるいはおばちゃん化しているし、チャーリー・ワッツはもう老亀だ。唯ロン・ウッドだけはしわは確かに深くなったが、昔より今の方が男前なのが不思議。

でも音が、あのリフがならされた瞬間、そんな容貌の変化なんてものはすっ飛び、生音でもないのに体が弾み、気づくと腕がギターを弾くキースの決めポーズを真似ている始末。新宿武蔵野館という音環境の悪い映画館で見たのだけど、それでもリフの切れ味の鋭さ、歳月を積み重ねても色褪せることのない動きの溌剌さ、歌いたくなるメロディ、踊りたくなるグルーヴは直に伝わってきた。微動だにせず見ている人が信じられなかった。六本木で公開していたのかは知らないが、外国人が多めの劇場だったらもっとハイテンションの場内になって面白かったんだろうと思う。絶対「Sympathy for the Devil」ではフッフーってやってたはず。

ロックンロール。この言葉を文字通り体現しているバンドだ。ロックしてロールする。黒人が作り出す(まあ、ベースのダリル・ジョーンズは黒人だしね。彼も長いな)のと同種の粘っこいグルーヴが渦を巻いているのだ。その混沌に秩序とさらなる歓喜を与えるべくミックが華麗なダンスで煽り、時に鋭い視線で会場を確認し、一方でキースはグルーヴのスープをこれでもかとかき混ぜる。

最高のロックバンドだ。ビートルズも好きだけど、やっぱり続けたもん勝ちなのかなと見終わった今は思う。いつまでも転がり続けていることに対し、どれだけ批判されようと、この120分間に映し出されていた彼らは、彼らの音には説得力があった。

ライブ映像だけではなく、この企画の立案から本番当日まで繰り広げられた監督とバンド(というよりもミック)との意見の衝突や、昔のニュースフィルムを引っ張ってきてストーンズの軸がぶれていないことを明らかにするというドキュメンタリー的な側面もある。ミックがセットリストを監督に渡さず、開始ギリギリにモニターの前に座るスコセッシの元に伝わるシーンなど演出もあるのだろうが、面白い。笑い転げた。巨匠とも称されるスコセッシを一スタッフのように扱えるのはストーンズぐらいでは。当日のリハーサルの段階でメンバーが演奏する曲を知らないというのもすごい話ではあるが。

見所は全て。3組のゲスト──Christina Aguileraが結構歌えていたのに驚いた。ブリちゃんだったら大変なことになっていただろう。The White StripesからJack White。そしてBuddy Guy──はそれぞれ違う持ち味でストーンズの多様な側面を引き出していた。なかでもバディ・ガイとのセッションはハイライトのひとつ。強烈な歌声を披露するバディ・ガイに、ブルースハープのミック、キース、ロニーがステージの中央で音で会話するジャムには震えが走った。

私はデッカ時代から1974年の『It's Only Rock'n Roll』までと、60年代70年代のストーンズがよみがえったかのような1994年の『Voodoo Lounge』しか聴いたことがないライトユーザーなので、70年代後半から80年代の楽曲はほとんど知らないのだけど、古い曲も多く演奏されて楽しめた。一番ぐらいに好きな『Sympathy for the Devil』はイントロに音源のように鋭角的なギターのフレーズがなかったことだけが残念。残念ついでに書けば、「Jumpin' Jack Flash」や「Paint It Black」、「Honky Tonk Women」もやったんなら『Some Girls』収録曲を少なくしていいから入れて欲しかった。


※映画内で演奏された曲リスト(ほとんどの楽曲は2日目の11月1日の映像らしい)
1.Jumpin' Jack Flash (『Through The Past, Darkly (Big Hits Vol.2)』1969)
2.Shattered (『Some Grils』1978)
3.She Was Hot (『Undercover』1983)
4.All Down the Line (『Exile On Main St.』1972)
5.Loving Cup (with Jack White) (『Exile On Main St.』1972)
6.As Tears Go By (『December's Children (And Everybody's)』1965)
7.Some Girls (『Some Grils』1978)
8.Just My Imagination (『Some Grils』1978)
9.Far Away Eyes (『Some Grils』1978)
10.Champagne & Reefer (with Buddy Guy) /Muddy Watersのカバー
11.Tumbling Dice (『Exile On Main St.』1972)
* Band introductions
12.You Got the Silver (lead vocal by Keith Richards) (『Let It Bleed』1969)
13.Connection (lead vocal by Keith Richards) (『Between The Buttons』1967)
14.Sympathy for the Devil (『Beggars Banquet』1968)
15.Live with Me (with Christina Aguilera) (『Let It Bleed』1969)
16.Start Me Up (『Tattoo You』1981)
17.Brown Sugar (『Sticky Fingers』1971)
18.(I Can't Get No) Satisfaction (『Out of Our Heads』1965)
19.Shine a Light (audio only) (『Exile On Main St.』1972)


※実際のセットリスト
<Sunday, October 29, 2006>
1.Start Me Up
2.Shattered
3.She Was Hot
4.All Down The Line
5.Loving Cup (with Jack White)
6.As Tears Go By
7.I'm Free
8.Undercover of the Night
9.Just My Imagination
10.Shine A Light
11.Champagne and Reefer (with Buddy Guy)
12.Tumbling Dice
13.You Got The Silver
14.Little T& A
15.Sympathy For The Devil
16.Live With Me (with Christina Aguilera)
17.Paint It Black
18.Jumpin' Jack Flash
アンコール
1.(I Can't Get No) Satisfaction

<Wenesday, November 1, 2006>
1.Jumpin' Jack Flash
2.Shattered
3.She Was Hot
4.All Down The Line
5.Loving Cup (with Jack White)
6.As Tears Go By
7.I'm Free
8.Some Girls
9.Just My Imagination
10.Far Away Eyes
11.Champagne & Reefer (with Buddy Guy)
12.Tumbling Dice
13.You Got The Silver
14.Connection
15.Sympathy For The Devil
16.Live With Me (with Christina Aguilera)
17.Honky Tonk Women
18.Start Me Up
アンコール
1.Brown Sugar
2.(I Can't Get No) Satisfaction
2009.01.31 Saturday 23:59 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
池永陽『ゆらゆら橋から』

読了。
☆☆/5点中

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健司の通う小学校に、東京から美しい先生が赴任してくることになった。昔の恋人を引きずる彼女に健司は心を奪われていき・・・。
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小学校、中学校、高校、大学生、就職した20代、30代、40代、50代と、主人公・佐竹健司が出会った恋を描く連作短編集。

昭和30年代にテレビが1台もない飛騨高山の村で暮らす小学生の主人公(著者とほぼ同じ年齢設定)は章ごとに少しずつ成長していくわけだけど、どの年代でも純情でまじめでという性格は変わらず、いくら田舎育ちだからというエクスキューズが付けられたとしても、こんな奴が実際にいるのかと思いながら読んだ。

文章がうまいので読み進めてしまうも、読み終えた後の印象としてはゲロチューは嫌だなということぐらい。あとダスティン・ホフマンの『卒業』がうまい感じに使われている。主人公の作中の思いに倣ってラストの続きを予測すれば、夫婦は再び一緒になったけれど、絶対にうまくいかないと思う。
2009.01.30 Friday 23:59 | | comments(0) | trackbacks(0)
片山恭一『世界の中心で、愛をさけぶ』

読了。
☆☆/5点中

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高校生の朔太郎は中学校からの同級生アキと付き合うことになるのだが・・・。
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清々しいまでの純愛と、愛する者を失う喪失感、そして長い年月をかけての受容の物語。大ヒットしたドラマも映画も見ていないので、具体的なストーリーを知らず、ただ白血病で女の子が死ぬお涙ちょうだいものだと思っていた。まあ、その通りではあるのだけど、朔太郎とアキの関係が小説の中に書かれている以上に深いものだったらしく、アキが死んで抜け殻となった朔太郎の描写が読み手の想像以上に長く、やや呆気にとられた。

青春物語としては、無人島の廃墟と化したホテルでひと晩を過ごす場面が、覚えたての言葉を使わせてもらえば「朝チュン(小説・漫画等で性行為を描く際、セックス描写を詳しくしないまま、行為があったという事実だけ伝えてシーンを切り替えることをいう/はてな参照)」で終わることに強い憤りを覚えた。あれはない。

でも、日頃読んでいる小説の影響で、あそこは絶対に大木が裏切り、無人島にアキを狙う柔道部の先輩がいて、あわや・・・となるはずと読みながら思っていた。

前日にドライブ感のある文体を持ち味とする佐藤賢一の小説を読んでいたために、最初は短い文章で淡泊な味わいだなと思ったり、高校生らしくない会話文に戸惑いを覚えたけれど、読み終えてみれば物足りないことは事実だけど、想像していたよりも悪くはなかった。


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片山恭一(かたやま きょういち)
1959年、愛媛県宇和島市生まれ。
      九州大学農学部卒。同大大学院博士課程(農業経済学)中退。
1986年、『気配』で文学界新人賞受賞。

1995.01 『きみの知らないところで世界は動く』(新潮社)
       →ポプラ社 →小学館文庫
1997.05 『ジョン・レノンを信じるな』(角川書店)
       →小学館文庫
2000.10 『DNAに負けない心』(新潮oh!文庫)
       →【改題】『考える元気──DNAに負けない心』(光文社文庫)
2001.04 『世界の中心で、愛をさけぶ』(小学館)
       →小学館文庫
2002.12 『満月の夜、モビイ・ディックが』(小学館)
       →小学館文庫
2003.03 『空のレンズ』(ポプラ社)
       →講談社文庫
2003.11 『もしも私が、そこにいるならば』(小学館)
       →小学館文庫
2004.04 『雨の日のイルカたちは』(文藝春秋)
       →文春文庫
2005.05 『最後に咲く花』(小学館)
       →小学館文庫
2006.07 『船泊まりまで』(小学館)
2007.06 『壊れた光、雲の影』(文藝春秋)
2008.06 『遠ざかる家』(小学館)
2008.11 『宇宙を孕む風』(光文社)
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2009.01.29 Thursday 23:59 | | comments(0) | trackbacks(0)
SUIKA&レイト@渋谷O-NEST
CINRA主催の無料イベント「exPoP!!!!! volume.22」に行ってきた。主催者のCINRAというのがいまだになんのことか分からないのだけど、ともかく今年最初のSUIKAを拝めるというので、いちもにもなく申し込んだら、スイカはトリだという。じゃあギリギリに行けばいいかなと思っていたところに、トップバッターでレイトが出るというので慌てて開始まぎわに飛び込んだ。


【レイト】19:15~19:38

最初に謝らなければいけない。"15分のライブでも息切れしそう"と彼のファーストアルバム『明日など来るな』の記事で書いたことは誤りだった。

この日の23分間のステージでは、舞台袖から弾むように飛び出してきた始まりから、5曲目の「真っ暗な光」を始める前に水分補給をするために少しの間を取った以外、最後の「過去の人」まで息を切らすことなく一気に駆け抜けた。曲間のMCは一切なし。目深にかぶったぶ厚めのパーカーのフード。その奥から前方を鋭くにらみつけ、時に気が狂ったピエロのような手の動きを織り交ぜながら、音源で聴ける少年声よりは若干低めではあるものの、それでもリリックの内容がしっかり聴き取れるラップを披露した。

リリックについて、アルバムの記事では表現が安直と書いた。ヘッドフォンでじっくり聴く分には確かに言葉や描写は、ヒップホップとしては希有かもしれないが、小説・漫画ではお馴染みの題材だ。しかし、ライブを体験してみると、その分かりやすさが故に誰の耳にも届きやすく、すぐさま場面を想起しやすい言葉を選んでいたのだなという当たり前のことにようやく気がついた。

ただ、1点だけ難があるとすれば、言葉をかぶせすぎていることに違和感を覚えた。最初パフォーマンスを始めたときにあまりに声が強く前に出ていたために口パクかと思い、しばらく口元を見てしまった(この日のPAがうまかったこともあると思う。ボーカルとトラックとのバランスも絶妙だった)。音が抜かれるところで、実際にラップしているのだと確認できたのだけど、フックはもちろんのことヴァースでも被せている箇所もあり、1MCなのでしょうがないのかなとは思うものの、自分だけのその場の声で勝負してもいいのかなとは思った。


1.鼓動
2.海の底へ
3.言いづらいこと
4.馬鹿な奴
5.真っ黒な光
6.過去の人




【MIRROR】19:46~20:19

ギター2本、ベース、ドラムの4人組インストバンド。ドラムと6弦を操るBlurのAlex James似のベースがぶ厚い土台を作り、その上をツインギターが飾り立てる。音のバランスが良くて、技術のある人たちがやっているのだなと分かるのだが、分かりやすい主旋律がないためにインストを聴き慣れていない身には若干辛かった。

眼鏡のギターの人のMCが一番印象深かった。高校時代に女子一同から迫害された原因は何だったのだろう。それだけが気にかかる。



【COMA*】20:39~21:11

このバンドも前に出たMIRRORと同じく、ほぼインストバンドみたいなもので、ちょこっとだけボーカルが入るのだけど、あれならない方がいいと思えた。

ストイックな音を出していたMIRRORとは異なり、快楽一直線なダンスミュージックをギター、ベース、ドラム、キーボードが奏で、後ろではVJが作り出す幻想的だったり、ピカピカ瞬く映像が映し出される。素直に踊って楽しめる音。良かった。



【SUIKA】21:32~22:12

いよいよトリのスイカ。セッティングを入念に行い、Takatsukiの"おっ始めようぜ"の声でスタート。タケウチカズタケとベース・石村順との位置が逆でちょっと新鮮。

初めのうちは、ホームの「スイカ夜話」での盛り上がりと比較するとややアウェイな感じもなくはなかったが、「Juicy Fruity Spicy Funky」の中盤、フロント3人がポーズをとり音を落とす所で、タケウチが"動き出せ! ATOM"とかけ声を掛け、アトムが猛烈に言葉を吐き出し始めた辺りから、彼らのいつものノリになっていった。あのラップは普段ヒップホップに馴染みのない人たちをも熱くさせる。

『カッコいい』からの2曲の後は、彼らのブログでも書かれていたように前のアルバムからの曲を演奏した。「コインサイド」と「WORLD CALL」、「バンブームーン」の3曲。「コインサイド」はあまりライブで聴いた覚えがなく、新鮮だった。音源で聴くとそれほど印象に残らない曲なのだけど、totoさんのヴァースから始まり、3人の言葉が重なり分裂し、さらに高みを目指す様はすごい迫力だった。

「バンブームーン」はやや苦手な曲だったのだけど、久し振りに今のスイカの音で聴くと不思議といい曲に思えてきた。胸のどこかにひそかに隠している悲しみをえぐり出すようなアトムのラップがすばらしい。

一方で、残念だったのは音のセッティング。スイカの演奏自体は悪くなかったし、盛り上がってはいたのだけど、「月見ル君想フ」での低音の深さ、ボーカルのバランスに慣れてしまっているので、耳にキンキンしてくる音がどうにも残念だった。一番手だったレイトのラップにはドンピシャだったが、スイカの面々にはもっと下げても声が通るはず。スイカ以外の3組を聴いているときは申し分ないセッティングだと思っていたのだけど、どうしてスイカだけ不調だったのだろう。

まあでもスイカは今年も楽しめそうだ。ブログを見ているとアルバムを出しそうな勢いだし、メンバーのソロ作もあるようでワクワクする。


1.ピクニック
2.Juicy Fruity Spicy Funky
3.コインサイド
4.WORLD CALL
5.バンブームーン
6.麒麟が太陽を食べる島
2009.01.29 Thursday 23:59 | 音楽 | comments(7) | trackbacks(0)
ghostnote『アイデンティティー』

2009年1月21日リリースのセカンドアルバム。

2年と少し前に出されたミニアルバム『素晴らしき世界』が思いの外良くて、その後メジャーに行ったと知り、結構期待をしていたグループの久し振りのフルアルバム。

結果は、失敗かな。ボーカルの伸びのある歌声やメロディメイカーとしての資質はいかんなく発揮されてはいるものの、アレンジが本当にださいギターロックになっているのだ。戦犯はプロデュースに参加した阿部義晴たちか。ただ、それだけが原因ではなく、一様に青春ロック全開で気恥ずかしさのあまり居たたまれない気分にさせられる歌詞にもある。タイトルからして「I、愛、会い」だったり、「精一杯、僕らの歌」と壊滅的だ。こうまで方向性を変えてくるとは思ってもいなかった。

そういえば、あからさまに売る気満々の桜ソング、M10「桜道」まであるわけで、メジャーという土俵で戦うための武装であると理解はできても、やりきれない気持ちにもさせられる。

そんな中でも輝いていたのは、M4「TOKIOメトロに乗って」とM7「ひねくれているのであります」。歌詞も悪くない。アコースティックギターの響きを生かしたM7を聴けただけでもよしとしよう。
2009.01.28 Wednesday 23:59 | 音楽 | comments(2) | trackbacks(0)
佐藤賢一『カルチェ・ラタン』

読了。
☆☆☆/5点中

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1536年──宗教改革前夜のパリ。新米夜警隊長ドニ・クルパンは難事件の解決に、元家庭教師で鋭い洞察力・観察力を持つ神学僧ミシェルに協力を求める。捜査を進めるうちに、やがてパリの闇夜にうごめく巨大な陰謀が明らかに・・・。
************************************

「カルチェ・ラタン」というのはセーヌ川左岸の5区と6区にまたがる区域で、ソルボンヌ大学を始めとした大学が集中している学生街のこと。"ラテン語を話す学生が集まる地区"が語源。(ウィキペディア参照)

「解説」にも書かれていたけれど、主人公ドニがいってみればワトソンであり、ミシェルがホームズになり、パリで起こる事件を解決していく。しかし、ただのミステリーでは終わらず、ドニの成長物語にもなり、またドイツではマルティン・ルターが新しいキリスト教の在り方を提言したことで始まる宗教改革の波がパリに及ぼうとしていることもあり、その危機意識から発足されたイエズス会の面々(創立者のイグナチオ・デ・ロヨラや日本人にも馴染み深いフランシスコ・ザビエル)、フランスのプロテスタント派、ジャン・カルヴァンなど、歴史で学んだ名前も活躍するので最後まで面白く読み通せた。

それと、口絵の地図で通りや教会の場所を確認しながら読めるので、パリに行ったこともないのに詳しくなった気にさせられる。サン・マルタン通りに、サン・ドニ通り、いつパリに行っても大丈夫そう。

最後の対決が神学論争だったりする辺りは大学で西洋史を研究してきた著者らしい展開であり、なかなか興味深く読めた。
2009.01.28 Wednesday 23:59 | | comments(0) | trackbacks(0)
MASS OF THE FERMENTING DREGS『ワールドイズユアーズ』

2009年1月21日リリースのセカンドミニアルバム。

女性ふたりによるロックバンド・マスドレの1年ぶりの音源。セルフタイトルの前作はディストーションギターが全編を覆うノイズまみれの中を意外なほど相性のいい女性ボーカルが乗った作品だった。今作では前作で目立たなかった歌メロに軸足を移したため聴きやすさが増した。それとリフ中心の曲が増え、痛快だった奔放なノイズが減少したのは残念。

曲の後半になればギターとドラムの粋な応酬や長めのギターソロがあったりと自由なパートは確かにあるのだが、全体的には少しまとまり過ぎかなと思う。ノイズまみれのロックではあるのだけど、独りよがりではなく開かれた音だったからこそ面白かったわけで、その良さを消してしまうのはもったいない。
2009.01.27 Tuesday 23:59 | 音楽 | comments(0) | trackbacks(0)
サカナクション『シンシロ』

2009年1月21日リリースのセカンドアルバム。

期待の若手ロックバンドの1年ぶりとなるフルアルバム。4つ打ちのビートを多用し、デジタル音による装飾、親しみやすい歌謡曲のようなメロディといった部分は前作『NIGHT FISHING』の流れそのままだが、へんてこりんな展開をする曲がなくなり、スマートになった印象ではある。

前作の記事で書いた"快感原則に忠実な音"という方向性は変わってきたように思う。一心不乱に踊るよりも洒脱に体を揺らす曲が増えたというか、やや頭でっかちに踊れる曲を作っているというか、まあいずれにせよ歌メロが絶品であることは変わらないのだが。

先行シングル曲だったM3「セントレイ」よりもずっとシングルっぽい、4つ打ちの陽性なM10「アドベンチャー」はこの音源だけで自己完結しているのだが、他の10曲はおそらくライブで演奏されて初めて完成をみるのだろうなという印象を抱いた。若手バンドとしては飛び抜けた感性を持ったグループであるし、アルバム単位で聴ける作品を作ってはいるのだけど、何かひと味が足りず、それはライブ(私自身はまだ見たことないのだが)において、生の演奏と共鳴するフロアという音源には封じ込めることのできなかった要素が生まれた時に初めて曲としての完成が得られるのかなと感じた。

そういう意味でインドア派の聴き手としては今作よりも前作を気に入っている。
2009.01.26 Monday 23:59 | 音楽 | comments(0) | trackbacks(0)
Keith Sweat『Just Me』

2008年5月13日リリースの9枚目のアルバム。

猫も杓子も状態のオートチューンを使いまくりながらも、一過性ではない懐の深いR&B作品に仕上がっている。メロウな曲が多めで、どの曲も極上のメロディで耳に心地良い。アルバムクレジットを見ると、売れっ子ヒットメイカーが顔を揃えているわけでもなく、キース・スウェットの歌の巧さ、さらにはプロデュースにも名を連ねる彼の音楽的センスによるものなのだろう。

M4「Sexiest Girl」やM10「Just Wanna Sex You」といった楽曲はタイトルから想像するにエロエロなんだろうけど、アルバムの中でも特に良い。M11「What's A Man To Do」も後半の盛り上がりは格別。

いつだったか立ち読みした音楽雑誌でこのアルバムをR&B部門のトップにしていたところがあったが、なるほどと納得できた。


***********************
1987.11.24 1st AL『Make It Last Forever』
1990.06.12 2nd AL『I'll Give All My Love to You』
1991.11.26 3rd AL『Keep It Comin'』
1994.06.28 4th AL『Get Up on It』
1996.06.25 5th AL『Keith Sweat』
1997.09.22 best AL『Just a Touch』
1998.09.22 6th AL『Still in the Game』
2000.11.14 7th AL『Didn't See Me Coming』
2002.08.13 8th AL『Rebirth』
2003.02.04 live AL『Keith Sweat Live』
2004.01.13 best AL『The Best of Keith Sweat』
2007.06.12 live AL『Sweat Hotel Live』
2007.11.24 christmas AL『A Christmas Of Love』
2008.05.13 9th AL『Just Me』
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2009.01.25 Sunday 23:59 | 音楽 | comments(0) | trackbacks(0)
タケウチカズタケ+小林大吾@新宿タワーレコード

前回この場所でインストアライブを見たのは昨年の3月で、ファーストアルバム『UNDER THE WILLOW』の発売に際してのものだったが、今回は12月に出された『UNDER THE WILLOW -ICHIGO-』の販促のためのライブだ。恒例と呼んでいいのか分からないが、小林大吾付き。

17時2分。前回と比較すると集まった人が若干少なめだったが、タケウチカズタケが登場(上の写真は始まる数分前、始まってからは店内にいたお客さんも集まってきてもう少し増える)。

1曲目は彼のブログによれば新曲とのこと。SUIKAになるのかソロで使うのかはまだ未定というホーンをサンプリングしたファンキーな小曲を演奏した後は、小林大吾にバトンを渡し、詩人による"ピンポンダッシュのようなライブ"が披露される。

1曲目はお馴染みの「手漕ぎボート」。1ヴァース目の入りをとちったせいか、途中までビートを捕まえられず四苦八苦していた印象だが、まさに"状況は以前として最悪だが、まあこんなものだ / あきらめずに受け入れるその匙加減が難題"と始まる3ヴァース目から言葉が熱を帯び始め、口が滑らかになっていく。続く「三角バミューダの大脱走」のまあ滑らかなこと滑らかなこと。楽しげなペリカン監獄のお話をスムースに物語り、最後のムール貝博士のポチッとなも力が入っていた。

再びタケウチカズタケ・タイムで、アルバムから「Barbara Rh.」と「Renée Fr.」を演奏。「Barbara Rh.」は前にTSUTAYA六本木店で聴いたときよりもグルーヴが増量されていた。音環境の違いもあるのかしら。前回のタワレコでも自然と頭を振りながら聴いてたけど、今回もそんな勢いで聴けた。TSUTAYAでの演奏が若干物足りなかっただけに嬉しい。

「Renée Fr.」は新たにアレンジし直したライブバージョンとのことだけど、アルバム自体未聴であり比べようがない。じっくり聴かせるタイプのきれいめの曲。

締めは、小林大吾の"屈折した恋愛観"が反映されたという「Sounds like a love song (小林大吾 ver.)」。聴くのは2度目。まずトラックがいいし、"魔女"や"世界のちゃぶ台をひっくり返すようなリセットボタン"が登場する小林大吾らしいリリックもいいし、都合を訊かれることなく唐突に始まった恋心を真っ正面から捉えたテーマが何よりも身近で楽しめる。音源で早く聴きたい。

17時34分、終了。


1.opening ~beat maker / タケウチカズタケ
2.手漕ぎボート / 小林大吾
3.三角バミューダの大脱走 / 小林大吾
4.Barbara Rh. / タケウチカズタケ
5.Renée Fr. / タケウチカズタケ
6.sounds like a love song / タケウチカズタケ+小林大吾
2009.01.24 Saturday 23:59 | 音楽 | comments(0) | trackbacks(0)
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