すばらしくてNICE CHOICE

暇な時に、
本・音楽・漫画・映画の
勝手な感想を書いていきます。
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2021.02.10 Wednesday | - | - | -
降神、S.L.A.C.K.&COPPU@渋谷RUIDO K2
自然体女性ラッパーCOPPU主催の「ナガレ」に行ってきた。0時58分、フロアに降りていくとまだDJタイムで早く着いたようだ。ビールを調達した後に聴くともなしに聴いていると、般若がかかり、続いてTOKONA-Xときて、KICK THE CAN CREWの「マルシェ」と繋いでいた。軽い驚きを味わう。そのままRIP SLYMEの「FUNKASTIC」〜「楽園ベイベー」といって、何か忘れたけど1曲挟み、DA PUMPのだいぶ古い曲を流していた。ずいぶんと自由な雰囲気だった。


さてさて、ライブの1発目はS.L.A.C.K.から。参考にしている日本語ラップブログでもかなり好意的に書かれていて、気になっていたラッパーではあった。ただ、ジャケットが自由すぎて購入意欲が湧かないのだけど。

【S.L.A.C.K.】 01:21〜01:38
白い無地のTシャツにベースボールキャップをかぶった小柄なMCが出てきて、ダレ気味にラップを始める。中学や高校だったならばさしずめ"学校行事なんてかったるくてやってられっかよ"タイプだ。年季の入った反抗期を楽しんでいるよう。ラップは何をいっているのかほぼ聴き取れない。音源は評価されてもライブ自体はアマチュアレベル。菅野美穂がどうたらというラインだけは辛うじて記憶に残っている。

我慢して聴いていたのは、バックDJを務める実兄punpeeが時に裏声のコーラスを入れたりしながら楽しげに音をいじくっていたから。トラックも全てパンピーに任せているのかは知らないけれど、ボトムの重い曲が多く、その点では楽しめた。

ああ、そういえばどうにも邪魔な助太刀ラッパーがひとり加わっていて、なんでも明朝早くからバイトが入っているにもかかわらず来たのだいう。何と迷惑な話だろう。


                                     【EI-ONE】 01:39〜01:51
彼のライブを見るのはかれこれ3回目ぐらいだけど、うまいラップをすると毎回感心させられる。だみ声なんだけど、フロア中に響き渡る声で、リリックも聴き取りやすいし、音にも乗っているし、何よりライブならではの熱さがステージから放射されているのが分かる。でも、何か新しい表現を模索し生み出すタイプではなく、器用貧乏のイメージを拭い去ることができない。パーティには欠かせないラッパーだとは思うけど。


【COPPU】 01:52〜02:12

コップのライブを見るのは初めて。足元は可愛らしくビーズの付いた金色のバレエシューズタイプの靴、ブルージーンズ、黒のパーカー、中はTシャツ。当然ヘソ出しなんてなし。髪はそっけなくポニーテールにまとめて、ただ私のラップだけを聴いてスタイルだ。6月中旬に出るミニアルバムからの曲を中心にライブをしていたのだけど、正直ビートには乗れていないし、言葉の選択にハッとさせられることもない。日記の延長のようなリリックを真摯に吐き出し、ひとりひとりに届かせようとしている姿勢には好感が持てた。これはこれでアリなのかもしれないとも思った。


再びDJタイム。今度はDJ 49。硬派な日本語ラップを中心に回していて、途中で何を思ったかbonobosの「THANK YOU FOR THE MUSIC」を流した。音楽ファンのアンセムと思っていたが、さにあらずのようで誰ひとりとしてハンドクラップをせず、戸惑った表情を浮かべていたのが印象的。ドン・ドン・パ、ドン・ドン・パってフェスなら絶対にすごいうねりになるはずなのに。最後に流していたBUDDHA BRANDの「DON'T TEST DA MASTER」が一番盛り上がっていた。


【降神】 03:11〜03:54

そしていよいよ真打・降神の登場。まずDJがひとりだけ出てきて、テクノっぽい音を繰り出す。闇がしだいに深まっていく(単に照明が落とされただけともいう)。DJが音を鳴らし始めて4分が過ぎた頃、ステージ左手よりなのるなもないが姿を現した。

パフォーマンスをしているのは分かるのだが、内容までが伝わってこない。なのるなもないの魅力のひとつ、深く豊かな声が影を潜めている。以前に比べれば最近は頻繁にライブをしているようだけど、どうしたのだろう。うねるように絡みつくように言葉が吐き出される曲だっただけに、存分に彼の声と言葉を浴びたかった。

右手から志人が現れ、鳴り渡るのは「EUFORIA」のイントロ。志人は安定した声で安心する。

いつも通りアカペラでのふたりのやりとりを経て、水の音に導かれて始まったのは初めて聴く曲。志人は冒頭で歌う。"ねぇ忘れてしまったことばかり この星を置いていくのかな"。トラックはひたすらシンプル。浮遊感のあるキーボードと水音、リズムを置くためだけのビート。しかし、"いつか地球になる前に いつか宇宙になる前に いつかひとつになる前に"とフックで歌われるように、その上に乗る言葉は徐々に壮大になっていく。メロディのある"歌"が曲をほぼ占め、またふたりの歌い方のせいかどことなくTHE BOOMを彷彿とさせた。最後は、"浮かび上がるたまゆら"で終わる。

【追記】2013.11.22
この曲は「アイオライト」。

4曲目の「今此処 〜Here Now〜」は志人の今月頭に発売されたシングルのカップリング曲だが、それほど高速ラップに思えないのだけど、どうも舌がもつれている印象で言葉をファンブルし続ける。志人には珍しい。パフォーマンスしにくい曲なのか。

"ムカデに、トカゲ、木陰に隠れて おしゃべり土砂降りの雨が止んだら 〜"とアカペラで歌い上げるなのるなもない。張りのある太い声が戻ってきた。

短いアカペラに続くのはまたしても新曲。最近のふたりにしては主義主張がそれほど強くなく、"海帰りの体に心地良いよ 海と風の匂い"などどこか郷愁をかき立てるリリックが続く。なのるのもないの"大人になったな坊主 昔はこんなに小ちゃかったんだぞ"のラインは志人っぽさがある。とても短い。

間髪入れずに和のテイストがやや強めのシンプルなトラックの新曲が始まる。もしかしたら上と一緒の曲なのかも。TempleATSのトラック陣のセンスの良さを実感できる。"寂しいと悲しいが襲ってきたけど 嬉しいと楽しいを思い出して追い出した"というなのるなもないの一節はパンチライン。志人は"発電所が建つんでしょ"とあるように最近のモードである自然志向がやや顕著に。

次は、ライブでは必ずといっていいほど披露されるJemapurの「Birds Sanctuary」を使った曲。小鳥がさえずり続けるトラックで、いい加減曲タイトルを知りたいものだ。たたみ掛けるように歌われる"風がそよぎ草は踊る 春の夜に〜"のところで、なのるなもないが再び苦しそうに声を出す。もしかして体調が悪かったのか。

8曲目は中野で志人のソロライブを見たときに13分と長尺バージョンでやっていた曲。最初に、"どの時代も人類が憎しみ合い殺し合いを止めないのは望みがない 〜"という演説で始まる。今回はなのるなもないのヴァースも入ったバージョン。昨年のGeshi Fes.でもやっていた(自分の過去記事を見て確認)けれど、あの時もふたりバージョンだったのかな。フックは、"踊ろうよ 全ての命と 望もうよ 壮大な世界を 誇ろうよ 後悔のないよう この世は君が主人公"。

締めはお馴染みの「帰り道」。最後はなのるなもないの"さよならはいわずにまた会いましょう"で終了。


久し振りの降神のライブだったのでかなり楽しみにしてはいたのだけど、先日の高円寺で行われた志人のソロライブの評判を聞いていたので、戦々恐々な気持ちもあって、不安と渇望が渦巻いていた。でも始まってしまえば、いかにも降神としかいいようがない独特のパフォーマンスと空気感に圧倒され、また志人の環境保護・平和希求のメッセージはなのるなもないがいることである程度中和されていたようにも感じた。ただ、そのなのるなもないが本調子でなかったのが残念。いつもパーフェクトに近いライブを見せる降神なだけに非常に珍しい事態だった。

初めて聴いた曲もあったし、アルバム1枚分ぐらいはもう余裕でたまっていると思うのだけど。オリジナルアルバムが難しいなら、曲間のアカペラもしっかり収めたライブアルバムを出して欲しい。切に願うよ。


降神とは関係ないが、DARTHREIDERが降神のライブ中ずっとしゃべり続けていたのが迷惑だった。後輩だか知り合いだか知らないが、その彼がダースレイダーの知り合いのダンスの先生の教え子においたしたことに、それはどうなんだと説教まがいの口調で話し続けていたわけだ。まあ、クラブが彼らにとっての職場であり社交場だということは分かるけど、込み入った話は外でやって欲しい。せっかくのすばらしいライブが披露されているのだから敬意を払うべきだ。


1.新曲 / なのるなもない
  ("人生は待ったなし"、
  "誰もが止まらない列車の中")
2.EUFORIA / 志人
3.アイオライト / なのるなもない with 志人
4.今此処 〜Here Now〜 / 志人
5.新曲 / 降神
6.新曲 / 降神
7.?(Jemapurの「Birds Sanctuary」)
8.新曲 / 降神
9.帰り道 / 降神



                                    【CHIYORI】 03:57〜04:23
何回かライブを見ているけれど、毎回思うことはひとつ。声がうるさい。表現力なんていう高い次元にはまだまだ到達できず、声を張り上げるものだから耳を塞いでやり過ごすしかない。ただ、トラックがとても良い。行きの電車の中でSLUM VILLAGEの2枚目を聴いていて、ひとつひとつのビートにこれほど表情を付けられるのかと感嘆していたわけだけど、彼女の「悲海」を聴いていると、それに近いことができていて、彼女を取り巻く環境の良さに感心してしまう。
2009.05.30 Saturday 23:59 | 音楽 | comments(6) | trackbacks(0)
フジファブリック『CHRONICLE』

2009年5月20日リリースの4枚目のアルバム。

アルバムが出れば毎回聴いているし、評価の高いバンドだってことも知っているが、どこかピンとこなかったグループ。前作なんて箸にも棒にもなアルバムで今作はさすがに止めようかと思ったのだけど、これがなかなか楽しめる作品になっていて驚いた。

曲単位で感心したのは少なかったが、アルバム1枚を聴き通すと色々な味を堪能できる幕の内弁当のようで、飽きることなく最後まで聴ける。メロディの立っている曲が多いことが功を奏しているのだろう。とはいっても独創的なメロを作っているわけではなく、ありがちなコード進行にどこかで聴いたことがありそうなメロが付けられているわけだけど。ただ、ポップで気持ちの良い旋律であることは変わらず、素直に楽しめるのだ。M14「ないものねだり」のサビメロはすばらしかった。

アレンジはギターとキーボードの比重がアルバム全体で見ればうまく調和が取れている。また、ヘビーロックをパロディにしてみたり、レイディオヘッドのように歌ってみたり、くるりらしさがあったり、サザンオールスターズやビートルズがちらりと垣間見られる。前作でも感じたバンドブーム期の音は今作でもところどころで感じられ、特にユニコーンの影響が強いよう。

歌詞が後ろ向きで、さらけ出し過ぎなところも悪くなかった。M4「Monster」の3番は使い回しではなく、新たな歌詞で歌ってくれたら良かった。
2009.05.29 Friday 23:59 | 音楽 | comments(0) | trackbacks(0)
桐野夏生『東京島』

読了。
☆☆/5点中

第44回谷崎潤一郎賞受賞作品。

************************************
32人が流れ着いた太平洋の孤島。女は清子ひとりだけ。いつまで待っても助けの船は来ず、いつしか島をトウキョウ島と呼ぶようになり、サバイバルライフが始まる
************************************

1年ほど前に発売された時に結構話題になり、気になってはいたが未読だった作品。本作のベースになった「アナタハン島事件」(マリアナ諸島の島に、日本軍兵士30人と民間人の日本人男性ひとり、日本人女性ひとりの計33人が太平洋戦争中の1944年から1951年まで共同生活を送っていた事件)を本作の紹介記事で知り、余計に読みたい読みたいと思っていたので、ちょっとばかしがっかり度が大きかった。

男だらけの中に女性がひとり。派閥が生まれ、しかも数人の中国人までやって来る。おいしい要素だらけなのに、どうにも料理の仕方が雑で、元気良くほおばれなかった。『OUT』以降の桐野夏生を読まなくなったのは、適当なところでお茶を濁してしまい、せっかくの良い素材を生かしきれないからなのだけど、本作もやっぱり同じだった。倍の分量で本人も嫌になるぐらい人間のドス黒くていや~な一面を克明に書き込んでいれば傑作になったと思うだけに残念。

これで賞が取れたのか。すごいね。
2009.05.29 Friday 23:58 | | comments(4) | trackbacks(0)
SEEDA『SEEDA』

2009年5月20日リリースの6枚目のアルバム。

6枚目にしてついに自身の名前をアルバムタイトルに持ってきたわけで、自信作なのだろう。実際に、SEEDA作品の中でもよくまとまっているし、『街風』で表現しようと試みたという"ここ3年間ほどのごく普通の日々"がここにきてようやく完成をみている。どの曲もユーモアが感じられ、サラッと最後まで聴き通せるし、何度繰り返しても飽きのこない作品である。

セカンドアルバム『Green』までの高速ラップからリリックを聴かせるスタイルに変更し、姉の死という重い過去を描くことで自身の内面をさらに深くえぐったサードアルバム『花と雨』、土俵をメジャーに移し、様々なアーティストとコラボレーションを果たすも、同時にストレスも抱え込んでしまった4枚目の『街風』、そのリリース後にすぐさま制作に入り、そこでの葛藤を言葉にし、やや混乱が垣間見られた5枚目の『HEAVEN』。

そして、引退宣言と共に発表された本作は、前作同様に空をまぶしそうに見上げるシーダがいれば、楽しそうに夜遊びを満喫する姿も描かれ、またオチを探す夜のドライブに気の置けない仲間と出かけ、かたやお馴染みの一服もある。

本作で一番ぐらいに気に入ったM12「JUST ANOTHER FEELING」でのリリック──"生き方を決めつけた日もあった だけど全て取っ払ったら楽しくなった"のラインに象徴されるように、どの曲でもどのテーマでも楽しそうにラップをしている。『HEAVEN』にあった辛さが今作では微塵も感じられない。ビーフについて書かれた彼のブログ記事に、マイナスの思考をできるだけ排除したという趣旨のことが書かれていたが、こういうことだったのかと納得できた。

それと、今作で顕著になったのは、力強いメッセージを発し始めたことだろう。客演仕事では以前からそういったラップを垣間見せていたが、自分のアルバムにも率直な言葉で語り始めたのはとても良い変化だ。

サイプレス上野が参加したM6「HELL'S KITCHEN」では、"俺らは次に何を残せるのか"と年相応の責任を意識し、また社会批判という言葉を使うほど大袈裟な曲ではないが、今の政治を見ていれば誰しもが漏らしてしまう愚痴をM3「DEAR JAPAN」では素直に吐き出している。

ビールを飲みながらつまみにニュース番組を見ているとついつい出てしまう愚にもつかない独り言のたぐいだ。"しょうがなねぇなぁ、麻生の腰抜けぶりは。オバマを見習えって。政治は信念とそれを思い描かせる言葉だろう"、といった。曽我部恵一が2001年末に緊急発売した「ギター」で歌われていた、"そしていまギターを弾いている / テレビではニュースが流れている / 戦争にはちょっと反対さ"と近いものがある。自分で何かデモのような行動するわけではないが、それでも表現者としては呟いてみたいものだろうし、そのメッセージは普通の人がテレビ画面に向かって突っ込みを入れるよりも遙かに射程距離が長いのだ。

ラップスタイルも以前のような早口を取り戻してみたり、得意の変則フロウを披露しつつ、オートチューンで歌ってみたりと飽きさせない。

悪いところのないアルバムのようだが、不満な点はトラックにある。きらびやかな電子音で飾り立てたトラックが好みではないのは置くとして、低音の軽さが最後まで気になった。ビートに重さが感じられないのだ。軽い声質のシーダとの相性を考えれば、このビートは意図的なものなのかもしれないが、ダンスミュージックとしての側面を考えると不満が残る。

街風』でもいい仕事ぶりを見せたFocisが手掛けたM5「SO HIGH」は愉快。それとBACH LOGICの変則ビートが冴えるM7「オチツカネエ」ではESSENCIALの珍妙なフロウの人が気になった。シーダをさらに変にした感じが面白い。ビートとぴったり寄り添うラップが味わえるM10「BLUE BIRD」も気に入った。歌ってもうまいSKY BEATSによるM12はとても良かった。

亡き姉のことを歌い、感傷に走りすぎた照れからか、蛇足的に置かれたM14「6 MILLION WAYS」だが、最後に一ラッパーとしての想いを吐露して終わるのも彼らしいのかもしれない。


引退宣言をしたシーダだが、音楽家の引退宣言はプロスポーツ選手のそれと同じように考えてはアホを見る。特にラッパーの言葉ほど信用のおけないものはない。アメリカであれほど引退宣言が出ているのに、日本で今までなかったのが不思議なぐらいだ。

彼は感情を言葉にして吐き出す、根っからの表現者だろうし、色々溜まってきたらきっと戻ってくるに違いない。その日を楽しみにしている。


【追記】2009.07.08
よく見たらM14はボーナストラック扱いだった。蛇足はいい過ぎでした。終わりよければ全て良しなアルバム。


2009年6月1日付オリコンアルバムチャート。
初登場第33位。初動3134枚。初動は前作より309枚増。
2009.05.28 Thursday 23:59 | 音楽 | comments(4) | trackbacks(0)
安藤裕子@代々木公園野外音楽堂

タワーレコードとNIKEによるフリーライブ「NIKE TERMINATOR presents "PLAY HARD." FREE LIVE supported by TOWER RECORDS」に行った。

代々木公園の野外ステージ前に着くと、ちょうど前のグループの演奏が終わった後のようで、意外にスピーディな進行に安藤裕子のライブが終わってしまったのではと心配になるが、しばらくして次は安藤裕子と案内され、ひと安心。

18時47分、薄暗くなり始めたステージに安藤裕子が姿を現す。1曲目は「蒔かれた種について」。音源と同じように音数が少なく披露されるものだから、屋台の呼び子の声に邪魔され、それまで見ていた歩道橋の辺りからもう少しステージに近づいたところで見ることに。かき消されがちだった安藤の声がくっきりと聴こえるようになる。

続いて「summer」を歌う。リリースしたばかりのベストアルバムに収録されていたとはいえ、2曲とも6年も前のデビュー作品からなわけで、選曲がマニアックすぎ。聴けたのは貴重だったのかな。

"うっすらとスターライツ! あぁ夏が始まる"と歌われるすごくいい曲なんだけど、代々木のあのエリア全体を魔法にかけるほどではない。

3曲目は「パラレル」はテンポのいい曲で、より感情のこもった力強い歌声が響き始める。ゆっくりとだが少しずつ魔法がかかっていく。でも野外よりは屋内の音響の良いホールで聴きたい気分ではある。

メンバー紹介──キーボード・山本隆二とギター・山本タカシ──と唯一のMCを挟んで最後の曲へ。まだ名前が決まっていないという新曲を披露。

"命って何 それは燃やし続けるものなの"と弾むように歌い始めるその曲はやがてゆったりとしたパートを挟みつつも、いかにも安藤裕子といったメロディをなぞっていく。そして最後で唐突にユーモラスなカズーの音色を響かせて終わる。親しみやすいメロディの曲だった。

19時14分終了。


結構早めの転換で、19時26分にトリでGRAPEVINEのステージがスタート。ずっと前に一度だけライブを見たことがあり、その頃は真面目だったので予習としてアルバムを数枚聴いてから望んだのだけど、生も音源でもさっぱりその魅力が分からなかったという覚えがある。今回もまさにそう。演奏がうまいとも思えないし、第一メロディに全くといっていいほど魅力がない。でもトリということもあってか、結構な盛り上がりをみせていた。何がいいのだろう? ビートに合わせて飛んでいる人ひとりひとりに問いつめたくなった。というわけで早々に退散。


1.蒔かれた種について
2.summer
3.パラレル
4.新曲
2009.05.27 Wednesday 23:59 | 音楽 | comments(0) | trackbacks(0)
inori『Blooming Jazz』

2009年3月11日リリースのファーストアルバム。

"美しいメロディにJazzの魅力を最大限に盛り込んだ確かなサンプリング・スキル。軽快なリズム上を泳ぐメロウでスムースなライムはポップな魅力をも併せ持つJazzy Hip Hopの枠を超えクロスオーヴァーな新たなシーンを切り拓く、2009年待望の新星"らしい。


宣伝文句はさておき、結論から書いてしまえば、やりたいことは分かるけどもうそれはヒップホップではないよねというもの。ヒップホップの枠を大きく捉えたい側に身を置いているつもりではあるけれど、本作の特に前半の曲はジャジーヒップホップというよりもジャズの音の上でラップをしているだけ。Guruと比較するのはかわいそうなので止めておくが、せめてビートだけは重くして欲しかった。

トラックの上音自体は悪くない。軽やかにサックスやトランペットが吹き鳴らされ、鍵盤が華麗に踊る。客演の女性ボーカルも爽やかさやらオシャレ感を助長させている。最初に挙げた不満はボトムの軽さだったが、もうひとついわせてもらえれば、ラップがトラックと合っていない。t-Aceを彷彿させるような男前の声質がオシャレトラックに乗せられるものだから、食い合わせが非常に悪い。さらに恋愛からオレオレ節までテーマは比較的広く取っているものの、切り口がありきたりで、その上フロウに幅がなく眠気を誘う。英詩ならBGMとして最適だったろうに。

耳に残ったリリックは、"俺がTOKYO SAMURAI勝負師 不安なら紹介するぜ行政書士"。しっかり踏まれているわけだけど、何とやら。


デビュー作を悪し様に書いても不毛なだけなのでこの辺で止めておく。何気なく手に取った1枚だったが、収穫があったとすれば本作について書いた記事を探していたら、日本語ラップに特化した上質なブログに出会えたことか。
2009.05.25 Monday 23:59 | 音楽 | comments(4) | trackbacks(0)
第62回カンヌ国際映画祭

2009年5月13日から24日にかけて開催された同映画祭の受賞作。

コンペティション部門
審査員長はフランス人女優イザベル・ユペール。

<候補作>
白いリボン
『抱擁のかけら』
『フィッシュ・タンク 〜ミア、15歳の物語』
『預言者』
『愛の勝利を ムッソリーニを愛した女』
『ブライト・スター 〜いちばん美しい恋の詩(うた)〜』
『ナイト・トーキョー・デイ』
『A L'Origine』
『ウッドストックがやってくる!』
『エリックを探して』
『スプリング・フィーバー』
『キナタイ -マニラ・アンダーグラウンド-』
『エンター・ザ・ボイド』
渇き
『風にそよぐ草』
『The Time That Remains』
イングロリアス・バスターズ
冷たい雨に撃て、約束の銃弾を
『ヴィサージュ』
アンチクライスト

パルム・ドール
白いリボン

グランプリ
『預言者』

審査員賞
『フィッシュ・タンク 〜ミア、15歳の物語』
渇き

審査員特別賞
『風にそよぐ草』

監督賞
ブリランテ・メンドーサ監督 『キナタイ -マニラ・アンダーグラウンド-』 (フランス・フィリピン)

男優賞
クリストフ・ヴァルツ 『イングロリアス・バスターズ

女優賞
シャルロット・ゲンズブール 『アンチクライスト

脚本賞
メイ・フォン 『スプリング・フィーバー』 (中国・フランス)

カメラ・ドール
『Samson and Delilah』 (オーストラリア)


ある視点部門

<候補作>
『À Deriva』 (ブラジル)
『Amintiri din epoca de aur』 (ルーマニア)
『Demain dès l'aube』 (フランス)
『Eyes Wide Open』 (イスラエル)
『Independencia』 (フィリピン)
『Irène』 (フランス)
ペルシャ猫を誰も知らない』 (イラン)
空気人形』 (日本)
籠の中の乙女』 (ギリシャ)
『あの夏の子供たち』 (フランス)
『Los viajes del viento』 (コロンビア)
『Morrer Como Um Homem』 (ポルトガル)
母なる証明』 (韓国)
『Nang mai』 (タイ)
『Politist, Adjectiv』 (ルーマニア)
『プレシャス』 (アメリカ)
『Samson and Delilah』 (オーストラリア)
『Skazka pro temnotu』 (ロシア)
『Wit Licht』 (オランダ)
『Tsar』 (ルーマニア)

ある視点賞
籠の中の乙女
2009.05.25 Monday 00:00 | | comments(0) | trackbacks(0)
島本理生『大きな熊が来る前に、おやすみ。』

読了。
☆☆☆/5点中

表題作は、恋人の徹平と暮らし始めて半年になる主人公"珠実"の物語。2篇目の「クロコダイルの午睡」は、苦手だったはずの大学の同級生・都築君と次第に仲良くなっていく霧島の話。最後の3篇目「猫と君のとなり」は、中学時代の部活の後輩・荻原君とつきあい始める志麻の話。短篇集。


あとがきに、"それぞれ独立した物語でありながら共通のモチーフ"で書いたとある。具体的には書かれていないのだけど、1篇目と3篇目はそれぞれ女主人公に彼氏が狂気の表情を一瞬のぞかせ、また2篇目では女主人自身が相手との間合いをはかれずに瞬間的に深い闇を見せる。

物語自体は女性作家らしく淡く心模様が綴られていきながら、油断をした隙にグッと闇がちらつく辺りが、次作の『あなたの呼吸が止まるまで』と共通している。表題作での父親との関係には何やらがもっとあったのでは思うとさらに恐ろしさが増す。しかも物語の形を取っていながら、私小説的な重みまであるから、作品自体は薄いのに読み応えがある。
2009.05.24 Sunday 23:59 | | comments(0) | trackbacks(0)
加藤ミリヤ×清水翔太『Love Forever』

2009年5月13日リリースのコラボレーションシングル。

1988年生まれの加藤ミリヤと早生まれのために彼女とは同級となる清水翔太による共同作業。表題曲のM1とM2「Looking your eyes」は共にふたりが作詞作曲。M3「I'm Your Angel」はR.KellyとCeline Dionによる1998年のデュエット曲。

テレビでふたりがM1を歌うのを何回か見たのだが、いみじくも同居人がいい放ったがごとく、両人ともカラオケでちょっとうまい人程度でしかない。あの人だったらこの難しい曲も歌えちゃうかもね、歌ってもらおうよといったレベルだ。

ただ、音源で聴けばもう少し改善されていて、曲としては我慢して聴ける水準のものが仕上がっている。そこに深みを与えるほどの歌唱力が付与されているかといえば、それはかなり怪しい。もう少し若さが弾けるタイプの曲だったら、その辺りをカバーできたかもしれない。M2で聴ける清水翔太のラップは老婆心からいわせてもらえれば二度と披露しない方が良い。歌の実力まで疑われる。

カバー曲のM3については口を閉ざすに限る。
2009.05.23 Saturday 23:59 | 音楽 | comments(13) | trackbacks(0)
Superfly『My Best Of My Life』

2009年5月13日リリースの7枚目のシングル。

テレビドラマの主題歌にもなっている表題曲M1は、Superflyのかつての片割れ・多保孝一が作曲していながら、ただのポップスになってしまっている。いくら聴いても印象に残らない。つまるところSuperflyらしさが消臭されている。

その安全策なアレンジに反発するかのように、M2「Welcome To The Rockin' Show」ではロックンロールな曲調をもってきているが、気合いの入った越智志帆のボーカルは味わえるものの、面白味に欠ける。表題曲にいにしえのロックを甦らせてこそ、Superflyに存在意義がある。

カップリング恒例のカバー曲は、1973年のRick Derringerによる「Rock And Roll Hoochie Koo」(M3)。サポートメンバーが微妙に豪華で、ギターがMO'SOME TONEBENDERの百々和宏、ベースはストレイテナーの日向秀和、そしてそしてドラムが元Blankey Jet Cityの中村達也。

残念なことに音の抜けが悪く、ベースはよく響くのだが、奔放なドラムプレイを堪能できない。叫びのみ。実力者を揃えたのだからシンプルに録れば良かったのに。
2009.05.23 Saturday 23:58 | 音楽 | comments(0) | trackbacks(0)
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