去年に引き続き、今年もエコとはほど遠い人間ではあるのだけど、GeshiFes2009に行ってきた。起きたら大雨だったこともありグダグダしすぎてしまい、14時15分過ぎに到着する。音のセッティング中でオープニングアクトのATOMにどうにか間に合うことができた。良かった。
【ATOM】 14:25〜14:48
司会として夏至フェスの開会を簡単に告げた後に、そのままDJブースの後ろに立ちライブスタート。いつものやや安手なブレイクビーツが鳴り出す。ヴァースですごいライムをかましたかと思うと、フックで途端に子供の鼻歌のようになってしまう。クオリティの乱高下が激しい。SUIKAのフックはタケウチカズタケかTakatsukiが作ってるんだろうなぁ。足を取られそうになりながらも強引に突き進んでいくヴァースでのラップスタイルは唯一無二で魅力なんだけど。
1.? ("雲よりも山よりも星よりも***"
というフック)
2.デイ・トリッパー
3.? (高尾山で天狗に出会った話)
4.SHIVA
5.Image
【中ムラサトコ】 〜15:26
アトムのステージが終わったのが14時48分。隣駅の恵比寿ではwenodでShing02が1日店長をしていて、15時から1回目のインストアライブの予定だった。行くか行くまいか悩んだ。端の方でどうすんべかどうすんべかと悩んでいたら、ステージ上からいい感じの太鼓の音と声が聞こえてきて、結局恵比寿には向かわず、中ムラサトコというアーティストのライブを最後まで聴き入ってしまった。
足踏みオルガンをメインに、時に太鼓を叩き、声を同期させたりとたったひとりでのパフォーマンスにもかかわらず、音の不足感は微塵もなかった。オルガンの弾き語りになると矢野顕子が見え隠れし、声を幾重にも重ねていく辺りではビョークやケイト・ブッシュを彷彿とさせる。ただ、それ以外にも引き出しが多くて、聴き手を圧倒させる歌唱力・表現力がある。それと同時に親しみやすさも合わせ持っていて、最後の最後まで楽しめた。アルバム買っておけば良かったなと後悔。
歌う題材も面白く、まさかイモムシの恍惚の声を聴くことになるとは思わなかった。
1.鳥の歌
2.あかつきの唄
3.ホームレスのラブソング
4.イモムシの歌
5.あめんぼうの歌
6.旅の歌
7.夕げの香り
8.? (寿町にある空中庭園の歌)
【9dw】 15:36〜16:19
読みは"ナインデイズワンダー"というらしい。ナインスワンダーはお気に入りプロデューサーのひとりだけど、ナインデイズワンダーは初耳。アトム曰く、注目のインストバンドらしい。
このバンドの要はドラムだ。ドラマーが本当にすごい。ジャストなタイム感から生み出されるビートは非常にさわやかで、ごり押しなグルーヴではないのだけど気づくと体が揺れている。中盤以降ベースは辛うじてドラムと絡んで曲の下支えをしていたけれど、でもギターとベースはこのドラマーと一緒のバンドでやるには実力不足だろう。せっかくのビートを生かし切れていない。同じような曲が多いし、展開もワンパターンに陥ってしまっている。
もっとひらめきのあるギターリストや素敵なベースラインを爪弾けるベーシスト、スペーシーな味付け以外もできるキーボーディストとやったらどんな演奏になるのだろう。
【TempleATS】 16:33〜17:33
司会のアトムが紹介する。"確実にこのイベントの山の頂上のひとつです"。
DJブースにはDJ SHUN、DJ 440(ヨシオ)、KOR-1の3人が音を繰り出し始める。まろやかなビートがゆっくりゆっくり代々木公園をヒップホップで満たしていく。
4分が過ぎようとしたころ、舞台袖からMaryJoy所属になったCHIYORIが登場。3人の音に臆したのか中央に出ることなく、舞台端でディレイのかかったマイクから遠慮がちに歌声を乗せる。そのままフェードアウトしてくれれば、降神の時間が増えていいのにという祈りも空しく、「星降る夜に」と「CALL ME」の2曲を披露。狭いクラブでは耳にキンキンと突き刺さる歌声も野外では幾分緩和されていたので助かった。
CHIYORIはそのままステージに残り、首の後ろにツバの大きな麦わら帽子をひっかけた志人が、"いってきまーす"といいながら現れる。曲はもちろん「円都家族」。父母のセリフとして入る"お家に帰ろう"のコーラス部分を担っていたチヨリにようやく存在意義を見出す。音源もチヨリでやれば良かったのにとすら思った。最後の"もう朝"のところのメロディもチヨリのコーラスが入り、いつもと違っていた。
その"もう朝"に呼応して、totoさんが"おはよう"といいながら、志人とチヨリが去ったステージに入ってくる。続いてなのるなもないも姿を現し、演奏したのは当然「まわらないで地球」。
去年の夏至フェスでもやったけれど、あの時は条件が悪かったが、今回は存分に味わえた。なのるなもないは
先日のライブとは違い、声に張りが戻っていた。太さと繊細さが合わさった絶妙なラップと、totoさんのしなやかでいながら結構力強いポエトリーとが融け合い、なんとも気持ちの良い空間になる。このふたりの曲をもっと聴きたい。
totoさんが引っ込み、志人がひょうたんを片手に現れる。ついに降神のふたりが揃う。一発目は
先日も披露していた新曲。"海帰りの体に心地良いよ 海と風の匂い"というなのるなもないの歌詞がある曲。最初に聴いたときは、途中で入る和な旋律のところで終わりで、そこから別の曲になるのかなと思ったけれど、今回も同じだったということはひとつの曲なのだろう。
アカペラなしでそのままJemapurの「Birds Sanctuary」を使った曲へ。ライブではお馴染みの曲だが、いまだに曲名を知らないのは不便でならない。フックに入る直前のブリッジで、センスオブワンダーと入れるのを聴くのは初めてだったかも。
"ムカデに、トカゲ、木陰に隠れて 〜"で始まるアカペラでの掛け合いをした後に、なのるなもないが退場。ふたりがすれ違うときに、後ろ手に手を繋いでから名残惜しそうに別れていた。こういった信頼関係の強さや仲の良さをライブでよく目にするのだけど、なんだか温かい気持ちになれていいのだ。いささかボーイズラブっぽいとも思うけど。
麦わら帽子を目深にかぶった志人はひとりで「今此処」をパフォーマンス。やっぱりリリックを全て聴き取ることはできなかった。トラックとぶつかり過ぎていた印象。
志人が消えた袖から再びtotoさんが登場。"そして物語は続いていく"。即興で軽く一節を諳んじた後に、"ハイビスカスはね、大きくひとつ咲いてシュッと散るんだ / Goodbye Everyone"とトラックに乗せ始めたところで、なのるなもない、tao、志人が次々と姿を現す。2年ほど前のなのるなもないの
ソロライブ後に音源で流しているのを一度だけ聴いたことがあった、あの曲だ!
【追記】2013.11.22
「アイオライト」
"いつか地球になる前に いつか宇宙になる前に いつかひとつになる前に"と歌われたフックでようやく思い出したが、この曲は
先日の渋谷RUIDO K2でもふたりだけでやっていた。
その時は本当は4人バージョンで完成をみるあの曲だとは気づきもしなかったけど。totoさん→なのるなもない→tao→志人で繋げていく。taoだけが残念なラップだったが、トラックのシンプルさも魅力だし、メロディもいいしで、録音済なら早いところ発表して欲しい。taoのラップは鼻声ラップをよりわざとらしくした感じで、声が通りにくく、印象が悪い。そのファニーな声に周りでは失笑が漏れていた。
志人、tao、totoさんが去り、がらんとしたステージでなのるなもないがソロ曲を始める。"祭りが終わる 音楽が終わった後の静けさだけが残る"。「クロスケ」だ。進行具合とリンクさせるためか、後半部分だけを披露。この日のなのるなもないは本当に良くて、「月曜日の夢追い人」や「shermanship」、「夜の太陽」といった曲も聴きたいぐらいだった。
また降神での新曲。よくライブでやっているので新曲でもないんだろうけど。"踊ろうよ 全ての命と 望もうよ 壮大な世界を 誇ろうよ 後悔のないよう この世は君が主人公"とフックで歌われる曲。今回は、"この世の全ての出会いとは合縁奇縁なる出会いの倫理"で始まる志人のアカペラでスタート。この世界観は日本では降神ぐらいだろう。凡百のヒップホップからはかなり逸脱しているが、確かなライムと歌唱力、表現力で強烈な説得力を生み出している。胡散臭さがあってもいいからこの世界観でコンセプトアルバムを作って欲しいようにも思う。1枚作ってしまえば、次の局面に行けるのかもしれないし。
【追記】2013.11.22
コメント欄で「return to the childhood」と教わる。
「帰り道」の前のアカペラ──"(志人)野を越え (tao)山越え (なのるなもない)谷越え (totoさん)川を越え (志人)ありがとうへ (tao)さようならへ (なのるなもない)おかえりへ (志人&CHIYORI)ただいまへ (皆)旅立とう"──では、この日ステージに立った全員が揃い踏みで代々木公園を震わす。そのままビルドアップバージョンの「帰り道」へ突入。
"ありがとう また会いましょう / 出会いはいつも僕らに感動をくれた"
きっかり60分のライブは客演が入ったことで降神だけでは幾分重くなりすぎなステージを軽やかなものにし、さらに志人の変化自在なフロウとなのるなもないの情熱的なラップを際立たせた。ゲストが多いからといって、演劇をみているようなスムースで完璧なステージ進行にいささかの狂いが生じることはなく、計算された曲順とゲストのタイミングにはいつになくワクワクさせられた。そして、なによりふたりの調子が良かったので、会心のパフォーマンスを見られた。最後に「帰り道」を聴くと毎回思うことだけど、こちらこそ"ありがとう"の気持ちでいっぱいになる。
1.DJ SHUN, DJ 440 & KOR-1によるセッション
2.星降る夜に / CHIYORI
3.CALL ME / CHIYORI
4.円都家族 / 志人 feat. CHIYORI
5.まわらないで地球 / なのるなもない feat. toto
6.新曲 / 降神
7.? (Jemapurの「Birds Sanctuary」) / 降神
8.今此処 / 志人
9.アイオライト / なのるなもない with toto, tao & 志人
10.クロスケ / なのるなもない feat.DJ SHUN&DJ 440
11.return to the childhood / 降神
12.帰り道 / 降神 feat. tao, toto & CHIYORI