青山学院大学の学祭の中庭ステージで行われたTHIS IS PANICのライブを見てきた。
iTunesストアの「今週のシングル」で無料配信されると、またたくまにコメント欄が、"これは音楽ではない"だとか、"耳レイプ"だとかいう罵詈雑言で埋め尽くされたヒップホップバンド・ディスイズパニック。iTunesストア利用者には日本語ラップをたしなまない人が多いらしく、目も当てられない惨事になってしまったわけだが、iTunes限定でリリースされた
シングルを聴く限りでは、なかなかの珍味というか、まあLBネーションをいまだに引きずったラップが面白く、今回は無料で見られるということもあり、若者でごった返す学祭に侵入してきた。
17時20分。日が暮れるのがすっかり早くなり、手作りのステージ上に照明が明るい光を投げかける中、最初に出てきたのはハロウィンということなのか、カボチャマスク男だった。オールドスクールなラップをひとくさりかました後に、続いて緑色のTシャツ男が登場。彼も同じスタイルのラップで場を盛り上げる。続くのは魔女御用達のとんがり帽子をかぶった長身の男。彼も当然ラップを始める。最後には上下ジャージ男がラップをしながら現れ、4人はタメの利いたラップで掛け合う。流しているトラックはビートの骨組みだけのものなので、リリックも聴き取れ、オールドスクールなノリが楽しい。
4人がラップをする1曲目が終わったところで、カボチャ男がマスクを脱ぎ捨てドラムへ。緑Tシャツはベースを抱える。ギターやキーボード、ターンテーブル担当はいないようだ。
バンドの準備が整ったところで、上下ジャージ男(ウエダというらしい)がiTunesストアの騒ぎについて話し、自分たちが受けた批判に対しちょっと愚痴った後で、お金に不自由することなく青山学院の幼稚園から暢気にエスカレーター式で大学まで進んだ自分たちにしか作れない曲がある。でもそこには鬱屈した心の悩みがあって、頭の中でこういうサイレンの音を立てるんですよ、というようなMCをした直後に挿入されたのが、ある意味ヒット曲となった「WARNING こちらパニック応答せよ」の冒頭のサイレン音。ウエダはさらに叫ぶ。"後ろの人、どうか俺の声を聴いてくれ! 俺に言葉を! 俺に魂を!"。
この曲では1ヴァース目を担当したウエダはLBらしさとYO-KINGっぽい攻撃性が同居した、なかなか魅力的なラップを聴かしてくれる。バンドサウンドが轟く直前まではリリックが聴き取れるのだが、演奏が始まってしまうと途端に勢いだけのラップになる。一番声量のありそうなウエダでさえそうなのだから、2ヴァース目を担った上背のあるパーマのボーカルにはさらに厳しい状況だ。
間奏のときに、ウエダはステージを飛び降り、客席のかなり後方まで駆け抜けていき、ラップだけではなく行動でもおのが魂とやらを表現しようとしていた。飄々としたスタンスを取りながらも熱いパフォーマンスをすることだけは分かった。技術が追いついていないけれど。
3曲目はウエダではない方のラッパーが作った曲らしく、ぬぼっと立ったまま、素朴なメロディの「自給自足」を静かに歌い始めた。時折Dragon Ashらしいスクラッチが挟まれる。
ここまでのパフォーマンスは、きっと熱さで押し切るんだろうなという事前の予想通りの展開で、この「自給自足」にしても歌メインの曲は
シングルに収録されていた「anywhere」という曲があったので、驚きはなかったのだが、グッと盛り上がるサビで、"うんこ食いた~い"と突然ぶちまけたので本当にたまげた。確かに曲名は「自給自足」であり、その通りなのだが、そう来るとは予想だにしていなかったので驚愕。同時にかなり笑えた。
2番はポエトリーリーディングとなり、途中でウエダのラップパートが挟まり、ブリッジを経て、再び衝撃のサビへ。最後には"野糞でもい~い"と歌ってた。
17時38分。全3曲で終了。
喉ができていないためにラップなのにその言葉が聴き取れない点など、荒削りなグループではあるのだけど、現在の日本語ラップの主流となっているアメリカのはやりに追随したラップスタイルとは異質であり、ポップであることも怖がっていないし、うまいこといけば口口口みたいなグループになりそう。ちょっと楽しみではある。
1.?
2.WARNING こちらパニック応答せよ
3.自給自足