すばらしくてNICE CHOICE

暇な時に、
本・音楽・漫画・映画の
勝手な感想を書いていきます。
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2021.02.10 Wednesday | - | - | -
絞殺魔 / The Boston Strangler

54点/100点満点中

1960年代前半に実際に起きたボストン絞殺魔事件を基にした1968年制作の犯罪映画。監督はリチャード・フライシャー。主演トニー・カーティス、客演にはヘンリー・フォンダ。テレビ放映時の題名は"ボストン絞殺魔"。

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米国ボストンを舞台に1962年6月に始まり1964年1月に収束した連続女性絞殺事件の発端から、捜査状況、犯人アルバート・デサルボの逮捕、尋問までを描く。
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ボストン絞殺魔事件は、19歳から85歳までの独身女性13人が襲われた連続殺人事件であり、作中にあるように、ちょうどジョン・F・ケネディが暗殺された1963年11月を挟む期間に起きた。そう考えると、ずいぶんと昔の事件だ。ただ、映画自体はその衝撃がまだ残っていただろう1968年に公開され、ラストには犯人とされるデサルボは、"獄中にいるが、ボストン絞殺魔として裁かれてはいない"、とテロップが出て終わる。

デサルボはその後、1973年11月に刑務所内で何者かに刺し殺されることになるが、現在はデサルボ犯人説を疑問視する意見も多いそうだ。

公開と同時期に見ていれば、前半に顕著なドキュメタリータッチの映像はその数年前の恐怖を呼び起こさせたかもしれないし、スクリーンを分割して複数の出来事を同時に見せる表現方法には斬新さを覚えたかもしれないが、凄惨な事件とはいえ約半世紀も前であり、また使い古された技法は古色蒼然とし、今見る限りではそれほどの魅力を覚えない。

本作を手に取ったのは『リベリオン -反逆者-』と同じく、映画監督の松江哲明が、"絶対怖い!ホラー映画"とのお題で挙げていたからだ。その時、映画評論家の有村昆が薦めていたのはハリウッドでリメイクもされた韓国映画『the EYE【アイ】』。

前半の冗長さがたたり、いまいちな雰囲気のまま進むのだが、終盤になるとようやく"ホラー映画"として取り上げられたのも納得の展開が待っている。デサルボ演じるトニー・カーティスが刑事役のヘンリー・フォンダに尋問され、自分の身に起きたことにようやく気づく演技は演出の妙もあり、確かに古臭ささはあるものの紛れもない恐怖ではある。
2011.04.30 Saturday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
笑いながら泣きやがれ / Crying with Laughter

50点/100点満点中

英国アカデミー賞の支部のひとつ、スコットランドでの最優秀映画賞を受賞した2009年の英国ミステリー。DVDスルー作。

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スタンドアップコメディアンのジョーイは才能はあるが、酒と麻薬に溺れる自堕落な日々を送っていた。ある日、アメリカのテレビ局プロデューサーが彼のライブを見に来るという願ってもない話が舞い込む。しかしその直前に、身に覚えのない傷害罪で逮捕されてしまう。マネージャーに保釈金を払ってもらい、どうにか釈放。最近再会したばかりの士官学校時代の同級生フランクの家に居候させてもらうのだが・・・。
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こめかみに傷を負い、足を引きずりながら舞台に登場したジョーイはネタを始める。自分がどうしてこうなってしまったのかという事の顛末を話し始めるのだ。同級生フランクと偶然再会し、ひと悶着あった大家が何者かに襲われた罪で逮捕され、フランクのところに居候する話等々。

ステージ上でマイクを握り、ジョーイが話し始めると現在と過去とが巧みに交錯し、彼が巻き込まれた不可解な事件が次第に明らかになっていく。最後には自ら封印しすっかり忘れていた事実も明るみに出てしまう。

作品の入れ子という構造自体は面白いのに、種明かしされた物語自体はとてもちゃちであり、DVDスルーとの判断も頷ける。映画というよりもテレビドラマ。
2011.04.29 Friday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
ザ・ロード / The Road

63点/100点満点中

コーエン兄弟が映画化し、アカデミー作品賞を受賞した『ノーカントリー』の原作者コーマック・マッカーシーが2006年に上梓し、ピュリッツァー賞を獲得した同名小説を、『イースタン・プロミス』のヴィゴ・モーテンセンを主演に映像化した2009年制作の終末もの。製作費2500万ドル。

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文明の崩壊から数年。太陽はぶ厚い雲に遮られ、植物は育たず、残り少ない物資を求めて人々は争っていた。その荒廃したアメリカ大陸をひたすら南を目指して旅を続ける父子の物語。
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終末ものロードムービーといえば、本作と同時期に公開されたデンゼル・ワシントン主演の『ザ・ウォーカー』を思い出す。ワシントンは聖書片手に西を目指したが、本作の人類はもう少し末期の状況にあり、人肉食が横行し、滅びゆくのを待つだけの世界が広がっている。

そんな厳しい世界を、地球規模での大災厄後に生まれた幼い息子を連れ、ヴィゴ・モーテンセン演じる"父親"がわずかな望みにすがり、南へと目指す。『マッドマックス2』的悪党らから必死に逃れ、カニバリズムハウスに迷い込み、一時の幸運に授かるも、傷を負い、病を抱えながら、ふたりはカートを押しつつ、ゆっくりと歩を進める。

原作は面白いのだと思う。どれだけの分量のある小説なのかは知らないが、それを忠実に映画化したために、おそろしく何もない、ただ生きていくのが厳しい現実だけが横たわる世界を淡々と描くだけで、リアルといえばリアルなのだろうが、映画としての魅力に欠ける。

絶望的な世界でも父親は、妻が陥った虚無に囚われないように自らを奮い立たせ、息子に正しく生きる道を説く。モーテンセンの迫真の演技はすばらしく、その苦悩と救いは十分に演じ切っている。しかし、カートを進ませるだけでは物語としての面白さには結びつかないわけで、ラストの安直な救いも、『ザ・ウォーカー』ほどのいやらしさはないものの、それでも安易だなという思いは拭いきれない。

なぜだか分からないが、終末世界に惹きつけられる身としては本作での色彩を失い、薄ぼんやりとした景色の中、電柱が斜めに傾き、彼らふたり以外動くものがいない静かな世界を見られたのは良かった。
2011.04.28 Thursday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
キラー・インサイド・ミー / The Killer Inside Me

67点/100点満点中

ノワール小説作家ジム・トンプスンの同名小説を原作にしたマイケル・ウィンターボトム監督の最新作。クライムサスペンス。主演はベン・アフレックの弟ケイシー・アフレック。共演にジェシカ・アルバとケイト・ハドソン。製作費1300万ドル。2011年公開作品。

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1950年代の西テキサスの田舎町。誰からも好かれている保安官助手のルー・フォードは、幼なじみのエイミー・スタントンとの交際も順調で、町の治安同様穏やかな日々を送っていた。ある日、住民の苦情を受け、売春婦ジョイスのもとを訪ねる。彼が保安官と分かるや態度を一変させ、ジョイスは彼に平手打ちを喰らわす。抑えがたい怒りに駆られたルーはベッドに押さえつけ激しく殴打。やがて落ち着きを取り戻すと今度は互いに激しく求め合う。それ以来、彼女との情事が日課となったルーだが、これまで心の奥底に眠っていた闇を解き放ってしまう。
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久しぶりのマイケル・ウィンターボトム作品。静かに穏やかにルー・フォードの心の内をむしばんでいく狂気を、まどろんでいるような町を舞台に陽気で無邪気な音楽と共に描かれる。その不気味さには惹かれはするのだけど、終盤になって登場するウォーカー弁護士が唐突すぎて、やや煙に巻かれたまま終わってしまう。未読の原作はきっと面白いのだろうなと思わせるが、映像化してしまうと活字に宿っていた魔法が解けてしまった印象だ。ウィンターボトムの作品は初期のをいくつか見ているが、ネタ的には面白いのに最後の詰めがどれも今一歩なイメージがある。

ケイシー・アフレックは独特の声音が素晴らしく、ルー・フォードを完全に自分のものとしている。自分でも制御できない感情に振り回されるようでいて、その実楽しんでる感もあり、人として常軌を逸してる心模様を巧みに演じている。それだけに急にスピードを上げたラストは本当にもったいない。
2011.04.27 Wednesday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
ビー・デビル / 김복남 살인사건의 전말

85点/100点満点中

監督は本作が長編デビューとなるチャン・チョイス。キム・ギドク監督の助監督として経験を積んだ人とのこと。バイオレンスサスペンス。2011年公開作品。主演は『チェイサー』のソ・ヨンヒ。

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ソウルの銀行に勤める独身女性ヘウォンは都会での生活に疲れ、幼い頃に過ごした思い出の島へと向かう。そこは住民がたった9人という絶海の孤島で、幼なじみのキム・ボンナムが昔と変わらない笑顔で出迎えてくれた。しかし、島から一度も出たことのない彼女は、その笑顔の裏で地獄のような苦しみに耐えていた。そんなボンナムから助けを求められるヘウォンだったが・・・。
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また韓国映画はすさまじい作品を作り上げてくれた。話は韓国お得意の復讐劇であり、まあ私がお隣の国の映画に求めるのはそのテーマに伴うえぐいまでの暴力描写であり、本作は完璧にそれを満たしてくれるのだけど、それだけに留まっていないで、さらにその上を行っているのがこの映画の素晴らしいところだ。

6世帯9人が暮らす島。その名も無島。年齢・性別のバランスが崩れた島では古い価値観がつきまとう。そこで生まれ育ったソ・ヨンヒ演じるキム・ボンナムは30年間理不尽な仕打ちに耐えている。いくつかのきっかけを経て、彼女は太陽を見上げ、あることを悟る。"我慢すると病気になる"。一気に噴き出した復讐の念はボンナムに鎌を持たせ、殺戮の道を歩ませる。

ボンナムの受けた苦しみが深ければ深いほど、その圧力から解放される力は巨大であり、島は紅に染まっていく。その凄惨さはただ残虐であれば良いかといえばそんなことはなく、表現として工夫が必要になる。本作にはそれがある。突き出された刃をボンナムが舐めるシーンからの一連の流れは秀逸だ。"君のバースデイにはハンティングナイフのごついやつをあげる 待ってて"というスピッツの「ナイフ」の歌詞が思わず浮かんだ。ゾクッとするほどの淫靡さと狂気。見事な描写だと思う。

"悪魔"がついに本土に解き放たれて終わるのかと思いきや、島でボンナムがガクッとうなだれた時のあの表情にはそういう真相が隠されていたのかと明らかになる予想外の展開が待ち受けていて、最後まで飽きさせない。新人離れした力量を覚える。ボンナムとヘウォンのふたりの思い出のリコーダーを使った演出も効果的だ。さらに、島と重ね合わせる最後のカットには余韻すら見事に漂わせる。

不満は作品の中身とは関係なく、例によって邦題。原題が"キム・ボンナム殺人事件の顛末"を意味し、英語題も"Bedeviled"なのに、日本でのタイトルは"ビー・デビル"とは何ともお粗末。
2011.04.27 Wednesday 23:57 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
センチュリオン / Centurion

69点/100点満点中

2010年のイギリス制作の歴史アクション。ニール・マーシャル監督の最新作となるが、日本未公開作品。製作費1200万ドル。

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西暦117年、版図を広げんとするローマ帝国は英国スコットランドに攻め込むも、ゴーラコン王率いるピクト人の激しい抵抗に遭い、膠着状態に。そこで、現地に詳しい女性エテインを道案内に、人望厚いウィリルス将軍が第9軍団を進軍させる。その途上、最前線基地を守るケントゥリオのひとりで辛くも逃げ延びたクイントゥス・ディアスが加わる。そして、ピクト人支配地に入ったところで敵襲に遭うが・・・。
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"センチュリオン"とはローマ軍軍団兵の階級のひとつ、ケントゥリオの英語読みで、日本では百人隊長と訳される。現代の歩兵小隊長に相当。非戦闘時にも軍団兵の統括を行い、規律の要だったという。本作は、いつの間にかローマの歴史からその存在を消されたローマ軍第9軍団ヒスパナをモチーフとしている。

"ニール・マーシャルが『300 <スリーハンドレッド>』に挑む!"という宣伝文句を読み、どうせ低予算映画だろうし、大丈夫なのかと心配もしたのだが、そこはさすがのニール・マーシャル監督。『300』がどうして引き合いに出されるのかよく分からないほど(今作主演のマイケル・ファスベンダーも出てたからか?)、趣の全く異なる作品に仕上げ、製作費の少なさを感じさせない。

300』は古代ギリシアの合戦を描いたが、本作はケントゥリオのクイントゥス・ディアスが生き残った仲間6人と共に敵地から味方の城まで、厳しい自然の猛威が行く手を阻む中、ピクト人の執拗な追っ手から逃げ延びる話だ。

550万ドルで制作した『ディセント』は洞穴を舞台にしたホラーということで、元から低予算を逆手に取り、前作の近未来ホラーアクション『ドゥームズデイ』はたったの1700万ドルしか予算がないのに、そうは思わせない派手なアクションと展開の巧さで安っぽさを排し、見事な手腕を発揮した。そして、今作も序盤でCGを駆使し、幾分張りぼて感はありつつも精鋭部隊の行進を生み出した後は7人のローマ兵士が逃げる話にして、97分できれいにまとめる。

7人の人物背景には時間をほとんど割かず、常に逃避行劇となるので、誰が誰なのか把握しにくく、また大事な殺陣のシーンでフラッシュバック効果がやや狙いすぎでいやらしさを覚えたりもするものの、『ドゥームズデイ』同様に健闘している。

イギリスを舞台に、前作は近未来で本作は過去。そして共に長い壁が登場し、主人公はその外を選択する。アウトローとしての生き方を描く監督に、そろそろ大きなバジェットを託し、思う存分好きな世界を描かせても面白いと思うが、ハリウッドメジャーは彼を招かないかしら。
2011.04.26 Tuesday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
007 慰めの報酬 / Quantum of Solace

73点/100点満点中

前作『カジノ・ロワイヤル』の続編となるダニエル・クレイグ版ジェームズ・ボンドの2作目(2008年)。シリーズ22作目にして初の続編となる。ポール・ハギスは今作にも脚本で名前を連ねる。製作費2億ドル。

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最愛ヴェスパーを亡くし、復讐を誓ったボンドは彼女を操っていたミスター・ホワイトを捕らえ、真相を究明すべく尋問する。世界中の有力者や諜報機関をも取り込む巨大組織の存在を知る。まずハイチに向かったボンドは、そこでカミーユという謎めいた女性と出会う。彼女を通じ、組織の幹部ドミニク・グリーンを突き止めるのだが・・・。
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144分と長かった前作から一転、製作費は5000万ドル増だけど、106分と短くなった。しかもラブシーンは一度だけで、あとはめくるめくアクションの連続。カーチェイスに始まり、屋根の上での追走劇、海上では木製ボートを疾走させ敵を蹴散らし、果ては空中戦まで。もちろん火薬の量をケチるなんてことはないし、名車も思いっきりよく廃車にさせ、風光明媚なロケ地をしっかり宣伝し、魅力的な脇役も遠慮なく殺していく。

オペラ会場シーンでの、各国の有力者が集い、劇中に会議がなされる設定は面白いのだけど、その後の舞台劇とボンドの活躍がフラッシュバックされる演出には不満だ。このシリーズには似合わないせわしなさがある。不満というか疑問といえば、パラシュートもだ。開くにはあまりに低空すぎて、どうなんだろうと思うが、まあそこは超人ボンドの映画なわけで気にするところではないのだろう。

敵組織の全容もおぼろげながら掴めてきたわけで、次回作が待たれるところではある。『カジノ・ロワイヤル』が2006年、本作が2008年とくれば、クレイグ版の第3弾はもうそろそろなのだろうけれど、一体どうなっているのだろうと検索したら、シリーズ23作目は2012年11月9日公開予定と先日発表されたようだ。次は劇場で見たい。
2011.04.22 Friday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
007 カジノ・ロワイヤル / Casino Royale

86点/100点満点中

6代目ジェームズ・ボンド、ダニエル・クレイグの初お目見え作となった007シリーズの第21弾(2006年)。原作はイアン・フレミングの007シリーズ長編第1作目の同名小説。製作費1億5000万ドル。

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殺しのライセンス"OO(ダブル・オー)"を取得すべく、昇格の最後の条件である2件の殺害を実行したジェームズ・ボンドは晴れてラインセスを取得する。そしてテロ組織の資金源を絶つという最初の任務に就く。マダガスカルで爆弾男を追い、そこから世界中のテロリストを資金面で支えるル・シッフルなる人物が一連の案件に深く関わっていることが判明。ボンドが航空機爆破を阻止したために、資金運用の当てが外れたル・シッフルはモンテネグロの"カジノ・ロワイヤル"で大勝負に出ることになり、ボンドは更なる陰謀を阻むべく現地へ向かう。
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公開当時から評判が高かったし、脚本にはポール・ハギスが名前を連ね、「スティーヴン・キングが選ぶ2006年映画トップ10」の4位に選出されていたこともあり、鑑賞したのだけど、文句なしに面白かった。

しっかりお金をかけ、豪華なスポンサーに支えられているということもあるが、飽きさせない展開と贅沢で過激なアクションがボンドを待ち受けていて、思わず身を乗り出している。144分と長いのも気にならない。オープニングロールに入る瞬間からして、クラシカルでいてとてもスタイリッシュなかっこよさがある。そこでまずしびれた。007シリーズは10年ほど前だったかに深夜に1作目から順に放映されたことがあって、多分フルでは流されず、カットもされていたのだろうが、ティモシー・ダルトン版ぐらいまでは見ている。それら歴代の作品と比較しても今回のオープニングは素晴らしい出来映えだと思う。

ボンドはマダガスカルに飛び、爆弾男を追う。最近見た映画だと『コップ・アウト』でも登場したフランス生まれの走法パルクールを利用した追走劇が繰り広げられる。これがまたすごい。この迫力は大きいスクリーンで見たかった。

大がかりなアクションシーンの間にはお決まりの美女との楽しみがあり、あられもない姿こそないものの、エヴァ・グリーンとカテリーナ・ムリーノというふたりの麗しいボンドガールが登場する。

マダガスカルでの追跡、空港でのカーアクションときて、いよいよ表題にあるカジノでのポーカーゲームは心理戦だ。"静"での戦いは"動"の時とは違い、動きに派手さがない分、難しくなるが、まあ健闘している。007シリーズの醍醐味のひとつである最新機器という小道具を直接的ではないにしろ、活躍させるのも効いている。

エヴァ・グリーン演じるヴェスパーに心を傾けていくきっかけについては正直あれだけでは弱いとは思うが、007になり立ての新米と考えれば、心に隙があるということなのだろう。

ギリギリのところで大方の謎を解決するも、頭の中では整理がつかないまままごついていると、ボンドがかっこよく決めセリフを吐いて、スルッと終わらせてしまう。ずるい気もするが、まあボンドがあまりに男前すぎて許せてしまう。


「ヴェスパー」
ボンドが職を辞しても良いと口走らせるほどに惚れ込んだ女性の名前を冠したこのマティーニのレシピはウィキペディアに詳しい。

映画内では、
ゴードンジン 3(90ml)
ウォッカ 1(30ml)
キナ・リレ 1/2(15ml)
シェイクして、レモンピール・スライスを添えた深めのシャンパングラスに注ぐ。

ボンドといえば、シェイクしたウォッカマティーニが有名だけど、このレシピは原作にあるものだという。ベルモットの代わりとなっているキナ・リレは、ボルドー産のアペリティフワインで、現在は製造されていないため、リレ社の後継銘柄リレ・ブランが代用される。
2011.04.21 Thursday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
リベリオン -反逆者- / Equilibrium

86点/100点満点中

カート・ウィマー監督・脚本、クリスチャン・ベール主演による2002年のSFアクション映画。製作費2000万ドル。

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感情は争いの要因となるために、精神に作用する薬プロジウムが開発された第3次世界大戦後の世界。国民に毎日投薬することを義務づけ、徹底した管理国家体制を敷いた。反乱者は、"クラリック"の称号を持つプレストンを中心とした警察に厳しく処罰された。ある日ガン=カタ(銃の型)の達人であるプレストンは誤ってプロジウムの瓶を割ってしまい、薬投与なしに仕事を続けてしまうことに。
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こんな面白い映画があったとは!人によってはアホ映画認定確実な作品でしかないだろうが、どのカットにもいやというほど監督の美学が刻印され、そのいびつな情熱の注がれ方によって異形の絵が生まれている。そんな作品にこそ愛すべき笑いと至福を見出す身にはたまらない1本だ。

ウィキペディアによれば、アメリカでの宣伝文句は「Forget "The Matrix"!」。1999年公開の『マトリックス』1作目は大好きな作品で、珍しく劇場に2回見に行った。衣装のスタイリッシュさや雰囲気、世界観、ガンアクションの独特さなどは似ていないこともない。本作は日本公開されたが、宣伝が不十分だったこともあり、1ヶ月ほどで打ち切られたとの話だ。しかし、その後口コミで評判が広がり、評価されるに至ったという。

私が手に取ったのも、"絶対ハマる!SF映画"とのお題で映画監督の松江哲明と映画評論家・有村昆が互いのお薦めを紹介するテレビ番組のコーナーで、松江が本作を挙げていたからだ。ちなみにこの時、有村が推したのは『サマータイムマシン・ブルース』だった。

『マトリックス』はワイヤーアクションとバレットタイムと呼ばれるカメラワークを駆使し、異形の絵を見せてくれたが、本作は中国武術を取り入れてウィマー監督自身が考案したガン=カタ(ガンの型)という華麗なガンアクションを楽しめる。厳しい訓練を積んだ"クラリック"のみが使える戦闘術であり、科学的な根拠に基づき、銃弾の当たらない位置と効果的な攻撃ポジションを見つけ、最小限の動きで素早く移動し、目にも止まらない手技と二丁拳銃で敵を制圧する。

だから、至近距離で敵に囲まれても慌てることなく一瞬のうちに殲滅してしまう。漫画だ。ただ、それがかっこいい。やや粗い編集がまた味を出している。これは大スクリーンで見たかった。

『リベリオン』世界では一切の人間的な感情が悪とされ、薬によって排除されているわけだが、その治安を守る冷酷なクラリックのひとり、主人公プレストンを演じるクリスチャン・ベールがはまり役で、気高さと同時に冷たさを併せ持つ端正な顔立ちは一切の感情を排した非情さをまとう。サイボーグではないけれど、それに近い。

その彼がレジスタンスと出会い、感情によって生み出される表現の結晶である美を愛でることを知り、少しずつ人の心を取り戻し、意識が変化していく物語となる。そのきっかけが子犬であったりするのはあまりに安直であり、、そもそもの世界観にも無理があるとは思うものの、低予算を逆手にとった演出や美術担当の頑張り、あるいはロケが行われたベルリンの雰囲気も手伝い、疑問がそれほど噴き出すことなく見られる。

それよりもガン=カタや日本刀を使った殺陣の迫力、あるいは子供を使うことでよりいやらしさが伴うサスペンス要素などがマイナス部分を打ち消す。

監督がコメンタリーモードで影響を受けた映画を列挙している。『華氏451』『ガタカ』『2300年未来への旅』『ブレイブ・ニュー・ワールド』『1984』『THX-1138』『アルファヴィル』『時計じかけのオレンジ』『意志の勝利』。彼自身が気に入っている作品であり、大なり小なり影響を受けたかもしれないが、"無関心"と"検閲"というふたつのテーマは自分だけのものと話す。

そのふたつもSF作品ではさして珍しいものではないが、やはりこの映画が素晴らしいのはテーマではなく、アクションであり見得の効いた絵にある。物語としては稚拙であっても、ガン=カタを考え出し、その魅力を最大限に発揮した銃撃シーンを映像化しただけでも十分評価されるべき作品だ。
2011.04.20 Wednesday 23:58 | 映画 | comments(2) | trackbacks(0)
レイクビュー・テラス 危険な隣人 / Lakeview Terrace

54点/100点満点中

サミュエル・L・ジャクソン主演のサスペンス映画(2008)。2008年9月22日発表の全米映画ランキングでは初登場1位を飾るも日本未公開のDVDスルー。製作費2000万ドル。

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ロサンゼルスの高台にある住宅地レイクビュー・テラスに越してきたクリスとリサの白人と黒人の新婚夫婦は、隣に住むLA市警の黒人警官エイブルから理不尽な嫌がらせを受け始める。
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主人公たちが突然いわれもない嫌がらせや迫害を受け、しかもそれを告発するのが難しい性質ものであり、次第に追い込まれていくというこの手の"不条理サスペンス"は『隣人は静かに笑う』を見て以来、すごく苦手。だから本作は向こうでチャートに入っている時から見ることはないだろうと思っていたわけだけど、「スティーヴン・キングが選ぶ2008年映画トップ10」で7位に選ばれていたこともあり、鑑賞してみた。

サミュエル・L・ジャクソン演じるエイブルの手綱は思ったよりもきつく締められているので、確かにいや〜な感じだし、不気味ではあるものの、それほど大きなストレスを覚えることなく見終えることができた。そうなると現金なもので、もっと執拗にさらにえげつなくでも彼らにしか分からないように攻め続ければ良いのにと思ってしまうから不思議だ。

彼がそうした行動を起こさせる涙まじりの強い理由を描いてしまい、同時にジャクソンの演技力のおかげもあって、表の顔も裏の顔もあるひとりの人間エイブルを誕生させていることが不条理要素の希薄に繋がっている。人間ドラマとしては悪くないが、怖い映画を期待していた身にはそれではいささか物足りない。

日本でも大きく報道され記憶に新しい、2007年のカリフォルニアの山火事が発生するなか、人種差別意識が強く短気な黒人警官エイブルと越してきたばかりの新婚カップルの確執が始まる。火が次第にレイクビュー・テラスに近づくと、関係もまた不穏さがじわじわと高まるという演出を狙うが、その連携はいまいち成功しておらず、突然火の手が忍び寄ってしまう印象に終わるのは残念。

映画と現実社会は違うし、地域によっても状況は異なるのだろうが、エイブルの14歳になる娘が学校でのエピソードとして披露しているように、白人と黒人の恋愛がいまだに色眼鏡で見られる状況にあり、肌の色による差別意識は強く残っているようだ。そのことに驚くわけではないけれど、最近はビジネス的な観点からも意識的に全ての人種を登場させる作品(そうした配慮こそが根深く残っているという証左ではあるのだろうけど)が多いので、人種差別をすでに過去のものとしていた。黒人が大統領になる時代ではあるが、ミシェル・オバマが白人だったら、結果は違っていたのかもしれない。
2011.04.19 Tuesday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
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