すばらしくてNICE CHOICE

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2021.02.10 Wednesday | - | - | -
昨今の国産ヒップホップ・無料DLミックステープ事情

今年の日本語ラップのキーワードは"SWAG"とフリーダウンロード・ミックステープだろう。無料での楽曲配信は昨年辺りから日本でも一般的になったが、今年の中盤ぐらいから発表されるミックステープが一気に増えた。ここでいう"ミックステープ"とは、mp3やwavといった音楽ファイルの形で配信され、1枚ファイルにまとまり、カセットテープ時代のように曲が繋げられているものから、実質的にはデジタル配信アルバムといえるものまでを含める。DJが既存の楽曲をミックスした本来的な意味でのミックステープはこの記事では取り上げない。つまり、人のトラックにラップを乗せたリミックスも含めオリジナル楽曲を5曲以上まとめたものをミックステープと便宜上呼んでいる(4曲以下はシングルに分類)。

"スワッグ"とは何か。多分最初にその言葉を意識したのはAKLOとKLOOZがやっていた「Like A Game」だったと思う。記事にもしたが、アクロの4ヴァース目に出てくるスワッグという言葉は意図的に触れなかった。はっきりとは分からなかったからだ。ついでに書けば今でもこれこれこういう意味の言葉と定義することはできない。

ただ、きゃりーぱみゅぱみゅの「チェリーボンボン」を"スワッグ スワッグ"いいながら見事自分のものにしてしまったCherry Brownが以前Twitterで呟いていたことが理解の助けになった。"バッグの中にめっちゃ枝豆入ってるんだけど。何で"という他の人のツイートに、彼は"SWAG"とただ一語でのコメントリツイートをしていたのだ。ああ、そういうことなんだなとふに落ちた。もうひとつ、同じくトゥイッターのフォロワーから教わったのは、スワッグとはつまり、"うひょー"なのだという。

きゃりーぱみゅぱみゅ - チェリーボンボン[Remix]feat.Cherry Brown


今回このテーマで書こうと思ったのはスワッグそのものなミックステープが出されたからだ。これを聴けばスワッグや今の先端を行くラップが分かるという決定版だ。

LB『AOAOAO (mixed by DJ BEERT)』

2011年8月8日アップの無料配信ミックステープ。全19曲 / 収録時間49分。→DL先

DJバートが繋げた形になっているが、リミックス以外のオリジナル曲は別のフォルダにフルバージョンが収録されている心憎い親切さもまさにスワッグ。新潟在住のソロラッパーLBは、山梨のトラックメイカーOtowaとコンビを組み、LBとOtowa名義で出したミックステープ『FRESH BOX(β)』(3月発表・DL先)もかなり好評だったが、私にはいまいちピンと来なかった。が、今回の『AOAOAO』はいい。いい意味で軽い。日本語ラップにありがちなジメジメした暗さがなく、音と言葉に身をゆだねて楽しんで聴ける。自身のラップ技術を誇る定番ネタから恋愛ものまでテーマが広がり、そのまま西野カナの客演も務まるのではと思うような売れ線曲まである。ストイックさという日本語ラップが後生大事に抱き続けている美学をあからさまには出さず、とにかくラップを楽しもうとしているのが伝わる。

客演にはフリーダウンロード界隈の有名人たちが揃っているので、次の1本に手を伸ばしやすい。ドイツ語を含む3か国語を操るJulian Naganoはドイツのビールの飲み方を教え、赤裸々な男女関係をラップさせたらやはりmikE maTidaであり、普段は偏った右巻き政治ネタラップをしているshow-kもここではなさけない先輩役を演じている。彼は普通にこういうラップをしたらいいのに。


RANL『Service Time』

2011年9月11日アップの無料配信ミックステープ。全14曲 / 収録時間29分。→DL先

で、このランルだ。LBの『AOAOAO』のM11「Cawaii」で突如出てきた"黒髪ロングのストレート爆乳"の彼女はアニメ声ながらめちゃくちゃラップが巧い。キャラクター設定の徹底さは本当に見事。ZEEBRAがトゥイッターで言及したのも頷ける。"来いよ、ヘイター!!"なんていわれると、じゃあ行きますかって普段なら思うところだが、かわいらしい声で強気のラップをされるので腰砕けだ。M7「Study」の痛快さはなんだ?最後まで種明かしをせず(もしもつまらないタネなら)、2次元で活動を続けて欲しい。


VA『JPRAP.COM presents Free Mixtape #Nibiru』

2011年9月11日アップの無料配信ミックステープ。全34曲 / 収録時間98分。→DL先

"#911MixtapeWar"とのハッシュタグが付けられ、9月11日に一斉にアップされたミックステープ群の中で最も重量のある作品。JPRAP.COM主宰者のbenzeezyがまとめた本作は、その収録曲の多さからも玉石混淆であることは否めない。が、それも含め、今の日本語ラップの面白さが凝縮されている。2011年はSEEDAでも般若でもなく、フリーミックステープの年だったとおそらくいわれることになるだろう。このムーブメントを支えている主だったアーティストたちがこぞって参加している。同じ無料配信の形で当時の有望株を集めたコンピ盤『アングラの詩的な進化論』を思い出した。あんな風にシリーズ化しても面白そうだ。


※以下、似た傾向のラップをカタログ的に列挙。ジャケットをクリックするとDLサイトに飛びます。

BAN『BROKEN LANGUAGE (mixed By DJ BEERT)』
2011年9月11日アップの無料配信ミックステープ。
全13曲 / 収録時間33分。
この手のラップは重いテーマに踏み込むわけではなく軽快さが売りなので、パンチラインが足りないと途端に失速する。本作にはアクロとクルーズの3人でジブラの「Butterfly City」を完全に乗っ取ってしまったリミックスが収録されている。同曲は権利問題でYouTubeから削除され、今はここでしか聴けない。DJ Hasebeは間違っていなかったことが分かる。乗り方がまずかったのだ。

GOBURIN『CLEANING MAN EP.』
2011年9月5日アップの無料配信ミックステープ。
全5曲 / 収録時間17分。
『AOAOAO』にも参加し、LBと同じ新潟のラッパー・ゴブリン。自身の仕事を誇る姿勢はスワッグ。声は悪くなく、これまでも客演時に目立ってきたが、処女作となる本作では1曲目の「Seisou」を超えるインパクトを打ち出せていないのが残念。

MORROW『Test Flight』
2011年8月31日アップの無料配信ミックステープ。
全5曲 / 収録時間14分。
『#Nibiru』ではマイク・マティーダとのラップデュオMMBOYzとして参加している東京のラッパー。この後ふたりでミックステープも予定しているのは楽しみだが、本作はよくあるタイプの今どきのラップといった印象に留まっている。

X&TRICKS『エキセントリックス』
2011年7月20日アップの無料配信ミックステープ。
全17曲 / 収録時間50分。
ham-Rが立ち上げたレーベルSUB DELTAから本作アップと同日にファーストアルバムをリリースした新たな渋谷代表の5MC1DJのグループ。同じく渋谷を代表すると謳うLUCK-ENDやYDCよりは巧いが、各人ともham-rの影響を受けすぎだ。8月から9月にかけても彼らのSoundCloudで計15曲ほどのリミックスを無料配信の形で発表している。

Julian Nagano & Terusha『SHARE』
2011年9月11日アップの無料配信ミックステープ。
全6曲 / 収録時間21分。
LBのところでも3カ国語を話せるラッパーとして紹介したジュリアン・ナガノと女性R&B歌手Terushaが互いに3曲ずつ提供したスプリット作品。彼女の作り出す雰囲気を壊さないことを意識したのか、ナガノはメロウなラップを揃えてきていて、耳なじみの良いミックステープになっている。現在はDL不可でストリーミングのみだけど、彼の6月発表のソロ作→bandcamp

mikE maTida『Hey! Mikee Vol. 4』
2011年8月11日アップの無料配信ミックステープ。
全7曲 / 収録時間22分。
ラップ的には旧来のスタイルを引きずっている部分があるのだが(何もはやればすぐに飛びつくのが正しいとも思えない)、毎回洋楽のヒット曲を嬉々としてリミックスするという楽曲面にも、また聴き手を楽しませるリリック、それは同時に同業者を苛立たせる鋭利さもあるわけだけど、いずれにせよ内容のある歌詞にも惹かれる。今回で4作目となるがますます意気軒高だ。

KENTZ『Before KiDULTHOOD』
2011年9月12日アップの無料配信ミックステープ。
全7曲 / 収録時間21分。
これはちょっと驚いた。昨年10月の『The Reach』に続いて1年ぶり2本目となる『KiDULTHOOD』を前に出されたプリミックステープ。前作から飛躍的な成長を遂げている。M3「おはよう」やM4「FUCK!」は新作に入れなくても大丈夫なのかと思うほど完成度が高いし、M5「6時のチャイム」やM6「My Music」の素直に内面に踏み込んだリリックも素敵だ。



次は、上で挙げてきたような今の主流のラップスタイルではないラッパーたちのミックステープ。古かろうが新しかろうが自分の好きな音を真摯に紡ぐことこそがスワッグなわけで、様々なスタイルが共存していた方が聴き手としても面白い。

享年夫『享年の人』

2010年9月21日アップの無料配信ミックステープ。全26曲 / 収録時間94分。→DL先

本作を初めて聴いたのは先月。発表されたばかりの作品とばかり思ってたのだけど、今これを書くにあたりHPに行ってみたら昨年アップのアルバムだった!驚いた。気を取り直して、2011年の欄にアップされている『明朝体で読みたい美しい下ネタ』を開いてみたら、速攻で吹いた。あやうく全文をトゥイッターに呟くところだった。危ない。ついでにマンガも少し見てみたが、この人はいったい何者なのだろう。

ミックステープはたいていがzipやrarに圧縮されて配信される。が、本作はヴァイキングアルバムを名乗るだけあって、1曲1曲新しいウィンドウを開き落とさなければならない。しかも26曲もあり、ひどく手間がかかる(ついでにリリックをコピペする労も)。だが、それだけの価値がある作品だ。

オモロラップだった頃のスチャダラパーのフォロワーがようやく出てきたのかという印象で、さらに今のスチャダラに通じる批評性めいたものまで持ち合わせている。付け加えて、94分と長尺にもほどがある長さにも関わらず、最後まで楽しんで聴き通せてしまう構成力の高さは特筆に値する。ただ者ではないと思うのだけど、その実態は全くの謎。


Nakaji『セピアポラロイド』

2011年8月10日アップの無料配信ミックステープ。全11曲 / 収録時間32分。→DL先

近江Records.所属のラッパー。ブルージーなギターリフの上での古風な前口上に始まり、「24 Bars to Kill」のリミックスは軽やかにスキップした後の、TOKiMONSTAによる素敵な2曲、M3「狂った果実」とM4「So Sick,」を聴けば、本作の魅力に気づくだろう。個性の強い音に負けていない彼のラップはややポエトリーっぽいスタイルでかなりツボ。「ルビーの指環」をリミックスしたM5は見事。軽快に歌っているところもいいが、違和感なくラップを乗せ、曲としてのまとまりがいい塩梅だ。

表題曲のM6はMeisoのそれ。批判ではなく、それも次のステップのための模倣だと評価してしまうほど気に入っている。ここでもリリックに光るものを感じる。全体的に和を意識した音や古いいい回しが面白い。

M10「夕暮れ」はNujabesの「reflection eternal」使いで、テーマは生。同じトラックを使い、同じテーマを歌った曲に不可思議/wonderboyの「生きろ」があるけれど、あの名曲への返歌だろうか。最後のM11「First love」は宇多田ヒカルを使った切ないラブソング。こんな風に邦楽を使った曲がもっと出てきてもいいはず。


※以下、再びカタログ仕様で。リンクもジャケをクリックで。

Momose×Gotakozo『Monday EP』
2011年6月27日アップの無料配信ミックステープ。
全6曲 / 収録時間15分。
LOW HIGH WHO? PRODUCTION所属のラッパーMomoseが同じ長野在住のGotakozoと組んだ作品。ザ・文系ラップなモモセのラップも良いが、M1「Intro」のトラックがたまらなくかっこいい。このふたりの作品をもっと聴きたい。

SOHCH『Cinematic Life』
2011年8月1日アップの無料配信ミックステープ。
全7曲 / 収録時間33分。
"夏限定"と銘打たれた作品なので、そろそろ配信終了になってしまうかもしれないが、これは聴いて損しないミックステープ。サンプリングや女性ボーカルの使い方などセンスの良さがかなり光っている。M3「楽なway」やM4「エゴロジー」のKREVA感も楽しんで聴ける。今のクレバと比較するならこちらの方が好きだ。

Roundsville『FULLY EXPOSED』
2011年7月10日アップの無料配信ミックステープ。
全11曲 / 収録時間43分。
商品としてヒップホップ棚に並んでいてもおかしくないレベル。語る言葉やテーマをしっかり持ったラップで、ジャジー路線のトラックもかっこよく、すでに自分たちの色があり、完成されている。なのに無料配信とはありがたい限りだ。次はM1「Intro (Fully Exposed)」のようなビートを強く押し出したトラックを展開させた作品を聴いてみたい。

BUZZ BOX『VERSE PARK』
2011年8月18日アップの無料配信ミックステープ。
全6曲 / 収録時間22分。
今年のBBOY PARKのU20 MC BATTLEで大活躍した延暦Gがいる2MC2DJのグループ。FGの影響が強い。M4「バズの休日」を引き合いに出すまでもなく、その中でもRIP SLYMEの影が濃厚だ。リリックはどぎついがM3「酒呑賛歌」の不思議なグルーヴ感が面白い。

Sly a.k.a 9llA Soundz『Zip Hop 2』
2011年9月5日アップの無料配信ミックステープ。
全5曲 / 収録時間21分。
兵庫県尼崎在住のラッパー兼トラックメイカー。よくいるクレバ・チルドレンかと落胆しかけたが、M3「OSUKINI」から急に面白くなる。トラック込みで良かった。M4「Down Town Swingerz」のメロウさにも惹かれるし、後半の3曲が良い。メロディも作れるし、次も楽しみだ。

COBO『No Deal No Meal Vol.2』
2011年8月29日アップの無料配信ミックステープ。
全19曲 / 収録時間54分。
下から這い上がってやる的なハーコーなラップを洋楽トラックに乗せる楽曲が前半に多く、強面ラッパーなのかなと思いきや、中盤でテーマがエロに変わる辺りから楽しめるようになる。54分と長めだが、だれることなく聴ける。リンク先には『Vol.1』もある。

RIPPO『真夏の白昼夢 EP』
2011年8月13日アップの無料配信ミックステープ。
全4曲 / 収録時間14分。
鼻声のラッパーが増えている中、巨漢そうな男臭い声質は珍しい。声に重量があると動きが鈍くなりがちだが、彼は意外にも敏捷だ。初めて聴いたラッパーだったので、今検索をかけたらニコニコ動画で活躍している人のようだ。これまた意外。

SOARA『First&Last』
2011年8月22日アップの無料配信ミックステープ。
全12曲 / 収録時間43分。
クレバ直系の、もしかしたらKEN THE 390も経由した、正統派といってしまってもいいかもしれないスタイルのソロラッパー。ラップそのものはストレスなく聴けるし、処女作とも思えない充実度だが、テーマや言葉がありきたりなのが残念。

ILL FRIENDS『YASAKA IN THE SEA!! REMIX』
2011年7月21日アップの無料配信ミックステープ。
全10曲 / 収録時間43分。
RAMB CAMPのFREEZとBACK WARSのNAB、それにDJ HELF-GOTTを中心に、博多天神周りのラッパーを集めたプロジェクトであるイルフレンズ。3月発表のアルバムに収録された全10曲をヤサカ イン ザ シーが丸々リミックス。するめタイプの天神親不孝スタイルのラップを堪能できる。フリーズは無料配信を利用し売り上げにしっかり繋げている稀有なラッパーのひとりだと思う。



YK & GIANGO『THE TUNES VOl.1』
2011年7月20日アップの無料配信ミックステープ。
全20曲 / 収録時間53分。
岐阜県のラップデュオ。名古屋に近いこともあり、言葉の面でもそのスタイル的な意味でもAK-69を彷彿させる派手さがある。一般的なイメージでのヒップホップを体現していて、普通に聴く分には恥ずかしくなるが、完成されたラップであることは確かだ。

KOOGI『LIBERTY TOWN HUSH feat. JIRO-K, BLASTA & KNZZ』
2011年5月1日アップの無料配信ミックステープ。
全19曲 / 収録時間52分。
上と同じくラップ自体は丸っきり趣味ではないものの、作品としてはまとまりがあり、聴きやすい。元ICE DYNASTYのKNZがKNZZ名義で参加している。

MICHO『恨み節 (Mixed by DJ Agetetsu & DJ Ziko)』
2011年7月3日アップの無料配信ミックステープ。
全35曲 / 収録時間88分。
今年のBBOY PARKの日曜日に出演していた女性ラッパーの作品。ジャケットのイメージそのままに洋楽リミックスが大半を占めるが、88分と長尺すぎる長さとラップの拙さが相まってすぐにだれる。オリジナルトラックもあるにはあるが、退屈そのもの。女性ラッパーはまだまだ少ないし、どんどん出てきて欲しいとは思うけれど、まず技術がしっかり伴って欲しい。

Human Meat Market『Human Hunting In Forest』
2011年5月6日(?)アップの無料配信ミックステープ。
全17曲 / 収録時間42分。
スプラッタホラーネタでのラップ。日本語でのラップなので雰囲気だけではなく、リリックでも楽しめる。つまりネタがネタだけに通常ではありえない言葉が使え、新鮮な韻を踏めたりもするわけだけど、同時にラップの稚拙さも露わになってしまう。客演のメテオがひとり目立っている。

Piyo Londirt『People Idolize Yellow Oddball』
2011年6月11日アップの無料配信ミックステープ。
全13曲 / 収録時間56分。
Kanye Westの去年の傑作アルバムのトラックを丸々使った作品。テーマは震災。様々な角度から被災者たちの悲しみや困窮、怒りを訴えかけ、その真摯さに打たれはするけれど、想いが強すぎるのかラップの技術までには気を回せていない。大切なことをラップしても、その伝達手段がイマイチだと、折角のメッセージも正確には伝わらない。音質にも難あり。



最後はトラックメイカーたちが無料配信したインスト集。

696Beats『STEREGO』

2011年5月7日アップの無料配信ミックステープ。全7曲 / 収録時間13分。→DL先

トラックに関しては、単純に踊れる音も嫌いではないけれど、聴いた時に音からイメージが広がるトラックが好みだ。696ビーツの音は脳内で楽しい物語を作り出す力がある。サンプリングは派手になりすぎず、かといってそっけないというものでもなく抑制の利いた知的な音に組み上げられている。4月発表の『FOR HIPHOP FREAKS』(DL先)もかなり良い。リミキサーとしても活躍していて、今回紹介した中ではRIPPOのミックステープに2曲で関わっている。


Madhandmade『Madhandmade』

2011年5月12日アップの無料配信ミックステープ。全13曲 / 収録時間20分。→DL先

どれも1分台のビートで曲としての構成力がどうのといえるほどのものではないが、ひとつひとつの音が手作りで入念に考え編み上げられている。無駄な音がなく、鳴らされる音はその本来の音以上の働きをしている。中でもM5「mad25」のしなやかなピアノとサックスのアンサンブルはずっと聴いていたくなる。


Yuuyu Aensland『Her Memories』

2011年7月21日アップの無料配信ミックステープ。全18曲 / 収録時間66分。→DL先

ラッパーのチェリー・ブラウンのトラックメイカー名義がこのユーユ・アーンスランドとなる。Lil'諭吉も彼のトラックメイカー時の名前だが、ユーユ・アーンスランドの方はヒップホップの枠に囚われないもっと自由な音を志向しているようだ。自分の好きなこと、気になることをこれまでのヒップホップでは考えられないほど奔放に、そしてキャッチーにラップするチェリー・ブラウンのイメージとはまた違う音楽家としての顔が見える作品で、でも同時にやはり大好きなアニメを取り入れたりしている辺りは期待を裏切らない。挑戦的であると同時に耳なじみの良さもしっかり意識されているところも素晴らしい。


※以下同じ。

aRo『2011summer0827#01』
2011年8月2日アップの無料配信ミックステープ。
全17曲 / 収録時間14分。
『#Nibiru』にもアウトロで参加していたトラックメイカーの1分にも満たないビートを集めたインスト集。ワンアイディアの集積ではあるが、曲調が変化に富み飽きさせない。

Chris Mako『Beats, Loops and a Fistful of Yen』
2011年8月29日アップの無料配信ミックステープ。
全39曲 / 収録時間59分。
シーダのブログにも寄稿しているドイツはフランクフルト在住のトラックメイカー。シーダ関連ということで流行の派手な音が並ぶのかなと思いきや、ジャケット通りに夜を想起させる落ち着いたトラックが揃っていて、ながら聞きにも最適。

nekozebeats『NKZ EP』
2011年8月20日アップの無料配信ミックステープ。
全6曲 / 収録時間14分。
上でも挙げているMadHandmadeの別名義。どっちが主かは不明。マッドハンドメイドとは違い、暗い情念を音にした印象のアブストラクトなトラックがコンクリ色の魅力を放つ。その中でも最後に収められた「nexexttttexit」は暗色に染められつつも美しい光が漏れているのが良い。

jjjj soma『jezzir vol.2』
2011年5月7日アップの無料配信ミックステープ。
全12曲 / 収録時間46分。
最初に聴いた『jezzir vol.1』は箸にも棒にもな作品で、本作は何の期待もなしに聴いたら、いつのまにかその雄弁に語られる物語にはまっていた。
2011.09.30 Friday 23:58 | 音楽 | comments(6) | trackbacks(0)
シャロウ・グレイブ / Shallow Grave

58点/100点満点中

イギリス監督ダニー・ボイルのデビュー作。1995年のサスペンススリラー。ユアン・マクレガー主演。製作費250万ドル。

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グラスゴーの瀟洒なフラットで共同生活を送る記者のアレックス、会計士のデヴィッド、医者のジュリエット。募集していた4人目のルームメイトを自称作家のヒューゴに決めるが、入居してほどなく自室で死んでしまう。麻薬とスーツケースいっぱいの大金を残して。彼らは死体を始末して大金を手に入れることにしたのだが・・・。
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出世作『トレインスポッティング』の前年に撮られた映画デビュー作。偶然大金を手にしたものの、そのお金を追っておっかない人がやって来るという筋立ては後年『ミリオンズ』でも使われている。『ミリオンズ』は自分の子供が見られるものをという制作意図だったので幾分教育的だが、本作はそれまで気の合う友人同士だった関係が壊れ、互いに疑心暗鬼になり、最後にはコンゲームの様相を呈する醜い話だ。

面白いかといえば、かなり微妙。登場人物に共感は必要ないと思っているが、自分たちからルームメイトの募集をかけていながら、意にそぐわない希望者がやってくるとひどく邪険に扱う冒頭での様子からも、彼らは社会人でありながらずいぶんと幼く、全てが自業自得と思わざるを得ないキャラクターなのだ。

当時のイギリスの経済状況や若者の失業率などを織り込みながら見ると、また別の見方ができるのかもしれないが、この2011年に見る限りはたいして面白くもないし、評判ほどスタイリッシュとも思わない。
2011.09.23 Friday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
ロビン・フッド / Robin Hood

85点/100点満点中

リドリー・スコット監督とラッセル・クロウという『グラディエーター』でアカデミー賞5冠に輝いたコンビが再びタッグを組んだ2010年の歴史物。共演はケイト・ブランシェット、ウィリアム・ハート。製作費1億5500万ドル。

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12世紀末。イングランドの獅子心王リチャード1世率いる十字軍遠征隊に参加していた弓の名手、ロビン・ロングストライドは、戦闘で王が戦死すると、仲間と共にいち早く英国に戻ろうとするが、その帰途、王の王冠を持ち帰る使命を帯びた騎士ロバート・ロクスリーが襲撃されるのを目撃する。瀕死のロバートから剣をノッティンガム領主である父ウォルターに届けて欲しいと頼まれたロビンは、彼になりすまして母国へと帰還。王冠を返還すると、そのまま約束を果たすべくノッティンガムへ向かう。義父ウォルターと共に夫の帰還を待ちわびていた未亡人マリアンと出会う。ロビンは跡継ぎ不在による領地没収を恐れるウォルターから、ロバートとしてこの地に留まって欲しいと頼まれる。一方、兄リチャードの死により新王となったジョンは、密かにフランスと通じている腹心ゴドフリーの奸計により、民衆の反発を招き、内戦の危機を迎えてしまう。
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ロビン・フッドといえば、ノッティンガムのシャーウッドの森に仲間と共に潜み、悪代官を懲らしめる義賊というイメージしかなかったが、本作はそのシャーウッドの森に住みつくまでの物語となっている。史実的にどこまで合っているのかは不明だが、140分間少しも飽きさせることのないリドリー・スコットの手腕は相変わらず素晴らしい。製作費1.5億ドル(そのうちクロウは20%をもぎ取ったらしい)は伊達ではなく、どの戦闘シーンも迫力があり、エキストラも大量に動員され、衣装も凝ってるいるし、しっかりお金をかけて制作されたの画面から伝わってくる。劇場で見たかった。
2011.09.22 Thursday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
ルックアウト/見張り / The Lookout

77点/100点満点中

2007年のクライムサスペンス。DVDスルー。製作費1600万ドル。

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花形のアイスホッケー選手だったクリスは高校卒業の夏、夜間ドライブ中に無謀な運転から大事故を起こし、同乗していた親友を失う。それから4年。短期間しか記憶を保てない軽度の外傷性脳損傷を負った彼は、自立支援学校に通い、夜は銀行で掃除係として働き、盲目のルームメイト・ルイスと共に暮らしていた。ある日、バーで高校の先輩だというゲイリーと出会う。やがてふたりは友達になるが、実はクリスの勤める銀行を襲うために接近してきたのだった。そして言葉巧みにクリスを仲間に引き入れるのだが・・・。
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大作映画『インセプション』に抜擢され、クリストファー・ノーランの次作にしてダークナイト3部作の最終章『ダークナイト ライジング』にも出演が決まっているジョセフ・ゴードン=レヴィットが2005年の『BRICK ブリック』と2007年のスマッシュヒット『(500)日のサマー』の間に主演していた作品。スティーヴン・キングが選ぶ2007年のトップ10で8位にランクインしていたこともあり、手に取ったわけだけど、久し振りに彼の好みと一致したようだ。なかなかの良作。

もともとは脚本家として『ゲット・ショーティ』やスピルバーグ監督作の『マイノリティ・レポート』などのヒット作を手掛けていたスコット・フランクが監督も担った作品で、クリスと同居する盲目の男ルイス役のジェフ・ダニエルズや、強盗団のリーダーを演じたマシュー・グードなど派手さはないものの、印象的な演技をする俳優が脇を固める。演技と脚本をしっかり味わいながら見られる。

後遺症に悩まされているとはいえ、自分は生き残り親友を死なせてしまった負い目を引きずりつつ、それでも生き続ければ、かつてホッケー選手として歓声を浴びていた栄光の日々と現在の生活との差に倦んでしまうことは致し方なく、ゴードン=レヴィット演じるクリスは苛立ちの中にいる。

同じ障碍者として年上のルイスは皮肉屋ではあるが、クリスの努力を認め、正しい道を歩ませようと見守る。一方、強盗団のリーダー・ゲイリーは悪党ながらも不思議な魅力の持ち主で、行動そのものは酷いものだが、人好きのする雰囲気をまとい、クリスを仲間に引き入れてしまう。

場面展開は少なく、襲撃シーンにしても派手な盛り上げ方をせず、そうなると俳優たちに全てがかかってくるわけだけど、善と悪の天秤が不安定に揺れる様をゴードン=レヴィットは見事に演じる。

何か大きなカタルシスがある終わり方ではない。しかし、クリスという青年が過去を受け入れ、少なくとも前を向くことを自分で決断し、静かな歩みを始めたというのは悪くないエンディングだ。
2011.09.21 Wednesday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
ライフ -いのちをつなぐ物語- / One Life

63点/100点満点中

英国BBCが制作した自然ドキュメンタリー番組「Life」(2009年10月から12月にかけて全10話各50分で放映)を89分にまとめた劇場版。2011年公開作品。

オープニングで見慣れないエイベックスのロゴを見たときから嫌な予感はしていた。最初と最後に念押しされる字幕の押しつけがましさはまさにエイベックス。『レッドクリフ』のような他国の歴史物に前もって分かりやすい説明を入れるのは親切かもしれない。しかし、本作のごとく見れば一目瞭然の説得力ある映像が紡がれていく作品にはうっとうしいだけだ。

副題も同じように邪魔だが、さらに松本幸四郎と松たか子の親子によるナレーションがダメ押しだ。せっかくの迫力ある映像を台無しにしかける。最低限の動物の説明だけで十分。それだけの映像がある。

小さい頃から図鑑では見て知ってはいたけれど、実際にその動きがスローモーションで映し出され、驚かされる食虫植物のハエジゴク、小さい体が取れる猛毒にばかり注目が集まりがちなイチゴヤドクガエルの驚異の子育て、好奇心旺盛なバンドウイルカらしい狩猟法、小回りの利いた疾走を見せつけるハネジネズミ(上の写真)、どこか聞き覚えのある単語だなと頭の片隅で思いながら絶壁を下るアイベックスの子供を見てると、PCソフトのCMをふと思い出してしまい、キツネとの追いかけっこもあのアニメ画に勝手に変換され困ったり、グロいカメレオンの舌に感心することしきりだし、温泉につかるニホンザルの思いもよらぬ厳しい格差社会を突きつけられ戸惑ったり、水上を駆けるバシリスクがキリストトカゲならカイツブリだってキリスト鳥ではと突っ込んでみたり、さすが"撮影日数のべ3000日、総製作費35億円"かけただけのことはある映像の数々に満足だ。

だからこそ、ナレーションの親子と時節柄か生きることへのしたり顔なメッセージを織り込んだ製作者(多分エイベックス)が本当に余計だ。NHKの「生きもの地球紀行」や今なら「ダーウィンが来た! 〜生きもの新伝説〜」を毎週楽しみにしている身としても、これまで見たこともない角度からの映像や接写に驚嘆はした。が、映画館で見ることもないなという思いも同時に抱いた。

『ディープ・ブルー』や『アース』の意外なヒットを受けて、ついにはエイベックスまで参入してきたわけだけど、去年の『オーシャンズ』のこともあるし、もういい加減この手の地球賛美な作品はDVDで十分かもしれない。もっと視点を特化した『ミクロコスモス』や『WATARIDORI』のような作品を見たい。
2011.09.19 Monday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
おと な り

59点/100点満点中

ジャニーズ・V6の岡田准一主演、麻生久美子共演による2009年の恋愛映画。

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風景写真に進みたいが友人でもあるモデルSHINGOの専属カメラマンに近い地位に甘んじている聡と、フラワーデザイナー志望でフランスへの留学を控えている七緒のふたりは、古いアパートのお隣り同士でありながら、挨拶どころか顔も合わせたことがなかった。壁越しに聞こえてくる何気ない生活音が互いの存在を気づかせるだけだった。ある日、失踪したSHINGOを探しにその恋人の茜が聡の部屋に押しかけてきて、そのまま居候してしまう。
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落ち着いた色彩や物語展開、間の入れ方、極力省かれた説明など、フランス映画を意識しているのを感じる。でも、モデルSHINGOの恋人・茜を演じる谷村美月が騒がしい関西弁とがさつな言動でその雰囲気を台無しにする。もちろん、平坦な物語に彩りを与えるべく意図したものだろうが、反感しか覚えない。

主人公ふたりの部屋を隔てる極端に薄い壁が互いの生活音を如実に伝える。語学の勉強をしている様子やコーヒーミルを挽く音、はっぴいえんど「風をあつめて」を歌う鼻歌。実際に壁の薄いアパートで暮らせば、そんな情緒あるものではないことは誰しもが知っているが、浮世離れした印象のふたりにしろ、その生活ぶりにしろ、かつてトレンディドラマを見てきた身には非現実だろうが素直に受け入れられる。

風景写真専門の写真家を目指すべくカナダに行きたい聡と自分の夢を叶えるためにフランス修業の準備をする七緒。そのふたりの関係と相似を描くようにサイドストーリーが展開していく。七緒の同僚はそれまで実際には会ったことのないメル友に騙されていたことが判明し、また七緒も嘘をつかれ、小説のネタにされそうになる。顔を見たことのないふたりの関係や、自身の夢を実現させるために犠牲にするものとは何なのか。

脚本やテーマ自体は悪くない。ふたりの物語が収束していくラストも良い。ただ、聡が扉を開けたところで終わった方が良かったように思う。その上でのエンドロールだったら、ふたりの会話はより一層感慨深いだろう。ふたりが一度も出会わないことに本作の面白さがあると思うのだ。それと、119分は長い。90分前後に凝縮したらもっと楽しめただろう。
2011.09.18 Sunday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
ジャーロ / Jiallo

54点/100点満点中

イタリアの巨匠ダリオ・アルジェント監督による2009年のサイコサスペンス。主演はエイドリアン・ブロディ。製作費1400万ドル。

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イタリア・トリノで、外国人の美女ばかりを狙った連続誘拐殺人事件が発生。発見時にまだ息のあった日本人被害者が残した手がかりは"ジャーロ(黄色)"だった。その犯人はタクシー運転手で、客を拉致しては残忍になぶり殺すのだった。次に彼が狙ったのはファッションモデルのセリーヌ。彼女の姉リンダは、猟奇殺人専門のエンツォ警部を訪ね、ふたりで捜査を始めるのだが・・・。
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ダリオ・アルジェントの作品でなければ手に取ることはなかっただろう。そうはいってもアルジェント作品で見たことがあるのは『サスぺリア』ぐらいで、血を美しく撮ることに美を見出すホラー専門の監督とばかり思っていた。しかし、彼の監督するジャンルは様々で、本作のようなとなりのサイコさんを探し出すミステリー仕立ての作品も珍しくはないようだ。

話はとても簡素。冒頭で猟奇殺人犯が女性を誘拐し、快楽殺人にふける。モデルのセリーヌも同じ犯人に誘拐される。その姉が心配し、エンツォ警部に助けを求める。その最中発見された被害者から得た情報をもとに犯人を見つけ出す。最後に軽いどんでん返しはあるものの、落語のサゲのような上品な終わり方をみせる。

振り下ろされた刃物が作り出す血吹雪がアルジェントらしさかなとは思うが、突出する怖さは皆無で、反対に不幸な生い立ちの犯人に同情に似た感情が芽生えたり、過去に人殺しをしたのに不問にされたエンツォはどうなのって疑問を覚えたり、イタリアのパトカーってアルファロメオなのかとすごいなと感嘆してみたり、それよりなにより連続殺人事件が起きているのに専従捜査に当っているのがひとりだけとはどういうことって思ってみたり(街も静か)、物語の本質とは違うところが気になってしょうがなかった。


"ジャーロ"とは、"ジャッロ"が本来の発音に近いらしいが、ウィキペディアによればミステリー小説や犯罪小説、探偵小説などの文学ジャンルであり、映画のジャンルとのこと。"黄色"を意味するのもこのジャンルのペーパーバックが黄表紙だったことが由来らしい。序盤で殺される日本人観光客が黄色を"オウショク オウショク"としていたことには違和感。
2011.09.07 Wednesday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
張り込みプラス / Another Stakeout

54点/100点満点中

1993年製作のコメディ映画。1987年の『張り込み』の続編。製作費3000万ドル。

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クリスとビルの刑事コンビに下った命令は、犯罪組織から命を狙われ雲隠れした裁判の証人ルー・デラノを保護することだった。彼女が連絡を取るであろう豪華別荘住まいのオハラ夫妻宅を張り込むことになったが、早々に夫妻と親しくなってしまい、夕食にふたりを招待することに。その真っ最中にビルがオハラ宅に盗聴器を仕掛けるも何者かに襲われ、捕らわれの身になってしまう。
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ハードディスクに録り溜めていた深夜映画を消化中。どうして"プラス"なのか見終えて、allcinemaで調べるまで分からなかったのだが、続編だからプラスなのか。

主演はスピルバーグ映画の常連リチャード・ドレイファスと、80年代映画の青春物の顔ともいえるエミリオ・エステベス(チャーリー・シーンの実兄)。そのふたりのデコボコ刑事のお目付け役として、ロージー・オドネル演じる検察のジーナが加わり、3人で喜劇を行うわけだけど、80年代を引きずったままの90年代前半らしい野暮ったさが終始鼻につく。幼い頃「ポリス・アカデミー」シリーズがテレビでよく放映されていたが、ああいったどこが面白いのか分からない、面白いと思わせた方が勝ちという雰囲気を持った作品になっている。

演出やカメラワークは安定している。ありがちすぎて次の展開が読めるぐらいだが、まあ続編でもあるし、1作目を超えることは至難の業だったのだろう。
2011.09.04 Sunday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
HATCHET/ハチェット / Hatchet

45点/100点満点中

フローズン』のアダム・グリーン監督のデビュー作。2007年のホラー。DVDスルー作。

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不遇の死を遂げたビクター・クロウリーの霊が出ると噂されるルイジアナ州ニューオーリンズに広がるミシシッピ川の三角州地帯。失恋したベンは気晴らしに、親友のマーカスと共に「呪われた沼の怪奇ツアー」に参加することに。だが、大雨が降り始める中、船が座礁し、一行は船を捨てて森に上陸。そこはビクターの霊が出ると噂される場所であり、立ち入り禁止区域だった。助けを求めてさ迷う彼らの前に、手斧を持った大男が現れる。
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フローズン』が良作だったので、アダム・グリーンが監督脚本を手がけた本作を見てみたわけだが、B級ホラー好きがそのオマージュを作ろうとして、結局C級を作り上げてしまったような作品。

舞台のほとんどが夜の湿地帯であり、その安っぽさからスタジオでの撮影にしか見えない。題名にもなっている手斧(ハチェット)を持ったクリーチャーの出自が倫理的に、ホラーにそんなことを求めること自体間違っていることは了解しても、受け入れにくいのも大きい。また、物語の展開も安直で、最近の作品なのにどうしてここまで古臭くできるのだろうと不思議になる。


冒頭に行われていたお祭りは"マルディグラ"というもので、ウィキペディアによれば、ニューオーリンズのマルディグラは特に有名らしく、"リオのカーニバルと同じく世界の主要カーニバルのひとつに数えられる"とのこと。"カトリック教会などの西方キリスト教における四旬節の前に行われる祝賀"であり、2月3日から3月9日の間となる(毎年日にちが変わる)。

ニューオーリンズでは11日間のお祭りの最終日がマルディグラの日に当たり、"マルディグラ・カラーと呼ばれる紫・金・緑の三色に町中が染まる。紫は正義、金は権力、緑は運命の象徴である。フロートと呼ばれる巨大な山車から、マルディグラ・カラーのビーズを大量に投げ、それを人々が競って受け止める。 また、女性が胸をあらわにして乳輪の大きさを競う風習もあり、毎年その様子を 撮影しようとする人々が訪れることで街は経済的に成り立っている"。なるほど、だからピーズが奪い合い、また胸を露わにする女性がいたわけか。納得。
2011.09.03 Saturday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
レストストップ デッドアヘッド / Rest Stop

65点/100点満点中

最初からテレビ映画用に作られた2006年のホラー映画。

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彼氏のジェスと共にテキサスからロサンゼルスを目指すニコールはその道中、黄色いトラックと危うく衝突しかける。その後トイレ休憩に閑散とした休憩所に立ち寄る。ニコールがトイレから出てくると、ジェスの姿がなく、車も消えていた。途方に暮れるニコールの前に先程のトラックが姿を現わし、ニコールを襲い始める。
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充実した品揃えと独自のポップ展開を見せる新宿TSUTAYAのホラー棚でお勧めされていた作品。

姿の見えない運転手に執拗に狙われる映画には、スティーヴン・スピルバーグの初期の傑作『激突!』がある。もちろんそれを下敷きにした上で、『悪魔のいけにえ』を強引にぶちこんでしまったような作品。それだけでもお腹いっぱいなのに、唐突に超常現象まで飛び出すものだから、わずか85分と短い中に見どころが詰まりすぎて、怖さが少なくなっているのは、まあ当然といえば当然なのかもしれない。

休憩所(レストストップ)の敷地内に停められたトレーラーハウスで暮らす危うい家族の末っ子スコッティ(もちろん小人)が撮影したという体のプライベートフィルムが特典映像として収録されていて、その短いテープが一番怖い。
2011.09.02 Friday 23:58 | 映画 | comments(7) | trackbacks(0)
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