日本人ラッパーのキングともいえる大御所ジブラに対し、若手有望株のひとりと目され、ジブラ当人もその実力を認めていたRAU DEFが突如反旗を翻したのが先日の争い(参照:
"RAU DEF vs. ZEEBRA"への同業者の反応)だったわけだが、それを持ち出すまでもなく、ここ数年国産のヒップホップは若手の台頭が著しい。聴き手というパイが大きくなっているわけではないのに、録音機材や発表の環境が整備されてきたこともあり、演者人口は増え続け、才能豊かな若手が次々と頭角を顕している。下が膨れあがっているのに、いつまで経ってもうだつの上がらない上が大きな顔をしてのさばっている。不満の声を挙げたくなるのも頷ける話ではある。
地元でのイベントやパーティにこそヒップホップがあるとする"現場"重視の風潮は以前として強い。しかし、本場アメリカがそうであるように、遠く離れた街で暮らすアーティスト同士がインターネット上のやりとりのみで楽曲を制作し、そのままネットにアップ、またストリーミングだけではなく、時に無料配信の形で音源を発表することも増えてきた。先月だけでも単曲で200曲以上を落として聴いている。もちろん玉石混淆だが、原石を探す楽しさがある。
そんなフリーダウンロード曲やYouTube等に上げられた新曲を収集し、一手に紹介している国産ヒップホップ・ポータルサイトがある。
JPRAP.COM(β)だ。ブラックミュージックに限らず、紙媒体の音楽メディアが衰退していくなか、インターネット上のそれはますます充実していく。そのなかでも日本語ラップ好きにとって最も頼りになるサイトがJPラップコムといえる。
作品をリリースするアーティストあってのサイトではあるが、JPラップコムの主宰者benzeezyの情報収集能力は賞賛に値する。あるラッパーの呟きが強く印象に残る。彼は曲を動画サイトに投稿し、さて次はTwitterで告知しようと思ったら、すでにJPラップコムがニュースとして流していたというのだ。ベンジージーこそまさしく"dope."だ。
JPラップコムはフリーダウンロードやリリース情報をかき集めているだけではない。国産ヒップホップの裾野を広げるべく仕掛けている姿勢も評価できる。今年3月、「"dope."MC Contest」が行われた。SKY BEATSの新作ビートに募集をかけて集まった72人のMCたちがラップを乗せ、ユーチューブで一斉公開。その再生回数で勝敗を決めるというリスナー本位の画期的なコンテストだった。
前置きが長くなったが、本記事で扱うのはJPラップコム企画の第2弾となる「The Se7en Deadly Sins」だ。山梨のトラックメイカー
Otowaのビートの上で、今最も気になる若手ラッパーが1曲ずつ7日間連続で発表していくというものだ。プロジェクト名はキリスト教の用語である"七つの大罪"であり、それぞれの曲には、"Pride(傲慢)"、"Envy(嫉妬)"、"Wrath(憤怒)"、"Sloth(怠惰)"、"Greed(強欲)"、"Gluttony(暴食)"、"Lust(色欲)"という7つの罪が銘打たれている。ブラット・ピットが主演した映画『セブン』のアレだ。
「The Se7en Deadly Sins」
2011年4月25日から5月1日まで7日間連続で発表。[
DLサイト]
ベンジージーが選出したラッパーを紹介する前に、7曲全てを手掛けたトラックメイカー・オトワについて。新潟出身で現在は東京在住のラッパーLBと共に「LBとOtowa」としても活躍する彼は山梨県在住であり、昨年末に行われたL-VOKALとAKLOによるユニットBETTER HALVESのシングルリミックスコンテストでは、Amebreak賞のPRODUCER部門で見事優秀賞に輝いた実績を持つ。
LBとOtowa『FRESH BOX(β)』
2011年3月17日アップの無料配信ミックステープ。
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DLサイト]
【Gluttony】
SNEEEZE「Evolution」
ひとり目は神戸の23歳スニーズ。2010年12月から自身の
トゥイッターで洋物トラックにラップを乗せたリミックス曲を発表し始め、少しずつ注目を集めているラッパー。JPラップコムが特に推している若手であり、この夏には初めてのミックステープ『Device』がリリース予定と先日発表があったばかりだ。ベンジージーのお眼鏡にかなっただけあってラップは巧い。が、声質やフロウでS.L.A.C.Kを彷彿させる。その点だけが残念だが、まだまだ成長過程であり、試行錯誤の段階だろうし、何より常にリミックス楽曲を発表し続けている姿勢は素晴らしい。
【Greed】
KOJOE「Ii (Good)」
4月26日火曜日に登場したのはバイリンガルラッパーのコージョー。現在彼はその火曜を「
KOJOE TUESDAY」とし、毎週フリーで曲を配信している。今週で13週目となる。過去にはB.I.G JOEやDABOを客演に呼んだ楽曲もあり、楽しみな企画だ。
コージョーは17歳でニューヨークに渡り、Rawkus Recordsが2007年に行った「
Rawkus 50」という企画でデジタル配信のみのアルバムリリース経験を持つ。選出された50組の新鋭アーティストのなかで、日本人は彼ひとりだけだったという。
KOJOE『MIXED IDENTITIES 1.0』
2010年9月11日アップの無料配信ミックステープ。
[
DLサイト]
全29曲収録され、2時間を超える。正直胃もたれを覚えるが、英語と日本語を巧みに駆使したラップを存分に味わえる。曲名は忘れたが、飛行機嫌いの曲が面白かった。
【Sloth】
SALU「Sunday Afternoon」
SEEDAが
インタビューで"白帯で黒帯の実力"と評した新人ラッパー。昨年末にリリースされたSCARSのミニアルバムに抜擢され、さらにはシーダのライブに「不定職者 Remix」で客演までしている。発表されている作品がまだ少なく、実力の程ははっきりとしないものの、今回の楽曲ではそのスライミーのように鼓膜にべっとりと張り付く潰された声質が面白く、声だけでも十分目立っている。この企画に選出されたラッパーにもいえることだけど、最近の若手MCたちは軽やかにビートに乗ることは長けていても、リリックが空疎で、パンチラインを生み出せないという印象をどうしても抱いてしまうのだが、この曲の彼にはそれが当てはまらず、その前向きさがじわじわと染み込んでくる良いリリックだ。
【Lust】
GASFACE×
MATCH「Hello Sunshine」
ふたりのラッパーが参加した唯一の楽曲。ガスフェイスの経歴等は不明だが、シーダのブログに
寄稿しているMoNDoHによれば、"ham-R、RioR、Show-Kも含め、『Doc:Raw』ってクルーで"活動していたという。ハマーといえばラウ・デフをけしかけジブラとビーフさせた黒幕だし、ショックは昨年HAIIRO DE ROSSIとの
ビーフで一躍有名になったラッパーだ。RioRもまた時々フリーダウンロード曲を発表している。今となってはスタイルの異なる4人がかつて繋がっていたというのは興味深い。その彼は昨年10月に無料配信ミックステープ『
NEW TYPE VIRUS』をアップしている。現在は視聴のみ可能だ。
一方のマッチは沖縄は普天間出身の22歳。今年1月にGUNSMITH PRODUCTIONSのJIGGが全面的に関わった全国流通のファーストアルバム『Greedy』をリリースした。実績でいえば、新世代ラッパーのなかでも一歩抜きんでている。
【Pride】
MoNDoH「Every Dog Has His Day」
上でも登場したマンドゥはニューヨーク・サウスブロンクス在住のプエルトリコ人。なぜか巧みな日本語でラップするラッパーである。最初にその名前を聞いたのは2009年のシーダのアルバム『SEEDA』に先行する形で無料配信されたマイクリレー曲「God Bless You Kid」だった。同曲にも参加していたハマーの紹介だったらしい。じっくり聴くと日本語の発音にごまかしがあったりするが、それでも声に強い腰があり、耳を惹きつける。
【Envy】
KLOOZ「Livin' In The Future」
本記事を書くきっかけはなんといってもこの曲での彼のリリック、ラップが素晴らしいからだ。それだけを伝えたいがためといっても過言ではない。多分今年のベスト10曲を決めるとしたら余裕で上位にランクインする勢いだ。
日本語ラップレビューブログ「
RATID」の遼さんがラウ・デフとジブラのビーフ時に呟いていた
指摘が的確だ。"新世代対旧世代という図式で見るなら、ZEEBRAたちベテランが必死こいて作った駄曲「Butterfly City」をAKLO達がサクッとジャックしてあっさり飛び越えていったあの日から勝負は決してる"。
その「Butterfly City Remix」は権利者からの申し立てで現在はユーチューブから削除されている。アクロとクルーズ、それに彼らの仲間のBANでものの見事にビートを乗りこなし、原曲の潜在能力を大きく引き出していただけに残念だ。代わりといってはなんだが、ダボとKREVA、ANARCHYという不思議な組み合わせだった「I REP」もクルーズとアクロはリミックスしていて、それはまだ
ユーチューブにアップされているので、リンクを張っておく。すでに彼らふたりの楽曲のようだ。
クルーズの良さは軽さだ。"軽薄"には侮蔑の意味が含まれてしまうが、軽妙さや軽やかさ、いい意味で彼のラップは軽い。本作にも、"だからいわれんだ KOOZY浮いてない?"というリリックがある。もちろん、その前の節の、"右肩上がり過ぎ 地に足着いてない"を受けてのものだが、彼のミックステープのジャケットも下敷きにしている発言だろうし、ついでに彼の日本語ラップ界における立ち位置をも表していそうだ。
彼はそんな指摘を物ともせずに、"さぁ乗りなHomeis 燃料は夢だけ / あのStreetDream 俺達が証明"といってのける。"オレ夢見るため 起きるEveryday"。こんなにまで自信満々に突き進まれてしまうと、惚れ込むしかないだろう。
シーダが本格的に評価され始めた2000年代後半は、やさぐれた生活や不幸な幼少期という"真実"の物語を売りにしたラッパーが多く出てきたが、今はその反動やアメリカの影響もあり、純粋に技術だけを武器にしたラップが増えてきている。日本語でラップすることは難しいとするヒップホップ黎明期の言説を余裕で過去のものとするほど、彼らはビートに的確に日本語を当てはめ、グルーヴをつくる。唯一の難点はラップの内容が乏しい傾向にあることだ。パンチラインと呼ばれる強く耳を惹きつける一節も少なめだ。
しかし、クルーズは違う。きらめく言葉を振りまき、重たい不幸人生に囚われることなく、華麗に飛翔する。ビートへの適性と言葉のセンスだけで聴く者の首を振らせるのだ。だからかっこいい。
KLOOZ『NO GRAVITY』
2010年4月23日アップの無料配信ミックステープ。
[
DLサイト(直リン)][
視聴(bandcamp)]
必聴盤。本作を聴いていない日本語ラップファンがいるとしたら信じられない。フリーDLでここまでの品質はすごいのひと言。もちろん洋楽トラックのリミックスが多いわけだけど、このしなやかなラップを前にすると"KLOOZY浮いてない?"って言葉がこれほど当てはまることもないなと思ってしまう。
【Wrath】
YAMANE「Freestyle」
最終日5月1日はLOW HIGH WHO? PRODUCTION所属のヤマネだ。かつてはヒップホップグループTOP SHELFの一員として活躍し、『アングラの詩的な進化論』にも参加している。2008年にグループは解散、以後はソロとして4枚のフリーダウンロードアルバムを発表し、昨年初の全国流通となるファーストアルバム『アオソラ』リリース。当時のロウ・ハイ・フー?所属のアーティストとしては珍しく外に出ていくタイプのようで、シーダとDJ ISSOによる「CONCRETE GREEN」シリーズのVol.6から参加している。MINTが2009年発表した「
SUPER FREE」にも加わっていて、最初は「少年大人」のヤマネと同一人物と気づかなかった。
エフェクトをかけたマシンボイスも特徴的だが、古いSF映画のPC音声のように独特の区切りがあるラップも面白い。ただ、それが奇を衒っているとは映らず、意外に耳馴染みよく聴かせてしまうあたりは実力なのだろう。
山根顕人『「名前」』
2010年9月11日アップの4枚目の無料配信アルバム。
[
DLサイト]
現在ロウ・ハイ・フー?の"FREEDOWNLOADS"ページで落とせるヤマネの作品は本作のみだが、このコーナーには他にもELOQやasamiyaのフリー作品をダウンロードできる。イエローQも注目のラッパーのひとりだし、またアサミヤは素敵な音を紡ぐトラックメイカーであり、それぞれ聴き応えのある作品に仕上がっている。
「The Se7en Deadly Sins Lil'諭吉 Remixies」
2011年5月2日から5月8日まで7日間連続で発表。[
DLサイト]
間髪入れずに始まったのが
Lil'諭吉による「The Se7en Deadly Sins」全7曲のリミックス。リル諭吉はいわずと知れたCherry Brownのトラックメイカー名義であり、他にもYuuyu Aensland名義を使い分け、さらにはBIG RONの弟RICHEE率いる3人組ヒップホップグループJACK RABBITZのメンバーでもある。今年2月にグループのファーストアルバムを出している。今では猫も杓子も状態の無料配信ミックステープだが、その草分け的存在であり、すでに5本の作品を発表している。彼の良さはアメリカの音とラップを直輸入させつつも、ヒップホップの人とも思えない趣味(アイドルやアニメ)を加味することで、全く異質な世界観を創り上げることだ。聴けばすぐに彼と分かるラップも魅力。
Cherry Brown『Where's Tha Lovvve :<?』
2010年8月21日アップの5本目の無料配信ミックステープ。
[
DLサイト]
聴けば分かるがとにかく自分が好きなものに対して素直だ。その自由さが聴く側にも伝わるから自然と笑顔になってしまう。無邪気ともいえる制作スタンスは簡単そうでいて、しかしそれに品質を伴わせるとなるとかなり難しいと思う。チェリー・ブラウンのミックステープにはその奇跡がある。予定されているファーストソロアルバムは楽しみだが、今のスタンスのままでいて欲しいとも思ってしまう。なお、他の4本のミックステープはブログ横からDL可能。5本目以降の曲でいうと、「I'm 沢尻エリカ」[
YouTube]やクルーズとの「ツンツンミクチャン」[
YouTube]が最高だ。
「The Se7en Deadly Sins Acapellas」
2011年5月9日、ヒップホップ中心の音楽配信サイト
Dr.PAPでアカペラの無料配信が始まる。
「The Se7en Deadly Sins Dada Remixies」
2011年5月10日から17日にかけてアップされたリミックス。[
DLサイト]
Dadaは1ヶ月ほど前にも「頭狂いそうだから歌う」というラップ曲を無料配信している[
DLサイト]。落ち着いた声質と共に歌メロが心地良い楽曲だったが、今回はトラックメイカーとしての才能をいかんなく発揮。魅力的なメロディを着せたリミックスのおかげもあって、正直オトワやリル諭吉のトラックよりも琴線に響く音が多かった。
5月18日には7曲分のインストが1週間限定で配信されたが、こちらは現在終了している。
「The Se7en Deadly Sins O-DELA Remixies」
2011年5月16日にわずか6時間限定で無料配信されたリミックス集。[
blog]視聴のみ可能
DJ オカワリ a.k.a O-DELAは名古屋を拠点に活躍する20歳のトラックメイカー。ヒップホップグループ國枝URBAN CAMPの一員でもあり、自身の
ブログにて隔週で「FREE ORDER」と題されたミックステープを精力的に無料配信している。シンセ音をベースにしているのは他のリミックスと同じだが、一番サンプリング色が強い。SALUのラップを一番上手に調理している。アコースティックギターの音色を生かしたトラックは、あの曲のフックがこんなにもポップなものだったのかと驚かせてくれる。全体的にビートの線が細いのが残念な点だけど、一番もったいないのはたった6時間しか無料配信させなかったことだ。良リミックスだらけなのだからもっと広く聴かれるようにすればいいのに。
翌日の17日からは7曲分のインストが配信されている。[
DLサイト]
「The Se7en Deadly Sins SAI BEATZ TAKASAKA Remixies」
2011年5月19日から順にアップされている現在進行形のリミックス。
埼玉在住のトラックメイカー
SAI BEATZによるもので、以下にリンク先を列挙するが、それぞれ1週間限定での無料配信となるため、すでに期限切れのものもあるかもしれない。
SNEEEZE「Evolution SAI BEATZ TAKASAKA Remix」[
DLサイト]
KOJOE「Ii (Good) SAI BEATZ TAKASAKA Remix」[
DLサイト]
SALU「Sunday Afternoon SAI BEATZ TAKASAKA Remix」[
DLサイト]
GASFACE×MATCH「Hello Sunshine SAI BEATZ TAKASAKA Remix」[
DLサイト]
MoNDoH「Every Dog Has His Day SAI BEATZ TAKASAKA Remix」[
DLサイト]
KLOOZ「Livin' In The Future SAI BEATZ TAKASAKA REMIX」[
DLサイト]
本シリーズの数日前にはクレバの最新シングルのリミックスも発表していたが、とにかくバランスの良いリミックスをする人で、ビートも太く、安心感がある。7曲の中で最も不満を覚えたガスフェイス・マッチ組の「Hello Sunshine」を実はかっこいいラップだったのかもと思わせてくれたのは彼だ。
「The Se7en Deadly Sins Remixies」
7曲全てを手掛けるのではなく単発でリミックスされたものを以下でまとめる。動画サイト等にアップされ、ストリーミングのみの作品も多々あるのかもしれないが、私はダウンロードし、PCの前ではなく自分のiPodで自分の時間に聴きたいのでそういった視聴のみの作品は普段から聴くことが少ない。よって、無料配信されている楽曲のみの列記となる。
・SNEEEZE「Evolution Remix」[
DLサイト]
・KLOOZ「Livin' In The Future Remix」[
DLサイト]
横浜在住のトラックメイカー
GESUBEATZによる、今回一番早く公開されたリミックス。KREVAのシングル曲のリミックスなどもいち早くアップするなど最近よく目にする。名前とは違い、直球でかっこいい音を出す。オリジナルのインスト曲には繊細さもあり、気になるトラックメイカーだ。
・SNEEEZE「Evolution (stenfisk Remix)」[
YouTube]残念ながらDLリンクは期限切れ
兵庫県西宮市のトラックメイカー兼ラッパー
stenfisk。神戸の神門と繋がりがあるよう。先日発表したキングギドラの「空からの力 Remix」もなかなか良かった。[
DLサイト]こちらはまだ可能。
・SNEEEZE「えヴぉりゅーしょん (Evolution ばにしゅ☆でじょんRemix)」[
DLサイト]
兵庫県は姫路市のトラックメイカー兼ラッパーの
Da.Iによるリミックス。MC芸術歌とのヒップホップデュオ・ツインビーで「CONCRETE GREEN」シリーズにも参加していたらしいが、私が知ったのは昨年無料配信されたミックステープ『Remake Top Chart Song』でだった。
Da.I『Remake Top Chart Song』
2010年9月14日アップの無料配信ミックステープ。
[
DLサイト]
2009年のオリコンシングルチャートで月間1位の12曲だけを素材にトラックを構築してしまったという作品。元ネタの面影はほとんどなく、そういう意味で物足りなさはあるものの、面白い試みだ。地元姫路のラッパーが多く参加しているのも新鮮。
・KOJOE「Ii (Beats Zan Remix)」[
DLサイト]
・MoNDoH「Every Dog Has His Day (Beats Zan Remix)」[
DLサイト]
18歳のトラックメイカー
Beatz Zanによるリミックス。
・KLOOZ「Livin' in the future Remix」[
DLサイト]
手掛けたのは栃木県は佐野市で暮らす26歳のトラックメイカー
DJ CRUNK a.k.a IWACCHI。クルーズのリミックスは数多くあり、ラップも強度があるからどれも楽しんで聴けるのだけど、レトロフューチャーな趣がある本作が一番好き。これすごくいい。
・KLOOZ「Livin' In The Future (soratok Remix) (Update Ver.)」[
DLサイト]
詳細不明のトラックメイカーによるリミックス。
最後は今回の"七つの大罪"プロジェクトを批判した曲を。
・MM Jackerz(
mikE maTida×
Morrow)「Livin' In The Future Remix」[
DLサイト]
モローが、"っつーか退屈だったぜ7日間"と切り出せば、マイク・マティーダは"題材は確か七つの大罪? ヘタレがシーンに不法滞在w / オレのこのキャラは計算外? 許すぜ、七つの軽犯罪w"と腐しながら、オトワ製トラックにさらりと乗ってしまった1曲。こういう遊びは楽しい。
モローはクルーズとアクロがやっていたお遊び「
Like A Game」でもRioRと共に参加していた東京のラッパー[
YouTube]。オトワがプロデューサー部門で優秀賞を勝ち取ったBETTER HALVESのシングル・リミックスコンテストで、モローもまたAmebreak賞MC部門で栄冠に輝いている。一方、マイク・マティーダは大分出身で現在東京は杉並在住のソロラッパー。昨年は3本のミックステープを発表し、「Suginami Livin'」という杉並アンセムを作った男だ。ラップもかっこいいけど、硬軟織り交ぜたリリックが持ち味。
mikE maTida『Hey Mikee Vol.3』
2010年12月30日アップの3本目の無料配信ミックステープ
[
DLサイト]
上記した「Suginami Livin'」収録の『Hey Mikee! Vol.1: Deluxe Edition』は
こちらから。さらに『Hey! Mikee Vol.2』も
DL可能!3枚ともかなりの力作。
今回「The Se7en Deadly Sins」について書き始めたら、また無駄に長くなってしまったわけだけど、でも気づいたら昨年リリースされた刺激的なフリーダウンロード・ミックステープをほとんど書き連ねていた。これこそがベンジージーの戦略なのかもしれない。それはそれとして、ここまできたらハマーとアクロの作品も付け足そう。
ハマー自身は今回の企画に対して(おそらく)、モローやマイク・マティーダとは違い、本気の中傷
ツイートをしている。"ギャグでラップ再開しよかな。若い世代みたいなのもみんな結局つるみだして、きもいことになってるし笑 ノリでまとめて全滅させよう♪最近カスな曲フリーでネットにバンバン上げるの君らの間で流行ってるみたいだけど、何それ?お前ら一人もSWAGなやつなんかいねーし笑 本気と書いてマジで"。そのぶれない姿勢、まさにswag。
ham-R『Stay Hungry Stay Foolish』
2010年9月11日アップの1本目の無料配信ミックステープ。
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DLサイト]
ham-R『Seven Demos』
2010年10月11日アップの2本目の無料配信ミックステープ。
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DJ RIE & ham-R『Free Lil Wayne Mash Up』
2010年11月5日アップの3本目の無料配信ミックステープ。[
DLサイト]
ham-R×Y.G.S.P『Future Vintage』
2010年11月20日アップの4本目の無料配信ミックステープ。
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DLサイト]
ham-R『Milestones』
2007年11月27日アップの3本目の無料配信ミックステープ。[
DLサイト]
昨年9月に1本目のミックステープ『Stay Hungry Stay Foolish』を出してからの
ham-Rの快進撃は驚異だった。それまではシーダ周辺のアーティストという認識だったわけだけど、多彩なフロウを駆使したラップ、鋭いトゲのあるリリック、思わず笑ってしまうストーリーテリング、トラックメイクの才まで持ち合わせている。しかもほぼ毎月出していたわけだが、それぞれに別のテーマを掲げ、毎回それまでのイメージを刷新させる企画力があった。圧倒されっぱなしだ。思えば9月、10月、11月は至福の3ヶ月だったといえる。
『Stay Hungry Stay Foolish』から2本目『Seven Demos』への変化にはのけぞったし、その後の『Free Lil Wayne Mash Up』にそういうことかと納得し、『Future Vintage』では、ICE DYNASTYからアクロ、マンドゥ、ZONE THE DARKNESS、SQUASH SQUAD、はてはSky-Hiまで参加させた豪華な1枚になった。尖りまくりのY.G.S.Pのビートも最高だ。そのわずか1週間後にはそれまでのシンセ音厚めの楽曲から音数を一気に少なくし、マイルス・デイヴィスの上でラップするスキットを挿入した『Milestones』を発表。予想の斜め上を行くアーティストだと分かっていたのにまたもや目を回した。
完璧に地ならしをした2010年後半だったわけで、2011年は正規版リリースかと思ったら、"RAPはとっくに飽きています やはり一瞬マイブームみたいな感じでした …時間かけなくてよかったあ"と呟き(2月21日)、がっかりさせられた。ただ早くも4月末には新しい
レーベルを立ち上げ、ラップも再開するとツイート。8月リリースのアルバム告知までしている。ラウ・デフとのビーフでジブラすらも手のひらで転がした策士ぶりからも、今年はさらに楽しませてくれそうだ。
AKLO『2.0』
2010年2月9日アップの2本目の無料配信ミックステープ。[
DLサイト]
AKLOは単曲でアップされた曲はかっこいいし、楽しみにしているのだけど、本作はピンと来なかった。ボーナストラックが良かったぐらい。2009年の1本目は
ここでDL可能。