すばらしくてNICE CHOICE

暇な時に、
本・音楽・漫画・映画の
勝手な感想を書いていきます。
07 / 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

2021.02.10 Wednesday | - | - | -
KREVA『くレーベル【其の五】 その後は吾郎の五曲』

2009年6月17日リリースのコンピレーションミニアルバム。

KREVAが主宰する「くレーベル」のコンピも本作で5枚目。第2弾の『100%RAP』しか聴いたことないのだけど、クレバがメジャーでリリースする作品とは違い、日本語ラップ村の偏屈な村民も満足のヒップホップが聴けると評判のシリーズだ。

全曲でラップするクレバはもちろんのこと、客演陣も魅力的で良質なラップを披露。特筆すべきは熊井吾郎の低音を利かせたトラックメイキングの冴え。爆音で聴けば聴くほどその太さにうっとりさせられる。クレバの亜種ではあるのだけど。ただ、今のクレバが作らない音を出してくれるのは貴重。

M2「NEXT LEVEL」で、"次の会場はきっとスタジアム級"とラップするクレバには照れもないし、ましてや強がりでもなく、さも当然な未来の予定として聴ける。翻ってKEN THE 390が先日のライブ中のMCで、"代々木体育館でやりたい"と語ってファンすらも凍りつかせたことを思い出し、ケンザ390もまだまだだなと思った次第。

M3「good boy, bad boy」ではSEEDAにいいところ取りをさせているために、じっくり彼のラップを堪能できはするのだけど、同時に1曲だけでは満足できないことにも気づかされる。アルバム単位で色々な表情を味わえてこそ、シーダというアーティストのラップを聴いた気分になるのだ。

一番満足できたのがM4「無くない! 無くない!」。L-VOKALのラップには大きく頷き、AMIDAで爆笑。アミダの昨年末のアルバム同様に秀逸なユーモア精神に溢れている。トラックメイカーとしての腕もすごいのだけど、ラップももっと聴かせて欲しい。

最後のM5「忘れずにいたいもの Remix」は最初クレバがラップしているのかと思ったほど。師匠をコピーしきった千晴の名人芸には言葉もない。
2009.07.31 Friday 23:59 | 音楽 | comments(6) | trackbacks(0)
魔女の宅急便

94点/100点満点中

宮崎駿による1989年の第3作目となる劇場長編作品。

************************************
13歳の魔女キキは、魔女の古い掟に従い、黒猫ジジと修業の旅に出る。海辺の大きな街で修行をすることに決め、箒で飛ぶ以外に力がないキキは、空飛ぶ宅急便を始めることに。
************************************

もう何度目か分からないほど見ているわけだけど、宮崎作品の中では苦手な方。物語や設定の面白さ、短い上映時間に色々な要素をギュッと閉じ込め、でも不自然さを感じさせないなどすばらしい作品ではあるのだけど、キキのスカートの裾が時折めくれるのに何だか嫌な気分にさせられる。それと彼女の声が時々ヒステリックな響きを放つのも思春期らしさといえばそうなのかもしれないけど、どうにも我慢ならないものがある。

ともかく今回久しぶりに見て気づいたこと。
・キキが居候するパン屋の名前が「グーチョキパン」。

・ラストの救出シーンでは、実況アナウンサーの声や風切り音など効果音のみで音楽が入らず、そのドキュメンタリーっぽい演出のせいもあって手に汗を握ってしまう。次に音楽が入るのはエンディングテーマの「やさしさに包まれたなら」であり、実にうまい。

・本作では飛行船や車、テレビが存在し、魔法が時代遅れになっていく状況が描かれるが、宮崎駿がこういう設定が好きなんだなと思った。『風の谷のナウシカ』では人類そのものが黄昏の時を迎えていたし、『紅の豚』での飛行艇乗りもそうだ。『もののけ姫』もしかり。滅びにはドラマがあるわけで自然と面白くなるのだろう。

・キキがどうにかこうにか最後に魔法の力を取り戻したものの、黒猫のジジとは話せなくなることに昔から気に掛かっていたけれど、今は便利なもので些細な疑問も「Yahoo! 知恵袋」を引くとだいたい答えが載っている。

考え得る3つの理由が挙げられていた。"1.病み上がり(まだ魔力が戻り始めたばかり)だった為。2.キキが色んな経験をして少し大人になった(幼い魔女にしかジジの言葉は理解できなかった)為。3.キキには聞こえていたが、あえてカメラの視点(一般人の視点)からジジを描いた為"とした上で、その回答者は、"「素直で明るいキキはどこかへいっちゃったみたい」と話していることから=大人になった(+力が弱くなった)=ジジの言葉がわからなくなった。と考えるのが有力です"と答えている。

そう考えると、身近な大人の魔女であるキキの母親はどうなのだろうと思うわけだ。母親が黒猫と話せないのなら、キキはそれを知っているわけで、自分にもその時期がきたのだと理解し、中盤であれほど慌てることはなかっただろう。反対に、母親が話せるのであれば、"大人になったから"話せなくなったというのは辻褄が合わない。キキの母親にいた黒猫との関係が本作で描かれていない以上、答えを出しようもないのだけど。3番の答えも面白いとは思うがロマンがない。


ついでに、ウィキペディアに載っていた豆知識。
・宮崎駿によれば「第二次世界大戦を経験しなかったヨーロッパ」という設定。

・原作の角野栄子による「魔女の宅急便」シリーズは現在まで計5冊が刊行されている。今年10月に『魔女の宅急便その6 それぞれの旅立ち』が出版される予定で、それをもって24年にわたって描かれたシリーズが完結する。ちなみに映画『魔女の宅急便』は1作目を元にしている。
2009.07.31 Friday 23:58 | 映画 | comments(2) | trackbacks(0)
COMA-CHI@Apple Store Shibuya

Apple Storeの「Summer Music Night」なるイベントの一環として行われたCOMA-CHIのインストアライブに行ってきた。「99 Bars」の記事でラップがお粗末すぎると書いた手前、音源だけではなくちゃんとライブも見ておかなければと思い、まずは手近なところからというわけで行ったのだが、彼女のためを思えば行かない方が良かったのかもという出来だった。

20時1分。2階からコマチが登場。顔がCDジャケットと違ってアンパンマンなのが印象的。この日のパフォーマンスを駄目にしていた一番大きな要因は彼女自身にあるのではなく、音だった。ここでは何回かインストアライブを見ているが、この日が一番酷かった。もちろんインストアライブに完璧な音を求めているわけではないが、今回は低音が全く出ておらず、しかも高音が電車で隣に座った奴のイヤホンから漏れ出るシャカシャカ音のようなのだ。目の前にポニーキャニオンの社名入りの袋を持ったおそらく社員とおぼしき関係者がいたのだけど、おたくの新人が頑張っているのにこの音はないだろうと小突きたくなった。

歌しか歌っていなかったようにも思うのだけど、手元のセットリストを見ればラップもしていたようで、確かに酷い音の間から、もごもごラップが聴こえてきたようにも思う。ダメレコ時代のコマチのライブを見たことはないし、音源での比較しかできないわけだけど、前は"女性にしては"なんていう考えが浮かばないほど、一ラッパーとして聴かせる実力があった。でも今は女性ラッパーにしてはやるののかもねといった感想しか出てこない。やっぱりラップがまずくなっている。

一方の歌はといえば、CDでは補正を利かせられたけど、生だと粗がやはり出ていた。「beautiful day」での終わりでR&B歌手がよくやるようにアカペラで声を張り上げていたが、ああいうところにこそ表現力というものが大事になってくるのだ。

ラップでいくのか、歌でいくのかどっちらかに決めた方がいいのではと思ってしまう。今のままだとどちらも中途半端で、特にフックで歌ってヴァースでラップする曲では無理が生じている。TARO SOULのようにラップの中に歌をうまいこと取り込むスタイルならいいのだろうけれど。

20時26分、酷い音のまま終了。夏休みとはいえ平日の夜だったせいか、彼女が開拓しようと目論んでいる女子高生は数人のみ。もともと見ていた人数はたいして多くなったのだけど、それ以外は男性ファンというのは、まあそういうことだろう。



1.perfect angel DJ HASEBE Summer Luv Mix
2.girls! girls!
3.name tag (C-O-M-A-C-H-I)
4.selfish boy
5.beautiful day
6.sayonara
2009.07.30 Thursday 23:59 | 音楽 | comments(2) | trackbacks(0)
日明恩『それでも、警官は微笑う』

読了。
☆☆/5点中

第25回メフィスト賞受賞作品。

************************************
無口で無骨な巡査部長・武本正純と、話し出すと止まらない、年下の上司・潮崎哲夫警部補。ふたりは特殊な密造拳銃の出所の捜査にあたるのだが、辿り着いたのは5年前のある事件だった。覚醒剤乱用防止推進員の拳銃自殺。一方で麻薬取締官の宮田剛は別方面からその事件の謎を追っていた。
************************************

主人公の武本は鬼の武本から"キチク"とあだ名が付けられるほど、暴力団ともなあなあにならない実直な刑事で、『新宿鮫』の鮫島に『ターミネーター』のシュワちゃんを足したために人間味が薄い。狂言回し役の塩崎はさしずめ『チーム・バチスタの栄光』でいうところの厚生労働省の変人・白鳥圭輔か、あるいは奥田英朗が生み出したトンデモ精神科医・伊良部といった感じで、とにかく弁が立ち、申し分のない背景も含めキャラ立ち具合がいい。

敵役の中国人の動機がどうにも現実味に乏しいのはいかんともしがたいし、文章も決して読みやすいものではないのだが、だんだん憎めなくなる塩崎のキャラ性のおかげで読み進めてしまう。ただし、キャラが立っているからといって人間性が描けているかといえばそんなことはなく、本作で一番人間くさく、リアリティがあったのは、宮田の元彼女だけ。最後のエピソードだけ非常に泥臭くなる。

塩崎が古今東西のミステリー小説が好きということで、鮫島も含めて会話の中に色々登場するのだが、"岩崎白昼夢警視"だけは分からなかった。調べてみたら、胡桃沢耕史の「翔んでる警視」シリーズのよう。存在は知ってるけど、読んだことなかった。


**************************
日明恩(たちもり めぐみ)
1967年、神奈川県生まれ。日本女子大学卒。
2002年、『それでも、警官は微笑う』で、第25回メフィスト賞受賞。

2002.06 『それでも、警官は微笑う』(講談社)
       →講談社ノベルス →講談社文庫
2003.01 『鎮火報
       →講談社ノベルス →講談社文庫
2004.02 『そして、警官は奔る
       →講談社ノベルス →講談社文庫
2005.08 『埋み火』
2008.06 『ギフト』(双葉社)
2009.10 『ロード&ゴー』(双葉社)
**************************
2009.07.30 Thursday 23:58 | | comments(0) | trackbacks(0)
Keyco『Walk in Romantica』

2009年7月15日リリースの枚目のアルバム。

TWIGYを始め、ヒッポホップ人脈での客演ではその歌声を堪能していたし、LIBROとのユニットFuuriのアルバムも聴いたことがあったけど、よくよく考えればKeycoのソロ作品聴くのは初めて。

どうして今さら手に取ったのかといえば、愛読誌「bounce」のインタビューで、Erykah BaduやJill Scottの名前を挙げ、"腰でリズムを刻めるグルーヴをは大切にしたかった。(中略)新作をあえてわかりやすく説明するならネオ・ソウルとかヒップホップ・ソウルなのかな"と語っていたからだ。ネオ・ソウルといわれてしまえば、聴くしかないだろう。

実際のところはエリカ・バドゥやジル・スコットというよりもIndia Arieに近い印象を受けた。ネオ・ソウルというと私の中ではD'Angeloと同義であり、サンプリングを使いながらも生音を重視し、黒人独特の濃厚さでグルーヴを煮立てるというものなのだが、本作はインディア・アリーが同じ方法論をとりながらも爽やかに歌ったがごとく、風通しの良い明るいアルバムになっている。

洗濯をしながら、あるいは料理をしながらでも掃除でもなんでもいいのだけど、バックに流すことでちょっと退屈なルーティーンを明るい気分にさせる。肩肘張ることなく楽しめるのがいい。ベースのブリブリ感は特筆ものだし、パーカッションの響きも心地良く、時に利かせるファルセットもいい塩梅だ。不満があるとすれば、コーラスがもう少し厚めだと、よりネオ・ソウルっぽくなったかなと思う。でも満足。


************************************
2000.08.09 1st SG『晴れ』
2000.10.12 2nd SG『a love song / 流転 ~Dejavu~』
2000.11.08 1st AL『Keyco』
2001.03.16 3rd SG『Heart Beat』
2001.07.11 1st mini AL『SUMMERHOLIC』
2002.02.06 4th SG『ハルニレ』
2002.03.06 2nd AL『P-TRAIN』
2002.11.13 remix AL『Impressions』
2003.01.29 5th SG『散歩道』
2003.02.19 3rd AL『Water Notes』
2003.07.02 6th SG『月と太陽』
2003.11.27 7th SG『mercy』
2004.06.30 4th AL『SEVEN』
2004.09.29 コラボ集『RAINBOW VILLAGE
                       ~Keyco's Groovy Combination 1999-2004~』
2006.02.22 【Fuuri】1st AL『Fuuri』
2008.07.02 best AL『Keyco 1999-2007 ~Best Songs + Collaboration Works~』
2008.08.06 2nd mini AL『ACOUSTIC SOUL』
2009.07.15 5th AL『Walk in Romantica』
************************************
2009.07.29 Wednesday 23:59 | 音楽 | comments(0) | trackbacks(0)
UA『ATTA』

2009年7月22日リリースの8枚目のアルバム。

UA。スワヒリ語で"花"と"殺す"という両極端の意味を合わせ持つ言葉をアーティスト名に選んだ偉大なる歌手。デビュー曲「HORISON」から聴いていた記憶がある。1枚目のアルバム、2枚目、3枚目とクラブよりの音が基底にありながらも親しみやすいメロディを忘れず、力強い歌声で歌い上げるスタイルに魅了された。

けれど、2002年に発表された4枚目『泥棒』から、ジャケットのけったいさはもちろんのこと、音の方向性からも分かりやすさや楽しさといったものが失われていく。チャートとは別のところで自身の才能や実力の翼を大きく広げようとしたのだろう。やっていること自体はユニークだと思ったが聴かなくなった。

しかし、一昨年にリリースされた7枚目のアルバムは、UAに歌が戻ってきたとの評判で、また聴いてみようかなと思ってそのままにしているうちに今作が出てしまい、先にこっちを聴くことになった。


ようやく本題。1990年代に出していたような分かりやすい構成の曲はシングルにもなったM5「2008」ぐらいしかないものの、それでも圧倒されるほどのメロディの強さとそれを歌いこなし、その歌の力をさらに増幅させる歌唱力が本当にすごい。そして、音。一音一音の鳴りが澄み切っていて、ひたすら美しい。そう、本作はとても美しいアルバムなのだ。太鼓は叩くその瞬間が見えるかのごとく臨場感を持って鳴らされ、音の間の取り方、積み重ね方、全てが必然であり無駄がない。それは美なのだと思う。

演奏、歌、歌詞、全てに気を配って作られた作品であるため、隙がない緻密すぎる1枚かといえば、そんなこともなく、風通しの良さを忘れておらず、だからこそ完成されすぎているともいえる。聴き手とは勝手なもので、隙がなければ完全無欠すぎると文句をいい、聴き手に余裕を与える隙を設けても、完成されすぎていると騒ぐ。それもこれも初期のUAの魅力を知っているからだろう。あの頃に戻ることはできはしないのに、本当に勝手だ。

でも本作は名盤の仲間入りをするはず。それほどにすごい。


**************************
1995.06.21 1st SG『HORIZON』
1995.09.21 2nd SG『COLONY』
1995.10.21 1st mini AL『PETIT』
1996.02.21 3rd SG『太陽手に月は心の両手に』
1996.06.21 4th SG『情熱』
1996.09.24 5th SG『リズム』
1996.10.23 1st AL『11』
1996.11.21 6th SG『雲がちぎれる時』
1997.02.21 7th SG『甘い運命』
1997.04.23 live AL『FINE FEATHERS MAKE FINE BIRDS』
1997.10.22 8th SG『悲しみジョニー』
1998.02.25 9th SG『ミルクティー』
1998.04.22 2nd AL『アメトラ』
1998.05.21 10th SG『歪んだ太陽』
1998.11.26 11th SG『数え足りない夜の足音』
1999.04.28 12th SG『スカートの砂』
1999.09.22 13th SG『プライベート サーファー』
1999.10.27 3rd AL『turbo』
2000.11.22 【AJICO】1st SG『波動』
2001.01.24 【AJICO】2nd SG『美しいこと』
2001.02.07 【AJICO】1st AL『深緑』
2001.06.27 【AJICO】3rd SG『ペピン』
2001.07.25 【AJICO】live AL『AJICO SHOW』
2002.07.24 14th SG『閃光』
2002.09.19 4th AL『泥棒』
2002.12.18 15th SG『DOROBON』
2003.04.23 live AL『空の小屋』
2003.09.17 best AL『Illuminate ~the very best songs~』
2004.03.03 16th SG『Lightning』
2004.03.24 5th AL『SUN』
2004.03.31 【ううあ】cover AL『うたううあ』
2004.05.26 17th SG『踊る鳥と金の雨』
2004.10.20 live AL『la』
2005.03.30 6th AL『Breathe』
2005.10.26 outworks『Nephews』
2006.07.19 【UAx菊地成孔】cover AL『cure jazz』
2007.05.02 18th SG『黄金の緑 / Love scene』
2007.06.20 7th AL『Golden green』
2008.12.17 19th SG『2008』
2009.07.22 8th AL『ATTA』
**************************
2009.07.28 Tuesday 23:59 | 音楽 | comments(2) | trackbacks(0)
山田芳裕『へうげもの』第9巻

2009年7月発売。

カバーの色が示す通りに今回も千利休が主役。"茶鬼"利休の最期が描かれる。この作者の手にかかればどんな偉大な歴史上の人物もまたたく間に人間くささを纏わざるを得なくなるわけで、利休、秀吉、古田織部の葛藤は圧巻。9巻まできたけれど、少しもテンションが落ちていない。

茶頭筆頭となった古田が、"「数寄」ではなく「務め」になるのか"と自嘲しながらも、利休を超えるべく創り出さんとした新たな"侘び"の形が次巻で明らかになるようだ。今から待ち遠しい。
2009.07.28 Tuesday 23:58 | 漫画 | comments(0) | trackbacks(0)
真心ブラザーズ『俺たちが真心だ!』

2008年11月19日リリースの12枚目のアルバム。

前作『DAZZLING SOUNDS』からたった1年での新作発表。中堅どころというよりも位置的には大御所にやや近いのに、この創作意欲は目を見張る。

桜井秀俊にやや比重が傾いた今作は、いつものように様々なジャンルを取り入れ咀嚼し、昇華とまではいかなくてもYO-KINGの声で歌うことで彼らの色に染め上げている。DJ FUMIYAや土岐麻子に、いとうせいこうまでがラッパーとして参加したM2「M.C. Sakuの今夜はラップでパーティー」は曲名通りに桜井秀俊がオールドスクールまがいのラップを披露。重低音ギターリフを轟かすメタル風味のM4「戦車でバカがやってくる」もあれば、奥田民生と楽しそうに桜井秀俊が歌う酔いどれソングM6「ノーメル賞ブギ」、M8「色」ではツインボーカルでフォークにまで戻り、ついでにM9「ハワイに行きたい」ではサーフロックをインストで奏で、フットワークの軽さを見せつけるがごとくM12「サンライズBaby」でPerfumeをしっかりフォロー。

もちろん、真心ブラザーズらしい楽曲もあって、これからも頑張っていくと歌うM3「傷だらけの真心」はこのアルバムの中でも最良の曲だし、ゆるめのブレイクビーツの上で、"どこまでもふたり歩いていけたらいいな"歌うYO-KINGの必殺のラブソング、M7「真心のシビレ節」も良曲だ。要所要所にはそういった曲が置かれて、期待に応えてくれる。

けれど、だ。前作の記事でも書いたし、前々作でも感じていたことではあるのだけど、自己模倣のらしい良曲はあっても、心底グッとくる曲がないのが大いに不満だ。活動休止する以前の作品はアルバム単位では結構辛いものも多かったが、一発逆転ホームラン級の傑作が1曲か多くて2曲あることで、聴いて良かったと思わせる出来に仕上げていた。もろもろを総合勘案すれば、収録曲の平均点が格段に上がり、アルバム1枚を何らストレスに感じることなく聴き通すことができるようになったのはいいことなのかもしれない。でも、真心ブラザーズにそれでは物足りないと感じてしまうのは受け手が求めすぎなのだろうか。

彼らは今年デビュー20周年ということで記念のミニアルバムやベストアルバムが予定されているので、慌てて未聴だった2枚のアルバムを聴いたわけだけど、不満だけが溜まってしまった。彼らのアルバムの中で一番好きなのがシングルコレクションという人間には9月のベストアルバムが一番いいのかもしれない。
2009.07.27 Monday 23:59 | 音楽 | comments(2) | trackbacks(0)
佐々木譲『警察庁から来た男』

読了。
☆☆/5点中

道警シリーズ第2弾。

************************************
北海道警察本部に警察庁から特別監察が入った。監察官は警察庁のキャリア・藤川警視正。彼は半年前の道警裏金問題のために百条委員会で身内の制止を振り切り証言した津久井刑事に協力を要請。一方、札幌大通署の佐伯刑事は、ホテルでの部屋荒らしの捜査を進めていた。
************************************

シリーズ第1弾の『笑う警官』から半年後の話。津久井卓巡査部長は警察学校に飛ばされているが、佐伯宏一警部補は相棒の新宮昌樹巡査と共に冷や飯を食いながらも大通署の刑事第一課盗犯係に留まっている。

国際問題に発展したタイの少女の人身売買問題とぼったくりバーでの不審な事故に端を発し、まだ道警の膿がぬけていないのではという疑いから警察庁の特別監察が入る。その監察を進めるのがキャリアの藤川と"うたった"津久井で、平行してぼったくりバーの事故を調査することになるのが佐伯・新宮組となる。期せずしてふた組は道警に潜むある組織にぶち当たるという大まかな筋書きが、前作同様に歯切れの良い硬質な文章で描かれ、非常に読みやすい。

冒頭の胸糞悪くなる展開こそはオッと思わせるスピード感とまさかという意外性でぐいぐい惹きつけられたのだが、その後が地味に地味に進んでいき、結局尻すぼみな終わり方をする。1作目の敵よりも巨悪な組織が警察内に巣くっていれば良かったのだろうけど、現実的に見て、たった半年後の話にそれはナンセンスなわけで仕方ないのだろう。

もしかしたら、津久井を現場復帰させるための実績作りの巻だったのかも。
2009.07.27 Monday 23:58 | | comments(6) | trackbacks(1)
Samurai Troops、Romancrew&KEN THE 390@Shibuya PLUG
「超・ライブへの道 Vol.1」に行ってきた。

渋谷の駅前で胡散臭くもうっとうしく演説する幸福実現党の学生支部リーダーの言葉に顔をしかめつつ、「Shibuya PLUG」に急ぐ。エントランスでこの日の一番のお目当てであるSamurai TroopsのミックスCDを首尾良く手に入れ、ビールでひと息つく。この箱は直方体で味気なくあまり好きではないのだけど、ハートランドをグラスで飲めるのがいい。ステージではちっちゃいながらもいかつい体付きの男がマイクを握っている。TARO SOULのよう。で、DJは今日の主催者KEN THE 390だったよう。

フロアはデイイベントのためか可愛く着飾ったお嬢様方が多く、若干怯む。日本語ラップメインのイベントといえば、帽子に金色のシールを貼り付け、頭の中身を磨くよりスニーカーを磨いて1日を終わらせてしまうような若者がそこら中でやたらと煙草を吹かしているようなのしか知らないので、何だか異次元。

目を白黒させながら前方に進むと、いきなりサムライトループスのライブが始まった。一番手とは予想していなかったので慌てる。


【Samurai Troops】 18:05~18:35

事前に彼らのブログでZOEが、"そういえばセミさん元気かな。何してんだろーな。"と書いていたので、SEMMYがいないことは分かってはいたけれど、4人しかフロントにいない今のサムライトループスはバランスが悪いと思ってしまうのは否めない。メテオもセミーもいた一昨年のO-Nestでのライブを見ておいて本当に良かったと改めて思った。

Y.O.Gが再三にわたり、"時間がないから"をMCで繰り返していたために、しゃべりの時間も少なくタイトに曲を進めていた。練習の成果が発揮されたライブだったのだろう。音源でも未聴のASAYAKE PRODUCTIONとサムライトループスが手を組んだ「A-Train Rana」を聴けたのは嬉しかったし、Michael Jacksonの「Rock With You」に差し替えた「街かどフィルム」も楽しめた。

日食を見に行き、真っ黒になって帰ってきたTakatsukiはATOMのお株を奪うかのようにステージを所狭しとピョンピョン跳ねて楽しそうだった。ZOMのコーラスはお世辞にも上手とはいえないのだけど、琴線に触れる瞬間が結構あって侮れない。ゾエの落ち着いたラップはトラックとの相性によって聞こえの違いはあるものの、がっちりはまったときはライブでも音源同様にその日本語ラップ然としたライミングを楽しめる。Y.O.Gは何だろう。自由行動しがちな4人を強引にまとめていた。とはいってもメテオもセミーもいないわけでSMRYTRPSの時のように個性的な面々がというわけではないのだけど。

「Keep Condition」を聴いていて、これぐらいをポップさのギリギリの限界にして曲作りをしたら、メジャーにはいられないだろうけど、ヒップホップグループとしては最高だったんだけどなとしみじみしてしまったライブだった。


1.Re:El Carnaval
2.ドロボーMCeez(トラック差し替え)
3.Keep Condition
4.BEATNIKS(フックのみ)
5.A-Train Rana
6.街かどフィルム(トラック差し替え、
  Michael Jackson「Rock With You」)
7.Sa Yo Na Ra ~また、めぐり会えるから~
8.You




【Romancrew】 18:41~19:47

ロマンクルーのライブはちょこちょこ見ていて、音源もなんとなくは聴いているのだけど、1時間がっつり彼らのライブを見るのは初めてで、胸中では少しの期待とかなりの不安が交錯していた。

長丁場のライブではあったがセットリストの緩急、盛り上がり曲の配置など展開も良かったし、安定感のあるラップやフロアとの掛け合い、また盛り上げに徹するだけではなく、真摯に音楽に取り組む姿勢を語るMCなどもあり、好感が持てた。キャラ立ちも含めバランスのいいグループだと思う。

思うのだが、曲調に幅が生まれたことは結構なことなのだけど、彼らのいう"クロイ"音やサンプリングで攻めてくる曲が少なく感じたのは残念。幅を広げてもそれに納得できるほどの完成度があればいいのだが。メロウだけどしっかり腰にくるグルーヴがある「Dream」や「Love Comes & Goes」、力強いビートが曲を引っ張る「ロマンティック is Dead」などはライブで聴くとさらにその魅力が増していた。反対にギターリフが炸裂する数曲はどうにも面白味に欠ける。

Raphael Saadiqの「Oh Girl」をバックに流しながらMC("マイケル・ジャクソンがポップを完成させた"という意見には異論あり)をした後に披露した新曲の「My Girl」は私の好きな方向性の曲で良曲。冒頭の叩き付けるようなビートもサンプリングなのかな。叩き直した音のように思えるほど力強さがあって、あれが頭にあるから40年以上前の曲を下敷きにしても少しも古びることなく現代に甦らせているのだと思う。まさにサディーク。ALI-KICKの"ヘモグロビンが今にも踊りだす"のラインは秀逸。

「Love Comes & Goes」のエムラスタのヴァースで、"未来の自分が口ずさむのはこんな曲だった"のところで、差し込まれたのが、スチャダラパーと愉快な小鳥仲間たちの曲にも使われた名曲、FREEDOMの「GET UP AND DANCE」。そのまま彼らの「F.R.E.E.D.O.M」へ突入するという演出も面白い。

最後はタカツキのサードアルバムに収録されていたSMRYTRPSとロマンクルーの合体曲「ロマンサムライ」。サムライトループスのステージではやらず、せっかく今日はロマンクルーもいるのに・・・と思っていた矢先だったのですごく嬉しい。


彼らのアルバムや客演曲を聴いたり、ライブを見たりしていると、次第に将絢を気になり始めている自分に気づき、戸惑う。あの低音のラップは初めて聴いたときから決してうまいとは思えなかったし、はっきりいえばお荷物とすら思っていたのだが、その立ち振る舞いやMCでの何気ないひと言などから抗いがたいスター性のようなものが少しずつ漏れていることに気づくのだ。一度だけ見たことのあるORANGE RANGEのフロントマンのひとりでロン毛の彼に印象が近い。才能どうこうではなく、本人のオーラというか変な人加減が強い魅力で、そうなるとラップが意外にも下手に聞こえなくなるから余計に自分が嫌になる。


1.スーパークロイ(イントロのみ)
2.
3.First Song
4.Crossroad
5.Go For Broken
6.Blues Skywalker
7.Dream
8.わがままSOUL(新曲)
9.FLY HIGH
10.スープパスタ
11.ロマンティック is Dead
12.ロマンより愛をこめて
13.My Girl(新曲)
14.Love Comes & Goes
15.F.R.E.E.D.O.M
16.虹の交差点
17.ロマンサムライ (Astro MCeez)
   / SMRYTRPS + Romancrew




【ウチダマヤ】 20:06~20:40

次のケンザ390のステージで披露された「雨の日曜日」でようやく気づいたのだけど、ロマンクルーの将絢と一緒に客演していた"MAYA"というのが、この人だったようだ。

人前で歌える程度には歌唱力があるのだが、それを完全に発揮できるだけのメロディを持ち合わせていない。だから力が無駄に消費されるだけのライブだった。小箱で歌う歌手の歌メロはたいていがお粗末という法則にぴったり当てはまる。歌詞がいいならまた別の魅力が生まれようというものだが、その点でも陳腐さは拭えず、どうにも苦痛な30分だった。

歌を支える脇の音はびっくりするほど低音が利いたかっこ良さだっただけに余計にもったいない。



【KEN THE 390】 20:45~22:09

昨年のDa.Me.Recordsの4周年パーティで25分ほどの短いライブを見たことがあって、そのときは最初のあまりに酷すぎる衝撃をどうにか中和させた程度のものだったが、今回のライブを見てラップが下手ではないことは理解した。声に幅がないために、どうしても一本調子のラップになりがちなところは以前と同じだが、喉がずいぶんと強くなっていたのには素直に驚いた。

バックのDJ大自然とヒロロンが繰り出すビートの音は結構大きいのだけど、彼の声はそれに負けることなく言葉をフロアに届けていた。どの曲も音源よりずっと良かった。反対にどうしてこのライブでの勢いをレコーディングで盤に落とし込むことができないのか不思議ですらある。

さすが主役だけあって、この日一番の盛り上がりだった。MCでの煽りや語りもこなれた印象で、お約束ごともあるようだ。となりでリズムに合わせ手を上下に一生懸命振っていた女の子が日本語ラップのイベントではあまり見かけないタイプの子だったのだけど、それを端に見ながらダメレコのエースが日本のラップミュージックのエースになるべく少しずつ力をつけてきていることを実感。

今回のライブを見て確認したのは、彼の作り出す音楽への印象は初めて彼の作品を聴いたときに抱いた感想と何ら変化はないなということ。ケンザ390の努力やライブへのひたむきな姿勢は評価できても、そのスタイルは好みではないし、相変わらずリリックに重みがない。その軽さが反対に求められているのかなとも思う。でも音源で聴いて感じる失望が少し癒されたのも事実だ。この日披露され、勢いだけは良かった「Supernova」や「続・超・ラップへの道」といった曲は次のシングルにも収録されるわけで、ライブでほとばしらせたツバや汗が音源にも封じ込められているといいなと思う。


アンコールでは、大学の同期でいいのかな、タロウソウルとDEJIが登場し、「続・超・ラップへの道」とその1作目の「超・ラップへの道」で大いに盛り上げた。まあどうでもいい話で、冒頭に少し戻るのだけど、ハチ公前で演説していた幸福の科学の学生支部のリーダーは開口一番、"早稲田大学4年のなにがしです"と始めていたのを、同じ早稲田出身の3人がフロアを熱狂させているのを見て思い出した。人生色々だなぁと。それとケンザ390のライブを見ると毎回思うことだけど、志人は2年半もよく一緒にやっていたなぁと。当時の音を聴いてみたい。


アンコール後は、この日の出演者全員で8小節ずつのマイクリレー。ダメレコのパーティのときと同じ演出で、大団円が強く感じられるのがいい。Y.O.Gが8小節縛りだというのを知らずに続けようとして、"お前、8小節だっていったろう!"と突っ込まれていたのや、ZOMや将絢のフリースタイルも聴けたりして何だかお得な気分にひたったままイベント終了。


1.H.I.P
2.390のテーマ
3.I GOTCHA
4.Supernova feat. TSUBOI & 千晴
5.START THE SHOW!!
6.シューティングスター feat. ALI-KICK
7.FLOW
8.雨の日曜日 feat. 将絢 & ウチダマヤ
9.届けたくて・・・
10.タイトロープ
   フリースタイル
11.FANTASTIC WORLD
12.GET NAKED feat. エムラスタ
13.ONE DAY

アンコール
1.Hey Boy
2.続・超・ラップへの道
   feat. TARO SOUL & DEJI
3.超・ラップへの道
   feat. DEJI & TARO SOUL
2009.07.26 Sunday 23:59 | 音楽 | comments(5) | trackbacks(0)
Profile
Search This Site
Category
New Entries
Comment


Archives

今日も愚痴り中