すばらしくてNICE CHOICE

暇な時に、
本・音楽・漫画・映画の
勝手な感想を書いていきます。
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2021.02.10 Wednesday | - | - | -
コンテイジョン / Contagion

77点/100点満点中

スティーヴン・ソダーバーグ監督の2011年の新作。感染パニック・サスペンス。ソダーバーグらしく、マット・デイモン、ケイト・ウィンスレット、グウィネス・パルトロー、ジュード・ロウ、マリオン・コティヤール、ローレンス・フィッシュバーグと豪華な出演陣。製作費6000万ドル。

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香港帰りの会社員ベス(グウィネス・パルトロー)がアメリカに持ち込んだウィルスは家族にも感染し、夫のミッチ・エムホフ(マット・デイモン)は妻と息子を立て続けに亡くす。チーヴァー博士(ローレンス・フィッシュバーン)の指揮の下、アトランタの疾病予防管理センター(CDC)はワクチン開発とウィルスの特定に奔走する。発生源を探るべく、香港に飛んだのがレオノーラ博士(マリオン・コティヤール)。一方ミネアポリスのミッチの下に飛び、アメリカでの感染経路を探ろうするのがエリン・ミアーズ博士(ケイト・ウィンスレット)。一方で、いち早くウィルスの存在に気づき、自身のニュースブログですっぱ抜いたフリー記者のアラン(ジュード・ロウ)は自分への注目が集まることに気を良くし、危機感を煽ることでさらなる注目を集め発言権を強めようとする。
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感染パニック物でこれだけ出演陣が豪華でありながら、上映時間が106分と知った時には短すぎると思ったし、正直駄作なのかもと疑いもしたが、さすがは「オーシャンズ」シリーズで華やかに著名俳優を使いまわし、『トラフィック』等で実録もの的な臨場感のある物語を撮ってきた監督なだけあって、ネット環境が整い、情報伝達が著しく高まった現代社会において未知の致死性ウィルスが広まった場合のシミュレーションを本作でものの見事に描いている。面白い。
2012.02.29 Wednesday 23:59 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
無料配信ミックステープ2月号(2012)
先月からブログでまとめるようにした国産ヒップホップの無料配信ミックステープ早見表の2月分。情報をネット上から集めてくださるJPRAP.COMと、2Dcolvics@KSK1988さんに感謝!


てっとり早く良作3枚聴きたいという人は上の作品がお勧め。左端は向こうの今の流れに沿う音とラップ。真ん中はCherry Brownのトラックメイカー名義でのリミックス集。彼の底力が分かる。右側は多分新人なのかな、よく分からないけれど、とにかく芯のある魅力的なラップをする。ジャケットクリックでDLサイトに飛べます。


【○】BUN『カヤベ』
2012.02.01 / 全14曲54分 / 320kbps / bandcamp
B.I.G. JOEや環ROYにトラックを提供し、OLIVE OIL主宰レーベルからもフルアルバムをリリースしている東京のビートメイカーによるインスト集。どんなジャンルといわれても分からないのだけど、この人の音を聴くといつも思い浮かぶイメージは様々な表情を見せる都会の夜のサウンドトラックというもので、今回は序盤にクラシック音楽や賛美歌が加わり、荘厳度がやや高い。この質のものを無料で配布するとは本当に太っ腹。取り逃す手はない。


【○】4TUNE『2ND』
2012.02.02 / 全12曲40分 / 320kbps / bandcamp
愛媛の4人のトラックメイカーasamiya(LHW?所属)、eNcbeats、SHINJI、ハイパーのんMCの曲をまとめた作品集第2弾。1年前の前作では洋楽ヒット曲のリミックスも収録されていたが今回はオリジナル作だけで勝負。それとインストだけではなく客演にDisryやKAI、MMTY、Pistraといった同郷のラッパーが参加している。やはりasamiyaの音が首ひとつ抜きん出ている。


【○】Y.G.S.P×SIMI LAB『Y.G.S.P Page 1: ANATOMY OF INSANE REMIXES』
2012.02.04 / 全13曲41分 / 192kbps / blog
ICE DYNASTYのセカンド『C.O.L.D.』を丸々リミックス(直リン)したSchumaとYossieによるプロデューサーチームが今度は相模原の注目クルーSIMI LABのファーストアルバムを全面改築。すでにオリジナルを聴き、彼らの魅力を知っている人であれば、さらに楽しめる仕上がりになっているが、反対に本作で初めてシミラボを聴くとなるとその良さが正確に伝わるかどうかはかなり疑問といった具合にずいぶんと遊んでいる作品。一番楽しめたのはM3。


【○】パブリック娘。『パブリック娘。セット vol.1』
2012.02.04 / 全9曲42分 / 192,256,320kbps / Twitter
今春卒業の大学生3人組ヒップホップグループ。2010年のシングル『SummerChance』と昨年の3曲入り『初恋とはなんぞや』を中心にリミックスやインスト、アカペラまでも封入した便利セット。ラップが下手と切り捨てることもできるけれど、そうした価値観だけではこぼれ落ちてしまい、非常にもったいないことになる青春時代の妄想やバカ騒ぎ、寝汗や手汗といった今この時にしか生み出すのが難しい感覚を言葉にしている。ラップの技術よりも大事な、ラップをしたい、人前に立ちたい、目立ちたい、もてたいというあまりに素直な行動原理の上に立っていて清々しくもある。最新シングルはこちら→bandcamp


【○】N.O.R.I. a.k.a Takachang『Pastel Black』
2012.02.04 / 全17曲53分 / 128kbps / blog
昨年9月にミックステープを発表し、本作の数日後にもクルー名義のテープを配信し、ネット上で活発に動いている印象のあるラッパー。ラップ自体はうまくないが、ねばりつく声質に特徴があり、しかも口の中でこねくり回すものだから生理的に受け付けられないが、ただ時々M11のようなハッとさせられるフロウ(トレースしてるだけだとしても)があって、徹底的に気持ち悪くなるのもキャラかもしれない。トラックはリミックスと自作が半々。ミックスが粗い。


【○】Yuuyu Aensland『Reeemix EP』
2012.02.06 / 全14曲51分 / 320kbps / blog
ラッパーCherry Brownがトラックメイカー時のユーユ・アーンスランド名義で昨年からユーチューブにアップしてきたリミックスをまとめたもの。彼のラップも音も好きで、これまでもフリーDL曲やミックステープを楽しんできたけれど、もしかしたら自分の中で侮っていたかもしれないと思わされる目の覚めるようなクオリティの高いリミックスが並ぶ。RUMI、TOKONA-Xに始まり、Pimp CやWaka Flocka Flameと来て、そのままAKB48の板野友美のソロ、きゃりーぱみゅぱみゅ、有象無象のアイドルグループ曲へと連なっていく。そんな多種多様なアーティストたちが集められているにも関わらず、違和感なく聴けてしまう。同じ音の質感で統一するという安易なものではなく、飽きさせない趣向を凝らした音作りがなされているわけで、素晴らしいとしかいいようがない。


【△】JinY『AIR JinY pt.2』
2012.02.09 / 全13曲21分 / 256kbps / Twitter
神戸のヒップホップデュオKs.da SquadのJinYによる昨年5月の『AIR JinY』に続く第2弾ミックステープ。"すわっぎーラッパーの2軍"と前回書いたのだけど、その印象は変わらず。自分のものにできない憧れのフロウに翻弄されている。


【○】ayge×N坊『N/A』
2012.02.09 / 全6曲16分 / 256, 320kbps / HP
ネットを活動の拠点にしているソロラッパーとトラックメイカーによるコラボ作。"明日になれば忘れられるようなラップはしたくない"と冒頭で宣言されるが、残念なことにそれほど心に残る強い個性の持ち主ではない。が、耳馴染の良いラップであることは確か。日常のよしなしごとをフロウに乗せ、違和感なくラップすることはできているわけで、そこに"表現"が生まれれば面白い。どちらかといえば、N坊のスムースなループが耳を惹く。


【△】NOIZE『NEXT』
2012.02.11 / 全13曲40分 / 256,320kbps / Twitter,blog
ニコニコ動画を主戦場にしている北海道在住の20歳のラッパー。絶招もいるPrefab Sound Pro.所属。昨年夏前にはLHW?に抜擢され、フリーDLミックステープ『GOLDEN DEMO』に3曲収録される。勢いのあるラップや人の彼氏を嘲笑するテーマの面白さなどいわゆるニコ動ラッパーとはひと味違う才能を感じさせ、かなり気になったが、今回こうして音源をまとめて聴くとRAU DEFの二番煎じさが全面に出てしまい鼻白む。若さを考えればこれから独自性を獲得していくアーティストだろうし、今のありがちなテーマのラップにも広がりが生まれるに違いない。期待したい。


【×】狩音とchappo『バルス!!』
2012.02.12 / 全9曲25分 / 320kbps / ニコニコ動画
ファイルの文字化けはともかくiTunesに入れても曲名が同じように文字化けのままで、曲順も表示されずアルファベット順となる。これは内容を判断する以前の問題で、人に聴かせる代物ではない。無料とはいえ大切な作品だと思うなら徹底的にこだわるべきだ。


【○】HIGH5『#MAJI超!』
2012.02.14 / 全11曲49分 / 320kbps / Twitter
山口県岩国市を拠点に活動する4MC1DJのグループ。年末にリリースされたセカンドアルバムからのリミックスやオリジナル曲を収録した、今のヒップホップの最新の音、でいいのかな。スワッグなラップってリリックに内容がないし、ケツの事しか歌ってないじゃんという批判があるとするならばごもっともと思うし、返す言葉もないが、この手のラップはそこを楽しむのではなく、ビートの選択やそこへの言葉の乗せ方を楽しみ、それぞれがリラックスして気持ち良くなればいいのだと思う。宇多田ヒカルをサンプリングした「Local Distance (Iwaaklyn Remix)」は今の気分/状況を巧みに掬い上げている。

2月22日に2曲増量されたデラックスエディションとして『#MAJI CHO! (World CHO! Edition)』が発表されている。今落とすならばお勧めはこちら→Twitter


【○】ERA『3 Words His World』
2012.02.14 / 全12曲39分 / 320kbps / blog
評価がうなぎ上りのERAのファーストアルバム『3 WORDS MY WORLD』。その作品にも関わっていたDJ HighschoolやBushmindを中心に全曲リミックスしたのが本作。MASS-HOLEによるリミックス集も発売されているので、これで3パターンの音で彼のラップを聴いたわけだけど、より都会的な装いをまとった本作が一番いいかもしれない。


【○】だてる〜にゃん presents The LASTTRAK『No HAIFU.EP St.Valentine Edition』
2012.02.15 / 全13曲54分 / 320kbps / SoundCloud
ラッパーMINTとのコラボでも知られる、アニメ主題歌をダンスミュージックに仕立て上げてしまう兄弟ユニットの既発曲をまとめたもの。1日限定配信のため現在は終了しているが、彼らのサウンドクラウドで視聴できる。昨年新宿歌舞伎町のど真ん中で行われたフェスで観客を盛り上げているのを見ているので、分かってはいたつもりだけど、こうしてまとめて聴くとアニメの主題歌だろうがなんだろうが、乗せられてしまう。語りの入る曲の最後でOSUMIがラップし出すM1には吹いた。テーマとも合っているし、面白い。環ROYに提供するはずだったというM7は完成形をぜひとも聴きたいものだけど。


【○】DJ souchou『rkst E.P.』
2012.02.15 / 全6曲24分 / 320kbps / Twitter
"らき☆すたにハマってて投稿動画サイトに上げてた時期の作品集"。そのアニメを見ていないので、半分も楽しめていないのだろうが、あの有名曲とこのアニメ声がミックスされてるとか、メテオの不思議なコラボとか、レゲエの神様との奇跡の邂逅とか、珍品かもしれないが、門外漢にもそれなりに楽しめる楽曲が揃っている。


【○】Lil'諭吉『FewScoops』
2012.02.15 / 全10曲32分 / 320kbps / blog
こっちはCherry BrownのLil'諭吉名義によるサンプリング物のビート集。宇多田ヒカルの「SAKURAドロップス」に始まり(わずか1時間で組み上げた曲)、ミンちゃんもラップを乗せていたPerfume使いの「Disscoh」、AraabMuzikに触発されて作ったというM8や多分Clams Casinoの影響下にあるM2など聴きどころたくさん。先のユーユ名義のに比べると統一感はないが、そこを狙って作られた作品ではないだろうし、まとめて聴けるのが嬉しい。


【○】Beats Zan『Beats Zan Remixies Vol.2』
2012.02.17 / 全7曲23分 / 256kbps / Twitter
昨年10月のVol.1に続く第2弾。Dilated PeoplesのEvidenceに始まり、The GameやLil Wayne、T.I.、Nellyといった少し前の洋楽ヒップホップのリミックス集。オリジナルを親しんでいる人には思うところが出てくるかもしれないが、そうではない身には楽しめた。音としては指ぱっちんアレンジのM4が楽しい。T-Painは新譜もさすがの出来だったけど、メロディメイカーとしての才は本当にすごいと改めて思った。


【○】NARAPAGOS productions『TRIAL BREAKS』
2012.02.17 / 全16曲43分 / 320kbps / Tumblr
奈良のレーベルNARAPAGOSが発表した"グライムビート集"。主宰のふたり(ラッパー兼トラックメイカーのRITZZZとRYUHEYXXX)と、同じ奈良のBANZAI PLATE主宰のT2Rに、ILL DE CABEZAの4人が各4曲ずつ持ち寄ったインスト集。序盤のリツの音は優しく、グライムと聞いて連想する音ではないのだけど、リュウヘイトリプルエックスによる7曲目辺りからアドレナリンを刺激し、猛々しい気分になれる音が飛び出し始める。M5にbeyondとdekishi、それにリツの3人がラップを乗せたのがこれ→SoundCloud


【△】N.R.B『日本語ラップバカ』
2012.02.17 / 全14曲49分 / 128,192,256,320kbps / blog
N.R.Bはクルー名でいいのかな。上でも紹介しているN.O.R.I. a.k.a Takachangを中心にしているようだけど、ネットでの繋がりなのか、地域性なのかは不明。10人ほどが参加しているが、まあ良くてギリギリ及第点のレベルが数人いて、それ以外はクルー作品だし、ヴァースも短いし、参加して場数をとりあえず踏んでみようというぐらいの実力。時間に余裕がある人向け。


【○】クラモトイッセイ『Something Warm On The Street』
2012.02.18 / 全12曲16分 / VBR(m4a) / blog
2分にも満たないビートを集めたインスト集。打ち込まれた音が淡々と鳴らされ、生ドラムや鍵盤も入るも、熱を帯びることなく不思議と低温のまま不思議な冷ややかさだけを抱えて進行していく。普段から電子音楽を好む人には楽しめるのかもしれないが、グルーヴや踊れる音を期待する向きには戸惑うかもしれない。


【○】Artbakely『Vol.1』
2012.02.19 / 全11曲40分 / 320kbps / bandcamp
昨年1年間で少しずつ制作し、サウンドクラウドで発表してきた既発リミックス曲に、新作数曲を加えてまとめたミックステープ。RHYMESTERやMIDICRONICAといった有名グループからネット上で活躍する若手、HAIIRO DE ROSSIやFIND MARKETといった注目の実力派、あるいはSUIKAや不可思議/wonderboyなどジャンル的には端っこにいる人たちまでをジャズ色に染め上げている。ボーナストラックまであり、かなりおすすめ。


【○】AYUKAT..ダ 宇宙脳 & シュウヤ・ドウガン『どらまちっくカガヤキぶるーす』
2012.02.19 / 全9曲24分 / 256kbps / Twitter
ラッパーのAYUKAT..ダ 宇宙脳と、トラックメイカーのシュウヤ・ドウガンによるユニット。サンプリングではなく直弾き主体の、やや調子外れなトラックの上で、語彙もあり、人とは違うことをしっかり意識し心掛けようとしているラップが乗る。MC名を見るまでもなく独自性はあるが、聴いた人が楽しめるところまで降りてきてくれるとありがたい。


【○】Chocue『Fellow The Impressive』
2012.02.20 / 全7曲30分 / 320kbps / bandcamp
ラッパーChocueの詳細は不明だが、TOSHI a.k.a 美濃の蝮が参加していることからも岐阜かあるいは東海の人なのだろう。スケートボーダーらしく、滑走している音が挿入されてもいて、その纏う空気感はスタイルこそ違うものの、S.L.A.C.K.のそれに似ていないこともない。ブルーズを宿らせた音も面白いし、実直でしっかり自分の足で立っている感のあるラップも悪くない。何周しても飽きない良さがある。


【○】MASA the RAD BONEZ『NIGHT CRAWLER』
2012.02.21 / 全7曲19分 / 320kbps / Twitter
宇都宮のラッパー。Beastie Boysを連想させる高音に最近のスワッグらしいさを取り入れつつ、ロック調のトラックの上で快活に暴れまわる。目新しい音ではないけれど、最近では新鮮でなかなか面白い。


【△】OYSTAR『OYstrumental Biz vol.3』
2012.02.22 / 全21曲51分 / 192kbps / HP
SDJ、SIMI LABと来て注目が集まる土地・神奈川県相模原のラッパー兼トラックメイカーのビート集第3弾。1曲だけ収録されている彼のラップを聴くに、まだラップの方が本業らしさがあり、トラックメイクの腕はラッパーの余技としての習作レベルにしか感じられない。本シリーズの最後にいつも収録されているリミックスは今回はサ上とロ吉の「ちゅうぶらりん feat. 後藤まりこ」。


【○】SNEEEZE『Feel So Good』
2012.02.22 / 全20曲27分 / 320kbps / datpiff
新レーベルrev3.11から第1弾として配信限定アルバム『DEVICE』が3月5日にリリースされるスニーズがまたまたミックステープをアップ。これで3ヶ月連続だ。曲自体はほぼ1ヴァースで1分前後と短く、リミックス主体のお手軽なもので、テーマも自画自賛か女性といつものラップだが、それでも飽きさせずに聴かせるフロウや語彙がある。かなり調子が良さそうで、アルバムも楽しみ。願わくば、フリーだといいのに売り物になるとダメだよねというところまでは向こうのマネをして欲しくないが・・・。


【○】OMSB'Eats『地獄』
2012.02.25 / 全10曲23分 / 320kbps / Twitter
SIMI LABのラッパー兼トラックメイカーのOMSB'Eatsが、"ゴミビーツを集めたビートテープをアップしました。どうせ誰にも使われないと思うので、供養します"との言葉と共にアップしたビート集。そんなに卑下するほどではないが、彼が時々かっ飛ばしてくれるホームラン級のトラックは確かにここにはない。シャキッとしないボトムを特徴とする最近の音が詰め込まれている。M7「幽体離脱」が良かった。ラップが乗ったら印象が変わるのかもしれない。


【○】Prefab Sound Pro.『Prefabric』
2012.02.26 / 全8曲26分 / 192,320kbps / ニコニコ動画
上でも取り上げたNOIZEや絶招が所属するクルー名義でのテープ。詳しいことは知らないが、参加しているラッパーは6人。ニコニコ動画というとらっぷびとがしていたような歯切れの良いフロウのイメージがあるが、彼らは"普通"の日本語ラップでニコ動の印象を改めるスタイルではある。ただ、6人いながらもキャラ立ちが弱く、誰が誰なのかすぐには分からないのが難点。M2のフックでの歌メロや最初穴に思えたSIMON似のKidが意外に魅力を放っていて、聴き込むほどに面白くなる。


【△】スティ『クレーター』
2012.02.28 / 全7曲19分 / VBR / HP
"せかちゃんくるー"というネット上のヒップホップクルーの一員とのこと。2ちゃんねるのDTM板にあるスレッド"みんなでラップミュージックをつくろう"に集うひとりという認識でいいのかな。上でも紹介したaygeもその仲間らしい。本作のジャケットが素晴らしいのは彼のラップや音を集約させた絵になっているから。ひたすら自画自賛するがこれでは井の中の蛙。ミキシングも酷い。




【○】WARUSHI『Lost Black (Instrumental Album)』
2012.01.19 / 全12曲38分 / 192kbps / blog, 直リン
大阪は堺市の弱冠20歳のラッパー兼トラックメイカーによるビート集。素材の味を生かした音作りであり、耳馴染は良い。が、もうひと味、あるいはふた味不足気味。ビートも強いのが欲しいところ。M4とM12が楽しめた。ラップしている方がかっこいい→「帰り道(DEMO)」(YouTube)


【△】CHESTNUT『Party Box E.P』
201.12.27 / 全9曲27分 / 256kbps / blog
23歳のソロラッパー。ニコニコ動画を中心に活動しているのかな。詳しい経歴は知らないが、ともかくポップなラップを聴かせる。下手と切り捨てられるほどではないラップと単調な歌メロのあるフック。どーぷなヒップホップを指向する向きには失笑が漏れるだろうが、今の日本で売れるヒップホップとは本作の曲調に専業作家が親しみやすいフックを付け、ブラッシュアップさせたものと考えれば、彼の歩いている道はあながち間違いではない。




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<まとめ>
2010年〜2011年1月〜8月分 Tegetther
2012年1月分 blog
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2012.02.29 Wednesday 23:59 | 音楽 | comments(2) | trackbacks(0)
書籍(2月分)
米澤穂信『儚い羊たちの祝宴』

読了 2012.02.07
☆☆☆☆/5点中

これは面白い。昨年ようやく米澤の『ボルトネック』と出会った3、青春ミステリが好物なのに今さらという感がぷんぷんするのだけど、今になってお宝を発見し読むことのできる作品がまだまだたんまりあるというのは幸せなことだ。ただ、シリーズ物が多いので、古本屋の百円棚を中心に渉猟している身には順番通りに入手できず積読状態が高くなりつつあるのが残念。

それはともかく本作は魅力的だ。お嬢様方が集う大学の読書サークル"バベルの会"がどこかしらに登場する連作短編集であり、切り口が少しずつ異なりながらも、どの1編も丁寧に紡がれた文章で伏線もしっかり張られ、こう来るのかというオチが待ち受ける。「玉野五十鈴の誉れ」と表題作が特に良い。


中山七里『おやすみラフマニノフ』

読了 2012.02.09
☆☆☆/5点中

2010年の第8回「このミステリーがすごい!」大賞で大賞に輝いた筆者の第2弾。1作目の『さよならドビュッシー』と同じようにピアニストの岬洋介が謎を解き明かす役を担う。前作はピアノ奏者を主人公にしたが、本作は音大に通うヴァイオリニスト視点となる。冒頭に前作の主人公がちらりと出てくるなど、同賞出身で一番大きくブレイクした医療ミステリ『チーム・バチスタの栄光』シリーズの前例に倣ったようだ。そういえば受賞作はどちらも黄色を基調にしていた。

音楽ミステリとなるが、まあ「チーム・バチスタ」シリーズもそうだけど、ミステリとしては弱く(推理小説を読んでいても犯人捜しをしないし、流れるままに読み進める私でも今回は序盤で犯人この人でしょと分かるほど)、学生たちが将来について悩む青春小説としての色合いが強い。文章自体はまだ不安定さを残すし、物語の作りもいささか不恰好な嫌いはあるものの、演奏シーンの熱い書き込みが帳消しにする。映画化も面白そうだ。


東山彰良『ライフ・ゴーズ・オン』

読了 2012.02.15
☆☆☆☆/5点中

『ジョニー・ザ・ラビット』以来読んでいなかったので、久し振りの東山作品。やっぱりこの人の書く文章は好きだ。本書と同じ出版社から上梓していた『ジョニー・ザ・ラビット』は、双葉社からの発表ということもあるのか、ウサギを主人公にしたユニークなハードボイルドで、実験的な設定でも面白く書けるものなんだなと感心していたが、その翌年に発表された本作はこれまでの真正ヴァイオレンス路線とは違い、真っ当な青春小説になっていてさらに驚かされた。しかも、ホールデン・コールフィールドの系譜に連なりそうな少年期から青年期にかけての思春期の懊悩を描いたものになっている。『ライ麦畑でつかまえて』を例えに出したけれど、実際に読んだのは20年も前の話でよく覚えていないし、その影響下にあるといわれる作品を読んだ時の印象との比較でしかなく、非常に危いが。

大田区平和島に生まれ育った少年・雅治は、すぐに暴力を振い、昼間から寝転がっている父親とお花畑が頭に広がる母親との間に生まれた3人兄妹の次男坊として、まるでゲトーのような環境の中を自分だけがまともだと自覚し、あるいはそう思い込ませながら成長していく。

何が良いとはっきり書けないのだけど、少年の目を通した景色はとてもクリアで、自分がその世界にはまり込んでいるような感覚すら抱く。決して幸せな話ではないし、厳しい環境でのサバイバルでもあり、この界隈で育ちたくはないなと思うが、そこで健気に生きる雅治から片時も離れなくないと思うほど魅力的な世界であることも事実で、最後のページが来ることが悲しかった。雅治に幸あれ。


伊坂幸太郎『オー!ファーザー』

読了 2012.02.25
☆☆/5点中

伊坂幸太郎といえば、00年代では一番ぐらいに好きな作家で出る作品のほとんどが当たりという驚異の打率を誇ったのだけど、最近はちょっと離れていて久し振りに読んだ。なのだけど、どうにもページをめくる手が遅い。端的にいえば面白くない。ユーモアあふれる会話文に、巧みな伏線が売りだったのにどれももたつく。帯にある"「えっ、これも伏線だったの?」と、すべてが繋がる技の冴え。"は本書に贈る言葉ではない。あとがきを読むと2006年3月から翌年12月まで新聞連載されたものを2010年に上梓したとのことで、時期的には面白いはずだし、ひとりの母親に4人の夫がいて、その高校生の息子を主人公に共同生活を送るという設定は悪くなく、キャラクターも立っているのに、最後まで物語が弾まなかった。
2012.02.29 Wednesday 23:58 | | comments(0) | trackbacks(0)
エイリアン2 ディレクターズ・カット / Aliens

78点/100点満点中

「エイリアン」シリーズの2作目。1986年製作のSFアクション。監督2作目の『ターミネーター』(1984)で大ヒットを飛ばし、今や『タイタニック』や『アバター』でも知られるジェームズ・キャメロンが監督脚本。主演は前作そのままにシガニー・ウィーバー。アカデミー賞で視覚効果賞と音響効果編集賞を受賞。製作費1850万ドル。

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ノストロモ号の唯一の生存者・二等航海士リプリーを乗せたシャトルは57年後にようやく発見され地球圏に戻ることができた。ハイパースリープから目覚め、所属するウェイランド社にエイリアンの存在とその危険性を訴えるも精神の変調を疑われる。なぜならエイリアンと遭遇したあの惑星LV426はアチェロンと名付けられ、いまや数十家族が移り住む植民惑星となっていたからだ。しかし、アチェロンからの連絡が途絶える。リプリーはアドバイザーとして宇宙海兵隊と共に再び向かうことに。
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リドリー・スコットによる1作目が1体のエイリアンが民間人に襲い掛かるSFホラーだったのと比べると、複数形となっている原題やキャッチコピーの"This time it's war.(今度は戦争だ)"が端的に物語るように、今回はうじゃうじゃと現れるエイリアンたちを職業軍人たちがばったばったとド派手に撃ち殺していくSFアクションとなる。キャメロンの意地なのか前作を意識したカットがほとんどなく、でも本格SFとしての体裁を疎かにすることもなく、今回もワクワクさせる仕上がりになっている。シリーズ物の続編はたいていポシャるが、「エイリアン」だけは有能な監督を起用していることもあり、その轍を踏まない。

ベトナム戦争の記憶がまだまだ生々しく残っていただろう1986年に作られたわけで、得体のしれない敵がいる星に赴くのは正規軍の海兵隊だ。撃っても撃っても反抗が止まらないエイリアンの姿はまさにアメリカン兵が見た北ベトナム軍のそれであり、だから彼らは細い道を伝って忍び寄る。一方で2009年のキャメロン作品『アバター』では地球からはるか遠く離れた惑星の資源を略奪するべく企業が送り込んだのは傭兵部隊となる。70年代と00年代でアメリカの戦い方が様変わりしているのが汲み取れる。本作でジェニット・ゴールドスタイン演じるバスクエスと、『アバター』でミシェル・ロドリゲスが扮したパイロット。どちらにも男勝りの女性兵士がいて目立っているのも面白い。

今回見たのは、公開時にカットされた17分をキャメロン自身が追加・再編集した完全版であり、137分でも十分長い映画が2時間半越えとなる154分となっている。いささか冗長に感じられるのは否めない。付け加えられたシーンは、重宝している映画情報サイトallcinemaの説明をそのまま引用すると、"57年の眠りについていた間に死亡したリプリーの娘や、エイリアンに襲われる直前の植民星、対エイリアン用として基地内の通路に設置されるセントリー・ガンのエピソード等"であり、"細部のセリフもいくつか追加され、全体的にはリプリーとニュート、ヒックスの交流が明確に"なった。

リプリーの娘が帰還の2年前にすでに亡くなっていたと知らされるシーンがオリジナルになかったのは驚きだ。実の娘に精一杯の愛情を注げなかった代わりに基地の唯一の生き残りの少女ニュートを必死に守ろうとするわけで、さらにいえばその母性をエイリアンたちの母クィーンと互いに認め合う場面もある(ニュートが眠りにつく際にリプリーに問いかけた質問という伏線も)。クィーンとリプリーが対面した際、両者の間にある種の交流が一瞬あり、彼女は挟撃を受けることなくニュートを連れて退くことができた。ただその後、安全を確保したと確信したリプリーは、クィーンの前で彼女が腹を痛めた子供たちを、生みたての卵もろともにいきなり火炎で虐殺するという暴挙に出る。実にアメリカ的であり、ソンミ村が頭をよぎる。『アバター』を見る限り、キャメロンの米軍批判はかなり意識的であることからもここでもそういう意図があったのかもしれない。
2012.02.27 Monday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
第84回アカデミー賞

2012年2月26日発表。

作品賞
アーティスト

<ノミネート>
ファミリー・ツリー
ものすごくうるさくて、ありえないほど近い
ヘルプ 心がつなぐストーリー
ヒューゴの不思議な発明
ミッドナイト・イン・パリ
マネーボール
ツリー・オブ・ライフ
戦火の馬


監督賞
ミシェル・アザナヴィシウス監督 『アーティスト

<ノミネート>
ウディ・アレン監督 『ミッドナイト・イン・パリ
テレンス・マリック監督 『ツリー・オブ・ライフ
アレクサンダー・ペイン監督 『ファミリー・ツリー
マーティン・スコセッシ監督 『ヒューゴの不思議な発明


主演男優賞
ジャン・デュジャルダン 『アーティスト

<ノミネート>
デミアン・ビチル 『明日を継ぐために』
ジョージ・クルーニー 『ファミリー・ツリー
ゲイリー・オールドマン 『裏切りのサーカス』
ブラッド・ピット 『マネーボール


主演女優賞
メリル・ストリープ 『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』

<ノミネート>
グレン・クローズ 『アルバート氏の人生
ヴィオラ・デイヴィス 『ヘルプ 心がつなぐストーリー
ルーニー・マーラ 『ドラゴン・タトゥーの女
ミシェル・ウィリアムズ 『マリリン 7日間の恋』


助演男優賞
クリストファー・プラマー 『人生はビギナーズ』

<ノミネート>
ケネス・ブラナー 『マリリン 7日間の恋』
ジョナ・ヒル 『マネーボール
ニック・ノルティ 『Warrior』
マックス・フォン・シドー 『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い


助演女優賞
オクタヴィア・スペンサー 『ヘルプ 心がつなぐストーリー

<ノミネート>
ベレニス・ベジョ 『アーティスト
ジェシカ・チャステイン 『ヘルプ 心がつなぐストーリー
メリッサ・マッカーシー 『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン
ジャネット・マクティア 『アルバート氏の人生


脚本賞
ウディ・アレン 『ミッドナイト・イン・パリ

<ノミネート>
ミシェル・アザナヴィシウス 『アーティスト
クリステン・ウィグ, アニー・マモロー 『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン
J・C・チャンダー 『マージン・コール
アスガー・ファルハディ 『別離


脚色賞
ファミリー・ツリー

<ノミネート>
ヒューゴの不思議な発明
『スーパー・チューズデー 〜正義を売った日〜』
マネーボール
『裏切りのサーカス』


撮影賞
ロバート・リチャードソン 『ヒューゴの不思議な発明

<ノミネート>
ギョーム・シフマン 『アーティスト
ジェフ・クローネンウェス 『ドラゴン・タトゥーの女
エマニュエル・ルベツキ 『ツリー・オブ・ライフ
ヤヌス・カミンスキー 『戦火の馬


編集賞
ドラゴン・タトゥーの女

<ノミネート>
アーティスト
ファミリー・ツリー
ヒューゴの不思議な発明
マネーボール


美術賞
ヒューゴの不思議な発明

<ノミネート>
アーティスト
ハリー・ポッターと死の秘宝 PART 2
ミッドナイト・イン・パリ
戦火の馬


衣装デザイン賞
アーティスト

<ノミネート>
もうひとりのシェイクスピア
ヒューゴの不思議な発明
『ジェーン・エア』
『ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋』


視覚効果賞
ヒューゴの不思議な発明

<ノミネート>
ハリー・ポッターと死の秘宝 PART 2
リアル・スティール
トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン


メイクアップ賞
『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』

<ノミネート>
アルバート氏の人生
ハリー・ポッターと死の秘宝 PART 2


音響賞 (編集)
ヒューゴの不思議な発明

<ノミネート>
『ドライヴ』
ドラゴン・タトゥーの女
トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン
戦火の馬


音響賞 (調整)
ヒューゴの不思議な発明

<ノミネート>
ドラゴン・タトゥーの女
マネーボール
トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン
戦火の馬


歌曲賞
ブレット・マッケンジー "Man or Muppet" 『ザ・マペッツ』

<ノミネート>
セルジオ・メンデス, Carlinhos Brown, Siedah Garrett "Real in Rio" 『ブルー 初めての空へ』


作曲賞
アーティスト

<ノミネート>
『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』
ヒューゴの不思議な発明
『裏切りのサーカス』
戦火の馬


長編アニメ賞
ランゴ

<ノミネート>
『パリ猫ディノの夜』
『Chico & Rita』
『カンフー・パンダ2』
『長ぐつをはいたネコ』


外国語映画賞
別離』 (イラン)

<ノミネート>
闇を生きる男』 (ベルギー)
『Footnote』 (イスラエル)
『ソハの地下水道』 (ポーランド)
『ぼくたちのムッシュ・ラザール』 (カナダ)


ドキュメンタリー長編賞
『アンディフィーテッド 栄光の勝利』

<ノミネート>
『Hell and Back Again』
『If a Tree Falls: A Story of the Earth Liberation Front』
『Paradise Lost 3: Purgatory』
『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』
2012.02.26 Sunday 23:55 | | comments(0) | trackbacks(0)
エイリアン / Alien

86点/100点満点中

1979年のSFホラー。監督は2作目の作品となるリドリー・スコット。主演シガニー・ウィーバー。1980年の第52回アカデミー賞視覚効果賞受賞。製作費1100万ドル。

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地球への帰還の途中で宇宙貨物船ノストロモ号は謎の救難信号を受け、未知の惑星に降り立つ。異星人の船の残骸が残され、その船内には無数の卵があった。孵化した奇妙な生物が顔に貼り付いた航宙士ケインを回収し、ノストロモ号は再び帰路につくが、彼の体内にはすでに異星生物の幼体が育ちつつあった。そして、ケインの胸を突き破り姿を現したエイリアンは脱皮を繰り返し成長していく。
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一度見た映画を見返すことはほとんどないのに、エイリアンシリーズは時々無性に見たくなるから不思議。4作とも監督が違うことでそれぞれの味があり、なおかつ傑作であることも大きいのだろうが、やはりエイリアンの造型が素晴らしく、ハードSFでありながらもそんじょそこらのホラーよりも恐ろしいのも気に入っている。

リドリー・スコット監督によるシリーズ1作目は救難信号に導かれ降り立った惑星で発見する化石化した巨大な異星人(スペースジョッキー)や宇宙船の残骸が映されたり、貨物船ノストロモ号船内での生活の様子などを丁寧に描いたりすることでSF要素に比重が置かれる。もちろんエイリアンが人間の胸を食い破って出てくるという衝撃的なシーンが前半にあるし、後半は広い船内で完全生物体エイリアンの殺戮ショーが繰り広げられ、ホラーの色合い濃くなるわけだが、エイリアンはいってみれば1体の凶悪な殺人鬼であり、その脅かし方は非常に古典的だ。

SFとホラーを見事に表している本作のキャッチーコピーが秀逸。"In Space, No One Can Hear You Scream. / 宇宙では、あなたの悲鳴は誰にも聞こえない)"。

今年スコット監督は本作の前日譚を描くとして始まった企画『プロメテウス』の公開も決まっていて楽しみだ。
2012.02.25 Saturday 23:59 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
夕陽のガンマン / Per qualche dollaro in più

76点/100点満点中

1965年製作のマカロニ・ウェスタン。監督セルジオ・レオーネ、主演クリント・イーストウッド、音楽エンニオ・モリコーネによる"ドル箱三部作"の2作目。製作費60万ドル。

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早撃ちのモンコと初老の狙撃手モーティマー。腕の確かなふたりの賞金稼ぎが最初は牽制し合いながらも、凶悪なインディオ率いる荒くれ一味を捕えるべく協力し、追い詰めていくが・・・
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西部劇の本場アメリカではなく低予算のために外国で製作され、内面よりもガンアクションをより派手により扇情的に描き、新人俳優の起用やオーケストラではなくエレクトリックギターを使った音楽などを特徴とするマカロニ・ウェスタンを世界的に認知させた1964年の『荒野の用心棒』の製作メンバーで作られた作品で、話自体は繋がっていない。撮影も同じスペインのアルメリア地方。

前作は夜陰に乗じてというシーンが多く、何をやっているのか分からない場面が多かったが、今回は前回に比べ約3倍の製作費が下りたためか、画面が非常に明快で見やすくなり、なりよりプロットがバディ物で分かりやすく、インディオと呼ばれる残忍な賞金首が統べる強盗一味をひっ捕らえるという一本道の物語になっているために、今回は楽しんで鑑賞できる。

早撃ちガンマン役には我らがヒーロー、イーストウッド。当時35歳だけど、どこか幼さが残る顔で前作でのすさんだ顔とはずいぶんと印象が異なる。一方の離れた場所からの狙撃を得意とするモーティマーは日本人の俳優・椎名桔平に似た顔立ちで、同じようなニヤっとした笑いを見せる。演じるのはリー・ヴァン・クリーフという人で西部劇では悪役をこなすことが多かったそうだ。敵のインディオは前回も悪役ラモン・ロホスを演じていたジャン・マリア・ヴォロンテ。今回も狂人じみた横顔を見せる一方で、どこか憂い帯びた表情を垣間見せる演技を披露し、主演のふたりも含めた他のキャラクターに比べひとりだけ陰影がある。

オープニングをかっさらうのはイーストウッドではなく、モーティマーの方で、大胆にして繊細に目的の賞金首に迫っていく。馬の横腹に結わえ付けたバッグのひもを解くと、ズラッと銃が並び、そのうちの一丁を選び、狙いを定めて打ち抜くシーンや、使いやすいように改造された銃で独特の射撃フォームがあるなど、こだわりを持つ知的なキャラ設定は魅力的だ。一方のイーストウッドも容赦のない早撃ちを今回も決めて見せ、そのふたりがどう互いを認め合い、共闘することになるのかが前半の肝となる。

馬、乾いた大地、ガンショット、ソンブレロ、ポンチョ、悪党の高笑いといったマカロニ・ウェスタン要素に、何度も繰り返されるエンニオ・モリコーネによるもの悲しい映画音楽には今回オルゴール付きの懐中時計からのメロディが加わることでより一層メランコリックな様相を帯び、今の時代でも十分楽しめるエンタメ作品になっている。
2012.02.25 Saturday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
死霊のはらわたIII/キャプテン・スーパーマーケット / Army of Darkness

73点/100点満点中

1993年のサム・ライミ監督脚本作。コメディホラーアクション。『死霊のはらわたII』の続編。主演は当然ブルース・キャンベル。製作費1300万ドル。

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前作の最後で中世イギリスにタイムスリップした主人公アッシュは、同地でアーサー王と出会い、彼に従う賢者から"死者の書"を探し出して来れば、現代に戻る方法が分かるはずと教えられる。
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アメリカホラー映画の金字塔のひとつに数え上げられる『死霊のはらわた』の発表が1981年。1985年にロバート・ゼメキスが「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズの1作目を大ヒットさせ、その2年後ライミ監督は10倍の製作費にあたる350万ドルをかけてセリフリメイクしたのが『死霊のはらわたII』であり、さらにその6年後、1300万ドルに膨らんだ製作費を使い、スプラッタホラーからいつのまにかタイムスリップコメディになっていたシリーズを、ライミの中学時代からの親友ブルース・キャンベルと共に完結させたのが本作。

死者の書によってよみがえったホネホネ戦士たち(原題は"Army of Darkness")と戦う体裁を取るホラーアクションの側面もあるが、強く印象に残るのはキャンベルがそれこそジム・キャリーかと思うようなコメディアンぶりを見せるシーンだ。そのドタバタ喜劇には笑うしかないし、シリアスよりも笑いを狙ったカメラワークもまた楽しい。クライマックスには人間対闇の軍隊の一大決戦が描かれるも、前半は丁寧にホネホネ戦士たちをコマ撮りするのに、後半には予算の都合か時間の短縮のためかコマ撮りの束縛から解き放たれ元気に動き回る戦士たちが出てくるなどとてもほほえましい。お金をかけた仮面ライダーや戦隊物などのヒーロードラマを楽しむ感覚で見るとより楽しめる。

1作目であれだけの本当に怖いホラーを撮っておきながら、シリーズ完結作でここに至るのは普通に考えればどうなのよとクレームのひとつも付けたくなるが、下手に拡大再生産するよりは趣向を変えて、オチを付けた本作の判断は間違っていないとはいえる。単純に楽しめたわけだし。

ディレクターズ・カット版を鑑賞したので、最後は近未来に飛ばされ、文明の崩壊を目の当たりにするアッシュというブラックなエンディングだったが、劇場公開版のオチ――スーパーマーケットが闇の軍隊の襲撃に遭う――の方がバカバカしくて好きだ。店員役でサム・ライミの弟のテッド・ライミも登場するし。
2012.02.23 Thursday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
神々と男たち / Des hommes et des dieux

77点/100点満点中

2010年の第63回カンヌ国際映画祭でグランプリ(審査員特別グランプリ)を受賞したフランス映画。1996年にアルジェリアで起きた武装イスラム集団によるフランス人修道士誘拐・殺害事件の映画化。最高賞のパルムドール候補にもなっていたが、この年の受賞作はタイの『ブンミおじさんの森』。製作費400万ユーロ。

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1995年。地中海を挟みフランスの対岸にあり、かつて仏植民地でもあったイスラム教国アルジェリア。その山間の小さな村に立つ修道院(シトー修道会)では、カソリック修道士たちが厳しい戒律を守りながら質素にして穏やかな共同生活を送る。1992年に始まるアルジェリア内戦が激化し、武装イスラム集団のテロによる犠牲者が村の周辺でも出始める。修道士たちは避難すべきか村に留まるべきか話し合うが、修道院長クリスチャンにもすぐには結論が出せない。ついに、フランス政府から修道士たちへの帰国命令が出されるが・・・。
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カンヌが評価する作品は概して文学性が高く高尚であり、言葉の使い方は間違っているが、敷居が高く、見終えた後にやっぱり映画を楽しく見るならアカデミーだよねと通俗的に思うことが大概なわけで、しかも本作のように扱うテーマが宗教となると、鑑賞する前から埋め込まれもせずにその辺に放置され積み上げられている地雷が容易に見つけられる作品となるのだけど、しかしこれがなかなか真摯な作品で、最後の最後まで静謐に張りつめられた緊張感が途切れることなく、心地良い厳粛さを抱えたまま見終えることができた。しかもクライマックスでの「白鳥の湖」の使い方にはあやうく涙まで出そうになった。

カソリック修道士たちの敬虔さと布教への不屈の勇気は、日本のキリスト教伝来の歴史を思い出してみても明らかで、そこに政治的な思惑があるにせよ、末端の修道士たちにとっては神の教えそのものだろうし、貶める必要もない。が、実際に殉教する身になってみれば、信じる神に帰依したとはいえ、様々な葛藤が芽生えるのは人間なら当然であり、その揺れる感情をハリウッドでは考えられないぐらいに長い尺を使い綴られていく。

オープニングから30分弱の間、彼らフランス人修道士たちがどれほどイスラム社会の村に溶け込み、村人に心を砕き、神への祈りを捧げ、畑を耕し、皆で質素な食事を取るのかという修道院での共同生活の様子を映し出す。日頃アメリカ映画に慣らされている身はそのフィルムの豊かな使い方にドギマギする。ただ、その神への真摯さをしっかり描いたからこそ、その後の武装イスラム集団とのやりとりに意味が生まれるわけで、何も起きない最初の30分が無駄になることはない。


強引に押し入ろうとする武装集団に対し、修道院長のクリスチャンが読み上げる一節にキリスト教との融和が図られる教えが説かれていて少し驚いた。

"信仰者に一番親愛の情を抱くのはキリスト教徒達である。それは彼らの間に司祭と修道士がいて彼らが高慢でないためである"。

コーランの中の「食卓章」にある文章らしい。しかし、本作中では触れられていないが同じ章には、"ユダヤ人やキリスト教徒を、仲間としてはならない。かれらは互いに友である。あなたがたの中誰でも、かれらを仲間とする者は、かれらの同類である。アッラーは決して不義の民を御導きになられない"ともあるそうだ。難しい。
2012.02.22 Wednesday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
荒野の用心棒 / Per un pugno di dollari

56点/100点満点中

1964年のイタリア映画。監督はイタリア人のセルジオ・レオーネ、主演がご存知アメリカ人のクリント・イーストウッド、そしてロケ地はスペイン。マカロニ・ウェスタン(イタリア製西部劇)の代表作。製作費22〜22.5万ドル。

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ニューメキシコの小さな町にふらりと現れた凄腕ガンマン。そこは荒くれ者のロホス兄弟と保安官のバクスター家というふたりボスが支配権を巡り、対立する無法地帯だった。見かねた男は両陣営に取り入りつつも抗争を煽り・・・。
************************************

黒澤明の1961年の時代劇『用心棒』を許諾を得ずに勝手にリメイクした作品で、世界的な大ヒット後、『用心棒』の製作会社である東宝に著作権侵害で訴えられ敗訴している。イーストウッドの出世作でもある。当時は1959年に始まるテレビ西部劇シリーズ「ローハイド」で人気を博すも、出演期間中はハリウッド映画に出られないという契約の縛りがあり、外国映画の本作の出演に繋がった。本作に続いて『夕陽のガンマン』と『続・夕陽のガンマン』の2作がレオーネとイーストウッドのコンビで製作された。また本作が爆発的にヒットをしたために、マカロニ・ウェスタンは1965年頃から量産され始めたそうだ。

マカロニ・ウェスタンは米国製の本場の西部劇と比べ低予算のため、外国での撮影や新人俳優の起用がなされ、激しいガンファイトや残虐性の増した表現を売りにした。私自身はこのジャンルをまともに見るのは初めて。そもそも西部劇すら見たことないわけだけど。アメリカの西部劇に日本の時代劇要素を取り入れた本作を再び日本に持ってきて全編英語のセリフで時代劇にしてしまった三池崇史監督の『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』は見たことあったが、あれはハチャメチャで楽しかった。

派手なガンアクションが当たり前となり、残虐性も格段に上がり、アンチヒーローが当然のように闊歩している現代映画事情に慣らされている目で50年も前の作品を見るわけで、西部劇という設定そのものにわずかばかりの新鮮さを覚えるものの、面白いか面白くないかでいえば微妙だ。

ふたつの勢力の中でイーストウッド演じる早打ちガンマンが安易な正義感という虚勢を張るのではなく、実利を図りながら、しかし最後には悪を懲らしめる。暗闇に乗じて事をなすことが多く、多くのシーンで何が何やら分からないのが不満。劇場で見る分には大丈夫だったのだろうか。テレビ画面の設定をいじり、鮮明度をかなり上げても闇が闇すぎてよく分からないまま展開していく。疑似夜景も多く、撮影日数がかけられなかったのか、それともそれが当時はかっこいいとされたのか、いずれにしても今の視点で見てしまうと疑問に思える演出が多い。
2012.02.22 Wednesday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
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今日も愚痴り中