すばらしくてNICE CHOICE

暇な時に、
本・音楽・漫画・映画の
勝手な感想を書いていきます。
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2021.02.10 Wednesday | - | - | -
くるり『三日月』

2009年2月18日リリースの21枚目のシングル。

前シングル『さよならリグレット』はメロディ、アレンジ共に極上の仕上がりだっただけに、やや拍子抜けした感は否めないM1「三日月」。しかし、よくよく聴けば、初期のアコースティックな佇まいに舞い戻ったアレンジとシンプルなメロディは無駄な力が抜けていて、しみじみとさせられる曲ではある。歌詞も単純な言葉だけど、味わい深い。

M2「かごの中のジョニー」は7分20秒と長尺な曲で、後半のストリングスパートにスリリングさが足らず、残念な結果に終わっている。歌詞の内容が内容なだけにアレンジ次第でもっと愉快な曲になりそうなんだけど。

3曲目はBO GUMBOSのカバーで「夢の中」。BO GUMBOS自体1曲も聴いたことがないので、オリジナルと比較しようもないが、簡単な言葉だけどとても大切なことを伝えようとしている歌詞がいいし、かなり気合いを込めて歌っている岸田の歌声も熱い。最後のゴスペル風コーラスは原曲だとどうなっているのだろう。いい曲に出会えた。
2009.02.28 Saturday 23:59 | 音楽 | comments(0) | trackbacks(0)
aiko『milk / 嘆きのキス』

2009年2月18日リリースの25枚目のシングル。

両A面シングルの本作は3月2日付けチャートで初登場第1位に輝いたのだが、首位はデビュー11年目にして初というから驚き。シングルを出せば必ずランキング上位に入るし、「カブトムシ」や「花火」といった曲で、てっきりトップに立っていたものと思っていたけれど、そうじゃなかったんだ。

M1「milk」は久し振りに軽快なaiko節が聴ける。気づくと口ずさんでいたほど。こういった初期の勢いを取り戻したような楽曲がもっと増えてくれれば嬉しい。

"もっと心躍る世界がすぐ隣にあったとしても
 乱れたあなたの髪に触れられるこの世界がいい"

歌詞も真っ直ぐで、力強い。これこそがaikoだ。

もうひとつのA面曲はM2「嘆きのキス」。"繰り返し涙が落ちる音を静かに聞いていたあの日"との歌詞には才能のきらめきが感じられるが、曲自体は最近のaikoらしいバラード。前作の『KissHug』と同じ。

おそらくアルバムには収録されないであろうM3「なんて一日」は時間が足りず、そのまま入れてしまった印象の1曲。
2009.02.28 Saturday 23:59 | 音楽 | comments(0) | trackbacks(0)
JAMOSA『RED』

2009年2月18日リリースのサードアルバム。

1年間隔で軽快に出し続けているJAMOSAの3枚目。歌声、表現力ともに相変わらずの出来映えで文句なんてあるはずもない。

今作はこれまでに比べて、愛する人へ歌った明るめの曲が多く、私生活での充足を想像させるが、それだけに留まらず、積極的なメッセージを込められた曲もあり、乗りに乗っている印象だ。

SEEDAを客演に迎えたタイトル曲(M7)では、"白黒ブラウン黄色 肌と目のRAINBOW / 何度争ってもみんなのキズから流れる色はRED"と争うことの不毛さを歌い上げる。SEEDAもまた、最近の作品と比較してもさらにポジティブなラップを披露。

"すべての生き方が憎しみや罪を守ることなら / 時代に殺されたloveが泣いてら
 この星のどこで生まれても命の重さは同じ"

さらには、"何が正しい・間違いかなんて俺は知らねぇ でもよ 俺もお前も変わんねぇだろ お前は誰にでもなれる だから自分を見失うなよ そして未来は自分次第さ"と高らかにいい放つ。

ARIAのアルバムに参加したときのラップもそうだったが、自身の作品では少しずつだけど前向きなメッセージを放つようになってはいるものの、客演だと与えられたテーマとの関係もあるのか、よりポジティブさが表れる。次のアルバムがどういう方向性なのか知らないが、ここで聴けたような強いメッセージを含んだ作品なら楽しみだ。

M1「BREATHE AGAIN feat. Sphere」やM3「SEASON CHENGES feat. MEGARYU」、M5「ずっと」といったシングル曲は発表時点で聴いていたので置いておくとして、M5と同じく浜崎快声が手掛けたM6「SOMEDAY」はストリングスも入ったバラード。"できればあのままで あなたのJr.に出逢えたかもね"という歌い出しの歌詞にはドキッとさせられる。

BUZZER BEATSプロデュースのM8「SCREAM & SHOUT」は、"ラジオから流れてくる繰り返しつまらないトップ10 まるで一枚のコンピSHUFFLE"といった具合にチャート、音楽ビジネス、はてはCD-Rにサインを求めるファンへの辛辣な批判を歌いながらも、希望を捨てていないあたりが力強い。

"マガジンはHOLLYWOODセレブに夢中 ストリートの声よりPARISのバック"で吹いてしまった。ここは"バッグ(bag)"ではなく"バック(back)"でホントにいいんだよね。強烈だ。あの緑がかった映像を思い出したよ。確かにパリスのバックは求めてしまうかも。

セカンドアルバムのタイトル曲だった「CRY」にMACCHOをフィーチャーさせたM9は配信のみで良かったのでは。MACCHOのラップが描く男がダメ男過ぎて笑えてくる。"たとえ他の女の部屋に居ようが体だけ 心はお前の方だ"って。

今作で最大の収穫は本編最後のM12「TELL ME」だ。Jermaine Dupriと仕事することが多く、Mariah Careyの「We Belong Together」で2006年のグラミーにも輝いたManuel Sealが制作した曲(あとM10「Selfish」も)で、これがよく貰えたなと思うような傑作。向こうのR&Bに疎いので、もしかしたら既発曲に似ている曲調があるのかもしれないけれど、ともかく絶妙なメロディラインとアレンジの上に、シルキーなJAMOSAの歌声が乗る絶品だ。これを聴いてると、向こうでも勝負できるのではと思えてくる。


カップリング曲だったSphereとの曲を入れるくらいなら、別のカップリングの「BROKEN HOME」を収録してくれとか、セカンドのシングルのカップリング曲をどうしてここで入れるのとか疑問はいくつかあるが、コンスタントに優秀なアルバムを聴けるのは嬉しい。このまま飛ばして欲しい。
2009.02.27 Friday 23:59 | 音楽 | comments(0) | trackbacks(0)
FULLMEMBER『The Footprints -Hill of Dreams-』

2008年11月15日リリースのセカンドアルバム。

Tai-shi、W、五十嵐の3MCに、DJ JUCOという3MC1DJのヒップホップグループ。東京西部の東久留米市出身とのこと。

丹誠込めて組み上げられたビートの上に、人肌の温もりが感じられる音が乗る、極めて優等生なサンプリングミュージックだ。本場米国ではこの手の音ははやっていないし、品薄状態だからこそ、好事家たちが日本語ラップにも関わらず気にしているというのは納得できる話である。

そうはいっても型に収まっている感は否めず、可もなく不可もなしといったところだ。それよりも本作を聴く限り、このグループの魅力はラッパーの3人にあると感じた。だべりと表現してもいいようなラップに惹きつけられた。

部室長屋の奥の方で練習終わりに着替えながら交わしたような会話を彼らはラップする。好きな格闘家やスポーツ選手、プロレスラー、ラッパー等々の名前を次々と挙げていくM3「Favorite Thang」や、昔語りが入るM7「The Enummah」辺りが特に顕著だ。他にも週一の集合日についてラップしたM4「Tuesday」や、それぞれの時間の過ごし方を綴ったM10「Time Code」、酒に飲まれた翌日を描いたM12「The Sigh of Fullmember」といった曲には、詩的がどうのというより、彼ら3人がラップで会話している感じが素直に楽しい。

ここに普遍性は恐らくないだろう。数年後には確実に風化しているネタもある。でもヒップホップは今、その瞬間を切り取る音楽だと思うので、彼らが選択した言葉は2008年、2009年の今現在にしっかり輝いている。それでいいのだと思う。それすらできなラッパーもたくさんいるわけで。

道を踏み外すことなく、普段は働き、時にライブをし、週一で集まりレコーディングする。そんなありふれた日々を不必要に飾ることなく、でもどこにでも転がっている話だからこそ、技術でもって平凡に終わらせないよう努力し、日本語でラップをする。至って真っ当なスタイルだと思う。こういうグループがもっと出てくれば、ダースレイダーの言葉ではないけれど、"日常にヒップホップ"が根づくのかなと思う。


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2003.??.?? 1st mini AL『Career High』
2006.11.03 2nd mini AL『Music of the district』
2007.11.17 1st AL『4 visions』
2008.11.15 2nd AL『The Footprints -Hill of Dreams-』
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2009.02.26 Thursday 23:59 | 音楽 | comments(4) | trackbacks(0)
Romancrew『DUCK's MARKET』

2008年6月11日リリースのセカンドアルバム。

前作『THE BEGINNING』は世間的には高評価だったらしいが、私の中ではたいして楽しめない作品だった。だからこの2枚目もしばらく手を出さずにいたのだけど、こちらも意外なほど評価が高く、それならということで聴いてみた。

去年の「スイカ夜話 第13夜」のゲストで出ていたので、何曲かは聴いていたのだが、KREVAが客演したり、CHEIF ROKKAがいたりといった思わぬ驚きがあった。

彼らなりの"黒さ"を追求しすぎて、やや閉じた音になっていた前作から、外仕事も増えたためかALI-KICKのトラックには広がりが生まれていて、非常に聴きやすくなっている。その多彩な音の世界の中に、ところどころでDJ TOKNOWのタイトな音が混じるのでアルバムとしてのバランスも良くなった。

ラップにしても、アリキックはまあ以前からうまかったので、今回も自由度の高いライミングやフロウに耳を奪われたが、他のふたりも悪くなかった。エムラスタはがむしゃらに"黒さ"を追い求めるのではなく足し引きを覚えたラップに好感が持てたし、何より将絢のラップには、慣れもあるのか、Michitaのアルバムを先に聴いていて好印象も先行したためか、以前のお荷物感が薄れた。フックを歌わせたり、渋めの語り口調だったりと工夫を凝らしたのも成功の要因だろう。

ストーリーテリング調のM7「ロマンティック is Dead」から、Scoobie Doのボーカル・コヤマシュウを招いてのM8「ロマンより愛をこめて」へ、という流れはかっこよい。M8のコヤマシュウと将絢による最後のヴァースは男前だ。

音楽への愛が素直に表現され、色恋沙汰も描けるし、エロ度の高い曲("深海魚"って何?)も、温もりのある曲も、幅広いテーマでラップができている。"チャートトップ10がこんな音で満たされ"たらどんなに良くなるかとも思う。黒い音楽をうまく翻訳できてもいる。

リリックにしろ音にしろ、好みの音楽なはずなのに、今回もはまりきらなかったのはどういうわけなのかかなり聴き込んだけれど分からなかった。何だかしっくりいかない。巧さも熱さもクールさも揃っているのに、その上頑固な一面も持ち合わせていて、最高なはずなのに、心の深いところまでは下りてこない。相性の問題なのか。


ところで、前作と今作は早くも廃盤になったようだ。彼らのブログ(2008年12月25日付)では、"俺たちの力不足も含め どうにもならない事情も多々あったので"、と短いコメントのみで詳しい理由は分からないが、非常にもったいないと思う。彼らが所属するLOCKSTOCKのホームページでは、"在庫わずか"ながらもまだ買えるようだ。
2009.02.25 Wednesday 23:59 | 音楽 | comments(4) | trackbacks(0)
藤谷治『マリッジ:インポッシブル』

読了。
☆☆/5点中

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引田輝子、29歳独身、グルメ番組のディレクター。今の仕事もライフスタイルも手放したくない。だけど結婚もしたくなった女が実現不可能(そうな)なミッションを開始する。
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今回は軽めの文体。前回読んだ『恋するたなだ君』のように、読者に語りかけるように軽快な筆致で物語が進み、しまいには筆が滑り過ぎたのか、著者まで登場し、展開についてかるく愚痴る始末。少しやり過ぎの感はなきにしもあらずだが、でもまあテンション高めの主人公が活躍する小説らしくていいのかも。

小島麻由美の「結婚相談所」って歌があったなとふと思い出した。もう14年も前の歌になるのか。
2009.02.25 Wednesday 23:59 | | comments(0) | trackbacks(0)
U2『How to Dismantle an Atomic Bomb』

2004年11月22日リリースの10枚目のアルバム。

邦題は"原子爆弾解体新書"。前作でU2は懐古趣味に走ったと思い、これまで聴いてこなかった作品。もちろん、iPodのCMに使われていた「Vertigo」はテレビで繰り返し流れていたので聴いてはいたのだけど、アルバムを買おうとまでは思わなかった。

で、今回聴いてみたら、これがかっこいいロックアルバムじゃない。1曲目はiPodの「Vertigo」。音源で聴くとさらに躍動感に満ち、荒々しいロックだ。アルバム全体にいえることだけど、ベースラインとドラムが強調されているのがいいのだ。The Edgeのギターリフにも生々しさが戻ってきている。それとメロディ。U2の良さは日本人にも馴染みやすいメロディラインにもあると思うのだけど、それも戻ってきている。

これを聴かずにきたのはもったいなかった。トータルで楽しめる。前作にあれだけ拒否反応を示したのはどうしてだったのだろう。方向性は同じなのに、全ての面で今作はグッと良くなっている。

で、今週末の新譜だ。プロデューサーはBrian Enoに、Daniel Lanois、それとU2の初期3部作の立役者Steve Lillywhiteが務めている。ということは、前作や本作と同じ路線なのだろう。Wyclef Jeanがプロデュースに加わっていると聞いて、楽しみにしていたのだけど、それはなかったよう。残念。
2009.02.24 Tuesday 23:59 | 音楽 | comments(0) | trackbacks(0)
U2『All That You Can't Leave Behind』

2000年10月30日リリースの9枚目のアルバム。

今週いよいよ発売される、4年ぶりのニューアルバムを聴く前に、発売当時に買ったはいいが、ほとんど聴いてこなかった前々作を聴いたみた。


そもそもU2との出会いは、高校生の時にTVKから流れてきた「Mysterious Ways」のPVだった。それが収録されているアルバム『Achtung Baby』は繰り返し繰り返しホント飽きずに聴いた。レコードだったらすり切れていたと思う。ベースとドラムのグルーヴ、ボーカル・Bonoの包容力がありながらもグラマラスな歌声、ギター・The Edgeの切れるようなリフ、そしてメロディ。今とは違いあの頃は英詩を自分で訳し、理解を深めようとしていた頃だから、「Love Is Blindness」に涙したりしたものだ。

既発アルバムをさかのぼって聴き始めると、『アクトン・ベイビー』とはまた違った音の世界が広がり、素直に驚かされた。『The Unforgettable Fire』と『The Joshua Tree』でのアメリか文化への接近は音楽の求道者としての真摯なU2が垣間見られて、より好きになったし、それより何より、ドキュメンタリー映画『Rattle and Hum』(ちなみに邦題は"魂の叫び")がかっこよすぎた。ジャケットにもなっている、ボノがエッジにスポットライトを浴びせるシーンにはしびれが走った。

当然初期の三部作も聴き込むわけで、80年代前半の音だからどうかなと不安もあったが、エッジのギターの音が清らかに澄んでいて、でも攻撃性も失わず、アイルランドの純粋な少年性をそのまま音にしたような楽曲に圧倒された。

その後の『Zooropa』、『POP』というアルバムも以前のようには強く惹かれはしなかったものの、同じ所に留まらずに音を鳴らし続けるU2が好きだった。


で、本作が2000年に発表されるわけだが、失望だけだった。プロデューサーは4枚目から『アクトン・ベイビー』まで組んでいたBrian EnoとDaniel Lanoisなわけだけど、新しい音を蒔き、育て、それまでとは違ったU2を見せるというかつての姿勢はそこにはなく、あったのは自分たちが作り出した果実をもぎ取ることだけに満足した楽曲群だった。

山手線の扉にもたれかかり、MDウォークマンから流れてくる音に、こんなのは自分の知っているU2ではないと思ったのを今でも覚えている。


あれから8年と少しが過ぎたわけで、今聴けばちょっとは思いも変わるかなと思いきや、そんなこともなく、M4「Walk On」やM5「Kite」、ストーンズっぽいM7「Wild Honey」といった曲にメロディの良さは感じられても、以前のような高揚感はやっぱり覚えない。


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1980.10.20 1st AL『Boy』
1981.10.20 2nd AL『October』
1983.02.28 3rd AL『War』
1983.11.?? live mini AL『Under a Blood Red Sky』
1984.10.01 4th AL『The Unforgettable Fire』
1987.03.09 5th AL『The Joshua Tree』
1988.10.10 live AL『Rattle and Hum』
1991.11.19 6th AL『Achtung Baby』
1993.07.06 7th AL『Zooropa』
1997.03.03 8th AL『Pop』
1998.11.10 best AL『The Best of 1980-1990』
2000.10.30 9th AL『All That You Can't Leave Behind』
2002.11.12 best AL『The Best of 1990-2000』
2004.11.22 10th ALHow to Dismantle an Atomic Bomb
2006.11.17 best AL『U2 18 Singles』
2009.02.27 11th ALNo Line On The Horizon
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2009.02.23 Monday 23:59 | 音楽 | comments(0) | trackbacks(0)
藤谷治『恋するたなだ君』

読了。
☆☆/5点中

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さえない、しつこい、思いこみ激しい、という三重苦男のたなだ君が、いつものように情けない面持ちで愛車を運転しているうち、変な看板を掲げた店ばかりの妙な町にやってきてしまう。ふと目の前をよぎった髪の長い女性に一目惚れをしたことから、とんでもない災難に巻き込まれる。
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この作家は毎回違う文体・趣向で楽しませてくれる。今回は「ファンタジーノベル大賞」用に書き上げましたといった趣きだ。不思議な街の描写と、そこで暮らす住民たちが織りなす喜劇に、ファンタジックな恋愛を混ぜこんで、時に読みにくくもあるけれど、芯はボーイ・ミーツ・ガールな話でそれなりに楽しめた。

桃の倉庫が欲しい。


たなだの愛車・ろんぽう君。
日産PAO。最近はあまり走っているところを見ないけれど、結構好きな車。
2009.02.23 Monday 23:59 | | comments(0) | trackbacks(0)
チェンジリング / Changeling

58点/100点満点中

主演アンジェリーナ・ジョリー、監督クリント・イーストウッドによる2009年公開作品。

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1928年のロサンゼルス。シングルマザーのクリスティン・コリンズは9歳の息子ウォルターを育てながら会社勤めをしていた。3月10日、クリスティンが帰宅すると、留守番をしていたはずの息子がいない。警察による捜索が続くも発見できず5ヶ月が過ぎたある日、息子がイリノイ州で見つかったという朗報が入る。再会の喜びを噛みしめながら列車で帰ってくる我が子を駅に出迎えるクリスティンだったが、降りてきたのはウォルターとは別人の全く見知らぬ少年だった・・・。
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『ミスティック・リバー』に圧倒されてからは、それまで「ダーティハリー」シリーズでさえまともに見たことがなかったくせに、クリント・イーストウッドじいさんの監督作品は公開されれば必ず見るようにしてきた。安易なハッピーエンドで閉じようとはせず、後味が悪かろうが一切気にせず、骨太で頑固な作品を作っていることを知ったからだ。

『ミスティック・リバー』、『ミリオンダラー・ベイビー』、『硫黄島からの手紙』、『父親たちの星条旗』とどれも良かった。が、今作をそれらの傑作と同列に並べるのは難しい。期待が高かっただけに、見終えた後のがっかり度は激しかった。

悪い作品ではない。最愛の息子が行方不明になり、警察も当てにならず、果ては精神病棟に収用され、しかし教会の助けや、真犯人逮捕という思わぬ流れ、その後の裁判、13階段、数年後に発見された子供といった展開を、あるシーンだけを大きく取り上げるのではなく、喜怒哀楽を盛り込みながらも全体で見れば、スムースに流れていく。

多分その作りに私がうまくはまれなかったのだろう。実話ベースの話であり、歴史の中の1エピソードとしてたんたんと描かれた感があるのだ。謎に翻弄される女性クリスティンを演じたアンジェリーナ・ジョリーも頑張ってはいたが、彼女が苦痛の涙を流し、おかしなメイクを歪ませれば歪ませるほど、そのシーンで表現されるべき本来の感情が逃げていったように思う。マイケル・ジャクソン、あるいはバットマンのジョーカーのようなあのメイクは何だったのだろう。あの時代の流行かと思って他の女性を見てもそんなことはなく、舞台女優のそれのようだった。

いくつか気に入ったシーンもあった。J・J・ジョーンズ警部を演じたジェフリー・ドノヴァンは良かった。クリスティンには高圧的な態度を取りながらも、時にふと捜査方針はこれで大丈夫なのかと迷っているかのような視線の飛ばし方がいい。ただのヒールでは終わらない存在感があった。死体を埋めた地面を掘り返す少年が泣き出すシーンにもグッときた。


ウィキペディアに、「ゴードン・ノースコット事件」についての記事がある。下手くそな文章なので読みにくいが、映画では描かれなかった事実がいくつかあるようだ。性的虐待があったことは映画内では少しのほのめかしもなかったが、そこはイーストウッドじいさんのこだわりなのか。しかし、1920年代にも米国には、郊外に母親と同居している中年白人という典型的なシリアル・キラーがいたことに驚き。でもまあ、殺人鬼にしても、手伝っていた少年にしても、神様がまだ心の中に住んでいた時代なんだなと少し微笑ましく感じられた。
2009.02.22 Sunday 23:59 | 映画 | comments(3) | trackbacks(0)
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