BBOY PARK2日目。いつになく早起きして、NORIKIYOを見るぞと早めに家を出るも代々木公園に着いたら12時16分。もうライブがスタートしていた。ゆるゆる進行で有名なイベントとは思えない生まれ変わりようだ。そういえば、毎年まくらに甲子園の話を盛り込んでいたけれど、今年は出発が早すぎて試合が始まっておらず、高校野球に引き止められることがないのだ。それはそれでなんだかなぁという思いはある。
【NORIKIYO】 ~12:32
さて、ノリキヨのライブ。サイドMCにBRON-Kを従え、バックDJはDEFLO。着いたらちょうど「23時各駅新宿」をやっているところで、いい感じに声を張り上げ、リリックの内容まで聴き取れるのだが、SD JUNKSTAの面々がわらわらと登場し、クルーでの曲になると途端に雰囲気重視のラップになってしまい、日本語ラップとしての面白味が失われる。
BRON-Kの声の良さ、低音の響きの心地良さは生でもすばらしいことを確認。最後の「人間交差点」は、BRON-Kのフックだけが光っていた。
・23時各駅新宿
・イッちゃってイイ? / SD JUNKSTA
・何ひとつうしなわず / BRON-K
・人間交差点 ~風の街~ / SD JUNKSTA
【DARTHREIDER】 12:33~13:51
ダンサーを従え現れてから、最初の4曲を一気に駆け抜けるタイトなライブを披露。珍しくMCがない。音圧が前のグループと明らかに違う。低音を深く重くした上にラップを乗せるわけで、声量の差が如実に出てしまう。よって客演ラッパーの実力がずいぶんと露わになっていた。
「CISCO坂」の後にようやく長めの演説をぶった。この人のアジテーションはYOU THE ROCK★と同じくヒップホップに純粋だから、観客も素直に聴けて盛り上がることができる。
"今日はまさにMUROがいってた"ファンキーウィルスに感染"、それを実現する日だ。今日ここに来たってだけで全身ヒップホップ中毒患者になることは間違いないから覚悟しておくように。マスクとかしたって防げねぇぜ。俺たちはどこからでも入ってくるんだ"
ラストは以前見た
ライブでは「LOVELETTER」という題名だった、ブルーハーツを元ネタにした「HIPHOP HIPHOP」。これでもかとヒップホップへの愛を語る曲で、非常に暑苦しくもあるけれど、同時にとてもダースレイダーらしい曲だ。最後には元歌の冒頭を歌っていた。
1.Apache ~ 世界最高のPARTY feat. インダラ & DROP SHOT
2.WHY WE BURN!? feat. インダラ
3.JAPANESE WILDSTYLE feat. NORIKIYO
4.CISCO坂 feat. カルデラビスタ & ZEN-LA-ROCK
5.HIPHOP HIPHOP
ダースレイダーが引っ込んだ後に、ZEEBRAが登場し、"奴はヒップホップから色々貰ってばっかというけど、俺は
昨日あいつから敗北というすごいものを貰ったぜ"とひとくさり。こういうところがうまい。そのままダンスタイムの開始を告げる。
【Dance Show Case】
クラブの短時間のショーとはレベルが違う。それとも今回のように広いスペースがあるから上手に見えるのか。
【UNDER 20 MC BATTLE 決勝トーナメント】 13:03~13:28
昨日サブステージで行われた予選で、48人からベスト8まで絞り込まれ、この時間帯に決勝に進むふたりを決める。8小節の2本勝負。勝敗は観客の歓声。司会進行はダースレイダー。
<ZONE THE DARKNESS vs. 黄猿>
東京出身の二十歳同士の戦い。1試合目からいきなりの好カード。昨年のUMB東京予選でRUMIにゾーンザハッピネスといわれてしまったゾーンザダークネスと、フロウ巧者黄猿。延長戦にまでもつれ込んで、結果ゾーンザダークネスが勝利を掴んだ。
私見では圧倒的に黄猿。フリースタイルなのに、踊れるってどういうことってぐらいに人の体を揺らしてくれた。2年ほど前にも池袋bedでMCバトルをしているのを
見たことがあった。あの時も良いと思ったが、今回は確信に変わった。バトルなんてやっていないで早いところ音源を制作して欲しい。ラップで踊らせてくれるラッパーはとても少ないのだから。
今回の勝負で黄猿の方がラップそのものは巧みだが、ゾーンザダークネスが支持されたのも納得はできる。攻撃的なラップで、終始黄猿を攻め立てていた。バトルの評価とはそういった姿勢に比重が置かれるものなのだろう。黄猿は蝶のように舞ったが、蜂のようには刺せなかった。
<蝦夷 vs. マスオマスター>
東京出身の15歳・蝦夷と和歌山の18歳・マスオマスター。負けん気の強い15歳がオロカモノポテチのようなギアの入れ替えを駆使して罵り勝ち。マスオマスターはその服装的にも、突っかかるだけの蝦夷をマタドールのように巧みにかわそうとするスタイル的にも嫌いではないのだけど、緊張もあったのだろうが、少し技術が足りなかった。
<式部 vs. SHUN>
唯一の女性ラッパー式部は大阪出身の17歳。後攻SHUNもまた大阪で17歳。SHUNの"赤いグッチ(Tシャツ) こいつすげえビッチ"にキレた式部がかます。"YOYO こうやって女をバカにする男 それはBボーイじゃないと思うんだけど"に同意の歓声が上がり、最後には、"大阪出身というけどお前の名前聞いたことないんだけど"で決定打をぶち込んだ。
<コペル vs. LIGHT>
大阪出身の17歳・コペルは弾むように飛び出してくる。何でも予選ではクジの関係で一度しか戦わなかったのに観客を大いに沸かせたのだという。一方の東京出身19歳のLIGHTは相手のラップを微動だにしないでにらみ付けるスタイルの持ち主。
コペルは韻よりもフロウが魅力的で、声変わりはしているのだろうけれど、やや高めの声で歌うようにラップする。"ラップでもってもっとリスナーを盛り上げろよ!"。ふたりとも会心の一撃を放ったわけではないが、勝者はコペルに。LIGHTは声が若干こもり気味で聴き取りにくかった。
ここから準決勝。
<ZONE THE DARKNESS vs. 蝦夷>
ゾーンザダークネスの"童貞で包茎"や"クソガキ"といった直接的な言葉は年齢の問題を考慮してもあまり誉められたものではない。
蝦夷の1本目、"こいつは確かに有名人 このビートの上で急停止"は良かった。ただ、その後にフロウを若干変えながらうまく着地を果たしたと思ったら、まだほんの少しビートが残っていて、そこをゾーンザダークネスに"お前の方が急停止じゃん"と突かれてしまった。"さっさと帰って宿題やれ"は笑った。
ゾーンザダークネスが決勝戦に駒を進める。蝦夷は15歳とは思えないラップで末恐ろしい。
<コペル vs. 式部>
大阪出身で同じ17歳同士の激突。先攻のコペルはエールを送るようなラップで、それに戸惑ったのか式部は精彩を欠く。コペルの"男と女 大阪のふたり それならまるで夫婦(めおと)のコンビ"は面白かった。コペルの勝利。
【DJ NOBU a.k.a. BOMBRUSH!! MIX SHOW】 13:34~14:23
最初に出てきたのがJBM。ひとりで1曲やってから、KGE the SHADOWMENが出てきて、重厚でハーコーなストロングスタイルのヒップホップを響かせる。サブステージで「第3会議室」が始まるということもあり、人がどんどん減っていく。MIKRISが入った辺りでステージが締まったように見えたが、再び弛緩していく。そのタイミングを見計らったかのように、大阪からのゲスト・4WDが投入され、さらには神戸のJAZZY BLAZEが姿を現した。
確かに彼らのスタイルもヒップホップの一側面ではあるけれど、怒鳴るようなだみ声ラップばかりではお腹いっぱいになってしまう。観客もそう思っていたのだろう。コール&レスポンスは壊滅状態。そんな中でジャジーブレイズは異色だった。無理に喉を潰すことなく真っ直ぐな声を出し、しかもフックではDJ OZMAみたいな歌まで飛び出していた。音源を出しているなら聴いてみたい。
B.D. THE BROBUSに続いてNIPPSが登場。
もちろん生で見るのはこれが初めてだが、思いの外音源通りの声を出していたことに驚いた。もっとダメダメでヘナヘナなものを想像していたからだ。B.D.ザ・ブラバスのラップはこの日初めて聴いたわけだけど、安定感のあるラップだった。彼がすごい、というよりも偉いのは、ひとりでどこか別次元に行ってしまいそうなニップスを繋ぎ止めつつ、一方で尊敬する先輩として立てることも忘れず、進むべき正しい方向を教えているように見えたことだ。
自分のラップパートを忘れたり、痙攣ダンスをしてみたり、寝っ転がってラップをしているニップスに目を奪われながらも思ったことは、彼はダチョウ倶楽部の上島竜平みたいな存在なのかなということだった。そうなるとB.D.ザ・ブラバスはさしずめ毒を吐かない土田晃之だろうか。昔は偉かったじいさんが耄碌してステージの上を徘徊しているようなシーンは何回かあったものの、ひとたびマイクにラップを吹き込めば確かな存在感を発揮するわけで、あれはあれですごいのだろうし、生きて動いている天然記念物を目撃できたわけで貴重な体験だったのだろう。
生で見られるのかなと期待していた「SPREAD DA SHINE feat. ANARCY, B.D. THE BROBUS & 般若」は最後の最後に音源で流すだけだった。TETRAD THE GANG OF FOURのライブを20分弱見られたことの方が価値があったはず。
【JUSWANNA】 14:31~14:50
音源が良かっただけにライブだとクラブからさまよい出たモグラ状態になるのではと不安だったのだが、杞憂に終わった。幾分ラップがこもり気味だったのは音に合わせてそういうセッティングにしているのかなとも思ったけれど、もう少し声を張ってくれるとリリックの聞こえが良くなるのだろうなとは思った。黒いグルーヴも申し分なかった。この手の音こそがヒップホップのかっこよさだ。
Bボーイパークの思い出から始まったMEGA-Gの話が次第に身の上話にまで及んだところに人柄の良さを感じさせた。
1.INTRO
2.Welcome2Tha JW World
3.ピエロスタイル
4.? (『湾岸SEA WEED』から)
5.? (『湾岸SEA WEED』から)
6.東京頭脳戦争 ~時流に媚びない反逆者達~
7.BLACK BOX
【B.I.G JOE】 14:51~15:09
手錠をはめられ両脇を抱えられての登場。
1曲目はそれに合わせて「NOWHERE」。20分弱のライブ時間で3曲というのは1曲1曲が長いからなわけだけど、そのために緊張感が失われがちで観客の私語が増えた。トラックが懸命にサポートするが、ビッグジョーのラップが実践ではまだ弱いことが露呈した。それと簡単な英会話とはいえ英語でのMCに何の意味があるのか分からないから止めた方がいい。
盛り上がったのは曲よりも"Yes, B.I.G Joe is back!"というMCでのセリフだった。あと、どうして「Come Clean」をやらなかったのだろう。一番人気がある曲だと思うのだけど。
1.NOWHERE
2.One Love
3.Lost Soul
【THE LEGEND$】 15:10~
少しだけ聴いて、昼食タイムに。そう思う人は結構いたようで、ぞろぞろと出口に向かう。
雨もちょっとぱらつき始める中、ケバブ屋に並ぶ。
昨日普通サイズのドネルケバブを注文してたら、後ろに並んでた人がデラックスを買っていて、心の内で負けたとなってしまったので、今日はデラックスケバブを頼む。具材が盛り沢山で美味。特にチーズとの相性に満足。でもサイズが大きいから食べている姿はとてもではないが他人様に見せられない。ハンカチは必須。
歩道橋の上からの風景、「第3会議室」中、ケバブ屋、犬、たたき売り、グラフィティアート、ダンスなど。
あ、猿。
【SILVER BUCK】
色々見て回って、15時半頃メインステージに行くと、彼がテーマソングともいうべき、"SILVER BUCKのお通りだ~"を歌っていた。今年は「BBOY PARK Show Case」という枠(
昨日のHIPHOP戦隊B-BOYGERやKEY-CREWも同じ)での出場だった。毎年出てるから断れなかったのか。
【Miss Monday】 15:53~16:02
そこらで休憩してメインステージに戻ってみると「Dance Show Case」中で、やがて今年は「R&B Live Show Case」枠で出ることになったMiss Mondayの登場となる。ここらでポツポツと落ちていた雨が上がる。
【Sugar Shack】 16:03~16:08
Full Of Harmony、LL BROTHERS、LEO、TSUYOSHI、真之介による寄せ集めグループ。ジブラに備えて前列に向けてグイグイと割り込んでいく。
【AI】 16:10~16:20
「R&B Live Show Case」で告知されていたスペシャルゲストはなんとAI。2曲だけ歌う。ドスの利いた中音域は野外でもやっぱり魅力的だ。こういった本物の歌声を聴いてしまうと、COMA-CHIが歌で勝負するのは難しいのではと思ってしまう。2曲目の「I Wanna Know」でアイの下手くそなラップが披露されるに至り、餅は餅屋、ラップ1本で勝負した方がずっと可能性があると確信すら抱いた。
1.YOU ARE MY STAR
2.I Wanna Know
【ZEEBRA】 16:29~16:56
千両役者だ。そこらのラッパーと人気の度合いも声の張りも格段に違う。昔日本語ラップを聴き始めた頃、ジブラのだみ声スタイルが嫌いだったのに、テレビで見たBボーイパークで圧巻のライブをしていて、ブラウン管の中からでも伝わるそのカリスマ性に驚いたものだが、この日は周りのファンたちが語尾をかぶせるだけではなく、リリックを口ずさむものだから、その人気の高さにも圧倒されつつ、暑い中懸命にラップしているジブラに見入ってしまった。
若手を引き連れての「Jackin' 4 Beats Remix」の後は、おそらくUBGの面々と共に、"今日、がっつりクラシック行くぜ"の宣言通り、過去の名曲を1ヴァース+フックのみのメドレーで繋ぐ。
「真っ昼間」は音源とあまりに声が変わっていて、リリックを聴いただけでは分からなかった。"一点突破 行くぜ HIP HOPPER"と周囲がわめき立てるので、「MR. DYNAMITE」がかっこよく聞こえてしまったのは自分でも不思議。「PLAYER'S DELIGHT」は1ヴァース目の途中まで。
そしてみんなのお待ちかね「Street Dreams」に進むわけだけど、その2ヴァース目の"誰が持ってく今夜のスーパースター"のラインが終わり、"雷 ライムスター ブッダブランド"と続けるタイミングでRHYMESTERのふたりが登場!
ふたりによって"ライムスターがライブしにやってきた"と繋がり、"どこにきた Bボーイパーク"のレスポンス後は「キング オブ ステージ」になだれ込む。トラックはそのまま「Street Dreams」。宇多丸の"これぞ世界に誇るべき Made In Japan as No.1"から再び、"俺がNo.1ヒップホップドリーム"で始まる「Street Dreams」のフックへ。最初から1つの曲のように完璧に合わさっていた。実力者だからできるのだろうけれど。
ステージ前の熱狂はこの2日間のピークだったと思う。もみくちゃ状態でその人気の高さをまさに肌で実感。
最後の曲はジブラがどうしてもBボーイパークのステージの上で聴きたかったというライムスターの10月にリリースされる新曲「ONCE AGAIN」。盛り上がらないはずがない。
1.Jackin' 4 Beats Remix
2.真っ昼間(M4までメドレー)
3.Parteechecka (Bright Light Mix)
4.MR. DYNAMITE
5.Neva Enuff(M9までメドレー)
6.PLAYER'S DELIGHT
7.今すぐ欲しい
8.Perfect Queen
9.Street Dreams feat. RHYMESTER(「キング オブ ステージ」含)
10.ONCE AGAIN / RHYMESTER
【サイプレス上野とロベルト吉野】 16:57~17:23
"ジブさんとライムスターの後なんてやりにきぃーな"といっておきながら、ガツンと楽しく盛り上げ、相変わらずのヒップホップ流エンターテイナーぶりを発揮していた。普段は絶対にしないのに、いつのまにか"サ・う・え・と・ロ・よ・し"とレスポンス、年齢に逆らうように「バウンス祭」では飛び跳ね、しゃがめといわれれば率先してしゃがみ、1、2、3でジャンプし、"叫べー"にも素直に天高くわめいていた。ヒップホップ体操ももちろんしましたとも。彼らのライブは非常にくどくて、辟易させられる時もあるのだけど、こちらの体調とテンションが完璧な時は最高に楽しい。
「MASTERS オブ お家芸」もやった。今回の3 on 3を見ても、自分たちのライブの順番を見ても、日本語ラップ界も新陳代謝が始まり、世代交代の波がきているのでは、とサイプレス上野が煽り、さらに"年老いたラッパーを可愛がってあげようと思って"と宇多丸を呼び込む。一方の宇多丸は"年寄りの意地見せてやるぜ"と言い放ち曲がスタート。
1.INTRO
2.TIME IZ ONLY IT THAT CAME ~ サイプレス上野とロベルト吉野 ~
3.サ上とロ吉
4.Bay Dream ~from 課外授業~
5.バウンス祭
6.START LINE feat. RYUZO
7.MASTERS オブ お家芸 feat. 宇多丸
8.ヒップホップ体操
9.WONDER WHEEL
10.契り外伝 pt.II
【般若】 17:24~17:45
ジブラのライブ直前も名前を呼ぶファンの声が大きかったが、般若も負けてはいない。般若の場合は男性ファンの荒々しい声援が数多く飛んだのが印象的だった。
"はんにゃ~"との叫び声がこれでもかと飛び交う中、般若は印税で買ったというハマー製自転車("バチっと乗り込むぜHUMMER タイヤは2つ エコだぜ")に乗って登場。この日ふたり目の花形役者が現れたことにさらなる歓声が起こる。「PEOPLE'S CHOICE ARTIST LIVE」枠の最後のライブが始まった。
般若を目の前で見るのは初めてだったのだけど、かなり鍛え上げられた体付きであることに驚いた。遠目にもメタボなお腹が目立つ、同世代の漢とはずいぶん異なり、途中のフリースタイルでチラリと見せた腹筋はきれいに割れていた。
さわりだけやってみせて、ファンをじらした「やっちゃった」も入れて、曲としては披露したのは全部で6曲。フルヴァースをラップしたのは「HANNYA」と「いつでも」だけで、あとはフックと1ヴァース目のみだった。今の自分の全てを出し切るつもりのワンマン(8月27日)の5%、いや2%ぐらいしか、この短いステージではできていないなどとうそぶいていたけれど、それでも客演なし("フィーチャリングする友達もいないんで"発言は2回ほどあった)で驚異のテンションが保たれたすばらしいパフォーマンスだった。
"これをやりにきたんだ"との説明で始まった「やってやる」は長渕剛に感化されすぎともいうべきアレンジが施されていて、かなりの戸惑いを感じた。フックは、"やれねえ事 最初から無えよ"以外は"エイエイ"という例のかけ声を観客と共に繰り出し、ヴァース部分ではBボーイパークへの不満や意見を語るというもので、最後に1ヴァース目だけラップしていた。
曲が終わると、"終わり"と小さくひと言。抗議の声が湧き起こると、"えー だって疲れたもん"と可愛らしく答えながら、そのまま短めのフリースタイルに。こういったじらし方や読めない言動といったものも般若の魅力のひとつだろう。
その後に、フルサイズで「いつでも」をやり、曲の最後では「People's Choice」に投票してくれたことへの感謝と、"来年からBボーイパークの日に自分のイベントをうつよ 今度は***に回るよ それまでよ ガッチリやってくれよ"などという爆弾発言まで飛び出した。かなり有言実行の人だから恐ろしい。今のBボーイパークで般若が見られないなんて事態はありえないだろう。
最後にもう1曲やるかとなり、"何がいい?"と観客に問いかける。「その男、東京につき」などの題名が挙げられるも聞こえなかったようで、まあいいやと鳴らされていたビートの上でフリースタイル。
"KREVAもRIPもなぜ出ない ここはフリースタイル ヒップホップの世界
アンダもオーバもねぇ関係 いるやつらだけ本物だぜ
投票だろうが交渉だろうがいわずとしれた代表東京"
1.フェイク
2.HANNYA
3.やっちゃった
4.最ッ低のMC
5.やってやる (長渕剛 ver.)
6.フリースタイル
7.いつでも
8.フリースタイル
「3 ON 3 PROFESSIONAL MC BATTLE」の決勝に向けてのセッティング中にジブラと宇多丸が登場し、年季の入ったトークで楽しませてくれた。要点は2つ。来年の開催のためにもBボーイパークのオリジナルタオルやTシャツを買ってくれと、ゴミは必ず拾えということだった。
【3 ON 3 PROFESSIONAL MC BATTLE 決勝】 17:50~18:21
KEN THE 390、MASARU、ダースレイダーのチームbboystance、一方のチーム遅刻はメガG、BES、漢。司会進行はもちろんサイプレス上野。静かに登場したふた組に、サイプレス上野がそれぞれの大将からひと言ずつもらう。
ダースレイーダーはいきなり挑発をかます。"漢とバトルするのは4年ぶりだけど、4年前は俺が勝ったぜ"。ある意味エンターテイナー漢もいい返す。"4年前のことは草ボケで忘れちまったぜ"。おお、プロレス!
<KEN THE 390 vs. MEGA-G>
先鋒戦はケンザ390対メガG。ケンザ390は相変わらずのサクサクした歯切れの良いラップで攻め立てる。"何回戦ったってお前に負ける気はしないぜ っていうか負けたことはない"。破綻はなくきれいにまとめてくる。後攻メガG。"「Hey Boy」みたいなださい曲出すな"までは聴こえたが、「Hey Boy」にかけて踏んだ次の単語が聴き取れず。全体的にも何いってるのか分からない。
2本目。"390は寒くなる それ漢さんが5年ぐらい前にいったライムじゃないかよ"と、ケンザ390が始めて、そこで初めてメガGのラップがそういっていたのかと伝わる始末。"総選挙"と"通せんぼ"でも盛り上がる。メガGは"お前なぁパンチラインを借用するのがヒップホップの常套手段だ"と返すも、淡々と言葉が並べられて行くだけで観客を沸かすことができない。ケンザ390勝利。
<BES vs. KEN THE 390>
BES登場。先攻のBESは声が枯れすぎていてトラックの音に負けてる。"ラップくせぇけどただのおしゃべり くだらねぇ"。
昨日も思ったけれど、語彙に乏しい。かたやケンザ390はそこにつけこむ。"お客さん みんな気づいてるぜ あれ何かおかしい BESがホラ死んだ *****調子悪ぃだろう 声がガラガラ枯れてる ガラガラ蛇のとんねんるずよりも最悪"、"それじゃサランラップしてレンジでチンして3分もあればBOM"、最後には、"大丈夫だよ心配しなくても 出番ならあと16 残ってるからやばいの聴かせてみろよ ほらさ"とビートの終わりにきれいにまとめてくるからかっこ良さ。
2本目のBESは前半に声が枯れているいい訳をして、"フルコース 食べさせてくれよ もっとましなラップでこの耳によ"と虚勢を張り、そのあともグダグダ強がりが続くが、最後には"大将はMC漢 間違いなくこの場を湧かす"と諦めてしまう。ケンザ390、"早くもMC漢って諦めんなよ Bボーイパーク マジなめんなよ"、"俺は365日お前が草でブリッてる間もマイク持ってるよ"。ここでもドカーン。余裕綽々の言葉攻めが続く。立て板に水状態。"もっとやばいと思ってたのに正直がっかりさ"。当然ケンザ390の勝利。
<漢 vs. KEN THE 390>
騒然とする場内に大将・漢が悠然と中央に進む。先攻・漢は開口一番、"これはマジな話だぞ 俺は草ボケして忘れちまったから教えてくれ 俺はお前に負けたことあるっけ 一度でも"。"分かる? ケンザ390 サンプリングしてぇな こいつがいってた寒くなる だけど*******お前らはインターネットで目の前の俺を検索する"。うまいこと踏み抜きつつ、返す刀で、"冗談じゃねぇ ババぬきでいえばジョーカー引いただけ ふざけんなよダースレイダー いつも手助けしてんのは俺じゃねぇか"。得意の場外乱闘。
ケンザ390。"YO 忘れてんなよ 3対3 DVDになって出てるぞお前 あの3 on 3 池袋bed"。ここで漢が何かマイクを通して発するが、ラップをし始めていたケンザ390はすかさず、"喋っちゃ駄目でしょ それ順番じゃないでしょ"とビートを外すことなくとっちめてしまう。"声量減ったんじゃないの"。この辺りからギアを変え短い単文で繋いでいく。"座った目で見つめられても俺のラップはぶれないぜ 全然"、"3人抜き ワンツースリーと軽く突破 Mr.マリックみたいに俺のリリックでパッと消してやるぜ"。
2本目の漢。"とりあえずいうぜ 3 on 3 俺の種目じゃねぇんだよ"。オオッと代々木公園にどよめきが走る。それをいっちゃう的な。"これはダメレコード どうせ大学臭ぇ だったら大学生なのに なんだ俺の仲間は大麻臭ぇ いつでも逮捕の毎日 オイッ寝てねぇんだよ3日間も うってるかもしれない覚醒剤 だけどマイクを使ってもお前の嘘だけはマジ隠せーない"。最後には、"先攻を選んだのはこいつに上げる線香立てるため"。
スター喰らったマリオ状態のケンザ390の快進撃はまだまだ続く。"別に何食ってぶっとんでようが***ろうが問題はないんだけど なにもこんなところでいわなくてもいいだろうさ コソコソやってなよ そういうもんだろう"。さらに、"Bボーイパークみたいな公園でさ 大きい声で俺は悪いんだじゃねぇだろ ここはマイクの1対1 ***** 俺は大学生だったよもちろん でも問題はねぇ 今はラッパー 問題なくこれでメシ食って続けるぜ 俺とお前の差 どこにあるのかお客さんが決めればいいだろうBボーイパーク 3 on 3は俺たちのシマだった でも今日は違うぜ 今日負けたら次どうやっていい訳するんですか"。
言葉がくっきりと浮き上がっていて、その小憎たらしい内容がはっきりと聴き取れるから、自然と観客も盛り上がる。"二十六 七 八からずっと狙ってたぜこの首 大将首とって俺がマジでナンバーワン"。また見事な着地をみせる。少しもずれないのがすごい。この日一番の切れ味の鋭さだった。
しかし、両者に飛んだ歓声は同じと判定され、延長戦に突入。
先攻になったケンザ390が痛いところを突き始める。"ギリギリ首の皮1枚で助かったみたいだ 延長戦行ったぜ だけどこんなキチガイにはもう負けないぜ 獅子舞が入ってるんじゃないの このでっかい体 俺の方が後ろから何も操られていないことを証明しようか"。この次のところでまた漢がラップ中に何かいうと、ケンザ390はその茶々をあっさり拾い、乱れることなく続ける。"獅子舞だよ獅子舞 喋んじゃねぇよ ラップしてんのに てめぇそういうことで勝とうとするんじゃなぇよ"。いやぁもう絶好調。驚異の無敵状態がどこまでも続く。
Tシャツの袖をめくり、刺青だらけの腕を見せる漢。"何でお前 獅子舞って知ってんの?"で始め、笑いを誘う。"お前の父ちゃん優等生でも俺のゆーうこと聞くぜ"。最後には得意の低音の呪文みたいなラップ。たいしたこといっているわけではないのに、受けが良い。
一方のケンザ390は
昨日のTSUBOIが同じ漢戦でやったように、漢のその呪文ラップを楽々と真似してみせた上に、内容まで聴き取れるという技術の高さを見せつける。"真剣に言葉ぶつけ合おうと思ってこの場に立っているわけですよ なのに****みたいな言葉をダラダラ並べちゃってさ 本番一発勝負なんだよ これじゃおべんちゃら 獅子舞の事なんて知らねぇよ 体型から見ていってんだよ"。痛快。
漢の最後の16小節は恒例のイリーガルネタ。"何がバンジージャンプ 俺はいつでも命綱はなしだ"は良かったのに、そのあとは"昔は確かに吸ってたぜシンナー! 俺の仲間は何人死んだ"。ビートのお尻に収めることもできなかった。けれど勝敗は漢に転がる。
<漢 vs. MASARU>
漢が先攻。"俺がまくのはポリとガンジャだけ"が面白かった。マサルは勢いだけはあるが、ラップに内容がない。かたや漢の方は、"王様ゲームをやったのは覚えてるぜ マジで楽しかったなぁあの日の夜は"といやらしく内輪ネタを暴露。マサルも"YO ダースの前に俺がこの場で漢の首を切る"とは勇ましくいうものの、全然正面からぶつからないものだから、どうして出場したのかすら分からなくなる。
<漢 vs. DARTHREIDER>
結局大将戦にまでもつれる。じゃんけんで勝ったダースレイダーは後攻を選ぶ。ジブラ戦といっしょで少しも虚勢をはらずに確実に勝ちにいく姿勢がいい。
漢はまずどうしてじゃんけんで勝って後攻を選ぶのかと攻め立てる。
昨日もジブラに次世代を担うと宣言したのに、選んだのは後攻だったと。さらに、"大阪に行ったときの手助けをしたのを忘れるな"と内輪ネタをさらす。これもまたバトルの下世話な面白味なのだろう。"ヒップホップはワンチャンスじゃねぇ ここにいくらでもあるぜ"はかっこいいフレーズだった。"昭和ライフ53 ただの1個上 それならぶっ叩いてへこますだけ!"。一度溜めてから渾身の"ボケ!!"が飛び出し終了。
ダースレイダーは、"いつも助けてくれてありがとう"で始める。"昨日だって電話かけすぎた 仕事だ しょうがねぇだろ お前を呼んだのは俺だ だから来てくれてありがとうな 今このステージが俺たちだけの関係証明するステージだ すてーきな夜になるかどうかは分からないぜ お前と一緒にいくらでもバトってきた今までも だけども決着はつかないからな 死んだあとに笑えるかどうか それだけだ"。
先の漢の"電話かけすぎなんだよ"への返答を織り交ぜつつ、漢への感謝と敬意を表明。尖りきった攻撃へのうまいかわしだと思う。聴いている方も相手がどれだけわめこうが、語られないふたりの濃い繋がりを想像してしまう。
2本目の漢。いきなり掴みはオーケーなフレーズが飛び出す。"メッセージ分からなすぎ"とダースレイダーの奇抜な髪型を指摘。"俺はブリブリで噛み噛みだなぁ だけどもマイク持てば一発で神様なんだ これがホントのカリスマ"。"裏話はしたくないけどいってやるよ こいつは卑怯だから"とクスリネタと並ぶお得意の戦法に出る。"3 on 3になった理由 Bボーイパーク実行委員の方がマジでホントに自慰行為なんじゃない"、"****じゃないアーティストに あーちくしょう いわれる必要ねぇんだよ お前にいってるとなぁ お前司会じゃないよ いやいやもっと似合ってんのがあんだろう そこで***してる主催じゃねぇの"。
最後のダースレイダーの16小節。
"YO 俺は確かに死体 だけども死体から甦るヒップホップのゾンビ いくら殺してもお前の前に立ってラップしてるぜ 結局引退している間にバトルやり方わすれたんじゃないの 俺はダースレイダー常に現役 じゃんけんに勝ったら常に後攻だ バトルに勝つ負ける 真剣に考える だったら相手のいったことをひっくり返す そのやり方忘れちまったのか グータラしている間もいつでもマイクチェックワンツーさ 俺がやってる お前とはツーカーの関係じゃない 通過してきた生活の全て 違うか 今この場で言葉で戦えるだけが俺とお前の常に続いている関係かもな だから引退とかすんじゃねぇ 1対1でやりたいならUMB出て来いよ 毎年出てるぜ 俺は現役のMC"
やっぱりダースレイダーはうまい。相手を賞賛し受け入れつつも、的確に弱点を最短距離で突いて、最後には奮起を促す。見事だと思う。優勝はチームbboystance!
一方の漢も勝敗がついた後で飛び出したフレーズが奮っていた。"Bボーイパークの悲劇のヒロインは俺になったな ヒール役だからハイヒールだぜ"。
【DJ YUTAKA 30th Anniversary】 18:22~
DJユタカに少しも興味が湧かないので、前列を離れ公園内をぶらつく。この時間にNITRO MICROPHONE UNDERGROUNDのGORE-TEXとDELI、BIG-Zが出たよう。
【TEENS NO.1 DJ CHAMPIONSHIP 決勝】 18:31~18:50
Eccy主宰のSLYE RECORDSに所属するDJ KEITAと、DJ YABOOによる決勝戦。どちらも二十歳。DJケイタの方は
昨日の予選をたまたま見ていたので、ほとんど同じことをやっているようで面白味を感じなかったが、DJヤブの方もルーティンだったのかは知らないものの、前半はゲロッパで攻め、後半は華やかな音のパッチワークが展開され、楽しくなるパフォーマンスだった。
勝者はDJケイタ。審判のひとりDJユタカが珍しく奥歯に物が挟まったような発言をしていたのが気になる。
【UNDER 20 MC BATTLE 決勝】 18:51~18:58
決勝戦のビートは「証言」。ダースレイダーは、"このふたりで真の9番目の証言を復活させて欲しいと思います"と語り、ふたりにじゃんけんをさせる。勝ったコペルが後攻を選ぶ。決勝戦だけ16小節の2本勝負に。
1本目のコペル。"ダークネス"、"ハッピネス"、"どこまでいってもハッピーじゃないんです"、"プライスレス"、"負けなんです"、"言葉のレスポンス"と踏み倒す。
ゾーンザダークネスのしゃにむに相手を罵るスタイルはバトルなのだから好ましいはずなのだけど、ただの口げんかで出てくるような悪口が飛び出すのには白けてしまう。"何がハピネス はまってるぜファミレス"には盛り上がった。
2本目のコペルは、小柄な体を弾ませるようにして相手の周りを飛び跳ね、繰り出したパンチラインが最高だった。"いってることが全く分かんねぇ 韻踏んで何がいいてぇ こっちはラップして愛を伝えてぇ"。これで決まり。17歳に"愛"といわれてしまえば声を挙げざるを得ない。その後もGAMAの「証言」ライムが飛び出したり、最後には、"16小節 あんたには無駄なようです ハイ、バイバーイ"と可愛くも残酷に言い放って終了。当然コペルの優勝。
ダンスの団体のバトルが長引いたようで、少し時間があく。その間うちわを片手にジブラがサイドMCを務めていた。
【BBOY BATTLE 決勝】 19:14~19:27
遠目にはステージ上の動きは分からなかったが、盛り上がっていたよう。
【表彰式】 19:28~19:38
二十歳以下のMCバトルを制したコペルと3 on 3の勝者ダメレコチーム、DJバトルの優勝者DJケイタ、団体と個人それぞれのダンスバトルを勝ち残った者に大きなトロフィーが渡された。写真は見にくいけれど、ダースレイダーからトロフィーを渡されるコペル。
最後。DJユタカが会場には来られなかったCRAZY-Aの名前を叫ばせて、ジブラが"これにて終了っ!!"と閉幕を宣言。19時38分、今年のBボーイパークが無事に幕を閉じた。
今年も楽しめたイベントだった。"伝説"という言葉が好きな日本人は数年後には早くも"あの伝説の"とマクラに使うのかもしれない。2007年からたった3回しか参加してない自分がいえることではないけれど、どの年もそれなりに見せ場があり、その瞬間を満喫してきた。今振り返っても充足したイベントだったといえるし、今回と何ら変わらない。
ただ、今回行われた梃子入れはどれも成功していたことも事実で、日本語ラップファンでなくても楽しめる夏フェスとして機能していたのは良かった。第一に評価できるのはタイムテーブルを作ったこと。それとサブステージ。見たいアーティストが同時間に出るというフェスらしいジレンマをまさかBボーイパークで味わわされるとは思ってもみなかった。
サブは簡素で小さいステージだったが、その分冷やかしではない熱いファンが集まり、サブならではの良さがあった。今回のBボーイパークで見ることのできたライブ中で最も熱く最も少ない観客の中でやっていたSTERUSSは、きっとメインステージでやったらまた違う反応が返ってきたことだろうと思う。来年は今年以上に強力な出演者を用意して、どっちを見ようかと迷わせて欲しい。
ジブラやダースレイダー、サイプレス上野、そしてMCリュウといった司会がそれぞれのパフォーマンスの前に登場し、次のアーティストの紹介をしていたのも良かった。ファンには当然の経歴だったりしても、初めて見る人にとっては不明なわけで、とても親切な変化だと思う。
もしかしたらジブラのライブよりもみんなが耳をすましリリックを一語一語聴き取り、理解し、声を挙げていたMCバトルの復活も嬉しい。私自身はバトルなんてものはラッパーの余技と捉えて、ほとんど関心がなかったわけだけど、実際に生で見るとラッパーの力量が推し量れもするのだなと少し考えを改めさせられた。
音源ではあんなに酷いケンザ390がバトルになるとどうしてこうも生き生きとするのか。アルファは聴いたことなかったけれど、ツボイのパフォーマンスを見て興味を抱いた。漢の大活躍も忘れてはいけない。彼の極悪なヒールっぷりがあったからこそ盛り上がった今回のMCバトルなわけだ。ダースレイダーは今回のイベントで本当に次世代を担う気なのだろうと思えてきた。それだけの技術と行動力はすでに証明されているわけだ。
不満があるとすれば、ライブの面子に一部もうこの人たちはこのヒップホップの祭典に値しないだろうという人たちがいたことか。その時間を割くなら「PEOPLE'S CHOICE ARTIST LIVE」のライブ時間を長くして欲しかった。ほぼ15分ほどで、例年のライブ時間10分にちょっと付け足しただけでは物足りない。30分ぐらいはやって欲しかった。そしてそれだけ長くやれるほどの力量をもった人たちのパフォーマンスが見たいわけだ。
その枠でライブした15組は、"リスナー&関係者の投票によるアンケート投票結果から選出された"とされるが、そのアンケート投票の結果が公表されないなど不透明感は拭えない。また関係者の声がどれほど影響しているのかも気になるところだ。詳しい結果が明かされないなら、一般人を参加させる投票は止めた方がいい。
外国のフェス「All Tomorrow's Parties」みたいな方式も面白いのかなと夢想してみた。ひとりのアーティストがキュレイターを務めて、ライヴ出演者を決定していく仕組みのフェスなのだが、その年ごとに選出者の色が出て、イベントにユニークさが生まれるわけだ。でもまあ、俺が俺がの精神が強いヒップホップには向かないやり方かもしれないけれど、日本語ラップ界全体を見ることのできる人が選ぶとなると相当マニアックかつ実力の伴っているアーティストから有名どころまで揃うイベントになりそうではある。
まあ、昨年の
記事を読み直すと大雨になったこともあり、グダグダと愚痴を並べたまとめにしてしまったわけだけど、それに比べれば、今回はほとんど雨粒は落ちてこなかったし、日曜日などは曇り空だったから快適ですらあって、白熱したMCバトルも、才能を予感させる20歳以下のラッパーも知ることができ、さらにはベテランから中堅どころまでの熱いライブも見られ、デラックスケバブもうまかったし、とても楽しい2日間だった。