すばらしくてNICE CHOICE

暇な時に、
本・音楽・漫画・映画の
勝手な感想を書いていきます。
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2021.02.10 Wednesday | - | - | -
ASIAN KUNG-FU GENERATION『マジックディスク』

2010年6月23日リリースの6枚目のアルバム。
/5点中

前作『サーフ ブンガク カマクラ』から1年7ヶ月ぶりとなる作品。ロックというくびきから解放されたというほど大袈裟なものではないが、少なくともアジアンカンフージェネレーションといういつのまにか祭り上げられ、おだてられ、面白味を失っていたブランドからは自由になろうとしたアルバムだ。

前作でも感じていた、力みの取れた歌い方の曲が並ぶ。面白いのはそういった曲の方が琴線を力強く振るわせることだ。M1「新世紀のラブソング」やM4「さよならロストジェネレイション」、M10「ライジングサン」がいい。諦観とは異なる、どこか冷めた希望が歌われる。身の丈に合わない大きな夢は抱かず、でも下を向かないで前をしっかり見据え、皮肉まじりではあるものの、強い決意を紡ごうとする。新世紀が始まって10年が経つが、この2010年からが本当の始まりだと告げる彼らの歌詞は新人バンドのそれのように青臭く、でもフレッシュだ。そこが本作の魅力であり、強いメロディと躍動する演奏が彼らの希望に説得力を持たせる。

ホーンが小気味良いM5「迷子犬と雨のビート」(アニメのオープニング曲として聞いていたときは"現在"を"原罪"だと思ってた)、あれこれウダウダ考えるよりもとりあえずやってみるしかないだろうと背中を叩くM8「ラストダンスは悲しみを乗せて」も楽しめた。

もちろん、初期のアジカンらしさを出したM11「橙」のような曲はあるし、歌詞が観念的になりすぎて勢いが失っているのもある。でも時代はどんどんスピードを速め、それまで当たり前だったものを過去に置き去りにする流れの中で、聴き手によりダイレクトにメッセージを届かせるべく直接的な歌詞で大胆に自分たちの音を鳴らしていくことは間違っていない。もうすぐで十年選手になろうかというバンドが最近の活きの良い若手に負けていない瑞々しいアルバムをここで誕生させたのは素直にすごいと思う。
2010.06.30 Wednesday 23:59 | 音楽 | comments(0) | trackbacks(2)
haiiro de rossi『same same but different』

2010年6月16日リリースのセカンドアルバム。
/5点中

粋なジャジートラックの上で"風の中を歩く"がごとくラップする注目の若手ラッパーhaiiro de rossiの1年7ヶ月ぶりとなる2枚目のフルアルバム。これはかなりの力作。そして良盤。

前作『True Blues』の歌詞カードに掲載されたライナーノーツで、"「風の中を歩く」と称される流麗なフロー"と賞賛されていたわけだが、捉え方によっては批判ともいえる。彼のラップは流暢すぎて、その内容に踏み込む前に、言葉が右の耳から左の耳へと駆け抜けてしまう。日本語によるラップであるにもかかわらず、お洒落カフェのBGMに流しても違和感ないほどだったからだ。

しかし、本作でハイイロデロッシは自分を強く出し始める。これまでのスタイルを考えると幾分の照れ("こんな詩を書く 恥ずかし気も無く"なんてリリックも)はあるのだろうが、ハイイロというラッパーの内面がよりはっきりと出ている。神戸のラッパー・神門の曲「さてどう生きようか」を挙げ、同い年のアーティストとしてある意味ライバルであるにもかかわらず、"心底やられたんだ"、あるいは"この曲が今の心の生き場です"と絶賛の気持ちを素直に吐露したりもする。

彼らしいかっこいい表現を捨て去ったわけではない。神門が登場するそのM12「飛鳥」のフックは、"街の端 海の端 月の匂いが眉間に刺さる / 何かを得てまた何かを失う 世界に触れて心を培う"といった非常に詩情溢れるリリックだ。

ただ、面白いのは歌詞カードを見ながらじっくり聴くと、内容的には前作とそれほど大きな隔たりがあるとは思えないことだ。『True Blues』をよく聴けば、自分語りはあったし、脆さも弱さも表現してはいた。けれど、今作はそれがよりダイレクトに伝わってくる。ラップで表現するということにかなり努力したのだろう。

もうひとつ大きく変わったのがトラックだ。前作はジャジーのひと言で片付けても十分だったが、今作ではM1「Modern Tribe」からビートの活きが全く違う。丸い輪郭のリズムが躍動しているのだ。プロデュースしたのはYakkle。Shing02のリミックス作品で名前を挙げた人だが、ボーナストラックを含め他2曲で関わっていて、どの曲でも温かみのある強力なビートを提供している。

プロデューサーといえば、EeMuも声ネタの使い方がすてきなM3「Yellow Bohemian」とM12で良い仕事をしている。環ROYの新譜にも参加していたHimuro YoshiteruはM5「月光睡蓮」で弦楽器の勇壮な響きを生かしたトラックに仕上げている。非常にかっこいい。それに負けずに印象的なリリックを吐き出すハイイロの成長にも目を見張る。

DJ Old Fashionのプロデュース曲は2曲。ロックテイストのループに思わず弾んでしまうM8「Be Free」と題名通りに淫靡なジャズとなったM9「Nasty Jazz」。特にM9はハイイロの挑発的なリリックが面白い。このアルバムが本当にいいなと思うのは、あの曲のあの歌詞がいいねといった調子で、そのスリリングな楽しさをいつまでも語れそうなところだ。

もちろん生音を使った大人なジャジートラックも忘れてはいない。M13「True Blues (Album Ver.)」ではファーストアルバムでのかっこよさを甦らせている。

人柄がより伝わるようになったリリック、より力強くなったトラック、そして最後にもうひとつ良くなった点がある。アルバムの構成だ。ジャズによる統一感がなくなったことでトラックに多様性が生また。また後半には彼のラップとは趣の異なるラッパーを交えたことも功を奏している。なかでも宙チートの登場のタイミングはうまい。彼の隙のあるラップでひと息つけるからだ。M14「7days Drama」に参加しているTAKUMA The Greatというバイリンガル(なのかな?)ラッパーもいい味を出している。英語混じりのリリックなのだけど、まずもって声が良く、聴き惚れる。

巧みな構成で飽きさせないのだから、ボーナストラックなど収録せずに、シンプルに全15曲で勝負しても良かったと思う。ついでに書けば、新宿タワーレコードで購入した際に付いてきた特典CD-Rも、販促のために必要なのは理解できるが、本作の完成度の前では蛇足でしかない。


1作目から確かに新人離れしたラップをしていたし、聴けば彼だとすぐに分かる独自性があった。そのまま次の1歩を普通に踏み出しても、それがハイイロデロッシのラップスタイルだと受け入れられただろう。けれど、彼の次の踏み出しは聴き手の想像の上をいく遙かに大きなもので、かなり驚かされた。全く感じさせなかった"二年目のジンクス"だったわけだけど、次は多くのミュージシャンの行く手を阻んできた3枚目でもある。彼がどう出るのか、気が早い話ではあるけれど、今から楽しみだ。
2010.06.29 Tuesday 23:59 | 音楽 | comments(0) | trackbacks(0)
将絢×EVISBEATS『offutaride』

2010年6月16日リリースのミニアルバム。
/5点中

Romancrewの将絢と元Nortable MC/韻踏合組合のEVISBEATSのコラボレーション作品。KREVA主宰のくレーベルから出されたということで、トータルプロデューサーとしてクレバがクレジットされているが、音的には3曲でキーボードが加わる以外に客演はなし。存分に将絢とエビスビーツの世界を味わえる。

しかし、将絢だ。初めてライブを見たときの印象からはずいぶんと良くなったし、MICHITA作品への客演などは良いとすら思えたが、それでもあの将絢なのだ。たった5曲でも彼のラップだけが続くと飽きがくる。

"さよなら名バイプレイヤー お誘い文句をプレイバック"なんて小粋なリリックで、低音&男前担当なだけではなく、主役も張れると主張してみせ、フロウの引き出しを目一杯開けてはいる。容姿に見合ったかっこつけリリックも彼なら納得だ。用意周到なデートもすっぱりさっぱりと切り出す別れも久しぶりに出会った元彼女を誘う手口も彼だからこそ様になる。低音の魅力をいかんなく発揮してもいる。

けれど、だ。ラップに少しだけ変化を付けたからといって抑揚のなさは変わらず、最後まで同じトーンで進む。全5曲とはいえ、いささか疲れる。また、ワンループ主体のエビスビーツのトラックは、彼に期待するところの奇抜さはほとんど排除され、落ち着いたビートといえば聞こえはいいが、単調になりがちのラップを救うまでの力はない。ダブルネームの作品にしてはずいぶんと縁の下に回りすぎの印象で、ソロ作品『AMIDA』で聴ける冴えが感じられない。

本作で良かったのはジャケット。A3ほどの紙(紙質も良い)を折りたたんだ完全なる紙ジャケ。初めて見たし、これは良いデザインだ。
2010.06.28 Monday 23:59 | 音楽 | comments(0) | trackbacks(0)
パッセンジャーズ / Passengers

42点/100点満点中

2008年のアン・ハサウェイ主演のサスペンススリラー。製作費2500万ドル。

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セラピストのクレアは飛行機事故で奇跡的に生き残った5人の乗客を担当する。他の生存者とまるで様子の違うエリックは個別カウンセリングを要求。知らないはずのクレアのプライベートを口にし、彼女を困惑させる。一方、事故の状況を巡り、生存者の証言と航空会社の説明に食い違いがあり、さらに生存者たちが次々と謎の失踪を遂げるのだった。
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百円レンタルならダメージ少ないしこの際だから公開時には見たいとも思わなかった作品を見てしまえシリーズの1本目。公開初週の興業収益はたった17万ドルと低調すぎて、トップ10にも入らなかった惨敗作。

90年代末に公開された映画と同じと書けば、完全なるネタバレになってしまうのだけど、まあそんな作品。ネタは同じでも見せ方を工夫し、新しい何かを生み出していれば気にならないが、本作にそんな意欲はなく、もったいぶり方もイマイチな上にアン・ハサウェイの役柄の説得力のなさのいい訳としても機能しているオチになんだかなぁという思いだけが残る。

アン・ハサウェイはその大きな瞳が不自然すぎて、きれいとかかわいいというよりも気持ち悪いという思いが先に立ってしまう女優で、ちょっと敬遠していたのだけど、『レイチェルの結婚』で思いの外良い演技をしていて、本作を手に取ったが、作品として残念な出来だった。

そういえば、『パラサイト』で気になる演技をしていたクレア・デュヴァルが生存者のひとりシャノン役で出演している。あの映画に出ていた俳優が活躍しているのは何だか嬉しい。
2010.06.26 Saturday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
Crystal Kay『FLASH』

2010年6月16日リリースのセカンドミニアルバム。
/5点中

デビュー10周年だった昨年はベストアルバムやリミックス盤を発表したために、2008年の8枚目のアルバム『Color Change!』以来となったオリジナル作。全7曲(ボーカル入りは5曲)で収録時間は約22分。

今なら安室奈美恵がやっているダンサブルな曲調から、ポップスを強く意識した分かりやすいメロディラインをなぞるもの、マイケル・ジャクソンのカバー、しんみりと歌い上げるバラードと切り口は多用だけど、10年以上も活動していれば、アプローチの方法論は色々持っているだろうし、今さらそれを提示されてもという思いを抱いてしまう。

カバー曲のM5「Happy」を聴くまでもなく、表現力があるのは分かっている。それだけの説得力があるのだから、R&Bを日本に根付かせるべく、もっとボリュームのある作品でガツンといわせて欲しい。表題曲のM1やM2「Victoria」で聴かせる暴力的なまでに重いビートを基準に、M2のセクシャルな路線の延長線上の作品に期待。
2010.06.25 Friday 23:59 | 音楽 | comments(0) | trackbacks(0)
ゾルタン★星人 / Dude, Where's My Car?

60点/100点満点中

『バタフライ・エフェクト』のアシュトン・カッチャー主演のSFコメディ(2000)。製作費1300万ドル。

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ジェシーとチェスターは、目覚めるとなぜか前夜の記憶がなかった。派手なパーティがあったことだけは覚えていた。愛車もない。ふたりは愛車と記憶を探すべく街へ出たのだが・・・。
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デミ・ムーアとの結婚が意外に続いているアシュトン・カッチャーの初の主演作。本国アメリカでは大方の予想に反してクリスマスシーズンに初登場第2位。その後4週にわたりトップ10内にチャートインし続けたおバカコメディ。向こうのコメディ映画の常で日本では劇場未公開。

エロやお下劣な下ネタに走るのではなく、文字通り"おバカ"コメディであり、おつむが足りないふたりが活躍する。大事な局面で、猿顔のショーン・W・スコット演じるチェスターが思い出すのは、動物番組で特集されていたチンパンジーであり、猿が道具を使っていたから自分も使ってみるといった次第だ。

カッチャー扮するジェシーとチェスターのふたりは恋人との記念日を忘れ、また部屋を汚したことでも怒られ、オカマには盗んだ金を返せと脅され、美女にいい寄られたがためにそのマッチョな彼氏につけ狙われ、ゾルタン信仰者一団に訳の分からないことを頼まれ、セクシーエイリアン5人組まで現れるという、しっちゃかめっちゃかな展開は、主役のふたりのおバカぶりと同じぐらい、あるいはそれを上回る勢いでアホらしい。

1997年の大ヒット『メン・イン・ブラック』を微妙にオマージュ(他にも日本の特撮ものへの愛もちらほら見られる)するので、余計に安っぽさが出てしまう。批評家受けが悪かったのも納得。

これは面白いとしたり顔するのもありなのかもしれないが、劇場で高い映画代を払って見たら怒ると思う。ただ、ここまでヌケサクたちを純粋に描いたことはそれはそれですごいなとは思う。

あと、ジェシーの恋人役がジェニファー・ガーナーだった。先日見た『JUNO/ジュノ』で主人公の赤ん坊の里親となる予定のお母さん役で出演していて、かなりの美人ぷりだったが、本作からは想像もできない。
2010.06.25 Friday 23:49 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
Budamunk & S.l.a.c.k.『Buda Space』

2010年6月23日リリースのリミックスミニアルバム。
/5点中

独特なフロウとリリックで現在最も注目を集める若手ラッパーS.L.A.C.K.が昨年発表したファーストアルバム『My Space』の楽曲を、JAZZY SPORT所属のプロデューサーBudaMunk(以前はbudamunky表記だったが、変わったのだろうか)がリミックスしたのが本作。全9曲のうちインストが4曲を占める。1000枚限定生産。

ブダモンクの経歴を簡潔にまとめると、1996年から2006年までの10年間ロサンゼルスで活動。帰国後の2008年にTAK THE CODONA主宰のMPCバトル「GOLD FINGER'S KITCHEN 2008」で優勝。

最初に耳にした彼の音は、2007年リリースのGAGLEのサードアルバム『3 PEAT』に、プロデューサーとして参加していた「ノーサイド」だった。翌年のジャジースポーツのコンピレーションアルバムにも2曲を提供。1曲はC.R.C.Sが、もう1曲ではCOMA-CHIが客演している。2009年に入ると、LAでの同僚Joe Stylesとのダブルネーム作を発表。スラックの2枚目『WHALABOUT』でも2曲をプロデュース。他にミックスCDが1枚あるようだがそれは未聴。

作り出す音は非常にストイックだ。彼のMySpaceの"影響を受けた音楽"欄で、"Jay Dee"の名前が最初に挙げられていることからも分かるように、切り詰めたベースに硬いスネアといった例の音が特徴だ。意外性のある上音の面白味という点では、ジェイディの次に書かれている"RZA"の影響が大きいのだろう。

さて本題。「Good More」がM2「Good Pop」に、「Deep Kiss」はM5「Deep Shit」に、「I Know About Shit」はM7「I Know Club Bitches」、ボーナストラック的扱いだった「S.H.O.C.K.」がM8「B.U.D.S.」とそれぞれリミックスされている。ほんの短いものだけどラップに新しいラインが加わっていたり、言葉が変わっていたりする箇所がある。

原曲の雰囲気を台無しにしているものが多く、残念な出来だ。M5が最たるもので、自転車に乗って恋人の家まで"night cruising"するというとてもメロウで柔らかな曲だったものが、まるでラクーンシティでのナイトクルージングになってしまっている。冒頭の発砲音はともかくとして、ひたすら不安を煽るシンセはスラックの背中を終始脅かし、早く安全なところに逃げ込まないと命がないとどやし続ける。

M2は、のんきな笛の音ループや朗らかな木琴(?)が鳴るオリジナルからマイナーな旋律がのしかかるトラックに様変わりし、性急なシンセに覆われるM7は非常にラフな仕上がりだ。一方、M8はなぜだか途中でレゲエの曲にフェイドアウトしてしまう。

人によってリミックスに求めるものは違うだろう。私の場合は、DJ A-1が先日発表したShing02の2枚目『400LP』のリミックスアルバムを聴きながら、これこそ理想だと思った。原曲とは異なる、全く新しい景色を見せつつ、オリジナルには現れていなかった魅力を引き出す作業だ。

本作でのブダモンクは新しい景色を確かに創り出せてはいる。しかし同時に彼の音が色濃く出てしまい、スラックのラップの魅力をかき消してしまった。隙間の多いトラックの上に自由に飄々とラップする『My Space』でのスラックは"サル"の強固なオリに囚われてしまい、輝きを失っている。

最初に聴いたのが本作であれば、また違う評価を下したかもしれないが、すばらしい原作に魅了された後に聴いているわけで、ブダモンク版を素直に首肯することはできない。
2010.06.24 Thursday 23:59 | 音楽 | comments(0) | trackbacks(0)
ファニーゲーム U.S.A. / Funny Games U.S.

43点/100点満点中

オーストリア人監督ミヒャエル・ハネケが自身の作品を10年後にハリウッドでセルフリメイクした2007年のサスペンスホラー。製作費1500万ドル。

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ジョージに妻アン、それとひとり息子のファーバー一家は、バカンスを過ごすべく湖の別荘へやって来た。アンが夕食の準備を始めたところに、隣家の使いの者だという青年が現われる。卵を分けて欲しいと申し出る彼に、アンはドアを開け、家に導き入れるが・・・。
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百円レンタルならダメージ少ないしこの際だから公開時に見られなかった作品を見てしまえシリーズの6本目。

ウィキペディアによれば、1997年のオリジナル版『ファニーゲーム』はカンヌ映画祭に出品されたが、その凄惨さからヴィム・ヴェンダース監督を始め、批評家や観客もショックのあまり席を立ったという。ロンドンではビデオの発禁運動まで起こった。また、"本作はハリウッド製スリラー映画のパロディといわれている"らしい。

幸せそのものの家族のなかに突如として舞い込んでくる生々しい暴力。マイケル・ピット演じるポールとブラディ・コーベットによるピーターのふたり組がその暴力を具現化する。ふたりは丁寧な言葉で話し、礼儀をわきまえ、また相手にも礼節を求める。しかし、その礼儀とは自分たちに都合の良いものばかりであり、丁寧な口調と残忍さのギャップから生まれるサイコっぷりが恐怖を煽る趣向だ。

幸福な家庭に持ち込まれた"悪"はしばらく猛威を振るい、やがて気まぐれにいなくなる。当然それだけでは終わらないのだけど、物語の展開は冒頭からエンドクレジットまで起伏に乏しく、退屈そのもの。監督が意図するテーマはそれなりにあるのだろうが、それのために物語自体が犠牲になっている恰好だ。

ポールが映画を見ている人にカメラ越しに語りかける趣向はともかくとして、もうひとつの秘密の巻き戻し装置には唖然とさせられた。あれこそがミソなのだろうが、そういうものとして見ていないし、頭でっかちな作品を求めてもいない身には面白くもなんともない。いつまでも居座り、逃げ場のない圧倒的な暴力。もう少し違う描き方があったように思う。オリジナル版も同じなのだろうか。

アン・ファーバーを演じたナオミ・ワッツは当時37〜38歳ぐらいだと思うのだけど、相変わらずきれいだ。でもあまり作品を選ばない女優でもあり、いつも不思議に思う。
2010.06.24 Thursday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
Shing02『400 REGGAE MIX BY DJ A-1』

2010年6月21日アップの無料ダウンロードアルバム。
(http://www.maryjoy.net/400yomi/reggae.html)
/5点中(無料なので+1)

Shing02が2002年にリリースしたセカンドアルバム『400LP』のリミックスアルバム『400[甦]』が今月頭に発売された。Mary Joy Recordingsのオンラインショップで買うと、特典としてアカペラかインストのCD-Rがついてくる。そのアカペラを使い、レゲエトラックとマッシュアップしたのが本作。ミックスしたのはシンゴ2のバックDJとしてもお馴染みのDJ A-1。ラップ曲の15曲全てをリミックスしている。

これはホントすごい!フリーなのが信じられないほど。

私にとって、『400LP』はシンゴ2の新作を初めてリアルタイムで聴いたアルバムであり、心躍らせながら発売日を待ち、かなり聴き込み、そして力作であることを頭で理解しながらも、心底楽しめたのは「400」以外ないという作品だった。

あれから8年が経って、『400LP』に吹き込まれたラップのすごさがようやく分かった。本作を最初に聴いたときは新しいリリックに差し替えたのかなと思うほどだった。印象が全然違う。歌詞カードを見ながら聴くと、1曲(M7「3分ドリル」)を除き、原作と変わらないのには本当に驚いた。

スキットが省かれすっきりとしたM8「ウルトラH」やとことん踏みまくるM9「十八番茶」、M12「昨今、毎度」、M15「人生ゲノム」等で、彼の知性はいかんなく発揮され、秀逸な言葉遊びはユーモアに満ち、楽しくて仕方ない。近未来SFものと思わせながらも実は・・・というこれまたアイデア賞もののM4「S02-2102」やM5「夢幻殿」、M6「旋毛風」といったストーリーテリング曲もゆるいレゲエのリズムに乗ると、堅苦しさがなくなり物語そのものに耳がいく。M5やM6のヴァースでの声の重ねも今回のバージョンで聴くとうまく機能している。

残念なのは、M4のスキット部分がないこと。DJ NOZAWAパートはともかく、シンゴ2と母親との会話で和みたかった。それにらっきょというオチがないと、"例の内容は厳重に包装して外部にリークしていないだろうか?"の面白さが半減してしまう。もうひとつはM6での男が村人を扇動する3ヴァース目が省かれていること。M6以外はほぼフルで収録されているのだけど、この曲だけ省略がある。

聴き比べると、オリジナル版はラップとトラックがぶつかりあってしまい、リリックの面白味が薄れてしまっていたが分かる。今回、DJ A-1はスキットをなくし、声にエフェクトをかけず、ラップそのものがメインになるよう改変することで、影に隠れがちだった歌詞に光が当てられ、そのすごさが素直に顔を出した。おかげで曲のテーマもよりはっきりと浮かび上がる。日本航空のクレーム対応への批判という印象が強かったM10「JAL002」には広い意味を持たせていたことが分かるし、M13「生。」では最後の数小節を切ることで生々しさが生まれた。M11「憂国」も同様だ。

400LP』はラップもトラックも情報過多で、互いをつぶし合っていた。"祇園精舎の鐘の音"で始まる『平家物語』冒頭の一節もレゲエビートに乗っかってしまえば、特に難しいことを考えなくても、単純に楽しめるし、それをラップしてしまえるシンゴ2の力量を賞賛するばかりとなる。聴く者に原曲の隠された魅力を気づかせるという意味で大成功のリミックスアルバム。DJ A-1最高。


1.Intro
2.400 (400)
3.44戒 (44K)
4.S02-2102 (S02-2102)
5.夢幻殿 (temple of dreams)
6.旋毛風 (whirlwind)
7.3分ドリル (3min,drill)
8.ウルトラ H (ultra h)
9.十八番茶 (edo funk)
10.JAL002 (JAL002)
11.憂国 (yukoku)
12.昨今、毎度 (suck on my dub)
13.生。 (alive.)
14.砂乃性 (sand saga)
15.人生ゲノム (genome of life)
16.Outro
17.Black Is Beautiful



Mos Def『MOS DUB PRODUCED BY MAX TANNONE』

2010年4月6日アップの無料ダウンロードアルバム。
(http://mosdub.com/)
/5点中(無料なので+1)

ヒップヒップとレゲエのマッシュアップといえば、洋物だけど、Mos Defを使った本作もかなりの良盤。手掛けたMax Tannoneというニューヨークのプロデューサーは以前にもJay-ZとRadioheadをまぜまぜした『Jaydiohead』で注目を集めた人らしい。

Shing02のもだが、これからの鬱陶しい梅雨を吹き飛ばし、さらにはその先の夏にもぴったりな賞味期限切れなんて言葉を知らない、とても爽やかなアルバムに仕上がっている。とにかく心地良い。"ミナサン"やら"イチバン"といった日本語が飛び出すdj hondaとの愉快な曲もリミックスされている。


1.Johnny Too Beef
2.History Town
3.Ms Vampire Booty
4.In My Math
5.Travellin' Underground
6.Shroud The Stars
7.Mr Universe
8.Summertime Running
9.Kampala Truth Work
10.Hurricane Black
【サンプリング情報はこのサイトで→http://illroots.com/2010/04/06/mos-dub/】
2010.06.23 Wednesday 23:59 | 音楽 | comments(4) | trackbacks(0)
0:34 レイジ34フン / Creep

46点/100点満点中

イギリス・ドイツ製作による2004年のホラー映画。

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英国ロンドン。ケイトは地下鉄チャリングクロス駅で深夜0時34分の最終電車を待つ間、うたた寝をしてしまう。やがて気がついた時には終電はすでに出た後で、駅出口も外からシャッターが下ろされていた。その時、もう来ないはずの電車が到着する。ケイトは慌てて乗り込むのだが・・・。
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これは酷い。レンタルビデオ屋のポップでお薦めされていて、普段ならそんなことは絶対にしないのだけど、100円レンタルで気が大きくなっていたのか借りてしまった。たまには知らないビデオスルー作品もいいかと油断したのが運の尽き。とはいえ、これを書くのに調べてみたら劇場公開もされたらしい。それは酷い。

基本的には昨日見た『P2』と同じくシチュエーションスリラーの変形。チャリングクロス駅を起点に地上には逃げられないという、やや大まかではあるけれど限定された空間での鬼ごっこだ。

ニューヨークの下水道にはワニが生息するという都市伝説は誰もが一度は耳にしたことがあると思うが、その伝でいけば、ロンドンの地下に『ドラゴンヘッド』のノブオばりに気が狂った男がいてもおかしくないだろうという安易にもほどがあるだろうという設定の基、ヒロインにしては薹が立ちすぎている印象のケイトが相手を取っ替え引っ替えしながら駆け回る。

血をしっかり見せるので、その辺りの恐怖表現は合格点だ。おそらく性的不能であることから代替物としての長剣活用シーンは目を背けたくなるほどだった。B級はB級らしくといった描写ではあるけれど。ヒロインが自分の爪がはがれそうになっているのに気づき、自らはがすというシーンは『P2』にもあったが、何か元ネタがあるのだろうか。

グロい描写に力を入れているのを認めるのはやぶさかではないが、物語の設定自体に疑問点が多すぎて、たいていのホラー映画はそういうものだと分かってはいても、失笑せずに見ることは難しい。85分と短いことが救いか。

そもそも911以降地下鉄でのテロ行為が実際に起きているロンドンでどうなのよ、というものから、ケイトの同僚はシャッターの降りた駅構内にどうやって侵入したのか、あるいはいつのまに鎖が出てきたの、と唖然とさせられたり、本作はちょっと酷すぎる。だいたい邦題からして・・・。
2010.06.23 Wednesday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
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