すばらしくてNICE CHOICE

暇な時に、
本・音楽・漫画・映画の
勝手な感想を書いていきます。
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2021.02.10 Wednesday | - | - | -
mimi-K『successions』

2010年3月17日リリースのファーストミニアルバム。
/5点中

愛知県出身の歌手。プロフィールによると、高校卒業後に名古屋のゴスペルスクールに通い、聖歌隊の一員として歌う。その後、LAでデモテープを制作。帰国後にそれがきっかけで洋楽R&B歌手の来日公演の前座に抜擢される。2008年にはアトランタで作曲やレコーディングセッションを行い、同年10月、MySpaceが主催するR&Bボーカル・コンテストで優勝。昨年8月にSEEDAやGEEKらも属するKSRからリリースされたオムニバス『emotion the"J"R&B GREATEST HITS!』に、I-DeAプロデュースの「Goddess」が収録され、また11月には4曲入り配信限定シングル『Tell Me』を発表。

昨年の配信シングルリリースに合わせて表題曲の「Tell Me」がiTunes Storeの「今週のシングル」として無料配布されていたので、耳にはしていた。トラックやメロディは平凡な出来だったが、その分伸びやかな歌声が印象的だった。透明感とは違う、耳にスッと入ってきてそのままフワッと吸収されていくような、耳に優しく馴染む伸びが心地良かったのを覚えていた。

それだけならCDが出ても手に取ることはないのだけど、SEEDAが参加しているとのことなので話が違ってくる。M4「Vamp」がそう。"Vamp"などという題名なので、魔性の女を気取るミミケイと誘惑されるシーダという構図が見られるなら面白いかもと期するところがあったわけだけど、シーダはやっつけ仕事ラップに終始し、完全なる脇役に徹し期待外れ。

ミミケイの歌も新人といってしまえばそれまでで今後に期待と書くしかないが、歌声に幅がなく、与えられたメロディと歌詞を追うことに精一杯で内容を表現するところまではできていない。まあ、外注の歌詞も、"愛を知って 私初めて見つけた 誰かのために生きる喜びを"というようにあたりさわりのない言葉が並ぶひどい出来ではあるのだが。

M2「しあわせnano」のようにピアノとストリングスに彩られたバラードというはやりのR&B風アレンジや後半のポップミュージック路線の歌を聴いていると、もう少しましなメロディを与えれば実力派の着メロシンガーとして成功しそうだ。ただ、M3「MUSIC ECSTASY」を聴く限りでは、ミミケイ本人が"ヤバイビート"とする跳ねたビートには順応できていない。同じKSR出身のEMI MARIAと似て、腰が重く乗りこなせない。

可もなく不可もなしといったメロディラインは1曲を除き、NEWSの「恋のABO」をヒットさせたadult educationというユニットの手によるもので、その例外の1曲であるM8「Goddess(Piano Version)」がこういう場合の常で本作の中では一番まともだ。作詞作曲をミミケイ本人がしたこともあり、情感豊かに歌えている。
2010.03.30 Tuesday 23:59 | 音楽 | comments(0) | trackbacks(0)
tobaccojuice『どこまでも行けるさ』

2010年3月24日リリースの4枚目のアルバム。
/5点中

2008年のサードアルバム『HEADPHONE GHOST』以来1年9ヶ月ぶりのオリジナル作品。とはいえ昨年は洋楽カバーアルバムがあったわけで、順調に作品を発表し続けてはいるのだけど、本作は自主レーベルASOBIを立ち上げてのリリースであり、再びインディーズでの活動となる。

しかし、いやだからこそなのかもしれないが、本作は明るいメロディに満たされ、希望に溢れる言葉が踊る。ロック色を深めた印象の3枚目よりもポップなアルバムだ。ギターがブルーズを奏で、混沌を表現することはない。4曲でエマーソン北村がキーボードで参加している以外は4人での演奏だ。ギターは歌メロと同じぐらいの重要度で曲の基調色を決め、ベースは陽気なだけではなくグルーヴという説得力を与えるべく奮闘し、ドラムは曲に立体感を付与していく。セルフプロデュースということで余分な音がなくなった。が、ミキシングが悪いのか音が軽くなったように聞こえるのだけは残念だ。

タバコジュース作品のなかでも一番ポップな音が鳴らされている本作は歌詞にも変化が現れ、今まで以上に分かりやすい希望が描かれる。"誰にも止められない狂おしいほどに美しいダンスパーリー"と歌われる鮮やかなM1「ダダダダンス」で始まり、M2「あそぼー」では、"おどろーぜ あそぼーぜ たのしもーぜ"という彼らのパーティの合い言葉が詩として刻まれ、その直後には"生きてることがほんとに嬉しんだ"という圧倒的な肯定感が紡ぎ出される。

"遣り残すことなくやって死んでいこう"(M3「反逆のうた」)とひたすら前だけを見つめ、マイクコードを絡みつかせながらもクルクル回って歌うボーカル・松本の姿をすぐにでも思い浮かべることができる明るい歌が続く。時には刹那的に今この瞬間の生を余すことなく謳歌し、世界を希望に塗り込める。

M7「僕のヒーロー」に辿り着けばその躁状態もちょっと分かってくる。"(自分自身が昔憧れた奇跡を起こす)ヒーローになってこの心の深い闇に今戦いを挑もう"。

インディーズでの活動を経て、2004年にキングレコードからメジャーデビュー。一時は契約も切れたけれど、2006年の傑作ミニアルバム『Happy Birthday』が評価され、2007年からはユニバーサルミュージックからのリリースとなりながらも、今回の再びのインディーズ落ち。インディーズでいることは決して悪いことでないとは思うが、彼らが強い失望感を抱いたことは想像に難くないわけで、でも彼らはどん底の気分を曲にするのではなく、もう一度先を見つめることを選び、底抜けに明るいパーティミュージックを作ることにしたのだ。

それはまさに"何度倒れても必ず立ち上が"るヒーローの姿そのものだ。だからタバコジュース史上最もポップな作品ではあるけれど、売れるためのチャートに迎合した安直さは微塵も感じられず、彼らの強さがこれまで以上にはっきり表れたアルバムとなっている。

4人の"愉快な仲間"の新たな航海がどこに向かうのかは分からない。けれど、ギターの大久保のイラストに彩られたアートワークにあるように黒い魔物に襲われたり、地母神のような存在に出会ったりしつつ、これからもワクワクするようなスリルやパーティソング、胸をえぐるような悲しみやときめきをずっと届けてくれるものと信じている。
2010.03.29 Monday 23:59 | 音楽 | comments(0) | trackbacks(0)
環ROY@新宿タワーレコード

SLYE RECORDSの面々が去り、機材セッティングなどがあり、トイレに行ったりして時間を潰した18時29分、環ROY登場。アルバムの1曲目「晴」を流しながら、"PSGぐらい集めたかったんですけどね"と笑いを取り、その後スタッフにDJブースを所定の位置より前に出してもらってから、「任務遂行」でスタート。

喉の強さが全く違う。直前に出演したスライレコーズのふたりとのキャリアの違いを見せつけるラップだ。トラックの音量が上がっているのだけど、それに埋もれることのない声の強さがある。ほとんど初めて聴いた曲だったが、リリックが聴き取れる。「J-RAP」が面白かった。やはり実名が出ると曲のテーマがより具体的になって良い。

ライブならではの軽口がそこここで飛び出し客を喜ばせ、一方でちょっと厳しめの客いじりで取っつきにくさを出しつつ、でも曲を始めればプロの仕事を見せるぜといういつものステージだ。客の顔がしっかりと見える明るい照明の下でも、そのやりにくい状況を本人が楽しんでいる感があり、なによりパフォーマンスに安定感がある。

19時33分終了。


1.任務遂行
2.J-RAP
3.go! today
4.オレノバン
5.midnight breaking fishman
6.Break Boy in the Dream
2010.03.28 Sunday 23:59 | 音楽 | comments(4) | trackbacks(0)
あるぱちかぶと&haiiro de rossi@新宿タワーレコード

17時ちょっと過ぎにタワーレコード新宿店に駆け込むとちょうどEccyが回してるところだった。

彼のトラックメイカーとしての腕はさておき、場を読まないという意味ではDJとしてどうなのかなという印象。あるぱちかぶとにhaiiro de rossiが出てくるインストアイベントなわけで、そのふたりが所属するSLYE RECORDSの主宰である彼をファンたちは当然知ってるだろうに、体を揺らす人がほとんどいないお寒い状況で、しかも彼は一度も客の様子を見ることなく、うつむいて機材をいじるだけだった。ひょっとしたら客の反応に迎合することなく、やりたいようにやる男気ある表現者としての姿勢を評価すべきなのかも。まあどちらもでもいいが、曲を変えるときにサイレン音を多用しすぎてうるさい。


17時26分。ようやくハイイロ・デ・ロッシが登場。あいかわらず男前。パーカーの胸に入ったマークがHieroglyphicsの3つ目っぽくてオッかっこいいなと注視してたのだけど、帰宅してハイイロのブログを見たら彼のマークだったようだ。ハイイロとハイエロか。

1曲目は長めのフリースタイル。昨年末にリリースされたシングル「TRUE BLUES」が2曲目。同名のファーストアルバムに入っていても何ら違和感のない、ジャジートラックに流麗なラップが乗せられたとても彼らしい曲。3曲目は6月予定のニューアルバムから。この曲を聴く限りでは1枚目よりも踊れるアルバムになりそう。ラップはともかくトラックが良くて、いい具合に頭が振れた。

最後はNujabesの「reflection eternal」を使った曲。リリックを抜き出す。"中国や韓国に対してのメディア 嫉妬やひがみの典型だろ"や、"出身は地球 国籍は世界"、またフックでの"何となくでしかわからないけど ずっと何となくでいい気がしてる"といったフレーズが印象的だった。耳には心地良いけど右から入って左にさらっと抜けていくこれまでのスタイルとは違い、自分の想い/考えを聴き手の脳に少しでも刻みこもうとするラップだ。いくぶん力みが生じてしまうためか2曲目のときのように流れるフロウにはならないものの、ある種のつまずきがあるからこそ余計に耳に入って留まる。

トラックがトラックなだけにアルバムに収録されるときは差し替えられるのかもしれないが、セカンドアルバムの新しいハイイロ・デ・ロッシに期待できそう。

17時41分終了。


1.フリースタイル
2.TRUE BLUES
3.新曲
4.?


入れ替わるように本日の主役あるぱちかぶとが姿を現す。「完璧な一日」でスタート。ささやくようにラップするパートも、言葉がなめらかに滑り出てくるかなり速いラップ部分も、ライブと音源にほとんど変わりがない。あの声が生声になったことで幾分表現力が増量されるわけですばらしい。

ただ、強いビートが入ってくると不思議な物語を生み出す魔法の言葉たちが蹴散らされてしまうのは非常にもったいない。声量という点ではいかにもな文系インディーズラッパーであるし、これからの部分ではあるのだろう。だけど、トラックとマイクの音量のバランスにもっと気を使えばそれだけで十分楽しめるラップになると思う。インストアライブであり、慣れない機材なので仕方なかったのかもしれないけど。

昔スクラップした新聞記事にあった実話を基にした歌と説明してから始めたのが、最後の曲となった「日没サスペンデッド」だった。18時5分終了。


1.完璧な一日
2.トーキョー難民
3.元少年ライカ
4.日没サスペンデッド
2010.03.28 Sunday 23:58 | 音楽 | comments(4) | trackbacks(0)
B.I.G. JOE@新宿タワーレコード

19時45分過ぎにタワーレコード新宿店7階に着くと、DJ SEIJIが回していた。平日の、しかも金曜日の夜ということもあり、客の入りはTHA BLUE HERBがサードアルバムリリース直後に同じ場所で行ったインストアライブとは比べるべくもないが、それでもヒップホップ業界の人も多かったようで、それなりに盛り上がった。

19時59分。「THE HIATUS REMIX」をバックにご機嫌な顔でB.I.G. JOE登場。左手にはビニール傘。ふらっと立ち寄ってマイク握っちゃったぜという体なのだろうか。

"まず最初に、今日生かされてることを神に感謝。そして最愛の音楽をここに残してくれたNujabesに心からの冥福を祈ろう"と告げた後、テンション高めに"シンジュク、スタンドアップ!レッツゴー!"と叫び、「ALMOST DAWN」でスタート。続けて"Nasに送った歌"という「ONE LOVE PT.2」。昨年リリースされ、サードアルバムには収録されなかった2曲で口火を切り、その後はアルバム曲の「DREAM ON!」、NORIKIYOなしの「RIZE AGAIN」、「MUSIC IS LOVE」、「WAR IS OVER...」といった4曲を披露。

普段はクラブの暗いステージでライブをしているラッパーは、インストアライブでは何かというと明るい蛍光灯の下で恥ずかしいといい訳を述べがちだが、ビッグジョーはそんな愚痴を一切吐かず、客の反応が鈍くても挫けることなくラップスター然とした振る舞いを最後まで貫き通したのが印象的だった。最後にやった「WAR IS OVER...」での女性が叫ぶ間奏のSEで、彼はその女性と多分同じように頭を抱え、苦しみを演じていた。そういった演技を照れずにやれるのは大事なことだと思う。

ただ、惜しむらくは肝心のラップが途中でよれてしまうこと。せっかく強い声質をもっていながら、1ヴァース目はいいのに、2ヴァース目、3ヴァース目と曲が進むごとに聴き取れなくなる。ヴァースの前半と後半でもクリアさが変わってくる。MCでの意外に親しみやすいトークだったりと曲との落差も含めて、魅せるステージをするだけにもったいない。

20時26分終了。


ミニライブ終了後に特典引き換えがあり、黒縁眼鏡を掛けたビッグジョー(一瞬誰か分からなかった)が椅子に座り、ひとりひとりと握手をし、何かひと言を交わしていた。地道な営業だけど、こういうことをひとつひとつこなしていくことがCDの売れないこの時代には重要なんだろうなと思った。それというのも私自身がアルバムにはそれほど満足しなかったけれど、彼の人柄はきっといいのだろうと思ってしまったわけで、次出たときも買おうかしらと考え直しているからだ。



1.ALMOST DAWN
2.ONE LOVE PT.2
3.DREAM ON!
4.RIZE AGAIN
5.MUSIC IS LOVE
6.WAR IS OVER...
2010.03.26 Friday 23:59 | 音楽 | comments(2) | trackbacks(0)
mudy on the 昨晩『pavilion』

2010年3月3日リリースのファーストアルバム。
/5点中

昨年7月にギターの山川洋平が脱退したが、翌月には新たにギター・桐山良太が加わったため、3人のギターリストにベース、ドラムという5人編成バンドであることに変化はないようだ。

そして、本作の印象も昨年聴いた彼らのセカンドミニアルバム『Kidnie』と変わらない。ケツを叩きまくるドラムがメンバーを強烈に追い立て、気持ちの良い疾走感を生んでいるが、ギターが物語を組み立てきれず、勢いだけのアルバムになっている。

歌メロのないインストバンドにはとても重要な要素である閃きも足りない。5人がひとつの曲を作り上げていくチームワークの良さは感じられるものの、メンバー間に火花を散らせるような緊張感がないからだろうか。ライブは知らないが、少なくとも作品ではそう感じられる。

3分台の曲が多く、サクサク進み、あっという間に終わってしまう。M3「レダロ」は他の似たような曲が並ぶなかでは金属が軋むようなフレーズが印象に残った。それと、M8「Sarliban」の後半の演奏が熱かった。あと、アルバムジャケットがかっこいい。
2010.03.24 Wednesday 23:59 | 音楽 | comments(0) | trackbacks(0)
サカナクション『kikUUiki』

2010年3月17日リリースのサードアルバム。
/5点中

アルバムタイトルは1曲目の曲名にもあるように漢字で"汽空域"。海水と淡水が交わる水域を意味する"汽水域"から創られた造語であり、本来相容れないものが混ざり合う場所とのこと。

アルバム前半は押しの強いベースや強力なダウンビート、華麗な鍵盤の上音に思わず踊ってしまうというセカンドアルバム『シンシロ』の延長線の音であり、いささか物足りない。それは本作では4曲目に収録され、先行シングルとなった「アルクアラウンド」を聴いたときにも感じたことであり、くるりとの比較からなのだろうが、アルバム毎での劇的な進化/深化を期待してしまうからだろう。

そんな勝手な失望感が少しずつ薄らいでいくのが、"クレーの絵を見て"と歌われるM5「Klee」から。パウル・クレーといえば、まず思い浮かべるのが『黄金の魚』(持っている画集がそうだからかもしれないけれど)なわけで、サカナ繋がり。それはともかく、この曲から、彼らが成功への道を歩み始めたことへのとまどいが歌詞に現れ始め、一方で2枚目で顕著だったダンスビートの力を借りることなく、ロックの躍動感を手に入れた曲が増え始める。

インストのM6「21.1」を挟み、重しを曲に付け、さらに沈みゆくM7「アンダー」。水のこぽこぽとしたSEを経て、M8「シーラカンスと僕」に行き着く。"シーラカンス"という言葉が使われたり、"深海魚な僕"とあったりするからといって、Mr.Childrenの爆発的に売れた反動で生まれたロックな名盤『深海』を思い出すのはあまりに安直すぎるかもしれない。彼らにはアンニュイな物語を綴り、"どうか僕が僕のままあり続けられますように"と歌いながらも、疾走感のあるサビを作ってしまえる強さがある。

M9「明日から」は力強いダンスビートを取り入れ、ポップなメロディが踊る曲でシングルでも悪くなさそうだ。しかし、歌われているのはどこにも行けずに立ち止まっている姿だったりする。10曲目の「表参道26時」はアルバムの流れのなかではこの位置が正しいのかは分からないが、女性が歌うパートのメロディがとても心地良く、ホッと息をつける。

彼らなりのフォークともいえるM11「壁」ではアコースティックギターのアルペジオにやがてノイズギターが襲いかかる。そして、"僕が覚悟を決めたのは庭の花が咲く頃"と成功と向かい合うことを誓い、本編最後のM12「目が明く藍色」に向かっていく。約7分もの大曲となったこの曲には1枚目のアルバムに収録された「ナイトフィッシングイズグッド」のごとく歌劇風味の味付けがあり楽しい。"制服はもう捨てた 僕は行く 行くんだ"と決意を静かに噛みしめるように歌われて終わる。


ボーカルの山口一郎の歌詞は今まで以上に心情が素直に漏れているようにも思うのだが、いささか抽象的なのは変わらずであり、曲の一部を恣意的に抜き取り、深読みしすぎている感は自分でも分かる。しかし、シングル『アルクアラウンド』がオリコンシングルチャートで初登場第3位に食い込む快挙を果たし、順調に伸ばしているキャリアへの喜びは当然あるだろうが、同時に数字を求められる重圧も感じざるを得ないだろうし、その辺りの心境が重量感のでてきた音からも感じられた。その重さのあるアレンジと共に、電子音を散りばめた安易なダンスビートがやや後退し、ギターやドラム、ベース(大活躍!)によるロックのダイナミズムを手に入れたことは喜ばしい。

売上を期待されるバンドには難しいのかもしれないが、本作をただ流し聴きしているときに楽しめたのが、M6とボーナストラック扱いの「Paradise of Sunny」という2曲のインストゥルメンタル曲だった。特にフルートが冴える後者は6分と長尺なこともあり、いにしえのプログレバンドのごとく音に物語性が宿り、すごく良かった。これまでも「マレーシア32」や「minnanouta」といったインスト曲はあったが、音の表現力が格段に上がった今の彼らならアルバム一枚まるまる言葉がない音楽でもすごく面白い作品ができそうだ。
2010.03.23 Tuesday 23:59 | 音楽 | comments(2) | trackbacks(0)
People In The Box@新宿タワーレコード
シングル『Sky Mouth』のリリースを記念してのインストアライブ。タワレコ新宿店7階で行われる通常のインストアイベントとは異なり、同封されていた入場券を持った人だけが囲われた規制線の内側で見られる形式だった。まあ、ただでさえ貧弱なスピーカーなのだから、例え内側で見られても端になるぐらいなら離れていても正面で見る方が断然音が良いと思う。

14時5分。3人のメンバーがぞろぞろと出てきてアンプラグドスタイルのライブがスタート。

想像通りだったが、ボーカル波多野裕文の歌唱力はお世辞にもあるとはいえない。親しみやすいメロディを紡げてもそれ以前に表現力という点ではお粗末。ロックバンドにはありがちといえばそれまでだけど。「月曜日」辺りからPAがうまく働き始めたのか声が埋もれることなく、伸びやかに聞こえ始めたのは良かった。

アコースティック形式だったためか、ベースの福井健太もギターを爪弾き、波多野のギターと絡むわけだが、いささかぎこちなく、音源で見せる詩情性や緊張感といったものを感じることはできなかった。

特筆すべきはドラム・山口大吾の巧さ。バスドラにスネア、それと4枚のシンバル系といった極めて簡素なドラムセットから繰り出されるビートは表情豊かだ。このビートがあるから最後まで楽しんで聴けたといってもいい。

14時39分終了。


イベントが終わってからもしばらくの間店内でさえずっていたファンがまだ十代の女の子たちで占められていて、彼らのファン層はそこなのかという驚きもあった。

1.天使の胃袋
2.火曜日 / 空室
3.犬猫芝居
4.月曜日 / 無菌室
5.上を向いて歩こう(サビだけ)
6.She hates December
2010.03.22 Monday 23:59 | 音楽 | comments(5) | trackbacks(0)
シャーロック・ホームズ / Sherlock Holmes

61点/100点満点中

ガイ・リッチー監督最新作。ロバート・ダウニー・Jr、ジュード・ロウ共演。2010年公開作品。

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19世紀末のロンドン。若い女性が不気味な儀式を思わせる手口で殺される連続殺人事件が発生。スコットランド・ヤード(ロンドン警視庁)が手こずるなか、名探偵シャーロック・ホームズが解決に立ち上がり、犯人のブラックウッド卿を逮捕。しかし、巨大な闇の力との繋がりをほのめかし、すぐに復活するといい残し処刑された彼は言葉通りに数日後本当に甦り・・・。
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アバター』に阻まれ興業ランキング1位にはなれなかったものの、7週連続でトップ10入りし、アメリカ国内だけで2億ドル以上の興業収益を叩き出し、監督の最大のヒット作となる。ガイ・リッチー監督のファンとしてはそれだけが嬉しい作品でもある。

小学生のころから読んできた(ルパン派だったけど)名探偵シャーロック・ホームズを主人公にした映画化。これまでにない好戦的なホームズ像を生き生きとした瞳が印象的なロバート・ダウニー・Jrが演じ、その相棒のワトスン博士をただの助手という説明では収まりきれない存在感を放ちながらジュード・ロウが実に魅力的に演じる。原作ではほんの少ししか出番がないけれど、ホームズを知性で翻弄し、女性嫌いの彼も一目置いたというアイリーン・アドラーが、「ルパン三世」でいうところの峰不二子的キャラクターとして登場。ただ、そんな存在の彼女よりもホームズとワトスンという男同士の関係の方が親密に思えるのが本作の面白いところ。

黒魔術を使い、5人の女性を殺した罪で処刑されたブラックウッド卿が生き返る。その裏でうごめく秘密結社の存在。ホームズとワトスンのふたりはその復活の謎を暴けるのかという筋書きが、現代に繋がる科学技術の黎明期のロンドンを背景に描かれる。これまでのガイ・リッチー作品と比べてしまうと会話に面白味が少なく、きつい皮肉よりも分かりやすい冗談だけが交わされ、物足りない。

確かにガイ・リッチーらしい映像美を楽しめるし、独特な省略の美学は健在だ。スタイリッシュであることは変わりない。けれど、デビュー作の『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』に比べれば100倍、前作の『ロックンローラ』と比較しても5倍という9000万ドルもの潤沢な製作費を上手に使いこなせていない印象だ。やたら火薬が派手に打ち上げられ、それっぽいCGが使われはするものの、映画としての面白さに直結できていない。

大ヒットを記録したわけで、すでに続篇も予定されているらしい。まあ劇中でもすでにホームズの最大の敵・モリアーティ教授が影だけとはいえほのめかされているわけだけど、ともかく今作以上の製作費が付き、さらに豪華になることだろう。ロバート・ロドリゲスでいうところの「スパイ・キッズ」シリーズのように続いて欲しいが、一方でこれまでのような完璧な脚本のもと、どうしようもないロンドンギャングの抗争を描き続けて欲しい。
2010.03.21 Sunday 23:59 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
空気人形

57点/100点満点中

是枝裕和監督最新作。2009年公開作品。

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川沿いの古びたアパートで暮らす冴えない中年男・秀雄。彼が毎夜優しく語りかけるのはダッチワイフ"のぞみ"だった。ある朝、のぞみは心を持ってしまう。秀雄が仕事に出かける昼間に彼女は近所を歩き回るようになる。やがてレンタルビデオの店員・純一に一目惚れし、その店でアルバイトをするようになるのだが・・・。
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是枝裕和監督といえば、2004年の『誰も知らない』。主演の柳楽優弥がカンヌ映画祭で男優賞を受賞した作品なのだけど、内容の悲惨さに途中までしか見られなかった映画だった。でも今作はあの作品のような痛みを覚える内容ではなくゆるいファンタジーで最後まで見られた。

題名の"空気人形"とはダッチワイフのこと。同種の用途でラブドールと呼ばれるものもある。それも"ダッチワイフの一種"ではあるのだけど、"ボディが高価なシリコーンなどで作られているものを指す"ようだ。劇中では5000円いくらで買った安物の大量生産品とある。

昔でいうところの南極2号がある日感情を持ってしまう。レンタルビデオ店でのアルバイトを通してのぞみは知識や感情をゆっくり覚えていく。その辺りの設定はとてもゆるいのだけど、でもそこが問題になる作品ではない。コケティッシュな彼女に魅了されていればいいのだろう。

へそのところにある空気口に息を吹き込むことで体を保つ彼女は、自身と同じと親近感を覚えるのか空き瓶を集めていく。また息を吹きかけることは生を吹き込むことと同じ行為であり、彼女はタンポポの綿毛に息を吹きかけ新しい生命を飛び立たせる。

のぞみの発見に満ちた日々を通して、人が忙しさにかまけて忘れている感情を呼び覚ますのかどうかは見ている人次第だろうが、いくつもの象徴的な映像を繋げていく。また同時に、隅田川沿いに立ち並ぶ高層マンションに見下ろされる、開発から取り残された木造家屋が並ぶ一画(月島辺りなのかな)で、生活に追われ悲しみをひとりで抱え込む人々の暮らしを切り取る。

私にとって、最後に演出される"美しい景色"が、『アメリカン・ビューティー』の劇中で美しいとされるゴミ袋が風に舞う動画と同じだったことに集約されるように、感性の違いが大きすぎた。本作を面白いか面白くないのか二択で答えろと問われれば、つまらないと即答だ。

良かったのは寂しい中年・秀雄を巧みに演じた板尾創路が思いの外うまかったこと。驚いたのは、『リンダ リンダ リンダ』にも出ていたのぞみ役のペ・ドゥナが1979年10月生まれの現在30歳ということ。それと評価を一気に下げたのが星野真里の扱い。あれだけってどういうこと?
2010.03.19 Friday 23:58 | 映画 | comments(3) | trackbacks(0)
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