さて、2日目。
昨日は辛うじて天気は持ちこたえたが、この日は朝から降る気満々の空模様。行くことが義務になってないかと自問自答しないわけでもないけど、傘を手に出発。家でダラダラし過ぎたためか、車中でTwitterをチェックしたところ、すでにICE BAHNが終わったことを知る。代々木第一体育館を過ぎた辺りで、"Yes, yes, yes, ya'll"と聞こえてくる。14時35分到着。
【孔雀】 〜14:46
メインステージでライブ中だったのは町田を拠点に活動する若手ヒップホップグループの孔雀。ついこの間ミニアルバムを出したばかりだ。メンバーのひとり、菊丸は昨年のU20 MCバトルの優勝者ということで
昨日はソロでライブを披露していたが、今日はグループでの出演。4MC1DJ1MPC。横一列となり、広いステージをものともせずに溌剌としたラップを聴かせていた。前列4人のキャラ立ちは悪くないし、フックをおろそかにしない楽曲も良い印象を覚える。訴求力のあるポップさを持ちながらも、アングラ臭さを忘れず、バランス感覚が良さそう。これからのグループ。
【Pentaphonic】 14:46〜15:04
赤、黄色、緑と色違いのシャツを着て登場したのはペンタフォニック。3MC1DJ。ポップなラップを嫌ういかにもなBボーイたちがアリーナエリアから引き上げていく。誰もが楽しめるラップを信条としているのだろうし、言葉が軽いことへの指摘は反対に彼らへの褒め言葉になるのだろう。これもこれでヒップホップのひとつのスタイルだ。ただ、フリースタイルバトルでも名を馳せている抹(イエロー担当)と他のふたりとの実力差があるのは気になる。
【DJ YUTAKA feat. 晋平太】 15:04〜15:30
この日最初のDJユタカのDJプレイ。途中からサイドMCとして晋平太ともうひとり名前の知らないラッパーが現れ、適度に盛り上げる。
【晋平太】 15:15〜15:29
晋平太がDJブースからステージ中央に進み始めた辺りからついに雨が降り始めた。晋平太のラップは間違いなく巧い。発声だとかフロウだとか振る舞いはもちろん、感情や使命感を素直に吐き出す言葉には人生という重みをしっかり乗せられるようになっている。でも、ワクワクさせられない。不思議。
【DJ BEAT】 15:30〜15:53
DJタイムはやはりアリーナエリアに隙間が目立ち始める。流してる音楽自体は客にこびるでもなく、お高く留まることもなく、単純に楽しめる流れを作ってはいるのだけど、アーティストライブが終わった途端にサッと引いていく。雨も弱まり始めたので、昨日よりは込み合う会場をグルッと回ってみた。
歩道橋の降り口から左奥のメインステージを眺めた図。この時点でも
昨日よりは人出があるが、時間がもう少し進むともっと増えた。
上と同じく16時過ぎ。
車には全く興味を覚えないが、Bボーイには必須のラグジュアリーカー。毎年数台並んでる。
Tシャツにペインティング。美的価値観はひとそれぞれ。
お布施所。
被災地石巻のラッパー・楽団ひとりのブース。
若手のCD-R作品の即席販売所。気づいた時にはほとんどがすでに売り切れていた。こういうのは大事だ。MCバトルに出場して、かっこいいラップを16小節分だけでも披露できれば、ステージ上から売り場を告知するだけで売り切りも可能そう。式部のが欲しかった。
そこらじゅうにラッパーがいるのですぐさまサイファー。Bボーイパーク名物。
これまたBボーイパーク名物の飲み終えた空き缶を灰皿替わりにして、そのまま知らんぷり。
【DAG FORCE】 15:53〜16:10
再びアーティストライブへ。ひとり目は飛騨高山出身のダグ・フォース。彼のライブはこれで何回か見たことになるが、毎回冒頭に昨晩の酒が残り二日酔いだと話してから始める。その申告には何か意味があるのだろうか。ブルーズともいえる哀愁を帯びたメロディを織り込みながら、直接心に訴えかけるラップはもっと評価されても良さそうとは見るたびに思うのだけど、私の琴線には少しも引っかからず、今年もケバブ屋台に向かった。
【MR★黄鬼】 16:10〜
続いて飛び出してきた1MCは、ミスター★黄鬼。黄色い鬼で"キキ"だ。私は元気ですのかわいらしいキキとは大違い。無名でありながら、外見のあまりのコテコテぶりに良識あるBボーイたちは三々五々散っていく。中身もお粗末。2曲目で、それまでの強面スタイルから突然ポエマーになったのを笑ったところで、ダンスエリア方面を散歩することに。
アリーナフロア入口に張られていたタイムテーブル。あるならもっと目立つ所に大きく張り出さないと。昨日もあったのかもしれないけれど、全く気づかなかった。これによると、一番手がアイスバーンで、次にPRISTが出たようだ。
ダンスエリアの裏でひっそりと。ヒップホップ文化の一翼を担っているにも関わらず、普段は堂々と描けないのだから、こういう時こそ大々的に活躍できる場所を提供すればいいのに。
この日は団体戦だったのかな。相変わらずいつ行っても熱気に溢れている。
【SHUN】 〜16:36
16時23分頃メインステージに戻ってくると、すでに次のラッパーが舞台に上がっていた。昨日のアンダー20 MCバトルにも出場していた大阪のシュン。この間出たミニアルバムでDJユタカからトラック提供されていたこともソロ時間を持てたことに関係しているのだろうか。ラップから声質、ステージアクションに至るまでKREVAそのもの。後半で同じくU20 MCバトルに出場しているACEのいるヒップホップデュオSound Luckが客演で登場した。
【TETRAD THE GANG OF FOUR】 16:37〜16:46
シュンのステージの途中からDJ J-SCHEMEがブースで準備していたので、次がテトラド・ザ・ギャング・オブ・フォーだということは分かっていたが、いざ始まってみると出てきたラッパーはSperbひとりだけ。それでもテトラドだということでアリーナエリアがどんどん埋まっていく。ライブ時間の半分を過ぎた辺りでようやく残りの3人もステージに現れた。スパーブは何か罰ゲームでもやらされていたのだろうか。
4人揃えば、ラップにそれなりの音圧が生まれ、さすがNIPPS率いるグループだと思えるのだけど、昨年までの持ち時間を守らないだらだらとしたライブの反動なのか、たった1曲、時間にして10分もやらずに引き上げてしまった。
【楽団ひとり】 16:46〜17:02
続いて勢い良く飛び出してきたのは3月に起きた東日本大地震で甚大な被害を受けた石巻在住のラッパー楽団ひとり。生で聴く彼のラップは、初作『
NOT FOR SALE』の印象通りに日本語ラップ好きのためのラップであり、そういう意味ではこの日一番のアンダーグラウンド臭がした。しかし、同郷の友人KICK-O-MANが助太刀に加わり披露された震災を歌った「NORTH EAST COMPLEX part 3.11」以降は、それまでの閉じた世界観から日本全体が共有できる感情を生み出し、降り出した小雨の中、観客もしっかりと聴き入っていた。
声はよく出ていたし、広いステージにおびえることなく、正面から向き合った堂々としたパフォーマンスだった。ヒップホップが廃れていく町の現状を憂えた曲にしても伝えたいテーマは確固として抱いているラッパーではある。大舞台でも初めて聴く人にリリックを届けるだけの力量が備わっていることは証明されたわけで、今回の出場を通して彼がより注目されるようになれば面白い。
楽団ひとり『UPDATED』
2011年3月25日アップの無料配信ミックステープ。→
ここから
『
NOT FOR SALE』のリミックス集になっていて、話題の若手トラックメイカーらが手掛けている。曲数が少なくなった分テーマが凝縮され、オリジナルよりも聴きやすい。彼の出世作であり賛否両論を呼んだYOU THE ROCK★のリミックス「大麻取締法」がボーナストラックとして収録されている。
【CRAZY-A & DJ YUTAKA】 17:02〜17:05
震災後に現地でラップをし続けているラッパーがいると知り、Bボーイパークに招待したとクレイジーAが説明。本当は楽団ひとりのライブ前に出てきて紹介したかったらしいが、手違いで前後してしまったとのこと。楽団ひとりが最初に注目されたのは昨年ユーザロックが逮捕された時に、YouTube上で発表した「HOO! EI! HO! '98」のリミックス「大麻取締法」だったわけだけど、同曲で彼はSEEDAや漢、ILL-BOSSTIONOの名前まで挙げて、ヒップホップ界にはびこる大麻礼賛の風潮を批判してみせた。クレイジーAはこの曲も聴いた上での出演依頼だったのかな。
【LUCK-END】 17:05〜17:18
8本マイクの大所帯グループ。まだ活動していたのか。フックでの合唱はさすがに力強いが、ひとりずつマイクを握るヴァースになると途端に腰砕けとなる。
【DJ YUTAKA】 17:18〜17:26
2回目のDJプレイ。ライブでないと分かると見る間のうちにアリーナエリアにスペースができていく。
【KIN】 17:26〜17:36
活動休止中のMELLOW YELLOWのキンが完全な飛び入りで登場。誰だこいつは的な雰囲気に一瞬なっても、少しも動じることなく堂々とステージングしていく様はまさにベテランの貫録。しかし、やけに黒い。最後は、"次はMICHO 一丁4649"といい残して軽やかに去って行ったのにはさすがに驚きを禁じ得なかった。韻というレベルではなく、ただの親父ギャグだ。
【MICHO】 17:37〜17:50
先日フリーダウンロード・ミックステープ『恨み節』を発表したばかりの女性ラッパー。バックDJにはDJビート。サイドMCはミックステープ同様にひたすら野太い声で騒ぎ、煽り続けるJOE IRON。南部の音を基盤にしたフィーメルラッパーという立ち位置は興味深いものの、ミックステープを聴けば分かるように実力はないに等しい。
【YA-KYIM】 17:50〜17:59
Bボーイパークといえば、彼女たちヤキーム。このイベントと出会い、刺激され、グループを結成したという美談を売りに毎年のように出ている。が、センターに立つボーカルの声は弱く、また向かって左に位置するラップ担当もLEFT EYEには程遠く、唯一見応えあるのが今年も麗しいダンスを披露した右側担当のクールビューティだ。
【CLIFF EDGE】 17:59〜18:08
今年の出演陣の中で楽しみにしていたひとつが彼らだ。音楽ランキングで活躍している彼らはいわゆる日本語ラップは勘定されることはまずないといっていい。そんなグループが出演する際は、今までのBボーイパークならば土曜日が定番だったが、夕闇迫る日曜のこの位置での出番となったのは面白い。物珍しさも手伝ったのか、ポップグループの登場にも客は減らない。
曲そのものはストリングスで味付けしたいかにもな売れ線。ヴァースよりもフックに重きを置き、そのフックではタオルを頭上でグルグル回してみせた。やはり異質だ。生で見れば、作品からは伝わりにくいラッパーとしての本当の実力が分かるかなと期待している部分もあったが、かなり微妙だった。そんな彼らを食い入るように見ていたペンタフォニックの4人は何を考えながら見ていたのだろう。
【G.K.MARYAN】 18:08〜18:20
クリフ・エッジのファンとおぼしき若い女性の一群が引いた後に、のっそり現れたのがみんなのラップアイドル・G.K.マーヤン。「証言」のトラックが鳴ると、そこら中からBボーイたちが常夜灯に群がる蛾のように集まってくる。小林雅史というひとりの男がG.K.マーヤンと名乗ることで、ラップは少しも進歩せずとも、有能な仲間を持ち、必死でしがみついていれば、毎年Bボーイパークのメインステージに立つことができることを彼の広い背中が無言で語る。同時に、それはラッパーを目指す若手の励みにもなるだろう。腹からしっかり声を出し、身の丈に合った分かりやすい言葉を使いラップすることは技術よりもまず大切なことだと、彼が身を以て証明していた。
【PONY】 18:21〜18:36
stillichimiyaのポニー。この時間での出演とはずいぶんと出世した感があるものの、その器が備わっているとは思えない。下手ではないけど、聴いていてあまり面白くない。後半にD.S.Sが参加し、
昨日と同じく「HARDWORKING」と、他に「THE TRUTH」の2曲を披露していた。
【K DUB SHINE】 18:36〜18:57
今年のアーティストライブのトリはケーダブシャイン。バックDJは当然DJ OASISなので、ZEEBRA抜きのキングギドラ、またの名はradio aktive projeqtだ。悠然とできた瞬間から観客エリア前方は大盛り上がり。ケーダブシャインのラップに全てかぶせていく強者までいた。同じく前列で見た
2009年のBボーイパークのジブラのソロと同じ熱狂具合だった。ラップでこんなに盛り上げられるのかと感心する。
それだけ歓迎されれば、演者も気を良くするのだろう。6月に同ステージで見た時よりもケーダブシャインは声がよく出ていた(反対にDJオアシスがモゴモゴとしたラップで、マイク持つDJの名が泣いていた)。社会批判MCまでご機嫌に長々と開陳。雨は強くなるばかりなのに、反比例するように歓声が上がる。見ている位置的に確認できなかったが、2日間で一番集客したのではないだろうか。
期待していたキングギドラの再結成はジブラがやって来なかったために実現せず、ふたりだけの「アポカリプスナウ」となったのは残念。金の取れるグループだけに無料のイベントではもったいないのだろう。
【エキシビジョンマッチ(PONY vs. 菊丸)】 18:58〜19:08
昨日のNONKEYに代わって、司会進行はダグ・フォースと晋平太のふたり。準決勝を行う前にまずはエキシビジョンマッチとして昨年のアンダー20 MCバトルの優勝者・菊丸と今年1月に行われた「BBOY PARK MC BATTLE 2011 冬の陣」のチャンピオン・ポニーとの統一戦が開かれた。
先攻ポニーは気持ちが作れないのか、"ディスるだけのバトル"は嫌だと面と向かわず、フロウに逃げようとする。しかし、菊丸は、"聴きたくないんだよ昔の話"とばっさり切り捨て、先輩に闘争本能を持てよと促す。それでもつばぜり合いとまではならず、2本を終えたところで、晋平太が"まだまだでしょ"と断罪。さらには観客として来ていたR指定を名指しして、"R指定、しょぼいよな?"とむちゃぶり。続けてステージのふたりに向かって、"おい!お前ら本気出せよ!お前らが本気出さないとフリースタイラーがなめられるんだよ!"と煽った。この時の晋平太がこの日一番光っていたし、その後のふたりのバトルよりも盛り上げていた。"エキシビジョンだから火傷しないと思ってるだろうけど、悪いけど、そんなの関係ないよ"。自分がやらないものだからいいたい放題。
勝者ポニー。
【U20 MC BATTLE 準決勝〜決勝】 19:08〜19:33
先輩方の中途半端な戦いが終わったところで、アンダー20 MCバトルはいよいよ準決勝へ。
<ACE vs. 延暦G>
ストップ・ザ・延暦Gはやはりエースだった。軟体動物のごとくエースの体にまとわりつき、予想通り接戦にはなったけれど、ぎりぎりで突き放した形。
<たまこぅ vs. えじゅく>
共に自分のスタイルを出した後の2本目、たまこぅは開口一番、"オイ オイ オタクとかどうでもええねん ラップがうまいかどうか"と巻き舌気味に関西弁で凄んでみせる。もちろん眼鏡をかけ、ひょろっとした体型の彼に迫力はないのだけど、別の意味で絡んではいけない危険な雰囲気が漂い、不思議な存在感で攻めていた。勝者たまこぅ。
<たまこぅ vs. ACE>
ついに決勝戦。バトル前のビートが流される時に、臨戦態勢に入ったたまこぅが脇目も振らず相手を睨みつけるポーズがいい。まず最初に、"東京対関西の決戦"で盛り上げた。が、これがいけなかった。幸先よくポイントを得たはずだったが、エースは、"何が東京と関西 俺ブラジルなの 分けわからん"と間違いを指摘してしまった。この後の優勝フリースタイルで1歳の時に来日し、ブラジル生まれの東京育ちと明かしてるわけで、あながち間違いともいえないのだけど、これでたまこぅのリズムが狂った。一方のエースは、"俺は勝って賞金でみんなにご奉仕"と意気軒高だ。
互いに2本終えたところで、まず1回目の判定。たまこぅへの歓声は皆無。
先攻後攻を入れ替えての決勝後半1本目では、エースはたまこぅにエールを送る余裕すらみせた。たまこぅはまたもや大阪・東京のフレーズを挟み込んでしまい、動揺を隠せない。後攻という優位を生かせず、自滅してしまった印象だ。悪くはなかった。ミスともいえない言葉のかけ違いを切り崩せずにずるずるといってしまった。
【BBOY BATTLE 決勝】 19:34〜19:59
東京は江戸川のチームと大阪のチームの戦い。ステージの床で回ったり跳ねたりポーズを決めたりするものだから、肝心なところが見えなかったりもするのだけど、でも熱気が伝わってくる。MCバトルよりも体を使う勝負なわけで、熱くなりすぎて諍いが起こりそうになる場面もあって、そのたびに周りが止めに入ったりして、ダンス以外のところでも見応えがある。
より魅せる踊りを展開していた大阪が優勝。
【閉会の挨拶】 19:59〜20:00
毎度お馴染みのクレイジーAの"これにて終了〜"で今年のBボーイパークも閉幕。
今年は久し振りに雨に降られたBボーイパークになったが、何はともあれ無事終了。行けば行ったで楽しいと思えるのは毎年のことだけど、若い才能に焦点を当てた今年も十分堪能できた。
やはり不満も多くある。ひとつは事前の情報の少なさだ。開催されるのかどうかすら直前になるまで分からなかった。7月中旬にトゥイッターでDJユタカがBボーイパークに関する見解を呟いているのを見て、今年も行うのかと初めて確認できたのだ。その後のホームページの作成も遅かったし、また最近は発表するようになっていたタイムテーブルもなかった。前日になってようやく出演者が公表された。さながら2009年以前のようだ。
ただ、実行委員であるDJユタカの呟きからもそれは意図したものであり、同時に限界もあったのだろうと推測される。
"今年のBBOY PARKは本当にやりたい奴だけでやれば良いと思ってる、だって元はホコ天のブロックパーティーだったんだしね,,,,,,そろそろ原点に戻る事が必要なんじゃない,,,,?もちろん俺は参加するけどね!Y鷹。" 2011年7月17日のDJユタカの
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"いよいよBBOY PARKまで後一週間,,,,,今年は誰が出ると言うよりも単純にHIPHOPを楽しみたいと言う事でやって行きたい!来年15周年と言う事で今年はあくまでも基本に戻るよ!楽しみたい人だけでも来てください!Y鷹。" 2011年8月15日のDJユタカの
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営利目的のイベントではないわけで、毎年拡大していかなければならない必要はもちろんない。何せ、無料なのだ。アーティストが運営しブッキングし出演まで果たす。演者側の負担が大きすぎる催しではある。だから、そもそものヒップホップを楽しむための集まり程度の規模に戻すということも理解できる。
でも、今年の
1日目に行ってみて気づいたのは十代から二十代前半の若い客の多さだ。アンダー20 MCバトルがあったのでその仲間や友人たちが多く駆けつけたということもあるのだろう。その二十歳以下のMCバトルを行っているのも下の世代からしっかり盛り上げていこうという狙いの元だと思う。だからこそ、同時にヒップホップの面白さを伝えるベテラン、あるいは中堅どころの実力あるアーティストによるライブがもっと多くても良かった。
DJプレイもヒップホップだ。しかし、あの場では人気がない。ならそれをどう魅せるのか工夫が必要だ。ダンサーを入れてもいいし、サイドMCであってもいい。今年は休憩時間になっていた。
"元々BBPはBボーイ(ブレイクダンサー)のイベントだったのを、ヒップホップ全体のフェスにしようとしたのが違ったのかも。元々お手本にしたのはNYでも緩めなイベントのロックステディパーク。だからBBPはBBPとして運営すべきだし、フェスを求めるなら別に始めるべきなんだろう。"
2011年8月21日のジブラの
ツイート
上のジブラの呟きを呼んでハッとさせられたのは、Bボーイパークをヒップホップのフェスと思ってしまっていたことだ。ますます興隆を極めるロックフェスのような整備され親切なイベントが念頭にあっての数多くの不満でもあった。
ジブラは直後に、"BBPは主催側の意図通り緩いイベントとして存続し、前にもつぶやきましたが来年からは新しいフェスも始まる予定です。自分はそっちの運営に関わっていきます"とも
ツイートしている。フェス型のイベントも魅力だ。でも、無料で誰でも気軽に見られるイベントこそが大事ではないのかなと思う。今年も普段はラップなんて聴かなさそうなカップルがミスター★黄鬼のライブを眺めていた。どう見てもかみ合わなそうな両者だが、そこにこそ容易に果たされている異文化交流の面白さがあると思うのだ。
ヒップホップファンだけではなく、アーティスト自身もしっかり楽しむイベントという大前提は大事だ。しかし、ロックに比べればまだまだ歴史が浅く、日本にしっかり根付いていないヒップホップ文化を分かりやすく体現する可能性を秘めているBボーイパークをもっと大切にした方がいい。1997年から続けられ、ゆるぎない看板となっているだけに利用しない手はない。