2010年2月10日リリースのベストアルバム。
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まずはその立派すぎる数字の羅列から。オリコンアルバムチャートで初登場第1位(2月22日付)。売上枚数25.5万枚。東方神記にやぶれはしたものの翌週も2位につけて累計33.2万枚に達した。22日付けのシングルチャートでは本作にも収録されている「涙」と「夢」の両A面シングルが29位で、発売3週目にして累計3.2万枚の売り上げだ。
ニューヨークで生まれ育った文化としての側面を持つ"ヒップホップ"はともかくとして、口当たりの良いラップミュージックが日本においてはヒップホップと受け入れられ、確固たる一ジャンルとして認知されたことに彼らは多大な貢献を果たしているといえる数字だろう。
今に始まったことではないのだけど、音楽チャート(ここではオリコン株式会社が発表するランキング)が面白くないといわれている。配信販売が一般化したにもかかわらず、そこでの売り上げが反映されないランキングでは実際の人気曲が分からないというものだ。確かにその通りであり、例えば紅白歌合戦でも歌われた木村カエラの「Butterfly」は配信では大ヒットとなっているが、配信のみ(PVまであるのに)でCD販売されていないのでシングルチャートには顔を出さない。
ヒット曲が分かりにくくなっているのは事実だが、全体的な売り上げの激減に伴って、J-Popと呼ばれる一般的なポップミュージック以外のジャンルがチャートを賑わしていることは結構興味深い。如実なのはシングルチャートでの演歌や、アルバムチャートでの洋楽だろう。3月1日付けでは英国はブリストルを代表する偉大なグループではあるものの日本では誰もが知っているというわけではないMASSIVE ATTACKが50位以内に3週連続で居座っていて累計で1万枚を突破した。Alicia Keysの昨年の新作は10週連続で50位以内にいる。
アニメのテーマ曲の躍進もすごいことになっている。とんと興味がないので何がなにやらさっぱりなのだけど、かならずトップ10内に1曲はある印象だ。もちろんジャニーズ事務所所属のアイドルたちはランキングを完全に牛耳っているといってもいい。昨年夏にリリースされた嵐のベストアルバムはいまだ21位(1日付)に鎮座し、発売27週目累計161.7万枚だ。週に6千枚前後を売り飛ばしている。
CDの売り上げ激減の恩恵は日本のインディーズヒップホップも授かっていて、年末のリリース量が減ったときを狙い、しかも低価格で発売されたSEEDAのシングル『WISDOM』は1月4日付けで初登場8位(売上枚数5853枚)の快挙を成し遂げた。枚数的には普通なら10位台後半か強力曲が多ければ20位台前半の数字であり、ものの見事に戦略が功を奏した。
J-Popと称される普通のポップミュージックがバカ売れしていた時期だったら洋楽も演歌もインディーズのヒップホップもチャートに顔を出すことができなかったわけであり、本当のヒット曲がダイレクトに反映されない不都合はあるものの、様々なジャンルが入り乱れているチャートは今が一番面白いと思うのだ。まあ何ていうか着うたってのがいまだによく分かっていない人間だということもあるのだけど。
あ、本作。2枚組でディスク1にはシングルA面曲、ディスク2にはカップリング曲やアルバム曲が収録されている。2006年1月に「そのまんま東へ」でデビューした彼らは3枚のアルバムと13枚のシングル(うち1曲は配信のみ)しか発表しておらず、全部足しても46曲だ。本作はそのうちの半分以上に当たる24曲が収録されている。
聴き手の視点に合わせたリリックは単純明快で深み雑味円熟味などとは真逆の短絡的な未来志向の言葉が並べられ、多分こういう音楽を好んで聴く人は人付き合いがうまく、人生を謳歌できる人たちだと思う。演じ手でもないのに音楽こそ人生の全てと頑なな人には眩しすぎる音と言葉だろう。