「超・ライブへの道 Vol.1」に行ってきた。
渋谷の駅前で胡散臭くもうっとうしく演説する幸福実現党の学生支部リーダーの言葉に顔をしかめつつ、「Shibuya PLUG」に急ぐ。エントランスでこの日の一番のお目当てであるSamurai TroopsのミックスCDを首尾良く手に入れ、ビールでひと息つく。この箱は直方体で味気なくあまり好きではないのだけど、ハートランドをグラスで飲めるのがいい。ステージではちっちゃいながらもいかつい体付きの男がマイクを握っている。TARO SOULのよう。で、DJは今日の主催者KEN THE 390だったよう。
フロアはデイイベントのためか可愛く着飾ったお嬢様方が多く、若干怯む。日本語ラップメインのイベントといえば、帽子に金色のシールを貼り付け、頭の中身を磨くよりスニーカーを磨いて1日を終わらせてしまうような若者がそこら中でやたらと煙草を吹かしているようなのしか知らないので、何だか異次元。
目を白黒させながら前方に進むと、いきなりサムライトループスのライブが始まった。一番手とは予想していなかったので慌てる。
【Samurai Troops】 18:05~18:35
事前に彼らのブログでZOEが、"そういえばセミさん元気かな。何してんだろーな。"と書いていたので、SEMMYがいないことは分かってはいたけれど、4人しかフロントにいない今のサムライトループスはバランスが悪いと思ってしまうのは否めない。メテオもセミーもいた一昨年のO-Nestでの
ライブを見ておいて本当に良かったと改めて思った。
Y.O.Gが再三にわたり、"時間がないから"をMCで繰り返していたために、しゃべりの時間も少なくタイトに曲を進めていた。練習の成果が発揮されたライブだったのだろう。音源でも未聴のASAYAKE PRODUCTIONとサムライトループスが手を組んだ「A-Train Rana」を聴けたのは嬉しかったし、Michael Jacksonの「Rock With You」に差し替えた「街かどフィルム」も楽しめた。
日食を見に行き、真っ黒になって帰ってきたTakatsukiはATOMのお株を奪うかのようにステージを所狭しとピョンピョン跳ねて楽しそうだった。ZOMのコーラスはお世辞にも上手とはいえないのだけど、琴線に触れる瞬間が結構あって侮れない。ゾエの落ち着いたラップはトラックとの相性によって聞こえの違いはあるものの、がっちりはまったときはライブでも音源同様にその日本語ラップ然としたライミングを楽しめる。Y.O.Gは何だろう。自由行動しがちな4人を強引にまとめていた。とはいってもメテオもセミーもいないわけでSMRYTRPSの時のように個性的な面々がというわけではないのだけど。
「Keep Condition」を聴いていて、これぐらいをポップさのギリギリの限界にして曲作りをしたら、メジャーにはいられないだろうけど、ヒップホップグループとしては最高だったんだけどなとしみじみしてしまったライブだった。
1.Re:El Carnaval
2.ドロボーMCeez(トラック差し替え)
3.Keep Condition
4.BEATNIKS(フックのみ)
5.A-Train Rana
6.街かどフィルム(トラック差し替え、
Michael Jackson「Rock With You」)
7.Sa Yo Na Ra ~また、めぐり会えるから~
8.You
【Romancrew】 18:41~19:47
ロマンクルーのライブはちょこちょこ見ていて、音源もなんとなくは聴いているのだけど、1時間がっつり彼らのライブを見るのは初めてで、胸中では少しの期待とかなりの不安が交錯していた。
長丁場のライブではあったがセットリストの緩急、盛り上がり曲の配置など展開も良かったし、安定感のあるラップやフロアとの掛け合い、また盛り上げに徹するだけではなく、真摯に音楽に取り組む姿勢を語るMCなどもあり、好感が持てた。キャラ立ちも含めバランスのいいグループだと思う。
思うのだが、曲調に幅が生まれたことは結構なことなのだけど、彼らのいう"クロイ"音やサンプリングで攻めてくる曲が少なく感じたのは残念。幅を広げてもそれに納得できるほどの完成度があればいいのだが。メロウだけどしっかり腰にくるグルーヴがある「Dream」や「Love Comes & Goes」、力強いビートが曲を引っ張る「ロマンティック is Dead」などはライブで聴くとさらにその魅力が増していた。反対にギターリフが炸裂する数曲はどうにも面白味に欠ける。
Raphael Saadiqの「Oh Girl」をバックに流しながらMC("マイケル・ジャクソンがポップを完成させた"という意見には異論あり)をした後に披露した新曲の「My Girl」は私の好きな方向性の曲で良曲。冒頭の叩き付けるようなビートもサンプリングなのかな。叩き直した音のように思えるほど力強さがあって、あれが頭にあるから40年以上前の曲を下敷きにしても少しも古びることなく現代に甦らせているのだと思う。まさにサディーク。ALI-KICKの"ヘモグロビンが今にも踊りだす"のラインは秀逸。
「Love Comes & Goes」のエムラスタのヴァースで、"未来の自分が口ずさむのはこんな曲だった"のところで、差し込まれたのが、スチャダラパーと愉快な小鳥仲間たちの曲にも使われた名曲、FREEDOMの「GET UP AND DANCE」。そのまま彼らの「F.R.E.E.D.O.M」へ突入するという演出も面白い。
最後はタカツキの
サードアルバムに収録されていたSMRYTRPSとロマンクルーの合体曲「ロマンサムライ」。サムライトループスのステージではやらず、せっかく今日はロマンクルーもいるのに・・・と思っていた矢先だったのですごく嬉しい。
彼らのアルバムや
客演曲を聴いたり、ライブを見たりしていると、次第に将絢を気になり始めている自分に気づき、戸惑う。あの低音のラップは
初めて聴いたときから決してうまいとは思えなかったし、はっきりいえばお荷物とすら思っていたのだが、その立ち振る舞いやMCでの何気ないひと言などから抗いがたいスター性のようなものが少しずつ漏れていることに気づくのだ。
一度だけ見たことのあるORANGE RANGEのフロントマンのひとりでロン毛の彼に印象が近い。才能どうこうではなく、本人のオーラというか変な人加減が強い魅力で、そうなるとラップが意外にも下手に聞こえなくなるから余計に自分が嫌になる。
1.スーパークロイ(イントロのみ)
2.
3.First Song
4.Crossroad
5.Go For Broken
6.Blues Skywalker
7.Dream
8.わがままSOUL(新曲)
9.FLY HIGH
10.スープパスタ
11.ロマンティック is Dead
12.ロマンより愛をこめて
13.My Girl(新曲)
14.Love Comes & Goes
15.F.R.E.E.D.O.M
16.虹の交差点
17.ロマンサムライ (Astro MCeez)
/ SMRYTRPS + Romancrew
【ウチダマヤ】 20:06~20:40
次のケンザ390のステージで披露された「雨の日曜日」でようやく気づいたのだけど、ロマンクルーの将絢と一緒に客演していた"MAYA"というのが、この人だったようだ。
人前で歌える程度には歌唱力があるのだが、それを完全に発揮できるだけのメロディを持ち合わせていない。だから力が無駄に消費されるだけのライブだった。小箱で歌う歌手の歌メロはたいていがお粗末という法則にぴったり当てはまる。歌詞がいいならまた別の魅力が生まれようというものだが、その点でも陳腐さは拭えず、どうにも苦痛な30分だった。
歌を支える脇の音はびっくりするほど低音が利いたかっこ良さだっただけに余計にもったいない。
【KEN THE 390】 20:45~22:09
昨年のDa.Me.Recordsの
4周年パーティで25分ほどの短いライブを見たことがあって、そのときは最初のあまりに酷すぎる
衝撃をどうにか中和させた程度のものだったが、今回のライブを見てラップが下手ではないことは理解した。声に幅がないために、どうしても一本調子のラップになりがちなところは以前と同じだが、喉がずいぶんと強くなっていたのには素直に驚いた。
バックのDJ大自然とヒロロンが繰り出すビートの音は結構大きいのだけど、彼の声はそれに負けることなく言葉をフロアに届けていた。どの曲も音源よりずっと良かった。反対にどうしてこのライブでの勢いをレコーディングで盤に落とし込むことができないのか不思議ですらある。
さすが主役だけあって、この日一番の盛り上がりだった。MCでの煽りや語りもこなれた印象で、お約束ごともあるようだ。となりでリズムに合わせ手を上下に一生懸命振っていた女の子が日本語ラップのイベントではあまり見かけないタイプの子だったのだけど、それを端に見ながらダメレコのエースが日本のラップミュージックのエースになるべく少しずつ力をつけてきていることを実感。
今回のライブを見て確認したのは、彼の作り出す音楽への印象は初めて彼の
作品を聴いたときに抱いた感想と何ら変化はないなということ。ケンザ390の努力やライブへのひたむきな姿勢は評価できても、そのスタイルは好みではないし、相変わらずリリックに重みがない。その軽さが反対に求められているのかなとも思う。でも音源で聴いて感じる失望が少し癒されたのも事実だ。この日披露され、勢いだけは良かった「Supernova」や「続・超・ラップへの道」といった曲は次のシングルにも収録されるわけで、ライブでほとばしらせたツバや汗が音源にも封じ込められているといいなと思う。
アンコールでは、大学の同期でいいのかな、タロウソウルとDEJIが登場し、「続・超・ラップへの道」とその1作目の「超・ラップへの道」で大いに盛り上げた。まあどうでもいい話で、冒頭に少し戻るのだけど、ハチ公前で演説していた幸福の科学の学生支部のリーダーは開口一番、"早稲田大学4年のなにがしです"と始めていたのを、同じ早稲田出身の3人がフロアを熱狂させているのを見て思い出した。人生色々だなぁと。それとケンザ390のライブを見ると毎回思うことだけど、志人は2年半もよく一緒にやっていたなぁと。当時の音を聴いてみたい。
アンコール後は、この日の出演者全員で8小節ずつのマイクリレー。
ダメレコのパーティのときと同じ演出で、大団円が強く感じられるのがいい。Y.O.Gが8小節縛りだというのを知らずに続けようとして、"お前、8小節だっていったろう!"と突っ込まれていたのや、ZOMや将絢のフリースタイルも聴けたりして何だかお得な気分にひたったままイベント終了。
1.H.I.P
2.390のテーマ
3.I GOTCHA
4.Supernova feat. TSUBOI & 千晴
5.START THE SHOW!!
6.シューティングスター feat. ALI-KICK
7.FLOW
8.雨の日曜日 feat. 将絢 & ウチダマヤ
9.届けたくて・・・
10.タイトロープ
フリースタイル
11.FANTASTIC WORLD
12.GET NAKED feat. エムラスタ
13.ONE DAY
アンコール
1.Hey Boy
2.続・超・ラップへの道
feat. TARO SOUL & DEJI
3.超・ラップへの道
feat. DEJI & TARO SOUL