すばらしくてNICE CHOICE

暇な時に、
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2021.02.10 Wednesday | - | - | -
THIS IS PANIC@青山学院大学

青山学院大学の学祭の中庭ステージで行われたTHIS IS PANICのライブを見てきた。

iTunesストアの「今週のシングル」で無料配信されると、またたくまにコメント欄が、"これは音楽ではない"だとか、"耳レイプ"だとかいう罵詈雑言で埋め尽くされたヒップホップバンド・ディスイズパニック。iTunesストア利用者には日本語ラップをたしなまない人が多いらしく、目も当てられない惨事になってしまったわけだが、iTunes限定でリリースされたシングルを聴く限りでは、なかなかの珍味というか、まあLBネーションをいまだに引きずったラップが面白く、今回は無料で見られるということもあり、若者でごった返す学祭に侵入してきた。

17時20分。日が暮れるのがすっかり早くなり、手作りのステージ上に照明が明るい光を投げかける中、最初に出てきたのはハロウィンということなのか、カボチャマスク男だった。オールドスクールなラップをひとくさりかました後に、続いて緑色のTシャツ男が登場。彼も同じスタイルのラップで場を盛り上げる。続くのは魔女御用達のとんがり帽子をかぶった長身の男。彼も当然ラップを始める。最後には上下ジャージ男がラップをしながら現れ、4人はタメの利いたラップで掛け合う。流しているトラックはビートの骨組みだけのものなので、リリックも聴き取れ、オールドスクールなノリが楽しい。

4人がラップをする1曲目が終わったところで、カボチャ男がマスクを脱ぎ捨てドラムへ。緑Tシャツはベースを抱える。ギターやキーボード、ターンテーブル担当はいないようだ。

バンドの準備が整ったところで、上下ジャージ男(ウエダというらしい)がiTunesストアの騒ぎについて話し、自分たちが受けた批判に対しちょっと愚痴った後で、お金に不自由することなく青山学院の幼稚園から暢気にエスカレーター式で大学まで進んだ自分たちにしか作れない曲がある。でもそこには鬱屈した心の悩みがあって、頭の中でこういうサイレンの音を立てるんですよ、というようなMCをした直後に挿入されたのが、ある意味ヒット曲となった「WARNING こちらパニック応答せよ」の冒頭のサイレン音。ウエダはさらに叫ぶ。"後ろの人、どうか俺の声を聴いてくれ! 俺に言葉を! 俺に魂を!"。

この曲では1ヴァース目を担当したウエダはLBらしさとYO-KINGっぽい攻撃性が同居した、なかなか魅力的なラップを聴かしてくれる。バンドサウンドが轟く直前まではリリックが聴き取れるのだが、演奏が始まってしまうと途端に勢いだけのラップになる。一番声量のありそうなウエダでさえそうなのだから、2ヴァース目を担った上背のあるパーマのボーカルにはさらに厳しい状況だ。

間奏のときに、ウエダはステージを飛び降り、客席のかなり後方まで駆け抜けていき、ラップだけではなく行動でもおのが魂とやらを表現しようとしていた。飄々としたスタンスを取りながらも熱いパフォーマンスをすることだけは分かった。技術が追いついていないけれど。

3曲目はウエダではない方のラッパーが作った曲らしく、ぬぼっと立ったまま、素朴なメロディの「自給自足」を静かに歌い始めた。時折Dragon Ashらしいスクラッチが挟まれる。

ここまでのパフォーマンスは、きっと熱さで押し切るんだろうなという事前の予想通りの展開で、この「自給自足」にしても歌メインの曲はシングルに収録されていた「anywhere」という曲があったので、驚きはなかったのだが、グッと盛り上がるサビで、"うんこ食いた~い"と突然ぶちまけたので本当にたまげた。確かに曲名は「自給自足」であり、その通りなのだが、そう来るとは予想だにしていなかったので驚愕。同時にかなり笑えた。

2番はポエトリーリーディングとなり、途中でウエダのラップパートが挟まり、ブリッジを経て、再び衝撃のサビへ。最後には"野糞でもい~い"と歌ってた。

17時38分。全3曲で終了。


喉ができていないためにラップなのにその言葉が聴き取れない点など、荒削りなグループではあるのだけど、現在の日本語ラップの主流となっているアメリカのはやりに追随したラップスタイルとは異質であり、ポップであることも怖がっていないし、うまいこといけば口口口みたいなグループになりそう。ちょっと楽しみではある。


1.?
2.WARNING こちらパニック応答せよ
3.自給自足
2009.10.31 Saturday 23:59 | 音楽 | comments(0) | trackbacks(0)
石持浅海『セリヌンティウスの舟』

読了。
☆☆/5点中

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大時化となった海で起きたスキューバダイビング中の遭難事故で、強い信頼で結ばれるようになった6人の仲間。その中のひとり、米村美月が青酸カリで服毒自殺を図った。残された5人は彼女の自殺に不自然な点を見つけ、その死に隠された謎について推理を始める。
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タイトルの"セリヌンティウス"とは、太宰治の「走れメロス」で、メロスを信じて彼の代わりにディオニス王に囚われた人物の名前。

青酸カリを収めていた小瓶がふたが閉められた上に倒れて転がっていたことに端を発した疑問に、5人がそれぞれの考えを述べていく中で、その死の真相に近づいていく。舞台劇みたいなもので、マンションの1室をステージに、時折2年前の事故の様子が挿入されるものの、ほぼ5人の会話だけで物語が進んでいく。

意外な事実も大ドン返しもミステリーの定石通りにつつがなく描かれるわけだが、そもそもの大元である遭難事故で得られたという強い絆が言葉を尽くして描写はされるけれど、どうにも薄っぺらい印象が否めず、必然的に物語の土台の弱さに帰結する。

設定のためのキャラクターというミステリー小説にありがちな不自由さが登場人物に感じられる点でもいまいちだ。アイディアでは成功していても小説としては単なるパズルの域を出ていない。
2009.10.31 Saturday 23:58 | | comments(0) | trackbacks(0)
People In The Box『Ghost Apple』

2009年10月14日リリースのサードミニアルバム。

10ヶ月ぶりの新作発表になるが、またまた7曲入りのミニアルバムサイズ。曲目が月曜日から始まり日曜日で終わる。それぞれにサブタイトルも付けられているわけで、本人たちにとってはコンセプトアルバムなのかもしれないが、歌詞同様にその内容は不明だ。

手に入れて以来ちょこちょことながら聴きしていたわけではあるのだが、いつも通りのギターを基調としたロックに、透明感のあるボーカルが被さり、歌詞は難解というよりも独特の美学に裏打ちされた世界観が歌われるというものであり、その変化のなさに軽い失望を抱いた。

が、今回ブログに書くにあたり、腰を落ち着け歌詞を見ながらじっくり聴いてみたら、音の面白さ、構成の妙、それと歌詞と程よく絡み合ったメロディの良さに今さらながら気づいた。自分の生活のペースに合わせていると聴き逃してしまうようだ。彼らの音世界に寄り添って初めて、その魅力が耳元で開いていく。不思議なバンドだと思う。

そんなわけで、M2「火曜日 / 空室」とM4「木曜日 / 寝室」、M6「土曜日 / 待合室」がメロディの良さという点で特に楽しめた。M6での思い出の"君"を描き出し、ふたりで誰にも邪魔されない繭を作り上げようとするはかなくも切ない世界観はすてきだ。

しかし、歌詞にしろメロディにしろ、もう少し分かりやすく作ってもいいのかなとは思う。ロックでも口ずさみ易さはあってもいいのだから。スタンスを維持し続ける姿勢は立派だけど、大衆にも気持ち寄り添って欲しい。
2009.10.29 Thursday 23:59 | 音楽 | comments(0) | trackbacks(0)
日明恩『鎮火報』

読了。
☆☆☆/5点中

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かつては不良と呼ばれた大山雄大(20歳)は新米消防士として赤羽台消防主張所に勤務している。不法滞在の外国人が住まうアパートを狙う連続放火事件の消火にあたったことで、仕事への意識が少しずつ変わっていく。
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ミステリー要素も含まれているが、誰が怪しいのかすぐに分かるし、動機や犯行の手口も唖然とさせられるほど稚拙かつ無理矢理なものでしかない。しかし、本作の肝はそこではなく、新米消防士の成長物語が読みどころであり、楽しめるところだ。

悪ぶっていたころのメンタリティをいまだに引きずっている大山雄大が若者言葉で軽妙に話しかける文体は、読みやすさに結びつくが、著者は消防署の活動について調べたことをとにかく書き込んでいるので、ぶ厚い作品になっている。読み終えた頃には消防士についての豆知識がたんまり頭の中に収まっているという具合である。ただ調べてことを調べただけ書くのではなく、物語の奥行きや説得力を出すために、さらりと書き込むのが重要だと思うけど。

消防士をしていた父親が雄大が幼い頃に殉職し、いまだに解消されていない父に抱いた複雑な感情や、実の兄のように慕っていた仁藤に芽生えた反発心などドラマ要素は盛り沢山であり、また、雄大をとりまく個性豊かなキャラクターたちの面白さなどもあり、謎解きパートや消防への膨大な情報量はともかくとして、スルスルと読み進めることができる。

これが最後と決意して出動した現場での雄大の言葉には意外にもおセンチな気分にさせられ、不満は多いものの次を読んでみたいと思ってしまった。

最近の顔だけが取り柄の俳優を主役に据えて、ミステリー部分は面倒が多いので一部改変した上で映画化したら簡単にヒットしそう。
2009.10.29 Thursday 23:58 | | comments(0) | trackbacks(0)
plenty『拝啓。皆さま』

2009年10月21日リリースのファーストミニアルバム。

2004年結成。ボーカルギターの江沼郁弥、ベースの新田紀彰、ドラム・吉岡紘希による茨城県出身のスリーピースバンド。

少し前にiTunesストアの「今週のシングル」に選ばれた「ボクのために歌う吟」を聴き、ちょっと気になっていたロックバンドの処女作。ナイーブな少年性を全開にした歌詞とうまいとはいえないものの心のどこかに引っかかって離れないボーカルの声質に惹かれた。その感想は先の曲も含めた全7曲収録の本作を聴いてもほとんど変わらなかった。

"大人になれば強くなれると思うんだよな・・・"、"大人になりたくて / 誰かのこと考えてたくて"と歌われる歌詞は、自分がまだ子供であることを宣言しているわけで、別の場面では直面する現実を否定してみたり、愚痴を並べただけの歌詞にしか思えなかったりする。それでも少年声で歌われてしまうと、頭の片隅では作詞作曲を一手に担うボーカルの年齢っていくつなんだろうとは思うものの、安易に捨てておけない魅力が生まれる。

メロディにしても、バンドの演奏技術・アレンジにしても、特に光るところは見出せない。今の彼らの特色はボーカルの声だけだ。とはいえ、まだ彼らは若いのだろうし、これから優秀なプロデューサーに出会えば、もしかしたらM4「ゆれて・・・」のような曲でも構成のうまさを見せつけられるようになるかもしれない。

メロディに関していえば、日本語のイントネーションを大事にしたものであり、M6「後悔」や表題曲となるM7のそれには親しみやすさがあり、これからを期待できる旋律だった。

何にせよ、全てはこれからのバンドであり、どんな風に成長していくのか楽しみではある。



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2009.10.21 1st mini AL『拝啓。皆さま』
2010.04.21 2nd mini AL理想的なボクの世界
2011.01.12 1st SG『人との距離のはかりかた / 最近どうなの? / 人間そっくり』
2011.05.25 2nd SG『待ち合わせの途中 / 終わりない何処かへ / 空が笑ってる』
2012.02.15 1st AL『plenty』
2012.08.01 3rd SG『傾いた空 / 能天気日和 / ひとつ、さよなら』
2012.11.07 4th SG『ACTOR / DRIP / ETERNAL』
2013.05.29 2nd AL『this』
2013.12.04 3rd mini AL『r e (construction)』
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2009.10.28 Wednesday 23:59 | 音楽 | comments(0) | trackbacks(0)
榎本くるみ『あなたに伝えたい』

2009年10月21日リリースのファーストミニアルバム。

私にとっての榎本くるみの魅力はその歌声にある。きれいに伸びていき、気づくと自分がふっと包み込まれている感覚に陥る歌声にも惹かれるが、祈るように切々と歌われる声もまた良いのだ。これまでの2枚のアルバムでは、その良さを十二分に発揮できていなかったが、今回は5曲入りのミニアルバムということで、いつもの90年代ガールズポップのごとき駄曲が1曲と少なく、高い打率を誇る作品となった。

表題曲のM1とM5が特に良い。好きな人に自分の想いを言葉を歌を伝えたいと歌うM1。一方のM5では足元を見据え、そこからの飛躍を誓う。愁い帯びたメロディに乗せられた切なげな歌声に魅了される。

彼女の歌は音楽性は異なるものの、Sinéad O'Connorをなぜだか思い出させる。シネイド・オコナー(前はシンニードといってたけど、今はシネイドで統一されているよう)の強い眼差しと歌に込められた想いの強さが似ているのだろうか。

ともかく、単音弾きのギターリフによるハードロック調のM3「フリーダム」のような恥ずかしいぐらいにださいアレンジはもう止めた方がいい。彼女が元気よく歌うと妙にはまってしまう傾向にあるわけだが、そっちの路線に行くよりはM1やM5の、その歌声にゆったりひたっていられる曲を生み出し続けて欲しい。
2009.10.27 Tuesday 23:59 | 音楽 | comments(0) | trackbacks(0)
VA『くるり鶏びゅ~と』

2009年10月21日リリースのトリビュートアルバム。

11年前の同日である10月21日にシングル『東京』でメジャーデビューしたくるりの10周年を祝ってのトリビュート作品。木村カエラから、二階堂和美や世武裕子といったシンガーソングライター、ハンバートハンバート、キセル、MASS OF THE FERMENTING DREGS、9mm Parabellum Bulletなどの若手、デビューがやや近い曽我部恵一、ベテラン勢では奥田民生や高野寛、LITTLE CREATURES、大御所の矢野顕子や松任谷由実といった具合に世代に偏りが少なく、またカバーされている楽曲も各時代のアルバムから万遍なく選ばれている。

若手は総じて控えめなカバーに終始。現役ロックバンドの曲を演奏するわけで、突飛なアレンジは難しいのかもしれないが、それにしても面白味に欠ける。良くいえば原曲の雰囲気を尊重しているともいえるが、悪くいえば予定調和でしかない。これでは岸田繁のメロディと歌詞の良さを確認したというありきたりな印象しか抱けない。

さすがといえるのは矢野顕子や奥田民生、二階堂和美といったアクの強いメンツだ。特に矢野顕子は反則に近い。ピアノの弾き語りでカバーした「Baby I Love You」は原曲がどうだったのか全く思い出せないほど矢野色に染まっている。あの声はずるい。奥田民生も自分の持ち歌を歌っている感があるほど自然で、ライブなら続けて「イージュー★ライダー」を歌い出しそう。

曲順通りに書き続ければ、木村カエラによる「言葉はさんかく こころは四角」は彼女の伸びのある歌声と爽やかなメロディが相まってとても気持ち良く聴けた。彼女は着実に実力を付けている。曽我部恵一が情感込めて弾き語りする「さよならストレンジャー」は、その良し悪しはともかくとして持ち味を生かしている。自由にアレンジしている点が良い。

矢野顕子もすごかったが、高野寛のボーカルも絶品だった。「ワンダーフォーゲル」という名曲を料理しているわけで、悪くなるはずはないのだけど、歌声が日本語としておかしいのを承知で書けば、青春声とでもいうか、あの頃の甘酸っぱい日々がフラッシュバックするような声で歌われると妙にせつなくもなる。彼の作品はほとんど聴いたことないけれど、きっとすばらしいのだろう。

LITTLE CREATURESによる「ハイウェイ」のそっけないカバーもこのメンツの中では楽しめる。二階堂和美も、矢野のようにその歌声だけで他人の曲を完全に自分のものにしてしまうアーティストだ。この人は相変わらずすごかった。最後はくるりの新譜でも活躍していた世武裕子。矢野や二階堂とまではいかないものの、「東京」をただ丁寧なだけではなく、せつせつと感情豊かに、でもどこか冷めた声で歌い上げている。そのバランスが独特で面白い。


若手バンド勢にありきたりなカバーが多かったものの、得意技のあるベテランたちがしっかり本領発揮しているので、悪くない作品にはなっている。



1.anonymass 「赤い電車」
    16th SG & 6th ALNIKKI』(2005)
2.andymori 「ロックンロール」
    13th SG & 5th ALアンテナ』(2004)
3.矢野顕子 「Baby I Love You」
    17th SG & 6th ALNIKKI』(2005)
4.奥田民生 「ばらの花」
    7th SG & 3rd ALTEAM ROCK』(2001)
5.木村カエラ 「言葉はさんかく こころは四角」
    19th SG & 7th ALワルツを踊れ』(2007)
6.曽我部恵一 「さよならストレンジャー」
    1st ALさよならストレンジャー』(1999)
7.ハンバートハンバート 「虹」
    2nd SG & 1st ALさよならストレンジャー』(1999)
8.高野寛 「ワンダーフォーゲル」
    6th SG & 3rd ALTEAM ROCK』(2001)
9.Fantastic Plastic Machine 「ワールズエンド・スーパーノヴァ (FPM EVERLUST MIX)」
    9th SG & 4th ALTHE WORLD IS MINE』(2002)
10.MASS OF THE FERMENTING DREGS 「飴色の部屋」
    OST『ジョゼと虎と魚たち』(2003)
11.9mm Parabellum Bullet 「青い空」
    3rd SG & 2nd AL図鑑』(2000)
12.松任谷由実 「春風」
    5th SG & 3rd ALTEAM ROCK』(2001)
13.LITTLE CREATURES 「ハイウェイ」
    12th SG & OST『ジョゼと虎と魚たち』(2003)
14.二階堂和美 「宿はなし」
    2nd AL図鑑』(2000)
15.キセル 「Old-fashioned」
    indies『ファンデリア』(1998)
16.世武裕子 「東京」
    1st SG & 1st ALさよならストレンジャー』(1999)
2009.10.26 Monday 23:59 | 音楽 | comments(0) | trackbacks(0)
恩田陸『球形の季節』

読了。
☆☆/5点中

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4つの高校が居並ぶ、東北のある町で奇妙な噂が広まる。坂井みのりや浅沼弘範、関谷仁たち地歴研のメンバーはその出所を追跡調査することに。やがて噂通りにひとりの女生徒が姿を消した。一方、町では金平糖のおまじないがはやり、生徒たちは第二の噂を耳にし始めていた。
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舞台となる"谷津"という町は、"東北では一番広い県の内陸部の盆地に位置している"人口15万人程度の"I市"の中心と紹介される。かつては交通の要所として栄え、由緒ある町なのだが、時折人が忽然と消える地でもある。今回の噂や町の大人が密かに行っている石積み、子供たちの間ではやるおまじない等々を通して、じわじわと不穏な空気が醸成されていく様子が3人の高校生の視点で描かれる。スティーヴン・キングでいえば『IT』であり、メイン州デリーだろう。

噂が本当となり、狭い町と4つの高校の生徒たちが浮き足立ち始める。やがてことの首謀者がはっきりするころには町の別の顔が浮かび上がる。ここまではすごくいい。まどろっこしくなるほどに雰囲気作りに徹する物語から、異空間に飛び立つわけだが、肝心のラストが投げやりになってしまっているのが残念だ。みのりをメインに置いているので仕方ないのかもしれないが、念入りに書き込んでいた前半や中盤からはもう少し突っ込んだエンディングが用意されているものと思ってしまったのだ。

キングの作り上げた町"キャッスルロック"にしろ、最近の"デリー"にしろ、町に忍び寄る危険を察知し、対処するのはたいていが大人である。それに対し、本作は高校生たちが主人公になったことで、その年齢ゆえの感情の揺らめきや危うさがよく出ている点では楽しめる。
2009.10.26 Monday 23:58 | | comments(0) | trackbacks(0)
JAY'ED『Everybody』

2009年10月14日リリースの6枚目のシングル。

表題曲の1曲目は歌い始めからして連想するのはNe-Yoという軽快なダンスナンバー。軽く伸びやかな歌声はBACHLOGICのメジャー感溢れるトラックとよく合っている。サビ並にメロディにひと工夫あれば、クラブアンセムにもなれたかもしれない。JAY'EDの曲がクラブでかかるのかは知らないけれど。

M2「Do I Do」はやけにメロディが作り込まれた曲だと思ったらStevie Wonderのカバーだった。そりゃそうか。
2009.10.25 Sunday 23:59 | 音楽 | comments(0) | trackbacks(0)
古内東子×KREVA『A to XYZ / スロウビート』

2009年10月14日リリースのコラボレーションシングル。

90年代後半に活躍し、OLたちから"恋愛の教祖"などと祭り上げられていた古内東子。愛憎入り交じった湿っぽい歌を歌う人という印象しかない。KREVAとのコラボでなければ聴くこともなかっただろう。両A面シングル。

M1「A to XYZ」は音色の選択はクレバなのかなと思し、曲の見せ場もほぼ半々にもかかわらず、古内が歌うと途端に曲は彼女色に染まっていく。相変わらずのぬめるような歌声で苦手だ。鍵盤が強めなためか、ポップミュージックにクレバが迷い込んで、遠慮がちにラップしているよう。

M2「スロウビート」は、クレバの最新アルバム『心臓』に収録された「シンクロ feat. 古内東子」路線そのままの曲ではあるのだが、かの曲では封じ込められていた彼女のぬめった歌声が曲をずいぶんと侵食していて鼻白んでしまうのはどうしようもない。「シンクロ」にあった、抑制されているのに生々しいビートはここにはなく、ただメロウさだけがある。

コラボレーション作品として、ふたりの比重の掛け方は完璧に等分である。しかし、そこから個人では作り出せない新しい何かを生み落としているのかといえば、それはない。どちらのファンももう一方の要素を邪魔だとしか思えない曲になってしまった。くるりとRIP SLYMEの共作に通じるものがある。
2009.10.25 Sunday 23:58 | 音楽 | comments(4) | trackbacks(0)
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