待ちに待った「スイカ夜話 ~第14夜」。雨脚が少しも弱まらない中、「月見ル君想フ」に到着すると、いつもならそこそこ列ができているのに、この日はスムースに入れた。会場内もややお客さんが少なめで気に掛かりはしたものの、それでもリクオのライブ中のMCではないが、"ライブ空間は共鳴空間やで"という言葉そのままの一体感を持った雰囲気は変わらずで、楽しい時間を過ごすことができた。対バンに少しもがっかり感がないところもスイカ夜話の本当にすごいところだ。
【ATOM】 19:08~19:15
一番手は、SUIKAからアトム。高速ブレイクビーツがビシバシ決まるトラックでスタート。この1曲目は
先日の渋谷familyでも聴いた曲で、「SHIVA」という題名らしい。そういわれると、そんな顔をしながらラップしているなと思えた。2曲目はアカペラで高尾の天狗のお話。
【サイプレス上野とロベルト吉野】 19:16~20:02
アトムが紹介する形で登場したのがひと組目のゲスト、サイプレス上野とロベルト吉野。定番の"サ~イプレス上野と、DJロベルト吉野"で、初めて彼らを見る人をも巻き込む盛り上げ巧者ぶりを遺憾なく発揮。練習の成果が垣間見られる決めポーズや、お決まりのネタ振りでもって、ヒップホップは本来パーティミュージックだったことを証明してみせた。
即興でやりたいから、誰かネタをくれとお客さんに募り、せっかく"草なぎ君"というタイムリーなお題が返ってきたのに、仕込みの曲に持っていくのは残念。ダースレイダーなら10分ぐらいフリースタイルで草なぎ君から政治経済まで膨らましてやってのけたんじゃないかな。ただ、ここから草なぎ君が影の主役となる流れが出来、無条件に盛り上がったわけではあるけれど。
スイカのタケウチカズタケのリクエストで決まったという「START LINE」をtotoさん以外のスイカメンバーと共にセッション。元々メロウなトラックだったけど、生音で演奏されると濃縮還元ジュースと生搾りジュースぐらいに、味わいに違いが出る。
前回の夜話ではRomancrewとスイカのセッションが見られたが、1MC1DJのサ上とロ吉は直線的な音という、とてもヒップホップらしい音を出すので、スイカが加わることでその音が劇的に変化して面白かった。
1.INTRO
2.TIME IZ ONLY IT THAT CAME
3.イントロ II
4.サ上とロ吉
5.Bay Dream ~from課外授業~
6.FEEL LIKE DANCE
7.バウンス祭
8.素敵な仲間(?)
9.PRINCE OF YOKOHAMA(フックのみ)
10.IT'S MY TURN
11.START LINE feat. SUIKA
12.Dear MaMa
13.ヨコハマジョーカー
14.ヒップホップ体操
15.WONDER WHEEL
16.契り外伝 pt.II
【Takatsuki】 20:06~20:22
ライブとライブの間には、普段ならスイカメンバーによる夜話トークの時間となるのだが、今回はメンバーのソロパフォーマンスが見られた。トークも面白いが、ソロライブももうけた感じで嬉しい。
タカツキが出てきて、まずは6月にリリースされる4枚目のソロアルバムについて告知。演奏した曲はアルバムに収録されている「music,」と「できるなら京都で」。ヒップホップから遠ざかっているわけではないけれど、好き勝手度が高まったというような話を最初にしていて、この2曲はまさにそんな感じだった。ラップというにはメロディを持ち、歌というには抑揚がない。とはいえ、どちらもタカツキらしいリリックと曲ではあって、アルバムはかなり期待できそう。
先に披露した「music,」はウッドベース1台での弾き語り。2曲目の「できるなら京都で」は、次に出演するリクオとスイカの楽器隊から高橋結子と一緒にセッション。スイカに新たにベーシストが加わり、ライブでウッドベースを弾かなくなっているからなのか、ベースの音に張りがなくなったような気がした。
【リクオ】 20:24~21:05
タカツキがスイカメンバーのタケウチカズタケとベース・石村順を呼び入れ、最後にブルーデイジーことtotoさんを紹介し、自分は舞台を去ってしまう。ここからは、ふた組目のゲスト、リクオの時間だ。まず最初はスイカとのセッションで開始。リクオの「孤独とダンス」という曲に、totoさんがリリックを付け足し、スイカ楽器隊が脇を固める。原曲がどのくらいの長さなのか知らないけれど、10分弱の男女の物語が紡がれた。
スイカメンバーが抜けた後は、ステージにはリクオひとりと鍵盤一台のみ。でも声と両手と両足と頭といった具合に体ひとつを存分に動かして、ファンキーにソウルにブルージーに、哲学やら愛やら人生を歌い上げ、照れ隠しの笑い心を忘れず、ライブハウス中の人間をいつのまにかひとつにさせてしまった。ちょっとすごい。
最初は、大江千里とかKAN、楠瀬誠志郎といったアーティストを連想させる演奏スタイルだったものだから、ちょっと引いて見ていたのだけど、気づいたら騒いでいる自分がいた。ハンドクラップといわれれば手を打ち、コーラスにも参加し、足踏みし、終わってからもしばらく最後の歌のコーラス部分"シャララ~"を口ずさんでいたほど。
ホントに楽しいライブだった。名言を次々と並べていく「パラダイス」は特に良かった。井上光晴に始まり、岡本太郎、代々木忠("本能が成熟しない限り感受性も豊かにならないし、当然理性も開花しない"。この人はAV監督とのこと)、ゲンズブール、養老孟司("人間の死亡率は100%です")、池田晶子、中島らも、はっぴぃえんど、ブルース・リー("アチョー")、高田渡、さんま、ルーリード。古今東西の偉人変人の言葉が胸をつく。
1.孤独とダンス feat. SUIKA
2.ハイ&ロウ
3.穴を掘る
4.2人のワンダフルワールド
5.パラダイス
6.アイノウタ
(間違っている可能性大)
【SUIKA】 21:10~22:09
ちょっと珍しいスイカを見られた。対バンがどんなにすごくてもスイカはその上をいくパフォーマンスを披露するのが常だった。これまでもALOHAやSaigenji、降神、STERUSSといった人たちが、彼らを見ただけでも十分元が取れたと満足するようなライブを繰り広げたけれど、トリで出てきたスイカはもっともっと圧巻のステージングを見せ、主催者としての面目を保ってきた。
この日のスイカは決して調子が悪かったわけではないが、リクオに若干食われていた印象は拭えない。セットリストが影響したように思えた。
リクオが盛り上げた雰囲気を一度クールダウンさせる効果を狙ったのかどうかは知らないが、ライブは、スイカ楽器隊の奏でる5分弱のメロウなインストで始まる。続くのは、1月のライブでも演奏していた「コインサイド」。
サードアルバムの表題曲で、悪い曲ではないし、フロント3人の実力を堪能できる曲ではあるのだけど、『
カッコいい』の楽曲にある爆発力が少なめ。
アトムが先頭で切り込む「ジョナサン」でスイカらしい瞬発力を取り戻す。ここでのアトムは劣勢をがむしゃらに巻き返そうとするようで迫力があった。
次が「ウサギのチャイ店」。すごく好きな曲だし、久し振りにライブで聴けたのも嬉しかったし、かわいい曲なのに、微妙にアレンジが変わっててそのかわいくない感じも好感が持てたし、ドラゴンボールのフレーズも笑えたし、totoさんに"でも二度まで言いな"と何度もいわれてみたいと思ったけれど、この曲が「Juicy Fruity Spicy Funky」だったら、この日のライブの印象はずいぶん変わっていたんだろうなと思った。
他にやる曲がたくさんある中で、タカツキの希望でやったらしい。まあ、ここで「ウサギのチャイ店」を持ってくる辺りがスイカらしさなのかもしれない。
まだ仮題だという新曲「三つ目の恋」はみんなで歌えるフックが楽しい1曲。totoさんの猫の鳴き声は卑怯すぎる。1ヴァース目のタカツキは、一つ目の男の子の二つ目の女の子への恋を物語り、2ヴァース目のアトムのラップでは3つ目の男の子が告白する。"新しい恋の始まりには新しい靴をひとつ増やす"と女の子の気持ちを歌うのは3ヴァース目のtotoさん。音源よりも先にライブで初めて聴いたのに、昔から知っている歌のようにすぐに歌えた「つづれおり」や「手をならせ」を思い出させる曲だ。音源で早く聴きたい。
そういえば、「つづれおり」でtotoさんがリリックを飛ばすのを初めて見た。一番好きな箇所がなかったけれど、何だか珍しいものが見られて不思議と得した気分。
何だかんだ書いてきたけれど、スイカのライブはやっぱり楽しくて、最後の曲となる「麒麟が太陽を食べる島」をやる前に、totoさんが"もう終わっちゃうね"とアトムに話していたが、見ているこちらも同じ気持ちだった。
一度スイカメンバーが引っ込むが、すぐに出てきてアンコールに。サ上とロ吉やリクオも出てくる。"飛び込みたいMCがいたら空気を読んで出てきて"との声に、Romancrewのエムラスタが登場。曲が始まってからはステルスのCrime6も参加。曲は「手をならせ」。次々とマイクを回していく10分強。最後の至福の時間だ。
サ上のヴァースはリキッドルームで5月にワンマンがある話と物販で買ってくれとのアピールに終始。"セッションよりも商魂 / これが生きている証拠"とうまい踏みをみせる。次のエムラスタは"告知ばっかじゃん"とたしなめ、短いながらも流れるようなライミングで魅せる。"こいつの後にだけはやりたくねぇよ"と始めたのがクライム6。尻上がりに言葉が滑らかに出るようになって、結果一番盛り上げていたのが彼だった。
スイカ夜話の恒例となっている出演者全員によるこのセッションは毎回のことだけど、すごく幸せな気分にさせられる。
1.reflected-reflection
2.コインサイド
3.ジョナサン
4.ウサギのチャイ店
5.三つ目の恋(仮)
6.つづれおり
7.麒麟が太陽(ほし)を食べる島
アンコール
1.手をならせ with サ上とロ吉、
リクオ、クライム6&エムラスタ
次は、夜話祭と題される数年ぶりのワンマンなのかな。タカツキ情報だと12月、アトムの告知だと9月か10月ぐらいらしい。錯綜しているけれど、ともかく年内にはワンマンライブが行われるのだろう。1時間のライブではやれない名曲が多すぎるし、今からワクワクする。