すばらしくてNICE CHOICE

暇な時に、
本・音楽・漫画・映画の
勝手な感想を書いていきます。
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2021.02.10 Wednesday | - | - | -
2009年ベストアルバム
5回目になるのかな。恒例の年末のお遊び企画・2009年を個人的に彩った10枚のアルバム! プラス各ジャンルごとに5枚ずつを選別。昨年は洋楽ヒップホップとR&Bも選んでいたけれど、今年は聞けなかったものが多すぎたので、その2部門は却下。

日本語ラップは昨年よりも元気だった。音・スタイルの細分化が進み、どの作品も一定水準以上の出来であり、ラップの技術がいまいちだからと否定するような盤はほとんどなく、もはやラップされる内容が好みか否かで判断する時代になったという思いを強くした。

ロックは若手バンドが2枚目、3枚目とコンスタントに出し続けていて、それなりに新鮮な気持ちで聴き続けていたが、結局選んだのは一般的にも売り上げのある作品に落ち着いた。a flood of circlelego big morlも悪くなかったし、FoZZtoneの貪欲さも面白かった。Dragon Ashはここに来て最高傑作かと思うような作品を仕上げてきたし、tobaccojuiceの攻めたカバーアルバムには意表をつかれた。まあでも、最終的に選んだのは下記のアルバム。

日本のR&Bでは男性陣が頑張り始めたのは嬉しい。ポップスはドリカムの復活が意外だった。椎名林檎をどうするかでは結構悩んだものの外した。悩んだといえば、ラップではGAGLE、TAK THE CODONA率いる呪煙 a.k.a JUGEMRINO & DJ YAS、快作だったスチャダラパーTERIYAKI BOYZだって悪くなかった。マボロシはロックかラップに入れるかで迷って結局外した。



第1位 RUMI『Hell Me NATION』 →記事

1枚目2枚目は表現者としての強い自覚が表れている作品だったが、この3枚目ではエンターテナーとしてのラッパー部分が覚醒され、表現に深みと同時にコミカルさが顔を出し、聴きやすくなった。その難しい両立を同じようにしれっとした顔で成し遂げている般若と何かアクションして欲しいと切に願う。


第2位 S.L.A.C.K.『WHALABOUT』 →記事

年の頭にファーストアルバム『My Space』を出して、PSGというグループとしても1枚、そしてこの2枚目と新人としては目を見張る機敏さがあった。あの独特なノリの1枚目だけでもすごかったわけだけど、さらにこのセカンドで見せた変化は驚異だった。


第3位 acari『片想いのレッスン』 →記事

スリーピースバンドの1枚目。アルバムタイトルと同じく歌詞もこそばゆいものがあるわけだけど、それでも聴かせてしまうシンプルなメロディがたまらない。こういうバンドを見つけたときは思わずニンマリしてしまう。


第4位 MEISO『夜の盗賊』 →記事

配信シングルのリリース時から今か今かと待ち構えていた元外人二十一瞑想のファーストアルバム。期待通りの仕上がりで大満足。年初にはコラボ作品が出るようだし、2010年も楽しみが続く。ライブが今一番見てみたいラッパー。


第5位 三浦大知『Who's The Man』 →記事

向こうのはやりのR&B/ポップスをそのまま日本語でかっこよくやれていて驚いた。こういった学芸会レベルではない、踊って歌える見映えのいい男性アーティストがもっと出てきてもいいのに。


第6位 SMRYTRPS『MIX TAPE WORD IS BROWN pt.2』 →記事

一般流通されていないし、曲自体は昔の未発表音源という話を聞き、どうしようか悩んだが、昔はあれだけかっこよかったSMRYTRPSのあの頃の思わず首が振れてしまうビートを再び聴けたという喜びで思わず選出。3代目リーダーがZOMに変わり、最近はSemmyとの絡みもあるようだし、TOY'S FACTORYが納得する、売れるだろう路線の曲だけではなく、2枚目までのこっちの音ももっと聴かせて欲しい。


第7位 メレンゲ『シンメトリー』 →記事

ひっさしぶりの2枚目フルアルバム。メロディの甘酸っぱさは健在で胸をなで下ろすと同時に、よくよく聴けば初期の名盤扱いのミニアルバムよりもずっと良い出来で驚愕した。歩みは遅くていいから、これからも活動をずっと続けて欲しい。


第8位 KREVA『心臓』 →記事

4枚目にして最高傑作。音数少なめで手作り感のあるグルーヴが心地良かった1枚目がずっと好きで、だんだんド派手に分かりやすい音になっていくクレバが苦手だったのだけど、Kanye West譲りのオートチューン使いにとろけるメロディを組み合わせた前半に悩殺された。


第9位 LEO今井『LASER RAIN』 →記事

今年出会ったポップス職人には大橋トリオもいて、だいぶ迷ったのだけど、音の取り込み方の露骨な雑食性からこちらを選んだ。自分で書いている歌詞も結構素敵だったのも大きい。


第10位 ALT『庭と景色』 →記事

突如現れた新人という印象が強い、アングラ臭濃厚なヒップホップグループ。2枚組の本作はCD棚に収まりにくい直方体ケースで、そのアートワークの上質さはデジタル時代に対抗するかのように所有することの喜びを与えてくれた。もちろん凡百なラップとは一線を画すリリックの表現や音の世界観も格別。




<ジャンル別>

【邦楽ロック】

・サカナクション『シンシロ
・Superfly『Box Emotions
・チャットモンチー『告白
・踊り場ソウル『DeepでPopなシナリオライター
・相対性理論『ハイファイ新書


【邦楽ポップス】

・大橋トリオ『I Got Rhythm?
・UA『ATTA
・ハナレグミ『あいのわ
・DREAMS COME TRUE『DO YOU DREAMS COME TRUE?
・福原美穂『RAINBOW


【日本語ラップ】

・SEEDA『SEEDA
・Takatsuki『旅人のリズム
・NATURAL 9 NATION『親不孝三十六房
・8th Wonder『ヴァルハラ
・呂布カルマ『13 Shit


【邦楽R&B】

・JAMOSA『RED
・加藤ミリヤ『Ring
・JAY'ED『MUSICATION
・Utada『This Is The One
・安室奈美恵『PAST < FUTURE
2009.12.31 Thursday 23:59 | 音楽 | comments(16) | trackbacks(0)
2009年ベスト映画
この1年で劇場の大スクリーンで見た映画は新旧含めて53本。そのうちの2本は来年公開される作品の試写会だったので、それを抜いた51本からマイベストとして10作品と選外の5作品を気分で選んでみた。今年から厳密につけ始めた点数は選出作業に役立ったが、一部で実際の数値と順位が前後するところがある。それはご愛敬ということで。



第1位 アバター / Avatar →記事

映像の新時代の突入を目の当たりにしているのだなと思いながら見ていたわけだけど、物語そのものも安易な勧善懲悪ものと思わせながら、そこには強烈な皮肉が練り込められていて、非常に見応えがあった。


第2位 母なる証明 / Mother →記事

韓国映画は時にどこまでも非情にキャラクターの心の内を、冷酷な暴力描写と共に描くから恐ろしい。日本でも人気のあるアイドル俳優が出ていたらしいが、ひたすら狂気走った演技の母親に目を奪われ続けた。


第3位 3時10分、決断のとき / 3:10 To Yuma →記事

西部劇をほとんど見たことがないので、名作との比較は難しいのだが、西部劇というジャンルがどうのという狭い話ではなく、演技、スター性、脚本、演出、音楽、撮影の全てにおいて完璧な作品だった。


第4位 カールじいさんの空飛ぶ家 / Up →記事

さすがのエピック/ディズニー作品。フルCGアニメのクオリティをさらに向上させた上に、完全に子供を置いてけぼりにした大人向けドラマ。2010年は続篇ものらしいが、全く新しい作品を作り続けて欲しい。


第5位 ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 →記事

3号機の壮絶な最期に劇場で凍りついた。旧作の展開を踏襲しながらも新しく作り出された切り口は秀逸であり、今回も新作を見ているような満足感を得られた。次回作「急」がどうなるのかさっぱり読めない。


第6位 ロックンローラ / Rocknrolla →記事

ガイ・リッチーによるお得意のロンドンギャング群衆劇。今回も最高のプロットと強烈な個性のキャラクターが配され、痛快な仕上がり。上半期だけでいえば、本作がナンバー1だった。


第7位 スラムドッグ$ミリオネア / Slumdog Millionaire →記事

アカデミー賞8冠に輝いた作品。それも納得のエネルギッシュさに満ちていて、やっぱりロケって大事だなと思いながら見ていた。ドラマ部分に魅せられつつも、その実、インドが抱える問題が分かりやすく理解できるようになっていて、その辺りのうまさも良かった。


第8位 フロスト×ニクソン / Frost/Nixon →記事

7位の『スラムドッグ$ミリオネア』とは異なり、ふたりの俳優の一騎打ちを楽しむ映画。それぞれに抱える後のない状況を挽回すべく挑むことになる舌戦を俳優の演技力で魅せる。同時に脚本と演出が完璧に支えている。


第9位 キャデラック・レコード 〜音楽でアメリカを変えた人々の物語〜 / Cadillac Records →記事

黒人音楽として生まれ落ちたブルースのみを切り取った映画ではあるのだけど、ラストで思わず泣いてしまったからなぁ。


第10位 チョコレート・ファイター / Chocolate →記事

無敵少女が、"ノー・ワイヤー、ノー・CG、ノー・スタント"でひたすら闘うアクション。笑っちゃうほど苛酷な条件下でもスタント使ってないのかと思うと驚嘆の2文字しか浮かばない。うまいこと因縁を絡ませた脚本も良く、映画としても楽しめた。


選外

チェイサー / 추격자 / The Chaser


ウォッチメン / Watchmen


ザ・スピリット / The Spirit


バーン・アフター・リーディング / Burn After Reading


レイチェルの結婚 / Rachel Getting Married
2009.12.31 Thursday 23:58 | 映画 | comments(2) | trackbacks(0)
花沢健吾『アイアムアヒーロー』第2巻

2009年12月発売。

前巻のラストで明らかとなったゾンビ禍。噛まれることで感染するらしく、またソンビ映画の最近の傾向でもある速い動きが取り入れられていて、主人公が逃げまどうさまが描かれた巻となる。早朝に起きた災厄のため、のどかな日常の中で惨劇が進む。ゾンビのパロディ映画『ショーン・オブ・ザ・デッド』に近いテイストだ。

カバー画の女の子はこの巻には登場していないが、そのうち出てくるのだろう。
2009.12.31 Thursday 23:57 | 漫画 | comments(0) | trackbacks(0)
冨樫義博『HUNTER×HUNTER』第27巻

2009年12月発売。

1年2ヶ月ぶりの新刊。「少年ジャンプ」での連載がどういう状況なのか分からないが、担当者の苦労を慮るとこちらまで胃が痛くなりそう。

"強さのインフレ"という言葉があるらしいけど、ジャンプ編集部にはそれへの対策は色々と経験済みで大いに蓄積があるだろうし、何だかんだとオチはつけられるのだろう。あとは諦めずに連載を続けてくれることを願うだけ。
2009.12.27 Sunday 23:58 | 漫画 | comments(0) | trackbacks(0)
アバター / Avatar

96点/100点満点中

ジェームズ・キャメロン監督による長篇としては12年ぶりの最新作。3D。2009年公開作品。

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戦争で負傷し下半身不随となった元海兵隊員ジェイクは出発直前に殺された双子の兄弟の代わりに、地球から遠く離れた衛星パンドラでの"アバター・プロジェクト"に参加する。パンドラでは、地中に眠る希少鉱物を採掘すべく、原住民ナヴィと人間のDNAを掛け合わせた肉体"アバター"を造り、交流を図ろうとしていた。その一方で、力による侵略も同時に進められていた。
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ジェームズ・キャメロンといえば、どうしても『ターミネーター』や『エイリアン2』よりも、完全に裏切られた感があった『タイタニック』が思い出されてしまう。本作の予告編を見た時も、安っぽいCG映像による安直なドラマの映画なのだろうと即断したものだったが、格段に進化したCG技術が味わえるという評判や好きな女優のひとりシガニー・ウィーバーが出演していることもあり、期待度低めで行ってきた。

そしたら、傑作だった。終了後に賛美の拍手を贈りたかったぐらい。今年の心のベストテン第1位を最後の最後で易々と奪っていってしまった。


まずは映像から。全編とにかくデジタルまみれ。だからこそ今までに見たこともない光景を目の当たりにできる。パンドラの密林に生息する動植物の多様性はすばらしいのひと言。時にラッセンの絵かと思うような安っぽさもあるにはあるのだが、3Dという効果もありそれほどは気にならない。反対に気になるといえば、原住民ナヴィの表情ぐらいか。これまでにないぐらいの装置を使ったモーションキャプチャーの最先端らしいが、それでもまだ硬い。ときおり作り物っぽさが出てしまう。この手の他の映画に比べれば気にならない程度ではあるのだけど。

地球人が惑星に持ち込む各種の兵器──ヘリコプタータイプの乗り物、二足歩行できる、ちょっとクラシカルなロボットなどの動きは極めて繊細でいてスムース。格納庫での焦点が当てられていない背景まで気を抜くことなく緻密に描かれているのも良い。その細かさがあるから、クローズアップされた本体にもリアリティが生まれるのだ。

リアリティを生み出すのはCGのクオリティだけではなく、俳優たちの演技も同様だ。娯楽作品なわけで、その性格付けは極めてステレオタイプだ。駐在する軍のリーダーを努める大佐を演じたスティーヴン・ラングのどこまでも強面な演技にしろ、総責任者で中間管理職風味いっぱいのパーカーにしても、ジェイクの相棒ノームだってそこには複雑性はない。しかし、その守備範囲内においては堅実な演技を見せ、CG映像に説得力を与えている。

パンドラにおける植物学の権威にしてナヴィとの交流を積極的に促進しようするグレース役のシガニー・ウィーバーもまた、「エイリアン」シリーズで名を馳せた彼女らしい役どころでニヤリとさせられる。60歳になっても彼女は宇宙で苦境に立たされ、それに負けるものかと闘う姿こそが似合う。主人公のサム・ワーシントンは『ターミネーター4』でも魅力的な演技を披露したオーストラリア人だが、本作では唯一ともいえる複雑さをもった内面を見事に演じきっている。


本作を高く評価したいのは映像よりもドラマ部分がさらに良くできている点だ。原住民ナヴィの容姿からもそのモデルはインディアンであることは明白だ。彼らの土地に白人(もちろん黒人も登場する)が乗り込んできて、土地はもちろんそこに付随する歴史、尊厳、命、全てを奪おうとする。人類の誕生以来、そんなことは17〜19世紀のアメリカで起きただけではなく、どの時代どの国でも行われてきたことではある。日本だってアイヌの人々が大和朝廷に追いやられ、明治政府によって同化政策がとられ、現在がある。

そういった視点がとても分かりやすく演出されていき、クライマックス直前に"大崩落"がある。そこには極めてシニカルなレトリックが使われていて目を見張った。話は飛ぶが、"9.11"はアメリカが主導してきた対アラブ政策、対テロ政策により、大国の論理に飲み込まれ虐げられた人々が引き起こした皮肉な結末(あるいは始まり)であったわけだけど、本作のこのシーンはあのツインタワーの崩壊を彷彿とさせ、強い力を持った者のあまりに理不尽な論理が、皮肉なことに自ら大切なものを破壊せしめてしまうという不幸を強引かつ痛烈なねじれでもって描いている。

いずれにせよ、結果は双方が死力を振り絞っての総力戦となる。ジェイクは鼓舞する。敵が攻めてきても土地勘があるのは我々ナヴィであり、地形を利用して戦えば必ず勝てる、と。それはベトナムでも聞いたし、イラクでも、アフガニスタンでも耳にした言葉だ。


見終えて、どんよりとのしかかる目の疲れをもみほぐしながら思ったのは、ハリウッドがキャメロン監督自身によるこの脚本をよく許可したものだということだ。そしてアメリカ人が本作を見てどう思うのだろうか。アメリカを遙か遠くの憧れの土地と思い、映画や音楽、小説等を通してしか知らず、その心の深いところまでは分からないわけだけど、自然と共存するという思考から一番かけ離れているのが同国だと思うのだ。まあ、同時に一番先鋭的な人を内包する国でもあるわけだけど。



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<ジェームズ・キャメロン監督作品>
1954年、カナダ・オンタリオ州生まれ。

1981年 殺人魚フライングキラー
1984年 ターミネーター
1986年 エイリアン2
1989年 アビス
1981年 ターミネーター2
1994年 トゥルーライズ
1997年 タイタニック
2005年 エイリアンズ・オブ・ザ・ディープ(深海ドキュメンタリー)
2009年 アバター
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2009.12.27 Sunday 23:58 | 映画 | comments(3) | trackbacks(0)
8th wonder feat. Chaos@Apple Store銀座

銀座アップルストア3階のイベントフロアに3分ほど遅刻して入っていくと、90人ほどが座れる椅子席はまばらにしか埋まっていなくて驚く。都内でもめったにライブをやらない8th wonderが無料で見られるというのに、この少なさはなんだろう。もったいなさすぎる。

19時11分。司会者の簡単な紹介後にインストアライブがスタート。ステージ向かって右端に立ったふたりのVJがPCを操作し、左端にはChaosが陣取る。SE代わりなのか「紺碧の門」が流れ出す。1年前に神奈川大学で見たときは、後ろに流れる映像がきれいに見えなかったが今回は環境も良く、クリアに見られた。

「紺碧の門」が終わる頃にMasashiが姿を現し、おもむろに凶悪な形をしたフライングVを取り上げる。やがてKSKとFake?も登場し、Masashiを中心に右にKSK、左にFake?と並び立つ。ギターを轟かせたままMasashiのラップで「反乱 Rebellion Is My Name-」の幕が上がった。

"今日は銀座の街で色んな言葉を振りかざして歩かすだけ"と即興で発してからFake?が始めたのは「徒然なる街に」。Masashiはベースに持ち替え、こぼれ落ちる鍵盤の合間にブリッとしたベース音を響かせる。彼のヴァースが省略されたエディットバージョンだった。

続いて盟友Chaos名義の曲から8th wonderの面々がソロで参加した2曲が披露された。"波動 震え 戸惑い 逆流 加速 ~"のフックが印象的なKSKとの「波動の木」。"亡くなった人に対してどれだけの思いで言葉を出せるのか限界まで突きつめて書いた"と紹介してから始めたFake?の「donna-shijinmo-saigowa-onajikotowo-kangaeteiru」。

ほぼインストの「Electric Cosmos」は最新作『ヴァルハラ』では2枚目の頭に置かれていたが、この日も同じようにちょうど中盤にあたる6曲目に演奏された。Fake?がフリースタイルで言葉を紡いでいく。終盤、Fake?はそれまではめていた皮の黒手袋を脱ぎ、ベースを掴む。一方のKSKはMasashiと同型のギターを握った。

ツインギターで繊細なフレーズを重ねた後に、一気にヘビーメタルな展開になだれ込む「人が人を流れるとき」が始まる。音源通りにFake?のヴァース後にはMasashiが早弾きを披露。あるときはラッパーであり、またあるときはトラックメイカー、しかしてその実態はギター小僧という感じなのだろうか。次にやった「焦燥」にしても3曲目の「徒然なる街に」と同じく彼のラップパートは省かれていたわけだけど、あまり関係なさそうに楽し気にライブをしていた。

3人が楽器を持ったあたりからロック色が濃くなったこともあり、格段にノリが良くなり、見ているこちらも思わずヘッドバンキン状態になった。座りながら見ているのが苦痛になるほど。KSKのフリースタイルから始まった「ケルベロスからの手紙」は圧巻だった。攻撃的なMasashiのギターとChaosが打ち出すビートの破壊力、特にフックでの力強い言葉の唸り。後半3曲はそれぞれ10分の長尺曲だったのだけど、テンションを少しも落とすことなく駆け抜けた。


正直、Masashiのラップがライブでは弱いなとか、今回はFake?のラップが聴き取りにくいなとかの不満はあったのだけど、最後に浴びせられた怒濤の音の波、というよりも音の塊に言葉もない。しかもそれが観客がたったの20人前後で、さらにはみんな着座して聴いているという非常にやりにくい状況でのパフォーマンスであり、本当にすごいことだと思った。20時11分に終わったのだけど、きっちり予定通りの1時間のライブ。プロなんだなとも思った。


1.紺碧の門
2.反乱 Rebellion Is My Name-
3.徒然なる街に
4.波動の木 feat. KSK / Chaos
5.donna-shijinmo-saigowa-onajikotowo
  -kangaeteiru feat. Fake? / Chaos
6.Electric Cosmos
7.人が人を流れるとき
8.焦燥
9.ケルベロスからの手紙
2009.12.26 Saturday 23:59 | 音楽 | comments(2) | trackbacks(0)
SMITH-CN@上野アメ横センタービル
遅くに起き出して、ようやく始めた大掃除をうだうだした後に、大慌て飛び出した先は年の瀬に最も混み合う通りのひとつ、上野のアメ横。接続の悪い上野駅にようやっと到着したらもう開始予定時刻の16時を回っていた。ごった返す人波をかき分けかき分け、16時14分にアメ横センタービル4階に飛び込む。そこは靴屋が1店舗だけの閑散としたフロアで、その片隅にいかにもな集団がたまっていた。

DJが回しているだけでまだ始まっておらず、ラッキーと思い、じっと待つ。始まらない。ひたすら待つ。時間だけが過ぎていく。やけくそで待つ。最初は少なかった観客も少しずつ増えて60人ぐらいになった16時52分、関係者と思しきひとりが話し始めた。"SEEDAは御徒町に着いたけど、SMITH-CNはまだ北千住だからもう少し待ってくれ"。

17時直前にMUDDY MUZICのOINGOを始め3人のラッパーが次々とステージに立ち、フリースタイル混じりでゆるく回し始めた。ひとりめのオインゴ(この人はスミスCNのアルバムに参加してたか)は聴き取りやすく楽しめるラップだった。


17時6分。まったりしたムードを一気に覚醒させたのはシーダだった。声の通りの良さ、その強さ、明確なメッセージ性等々において格が違う。"ファンはシーンが作る シーンはファンが作る 当たり前の道理 俺らがどうのこいったって関係ないぜ だからお前ら選べ 当たり前だ次のラップスターはスミスCN BACKYARDだから"。

"スミスCNが遅いから俺とオインゴで一発バトルをやるぜ"と主役の不在にもかかわらず、フリースタイルバトルでさらにフロアを盛り上げる。この中に俺よりできると思う奴いるかと問いかけて、前列で手を挙げた観客にマイクを持たせたりも。

ようやくスミスCNが到着したとオインゴの口から告げられるが、何でもスクラッチライブのなかに曲がセットされていなかったということでその準備作業にまた少し時間を取られる。その間もシーダが"なーみんなーみん"とフリースタイル気味に煽る。"もう待ちきれないよ!"。1時間以上待っているこちらも同感だ。


17時17分。"待たせたな"の第一声でスミスCNのインストアライブがスタート。1曲目はBACHLOGICトラックの「Nice Dream」。ちょっと前のシーダにも似た粘っこく高音でまとわりつくようなフロウは音源通りなのだが、発せられる言葉はやや潰されてしまい、聴き取りにくい。アルバムでは歌詞カードがなくても、ラップの内容が明瞭だっただけにちょっと残念。

でも、「WeeDay」はリリックが聞こえがどうのというよりもSKY BEATZのビートが貧弱な音環境をものともせず、鳴りの良さやグルーヴの心地良さを感じさせる音だった。ラップを音として聴く分にはそのフロウはビートとまた別のグルーヴを生み出していて、そのふたつの流れの間に身を任せることができた。

MCで"俺のCD買ってくれた人"という質問にはほとんど全員が手を挙げたのに、"この後土浦GOLDであるパーティに来てくれる人"という問いかけにはひとりしか手を挙げていなかったのは面白かった。土浦はさすがに遠い。UMBの決勝にぶつけてくる心意気は立派だけど。

"リリックを聴いてくれ"と始めた「Kids'Return」は、喉も温まってきたのか言葉通りに内容を楽しめた。

1時間待って3曲は少ないんじゃない、との後ろに陣取っていた関係者の計らいで、もうしばらく続くことに。予定とは違ったトラックが流れたようだけど、スミスCNとESSENCIALの相方SNIPEはその上に即興でラップを乗せる。最後は「Live From TOKYO」で締めた。東京での不幸の連鎖を描いた内容を聴くというよりも、HIROSHIMAのビートを大きい音で体に感じ、踊れたことが良かった。

17時36分終了。



1.Nice Dream
2.WeeDay
3.Kids'Return

アンコール
1.フリースタイル feat. SNIPE
2.Live From TOKYO
2009.12.26 Saturday 23:58 | 音楽 | comments(1) | trackbacks(0)
インフォーマント! / The Informant!

75点/100点満点中

スティーヴン・ソダーバーグ監督とマット・デイモンのお馴染みコンビによるブラック・コメディ。2009年公開作品。

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アメリカの穀物メジャー、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド社(ADM)のエリート幹部マーク・ウィテカーは、管理する工場で発生したウイルスによる損失の責任を問われたことをきっかけに、ADMが中心となって行ってきた飼料添加物"リジン"における国際的な価格カルテルを、FBIのシェパード捜査官に告発し、FBIの内通者(インフォーマント)になるが・・・。
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ADMの管理職の地位にいたマーク・ウィテカーが2年半もの長きにわたり、FBIに協力し、1995年にアメリカで公となった実際の事件を基にした映画。国際カルテルには日本からも味の素や協和発酵が参加していて、作中でも頻繁に社名が登場する。


内部告発モノであり、不正に断固として立ちあがる男の勇ましい物語かと思いきや、前半では主人公ウィテカーが映画に出てくるようなスパイなりきろうと奮闘するコミカルな展開があり、演じるマット・デイモンが別の一面では凄腕の諜報員ジェイソン・ボーンでもあるわけで、小さなクスクス笑いを漏らしながら見ることができる。音楽も洒脱だ。

FBIにしろ弁護士にしろ、誰もが不思議に思うのは若くして出世の階段を順調に昇っている彼がどうして告発なんてするのかということだ。巨悪と闘うためという大義名分は理解できても、そこには例えば商品となる食品に毒を入れたとかではなく、不正は価格カルテルなわけで、食卓に届く商品の値段が数セント上がるか上がらない程度(まあ、全家庭から、いってみればつまみ食いするわけで、合計すればすごい額にはなるわけだけど)であり、どうにも釈然としない。

やがて告発が実り、FBIがADMを起訴する過程でウィテカーの実態が露わになる。本作の面白いところでもあり、よく分からないところでもある。見終えてすごく複雑な気持ちになり、誰彼かまわずに本作について語りたくなった。

人間は深淵であり、本人も自覚していない怖さがあるのは三面記事を読まずとも分かるが、その奥深い闇をいかにもなアメリカ人スマイル/ユーモアで隠した彼はモンスターに見えてくる。しかし一方で、ただの純粋な人間にも思えてくる。明晰な頭脳を持っていることは実証されているが、何かが確実に欠落している。

本作だけでこの事件とウィテカーという人間を見知った者としては深く書けることはないのかもしれないが、ソダーバーグ監督もマット・デイモンも結局のところ、彼がどういう人間だったのか分からなかったのではないだろうか。最初は分からずとも、撮ってみれば演じてみれば、自ずと理解できると思ったのかもしれないが。しかし、その分からない、分からないから怖いという思いは確実に伝わる作品だった。



<映画の背景>

・新聞報道(日経)
「FBIが隠し撮り──暴かれた味の素/協和発酵らの謀議」(2000.06.21)
  http://www.nikkeibp.co.jp/archives/105/105161.html

関連記事「味の素、米司法省を激怒させ窮地?」(2000.02.02)
  http://www.nikkeibp.co.jp/archives/092/92773.html

・詳細
「味の素国際カルテル事件」(1999.12.19)
  http://www.rondan.co.jp/html/news/agf/cartel.html
「味の素・米国カルテル疑惑のその後」(2000.04.10)
  http://www.rondan.co.jp/html/news/agf/cartel2.html
「味の素・米国カルテル事件のその後 (II)」(2000.06.02)
  http://www.rondan.co.jp/html/news/agf/cartel3.html
2009.12.24 Thursday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
童子-T『4 ever』

2009年12月16日リリースの4枚目のアルバム。

日本のヒップホップの稼ぎ頭・童子兄さんの2年4ヶ月ぶりとなる待望の新作。末尾で踏んだり踏まなかったり、時々早口で言葉を多めに盛り込んだり、つんのめったりするラップは今作でも健在であり、そのリリックは具体的な商品名を入れながらも不思議と内容が抽象的になるという独特さがあり、ゲロの飛沫をロマンティックと思う人間には多分理解しがたいロマンに溢れている。

別れても思い出す恋人を綴ったM1「想い feat. YU-A」、披露宴の祝いラップM2「ファースト ソング」、男3人で別れた恋人を思い出すM3「あの頃・・・ feat. CHEMISTRY」とM4「あの日・・・ feat. CHEMISTRY」、恋人の笑い顔がいいねと男ふたりで歌うM5「スマイル feat. 清水翔太」。

続いて少し跳ねたトラックに変わり、M6「Heaven」ではクラブでナンパしお持ち帰り話。客演のBENIには"いけるところまで感じてみたいheaven"とフックで歌わせる。Mummy-D製トラックのM7「ラブトレイン feat. HI-D & 椎名純平」では彼氏との関係がうまくいっていない不安定な女の子をどうにかしようと画策し、M8「Rainy days feat. Hanah」でついにカップルが別れる。

M8「Get Ready feat. Baby.M & MANDOZA」とM9「WA RA BE」ではシングルのカップリング曲が惜しげもなく投入され、攻めのスタイルを誇示。そして、M10「オン ザ Mic ~Ruler達のタワゴト~」ではMummy-DとKOHEI JAPANの坂間兄弟にKINの3人でたたみ掛ける。

表題曲のM11「4 ever」は20代頃からの人生を、M13「タイムカプセル」では少年時代の日々をそれぞれ振りかえる。2曲使って自分を語りつつも、いつでも温かく支えてくれるファンは大切とばかりにM14「Fly High」で感謝の気持ち捧げ、最後のM15「終わりなき旅」で自分のキャリアを正当化し、アルバムの幕が閉じる。

"道がないならこの手で作る 常に半歩先行き この目で映す"とこの2、3年で大きく舵を切り、成功者となった自らを誇るリリックが素敵なM15にはさらに続きがある。

"汚れた大海へ泳ぎ出せ 一歩も動かねぇ事が誇りじゃねえ
 孤独恐れれば成功は遠く 遅くたっていい ずっと手のばせば届く
 変わらずにマイクつかむためには 変わらなければならない"

大切な教え。童子兄さんはなんて気前良く教えてくれるのだろう。清貧の思想を後生大事に抱え、変化に対し臆病になっているあの村に、この成功者の鼓舞が届くといいのだけど。


個人的には上げチンの童子-Tに今回呼ばれたことで、Hanahが売れればいいなと思う。この女性歌手は以前、SMRYTRPS/SUIKAのTakatsukiが絶賛し、スイカ夜話にも出演していた人と同じ人なはず。それと、椎名純平はもっと広く世間に認められるだけの実力があるのだから、童子-T効果でうまいこといけばいいなと願うばかり。
2009.12.22 Tuesday 23:59 | 音楽 | comments(19) | trackbacks(0)
安室奈美恵『PAST < FUTURE』

2009年12月16日リリースの9枚目のアルバム。

オリジナルアルバムとしては前作『PLAY』から2年半ぶりとなるものの、昨年発表されたベストアルバムがDREAMS COME TRUEの『MAGIC』以来約15年ぶりとなる6週連続首位という快挙を成し遂げ、最終的には170万枚を越える売り上げがあったようで、CM等も含め話題にのぼり続けたため、それほど待たされた印象はない。反対に、あのムチを持った鮮烈なジャケットのアルバムから2年半も経ったことに驚く。


ベストアルバムで一度過去を清算し、向かったのはさらなる新しい音といった意味がおそらく込められているのであろうアルバムタイトルやジャケットからも分かるように、M1「 FAST CAR」からワクワクしてしまう音に満ちている。ホーンとシンプルなビート。少ない音数が強調するのは安室ちゃんのクールな低音。耳元をいたずらにくすぐり、軽やかに抜けていく。アルバムのCMでイントロだけを聴いたときにも思ったけれど、非常にインパクトのある出だしで、名盤の予感すら抱いた。

相性バッチリなT.KuraとのM2「COPY THAT」も外さない。M5「Steal my Night」では着メロソング御用達プロデューサーと揶揄されることも多いJeff Miyaharaが跳ねたトラックを提供。そして再びT.Kuraと組んだM6「FIRST TIMER」とM7「WILD」までの前半は文句なしの新しい安室ちゃんを堪能できる。

基本は重量感のあるビートに上等なメロディが相まって、安室ちゃんの低音のかっこよさを見せつける。歌声には余裕と貫禄が漂う。それと今作ではコーラスの入りがいつになく魅力的だ。

シングルで聴いたときにはしっくりこなかった、スペーシーな4つ打ち仕様のM7もアルバムのなかの1曲として聴いたときに、慣れたこともあるのだろうけれど、そのハイブリッド感が面白いと思えた。

T.Kuraプロデュースのもう1曲、M6は最初その発表があったときから危惧していたDOBERMAN INC参加曲なのだけど、あにはからんや良かった。本作の肝となる曲のひとつだと思う。ラップがトラックに高揚感を与える素材として、つまりはただの音として処理されていることが大きい。後半に大きく活躍する場があるのだけど、曲に違和感なくすっぽり取り込まれることのできる彼らの特性がうまく働いている。

Nao'ymtの手によるM7「Dr.」からの後半は急速に物足りなくなる。メロに魅力が失われ、アレンジも凡庸なものが多くなる。アルバムタイトルをもじれば、"PAST > FUTURE"になってしまうのだ。最後にM7の続篇のM12「Defend Love」を持ってくるのも、曲としてはM7よりは幾分ましだが、アルバムの終わり方としては尻切れトンボ。


前半は、それこそ前作『PLAY』のジャケットは今作の方がはまると思うほどあのムチで追い立てられる感があり、それは快感に近かったのに、後半にはなはだしく失速してしまう。女王様が急に、"実はわたしMだったの"といい出してしまい、どっちらけな様相を呈するのだ。もっと攻めても大丈夫だったと思う。今の安室ちゃんに求められているものは、あの頃にような時代や世代の代弁者ではなく、日本の音楽チャートではまだ誰も見たことのない音の地平なのだから。


1.FAST CAR (作詞:TIGER / 作曲:Anne Judish Wik、Ronny Svendsen、
        Robin Jensen、Nermin Harambasic&Chris Young / 編曲:DSign Music)
2.COPY THAT (作詞:michico / 作曲:T.Kura&michico / 編曲:T.Kura)
3.LOVE GAME (作詞:DOUBLE / 作曲:Anthony Anderson、Jollen Belle、
         Jaden Michaels&Steve Smith / 編曲:SA TrackWorks Productions)
4.Bad Habit (作詞:TIGER / 作曲:Hugo Lira、Thomas Gustafsson、Negin&
        lan-Paolo Lira / 編曲:Hugo Lira、Thomas Gustafsson&lan-Paolo Lira)
5.Steal my Night (作詞:Jeff Miyahara&Kanata Okajima /
                                      作曲編曲:Jeff Miyahara)
6.FIRST TIMER feat. DOBERMAN INC (作詞:michico&DOBERMAN INC /
                 作曲:T.Kura、michico&DOBERMAN INC / 編曲:T.Kura)
7.WILD (作詞:michico / 作曲:T.Kura&michico / 編曲:T.Kura)
8.Dr. (作詞作曲編曲:Nao'ymt)
9.Shut Up (作詞作曲編曲:Nao'ymt)
10.MY LOVE (作詞作曲編曲:HIRO)
11.The Meaning Of Us (作詞:MOMO"mocha"N. /
                作曲:MOMO"mocha"N.&U-Key zone / 編曲:U-Key zone)
12.Defend Love (作詞作曲編曲:Nao'ymt)
2009.12.21 Monday 23:59 | 音楽 | comments(1) | trackbacks(0)
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