今年の日本語ラップのキーワードは"SWAG"とフリーダウンロード・ミックステープだろう。無料での楽曲配信は昨年辺りから日本でも一般的になったが、今年の中盤ぐらいから発表されるミックステープが一気に増えた。ここでいう"ミックステープ"とは、mp3やwavといった音楽ファイルの形で配信され、1枚ファイルにまとまり、カセットテープ時代のように曲が繋げられているものから、実質的にはデジタル配信アルバムといえるものまでを含める。DJが既存の楽曲をミックスした本来的な意味でのミックステープはこの記事では取り上げない。つまり、人のトラックにラップを乗せたリミックスも含めオリジナル楽曲を5曲以上まとめたものをミックステープと便宜上呼んでいる(4曲以下はシングルに分類)。
"スワッグ"とは何か。多分最初にその言葉を意識したのはAKLOとKLOOZがやっていた「Like A Game」だったと思う。
記事 にもしたが、アクロの4ヴァース目に出てくるスワッグという言葉は意図的に触れなかった。はっきりとは分からなかったからだ。ついでに書けば今でもこれこれこういう意味の言葉と定義することはできない。
ただ、きゃりーぱみゅぱみゅの「チェリーボンボン」を"スワッグ スワッグ"いいながら見事自分のものにしてしまったCherry Brownが以前Twitterで呟いていたことが理解の助けになった。"バッグの中にめっちゃ枝豆入ってるんだけど。何で"という他の人のツイートに、彼は"SWAG"とただ一語での
コメントリツイート をしていたのだ。ああ、そういうことなんだなとふに落ちた。もうひとつ、同じくトゥイッターのフォロワーから教わったのは、スワッグとはつまり、"うひょー"なのだという。
きゃりーぱみゅぱみゅ - チェリーボンボン[Remix]feat.Cherry Brown
今回このテーマで書こうと思ったのはスワッグそのものなミックステープが出されたからだ。これを聴けばスワッグや今の先端を行くラップが分かるという決定版だ。
LB『AOAOAO (mixed by DJ BEERT)』
2011年8月8日アップの無料配信ミックステープ。全19曲 / 収録時間49分。→
DL先
DJバートが繋げた形になっているが、リミックス以外のオリジナル曲は別のフォルダにフルバージョンが収録されている心憎い親切さもまさにスワッグ。新潟在住のソロラッパーLBは、山梨のトラックメイカーOtowaとコンビを組み、LBとOtowa名義で出したミックステープ『FRESH BOX(β)』(3月発表・
DL先 )もかなり好評だったが、私にはいまいちピンと来なかった。が、今回の『AOAOAO』はいい。いい意味で軽い。日本語ラップにありがちなジメジメした暗さがなく、音と言葉に身をゆだねて楽しんで聴ける。自身のラップ技術を誇る定番ネタから恋愛ものまでテーマが広がり、そのまま西野カナの客演も務まるのではと思うような売れ線曲まである。ストイックさという日本語ラップが後生大事に抱き続けている美学をあからさまには出さず、とにかくラップを楽しもうとしているのが伝わる。
客演にはフリーダウンロード界隈の有名人たちが揃っているので、次の1本に手を伸ばしやすい。ドイツ語を含む3か国語を操るJulian Naganoはドイツのビールの飲み方を教え、赤裸々な男女関係をラップさせたらやはりmikE maTidaであり、普段は偏った右巻き政治ネタラップをしているshow-kもここではなさけない先輩役を演じている。彼は普通にこういうラップをしたらいいのに。
RANL『Service Time』
2011年9月11日アップの無料配信ミックステープ。全14曲 / 収録時間29分。→
DL先
で、このランルだ。LBの『AOAOAO』のM11「Cawaii」で突如出てきた"黒髪ロングのストレート爆乳"の彼女はアニメ声ながらめちゃくちゃラップが巧い。キャラクター設定の徹底さは本当に見事。ZEEBRAがトゥイッターで言及したのも頷ける。"来いよ、ヘイター!!"なんていわれると、じゃあ行きますかって普段なら思うところだが、かわいらしい声で強気のラップをされるので腰砕けだ。M7「Study」の痛快さはなんだ?最後まで種明かしをせず(もしもつまらないタネなら)、2次元で活動を続けて欲しい。
VA『JPRAP.COM presents Free Mixtape #Nibiru』
2011年9月11日アップの無料配信ミックステープ。全34曲 / 収録時間98分。→
DL先
"#911MixtapeWar"とのハッシュタグが付けられ、9月11日に一斉にアップされたミックステープ群の中で最も重量のある作品。JPRAP.COM主宰者のbenzeezyがまとめた本作は、その収録曲の多さからも玉石混淆であることは否めない。が、それも含め、今の日本語ラップの面白さが凝縮されている。2011年はSEEDAでも般若でもなく、フリーミックステープの年だったとおそらくいわれることになるだろう。このムーブメントを支えている主だったアーティストたちがこぞって参加している。同じ無料配信の形で当時の有望株を集めたコンピ盤『アングラの詩的な進化論』を思い出した。あんな風にシリーズ化しても面白そうだ。
※以下、似た傾向のラップをカタログ的に列挙。ジャケットをクリックするとDLサイトに飛びます。
BAN『BROKEN LANGUAGE (mixed By DJ BEERT)』
2011年9月11日アップの無料配信ミックステープ。
全13曲 / 収録時間33分。
この手のラップは重いテーマに踏み込むわけではなく軽快さが売りなので、パンチラインが足りないと途端に失速する。本作にはアクロとクルーズの3人でジブラの「Butterfly City」を完全に乗っ取ってしまったリミックスが収録されている。同曲は権利問題でYouTubeから削除され、今はここでしか聴けない。DJ Hasebeは間違っていなかったことが分かる。乗り方がまずかったのだ。
GOBURIN『CLEANING MAN EP.』
2011年9月5日アップの無料配信ミックステープ。
全5曲 / 収録時間17分。
『AOAOAO』にも参加し、LBと同じ新潟のラッパー・ゴブリン。自身の仕事を誇る姿勢はスワッグ。声は悪くなく、これまでも客演時に目立ってきたが、処女作となる本作では1曲目の「Seisou」を超えるインパクトを打ち出せていないのが残念。
MORROW『Test Flight』
2011年8月31日アップの無料配信ミックステープ。
全5曲 / 収録時間14分。
『#Nibiru』ではマイク・マティーダとのラップデュオMMBOYzとして参加している東京のラッパー。この後ふたりでミックステープも予定しているのは楽しみだが、本作はよくあるタイプの今どきのラップといった印象に留まっている。
X&TRICKS『エキセントリックス』
2011年7月20日アップの無料配信ミックステープ。
全17曲 / 収録時間50分。
ham-Rが立ち上げたレーベルSUB DELTAから本作アップと同日にファーストアルバムをリリースした新たな渋谷代表の5MC1DJのグループ。同じく渋谷を代表すると謳うLUCK-ENDやYDCよりは巧いが、各人ともham-rの影響を受けすぎだ。8月から9月にかけても彼らの
SoundCloud で計15曲ほどのリミックスを無料配信の形で発表している。
Julian Nagano & Terusha『SHARE』
2011年9月11日アップの無料配信ミックステープ。
全6曲 / 収録時間21分。
LBのところでも3カ国語を話せるラッパーとして紹介したジュリアン・ナガノと女性R&B歌手Terushaが互いに3曲ずつ提供したスプリット作品。彼女の作り出す雰囲気を壊さないことを意識したのか、ナガノはメロウなラップを揃えてきていて、耳なじみの良いミックステープになっている。現在はDL不可でストリーミングのみだけど、彼の6月発表のソロ作→
bandcamp
mikE maTida『Hey! Mikee Vol. 4』
2011年8月11日アップの無料配信ミックステープ。
全7曲 / 収録時間22分。
ラップ的には旧来のスタイルを引きずっている部分があるのだが(何もはやればすぐに飛びつくのが正しいとも思えない)、毎回洋楽のヒット曲を嬉々としてリミックスするという楽曲面にも、また聴き手を楽しませるリリック、それは同時に同業者を苛立たせる鋭利さもあるわけだけど、いずれにせよ内容のある歌詞にも惹かれる。今回で4作目となるがますます意気軒高だ。
KENTZ『Before KiDULTHOOD』
2011年9月12日アップの無料配信ミックステープ。
全7曲 / 収録時間21分。
これはちょっと驚いた。昨年10月の『The Reach』に続いて1年ぶり2本目となる『KiDULTHOOD』を前に出されたプリミックステープ。前作から飛躍的な成長を遂げている。M3「おはよう」やM4「FUCK!」は新作に入れなくても大丈夫なのかと思うほど完成度が高いし、M5「6時のチャイム」やM6「My Music」の素直に内面に踏み込んだリリックも素敵だ。
次は、上で挙げてきたような今の主流のラップスタイルではないラッパーたちのミックステープ。古かろうが新しかろうが自分の好きな音を真摯に紡ぐことこそがスワッグなわけで、様々なスタイルが共存していた方が聴き手としても面白い。
享年夫『享年の人』
2010年9月21日アップの無料配信ミックステープ。全26曲 / 収録時間94分。→
DL先
本作を初めて聴いたのは先月。発表されたばかりの作品とばかり思ってたのだけど、今これを書くにあたりHPに行ってみたら昨年アップのアルバムだった!驚いた。気を取り直して、2011年の欄にアップされている『明朝体で読みたい美しい下ネタ』を開いてみたら、速攻で吹いた。あやうく全文をトゥイッターに呟くところだった。危ない。ついでにマンガも少し見てみたが、この人はいったい何者なのだろう。
ミックステープはたいていがzipやrarに圧縮されて配信される。が、本作はヴァイキングアルバムを名乗るだけあって、1曲1曲新しいウィンドウを開き落とさなければならない。しかも26曲もあり、ひどく手間がかかる(ついでにリリックをコピペする労も)。だが、それだけの価値がある作品だ。
オモロラップだった頃のスチャダラパーのフォロワーがようやく出てきたのかという印象で、さらに今のスチャダラに通じる批評性めいたものまで持ち合わせている。付け加えて、94分と長尺にもほどがある長さにも関わらず、最後まで楽しんで聴き通せてしまう構成力の高さは特筆に値する。ただ者ではないと思うのだけど、その実態は全くの謎。
Nakaji『セピアポラロイド』
2011年8月10日アップの無料配信ミックステープ。全11曲 / 収録時間32分。→
DL先
近江Records.所属のラッパー。ブルージーなギターリフの上での古風な前口上に始まり、「24 Bars to Kill」のリミックスは軽やかにスキップした後の、TOKiMONSTAによる素敵な2曲、M3「狂った果実」とM4「So Sick,」を聴けば、本作の魅力に気づくだろう。個性の強い音に負けていない彼のラップはややポエトリーっぽいスタイルでかなりツボ。「ルビーの指環」をリミックスしたM5は見事。軽快に歌っているところもいいが、違和感なくラップを乗せ、曲としてのまとまりがいい塩梅だ。
表題曲のM6はMeisoのそれ。批判ではなく、それも次のステップのための模倣だと評価してしまうほど気に入っている。ここでもリリックに光るものを感じる。全体的に和を意識した音や古いいい回しが面白い。
M10「夕暮れ」はNujabesの「reflection eternal」使いで、テーマは生。同じトラックを使い、同じテーマを歌った曲に不可思議/wonderboyの「生きろ」があるけれど、あの名曲への返歌だろうか。最後のM11「First love」は宇多田ヒカルを使った切ないラブソング。こんな風に邦楽を使った曲がもっと出てきてもいいはず。
※以下、再びカタログ仕様で。リンクもジャケをクリックで。
Momose×Gotakozo『Monday EP』
2011年6月27日アップの無料配信ミックステープ。
全6曲 / 収録時間15分。
LOW HIGH WHO? PRODUCTION所属のラッパーMomoseが同じ長野在住のGotakozoと組んだ作品。ザ・文系ラップなモモセのラップも良いが、M1「Intro」のトラックがたまらなくかっこいい。このふたりの作品をもっと聴きたい。
SOHCH『Cinematic Life』
2011年8月1日アップの無料配信ミックステープ。
全7曲 / 収録時間33分。
"夏限定"と銘打たれた作品なので、そろそろ配信終了になってしまうかもしれないが、これは聴いて損しないミックステープ。サンプリングや女性ボーカルの使い方などセンスの良さがかなり光っている。M3「楽なway」やM4「エゴロジー」のKREVA感も楽しんで聴ける。今のクレバと比較するならこちらの方が好きだ。
Roundsville『FULLY EXPOSED』
2011年7月10日アップの無料配信ミックステープ。
全11曲 / 収録時間43分。
商品としてヒップホップ棚に並んでいてもおかしくないレベル。語る言葉やテーマをしっかり持ったラップで、ジャジー路線のトラックもかっこよく、すでに自分たちの色があり、完成されている。なのに無料配信とはありがたい限りだ。次はM1「Intro (Fully Exposed)」のようなビートを強く押し出したトラックを展開させた作品を聴いてみたい。
BUZZ BOX『VERSE PARK』
2011年8月18日アップの無料配信ミックステープ。
全6曲 / 収録時間22分。
今年の
BBOY PARK のU20 MC BATTLEで大活躍した延暦Gがいる2MC2DJのグループ。FGの影響が強い。M4「バズの休日」を引き合いに出すまでもなく、その中でもRIP SLYMEの影が濃厚だ。リリックはどぎついがM3「酒呑賛歌」の不思議なグルーヴ感が面白い。
Sly a.k.a 9llA Soundz『Zip Hop 2』
2011年9月5日アップの無料配信ミックステープ。
全5曲 / 収録時間21分。
兵庫県尼崎在住のラッパー兼トラックメイカー。よくいるクレバ・チルドレンかと落胆しかけたが、M3「OSUKINI」から急に面白くなる。トラック込みで良かった。M4「Down Town Swingerz」のメロウさにも惹かれるし、後半の3曲が良い。メロディも作れるし、次も楽しみだ。
COBO『No Deal No Meal Vol.2』
2011年8月29日アップの無料配信ミックステープ。
全19曲 / 収録時間54分。
下から這い上がってやる的なハーコーなラップを洋楽トラックに乗せる楽曲が前半に多く、強面ラッパーなのかなと思いきや、中盤でテーマがエロに変わる辺りから楽しめるようになる。54分と長めだが、だれることなく聴ける。リンク先には『Vol.1』もある。
RIPPO『真夏の白昼夢 EP』
2011年8月13日アップの無料配信ミックステープ。
全4曲 / 収録時間14分。
鼻声のラッパーが増えている中、巨漢そうな男臭い声質は珍しい。声に重量があると動きが鈍くなりがちだが、彼は意外にも敏捷だ。初めて聴いたラッパーだったので、今検索をかけたらニコニコ動画で活躍している人のようだ。これまた意外。
SOARA『First&Last』
2011年8月22日アップの無料配信ミックステープ。
全12曲 / 収録時間43分。
クレバ直系の、もしかしたらKEN THE 390も経由した、正統派といってしまってもいいかもしれないスタイルのソロラッパー。ラップそのものはストレスなく聴けるし、処女作とも思えない充実度だが、テーマや言葉がありきたりなのが残念。
ILL FRIENDS『YASAKA IN THE SEA!! REMIX』
2011年7月21日アップの無料配信ミックステープ。
全10曲 / 収録時間43分。
RAMB CAMPのFREEZとBACK WARSのNAB、それにDJ HELF-GOTTを中心に、博多天神周りのラッパーを集めたプロジェクトであるイルフレンズ。3月発表のアルバムに収録された全10曲をヤサカ イン ザ シーが丸々リミックス。するめタイプの天神親不孝スタイルのラップを堪能できる。フリーズは無料配信を利用し売り上げにしっかり繋げている稀有なラッパーのひとりだと思う。
YK & GIANGO『THE TUNES VOl.1』
2011年7月20日アップの無料配信ミックステープ。
全20曲 / 収録時間53分。
岐阜県のラップデュオ。名古屋に近いこともあり、言葉の面でもそのスタイル的な意味でもAK-69を彷彿させる派手さがある。一般的なイメージでのヒップホップを体現していて、普通に聴く分には恥ずかしくなるが、完成されたラップであることは確かだ。
KOOGI『LIBERTY TOWN HUSH feat. JIRO-K, BLASTA & KNZZ』
2011年5月1日アップの無料配信ミックステープ。
全19曲 / 収録時間52分。
上と同じくラップ自体は丸っきり趣味ではないものの、作品としてはまとまりがあり、聴きやすい。元ICE DYNASTYのKNZがKNZZ名義で参加している。
MICHO『恨み節 (Mixed by DJ Agetetsu & DJ Ziko)』
2011年7月3日アップの無料配信ミックステープ。
全35曲 / 収録時間88分。
今年の
BBOY PARK の日曜日に出演していた女性ラッパーの作品。ジャケットのイメージそのままに洋楽リミックスが大半を占めるが、88分と長尺すぎる長さとラップの拙さが相まってすぐにだれる。オリジナルトラックもあるにはあるが、退屈そのもの。女性ラッパーはまだまだ少ないし、どんどん出てきて欲しいとは思うけれど、まず技術がしっかり伴って欲しい。
Human Meat Market『Human Hunting In Forest』
2011年5月6日(?)アップの無料配信ミックステープ。
全17曲 / 収録時間42分。
スプラッタホラーネタでのラップ。日本語でのラップなので雰囲気だけではなく、リリックでも楽しめる。つまりネタがネタだけに通常ではありえない言葉が使え、新鮮な韻を踏めたりもするわけだけど、同時にラップの稚拙さも露わになってしまう。客演のメテオがひとり目立っている。
Piyo Londirt『People Idolize Yellow Oddball』
2011年6月11日アップの無料配信ミックステープ。
全13曲 / 収録時間56分。
Kanye Westの去年の傑作アルバムのトラックを丸々使った作品。テーマは震災。様々な角度から被災者たちの悲しみや困窮、怒りを訴えかけ、その真摯さに打たれはするけれど、想いが強すぎるのかラップの技術までには気を回せていない。大切なことをラップしても、その伝達手段がイマイチだと、折角のメッセージも正確には伝わらない。音質にも難あり。
最後はトラックメイカーたちが無料配信したインスト集。
696Beats『STEREGO』
2011年5月7日アップの無料配信ミックステープ。全7曲 / 収録時間13分。→
DL先
トラックに関しては、単純に踊れる音も嫌いではないけれど、聴いた時に音からイメージが広がるトラックが好みだ。696ビーツの音は脳内で楽しい物語を作り出す力がある。サンプリングは派手になりすぎず、かといってそっけないというものでもなく抑制の利いた知的な音に組み上げられている。4月発表の『FOR HIPHOP FREAKS』(
DL先 )もかなり良い。リミキサーとしても活躍していて、今回紹介した中ではRIPPOのミックステープに2曲で関わっている。
Madhandmade『Madhandmade』
2011年5月12日アップの無料配信ミックステープ。全13曲 / 収録時間20分。→
DL先
どれも1分台のビートで曲としての構成力がどうのといえるほどのものではないが、ひとつひとつの音が手作りで入念に考え編み上げられている。無駄な音がなく、鳴らされる音はその本来の音以上の働きをしている。中でもM5「mad25」のしなやかなピアノとサックスのアンサンブルはずっと聴いていたくなる。
Yuuyu Aensland『Her Memories』
2011年7月21日アップの無料配信ミックステープ。全18曲 / 収録時間66分。→
DL先
ラッパーのチェリー・ブラウンのトラックメイカー名義がこのユーユ・アーンスランドとなる。Lil'諭吉も彼のトラックメイカー時の名前だが、ユーユ・アーンスランドの方はヒップホップの枠に囚われないもっと自由な音を志向しているようだ。自分の好きなこと、気になることをこれまでのヒップホップでは考えられないほど奔放に、そしてキャッチーにラップするチェリー・ブラウンのイメージとはまた違う音楽家としての顔が見える作品で、でも同時にやはり大好きなアニメを取り入れたりしている辺りは期待を裏切らない。挑戦的であると同時に耳なじみの良さもしっかり意識されているところも素晴らしい。
※以下同じ。
aRo『2011summer0827#01』
2011年8月2日アップの無料配信ミックステープ。
全17曲 / 収録時間14分。
『#Nibiru』にもアウトロで参加していたトラックメイカーの1分にも満たないビートを集めたインスト集。ワンアイディアの集積ではあるが、曲調が変化に富み飽きさせない。
Chris Mako『Beats, Loops and a Fistful of Yen』
2011年8月29日アップの無料配信ミックステープ。
全39曲 / 収録時間59分。
シーダのブログにも寄稿しているドイツはフランクフルト在住のトラックメイカー。シーダ関連ということで流行の派手な音が並ぶのかなと思いきや、ジャケット通りに夜を想起させる落ち着いたトラックが揃っていて、ながら聞きにも最適。
nekozebeats『NKZ EP』
2011年8月20日アップの無料配信ミックステープ。
全6曲 / 収録時間14分。
上でも挙げているMadHandmadeの別名義。どっちが主かは不明。マッドハンドメイドとは違い、暗い情念を音にした印象のアブストラクトなトラックがコンクリ色の魅力を放つ。その中でも最後に収められた「nexexttttexit」は暗色に染められつつも美しい光が漏れているのが良い。
jjjj soma『jezzir vol.2』
2011年5月7日アップの無料配信ミックステープ。
全12曲 / 収録時間46分。
最初に聴いた『jezzir vol.1』は箸にも棒にもな作品で、本作は何の期待もなしに聴いたら、いつのまにかその雄弁に語られる物語にはまっていた。