2012年3月に無料配信された国産ヒップホップのミックステープ一覧(聴き落としも当然たくさんあるだろうけど)。
JPRAP.COMと、
2Dcolvics、
@KSK1988さんには本当に感謝です。おかげで今月も色々聴くことができた。
2012年3月のこれを聴いとけば大丈夫という3枚は上の3作品。左端は神奈川県は相模原のふたり組LowPassが打ち出したアルバムの販促としても有効なアイディア賞もののミックステープ。真ん中は女性ラッパーMICHOの多少路線変更をして聴きやすさが増した作品。最後のはkobori akiraというトラックメイカー兼ラッパーのもの。フリーDLの楽曲を漁る理由のひとつはこうしてまだ広く知られてはいない才能と出会える楽しさを味わえることだ。ジャケットクリックでDLリンク先へ。
【○】Do or DIE『Do you remember』
2012.02.29 / 全7曲23分 / 192kbps /
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東京のリアルゲトー国立を代表し、1月にフリーDLミックステープを発表したばかりのヒップホップデュオ金持ち兄弟のDo or DIEのソロ作。ただ全曲プロデュースが相棒のGOD-machineなわけで、実質金持ち兄弟の作品のようなものなのだろうか。マリファナ、コカイン、暴力、ビッチ。具体的な名称が使われ、より劇画色も強まり、前作よりパンチラインが増したハスリンラップ。M6でのジャジー路線も頼もしい。ここまでいくと楽しくなる。
【○】BGY『根我tive QUEST』
2012.03.01 / 全11曲27分 / VBR /
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長野のラッパーBGY。最近の活きの良いラッパーのフロウの影響を如実に受けていて、誰々風といえてしまう一面はあるものの、日本語の本来のイントネーションを大事にするという意識はあるようだし、またトラック選びのセンスは悪くなく、最も大事な自分が何をラップしたいのかということに対し、自覚がしっかりあるようだ。自分ならではのフロウをどう身に着けるのか楽しみ。
【○】Punkish B『Nip Hop』
2012.03.01 / 全10曲31分 / 320kbps /
bandcamp
東京在住のトラックメイカー・パンキッシュBによるインスト集。初音源らしい。とても良い。昔ながらの太めのビートに、サンプリングがもっと大事にされ(今は安易にできないだけだが)、様々な才能がそこかしこで花開いていた頃を思い出させる。やや単調になるループもあるが、M1、M5、M8、M10といった曲には豊かな世界が広がっている。アーティスト名から想起する音とは違い、とても上質だ。
【○】atturussn'.....『march one day』
2012.03.01 / 全20曲57分 / 320kbps /
bandcamp
リンク先のバンドキャンプでの名義は"atturussn'....."とあるが、ファイルには下でも紹介している西ノ森楽団のDJ Soul Funkyman名義であり、作り手がよく分からないのだけど、芯のあるビートとセンスの良い音使いのインスト集。曲名に"s.l.a.c.k.聴いてくれよ"とあったりして、そっちでも楽しませてくれる。
【○】腹巻『The EP 街と人』
2012.03.02 / 全8曲27分 / 160kbps /
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NORIKIYO的に街の裏通りを活写するスタイルのラッパー。いるのかどうか分からないけれど、t-Ace好きも気に入るかも。大半のビートのをslepttとENOという人が手掛け、LIGHTの音も1曲あるし、相模原周辺のラッパーなのかもしれない。M4に参加している女性ラッパー(ギロチンが名前でいいのかな?)が気になるし、ENOのフロウも興味深い。ナンバリングはM9まであるが、M7がないために、実質8曲入り。
【○】西ノ森楽団『BEATを得たMC』
2012.03.06 / 全16曲47分 / 320kbps /
bandcamp
2008年に一度リリースされた作品を無料で配信ということらしい。西ノ森楽団とは現在は東京で活動している鹿児島出身の男爵SHIGETINOとDJソウル・ファンキーマンを中心としたグループのよう。GAGLEのHUNGERの劣化コピーを目指すも挫折したのが男爵シゲティーノのフロウであり、ラジオ番組風演出のスキットを聞く限りでは人間性に好感を持てるが、肝心要のラップで損をしている。トラックはそれなりに面白いし、作品1枚としては十分楽しんで聴ける仕上がり。
【○】tajima hal『butter effect tape』
2012.03.08 / 全22曲32分 / 320kbps /
bandcamp
インスト集。これは良い。冒頭に挙げている3枚に入れようかどうか最後まで悩んだ。心地良い音の連なりで穏やかに別世界に誘ってくれる。曲がそれぞれ短いので、ちょっと飽きそうかなと思った瞬間にすぐに切り替わり、そのタイミングがまた絶妙なのだ。反対にもっと聴きたいのにと思わせておいてさらりと次に進んでしまうといういけずさも悩ましい。聴いて損なし。
【○】aRo『TapeMPC201203』
2012.03.09 / 全6曲24分 / 320kbps /
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インスト集。本来そのままを愛でても十分楽しめジャズの流麗な旋律に、ノイズやドラム各種の音が差し込まれ、美を壊していく。そこには美しいものを虐げるというほの暗い愉悦があり、確かに魅入られる。
【△】irish『what we almost lost』
2012.03.10 / 全9曲53分 / 320kbps /
bandcamp
"自分の故郷をテーマにしたアルバム"とのこと。PCの中で完結している音にしか聴こえず、その想いを共有はすることは難しいが、制作者がそう述べるからにはそういう作品なのだろう。M4が良かったぐらい。
【○】HIFANA『スネ夫Japan自慢 for 2011.3.11』
2012.03.10 / 全10曲9分 / 320kbps /
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Twigy版を聴いた時ずいぶん巧みなマッシュアップだと思ったけど、このために録り下ろしたラップだったのか。しかもハイファナ仕事だったとは・・・。確かにスネ夫が鼻高々に自慢話をする時のメロディにラップを乗せてしまうユニークさは彼ららしい。インストとツイギーのアカペラもある。
【△】Yasaka Smith『TELEPHONE BOX』
2012.03.10 / 全11曲31分 / 192kbps /
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同年代なのかなと思うほどに、かつては身の回りでよく目にしたが、今ではとんと見る機会の減ったなつかしい名称を曲名に盛り込んでいるインスト集。ただ、肝心の音にそこまでの面白さがなく、残念な仕上がり。M2やM11みたいなキャッチーさがもう少しあれば良かったかも。"メガタゾ"だけ分からず。
【○】MINT『MMMM (MOTTO MINT MEGA MIX) Edited & Mixed By PsycheSayBoom!!!』
2012.03.10 / 1枚ファイル21分 / 320kbps /
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去年の『
MMM』に続き今年も、ミンちゃんとサイケセイブーム!!!のふたりが"ミントの日(3月10日)"にその第2弾を届けてくれた。今回は東京で本作のリリースパーティが開かれ、先行視聴の形でクラブの爆音で聴くことができた。貴重な体験だった。ヘッドフォンで聴いてもその辺の音よりも十分鋭角的なビートを味わえるが、クラブで浴びたあの暴力的なとがり具合はすさまじく、その衝撃を自宅の音環境で再現できない物足りなさから
前作ほどには聴けていないのだけど、それでもミンちゃんが楽しんで作ったリミックス曲を中心にしたメガミックスなわけで、4月発売のセカンドアルバムとはまた違ったラップを聴くことができる。
【○】MC松島『Swagger Like 松 Vol.2』
2012.03.12 / 全11曲18分 / 320kbps /
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1月に発表された1作目がそれはまあひどい出来だったのだけど、そのリベンジを誓い、"とりあえず歌詞を書いて"録音されたラップ曲が並ぶ。フリースタイラーとして名前を馳せているそうだが、その手の遊びに興味はなく、彼の実力の程をよく知らない(呂布カルマを東京本戦で破ったということで覚えている程度)わけだけど、本作を聴けば、さんピン以降のラップスタイルをも自分の物とし、多彩なフロウで魅了するラッパーであることを証明する作品になっている。汚名返上はなされている。中盤に挟み込まれるスキット(クイズ)も面白い趣向で作品としてもしっかり楽しめる。フリースタイラーとして終わるつもりはないだろうし、表現したいことがあるならば、残り95%の力を発揮して商業盤を出すべきだとは思う。
【○】WARUSHI『WARUSHI Joints』
2012.03.12 / 全5曲11分 / 256kbps /
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昨年後半辺りから単発で発表してきた自作曲をタイトにリミックスしてまとめた作品。先月アップしたインスト集よりもラップの方にずっと才能を感じる。今回はビートを意識した仕上がりになっているが、原曲はソウルフルなトラックだったものが多く、それほど声に華のないラッパーとしては後ろの音は華やかな方がいい。現に、名曲ともいえる「帰り道」は以前発表されたバージョンの方がすんなりと耳に溶け込む。
【△】soakubeats『私はいかにハリウッドで10000作の音楽をつくり、しかも10セントも損をしなかったか』
2012.03.13 / 全7曲18分 / 320kbps /
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遊び心のある曲名やジャケットでも毎回楽しませてくれるソアクビーツの19本目のミックステープ。流通盤を制作中につきフリーDLを一時取りやめると宣言していたが、多作家らしく自ら反故にし、早くも新作だ。タイトルはB級ホラーの巨匠ロジャー・コーマンの自伝をリミックス。一方のジャケットはそのコーマンが製作総指揮として携わったカルト映画をリメイクした『ピラニア3D』のまんま使い。音はやや大雑把な作りだが、制作の息抜きだろう。
【○】Z.I.O-RAMA『月詠』
2012.03.15 / 全9曲28分 / 192kbps /
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1983年生まれ東京在住のソロラッパーの作品。やや劇場型の文系ラップであり、PENAというトラックメイカーが大半の曲でトラックを担当しているが、1曲だけTAK THE CODONAのビートがある。ノリだけを大事にする最近のスタイルとは違い、テーマを考え、自分なりの言葉を絞りだし、表現を工夫し、真摯に取り組んでいることは伺える。しかし、ラップそのものに力がなく、真面目さしか伝わってこない。
【○】HightBeatz『BOUDER LINE』
2012.03.16 / 全5曲15分 / 320kbps /
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新潟のラッパーの2本目のミックステープ。ノリキヨをベースに今のスワッグスタイルや音を取り入れ、"青春"でうまいこと包装したラップ。新しい何かを生み出しているわけではないが、ラップする意味や必死さが伝わってくるし、同時にポップさもあるので聴きやすく、同年代からの共感を得られそうだ。
【△】おちやめ『まゆまっしゅ』
2012.03.17 / 全8曲31分 / 320kbps /
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ネットレーベルStudio Cocoonに所属するおちやめによる同レーベルから配信されたラップを使ったマッシュアップ集。駄ラップであっても、トラックを差し替えたり名曲トラックに乗せ換えたりすることでよもやの新しい可能性が見えてくるのがリミックスやマッシュアップの楽しみなのかもしれないが、これだけ巧みに合わせる術があるならば、レーベル縛りなどしないで、もっと自由な掛け合わせで楽しませて欲しい。
【○】Gesu B『Title undecided』
2012.03.17 / 全12曲42分 / 320kbps /
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いつの間にか名義をGESUBEATZからGesu Bに変更していたトラックメイカーの3本目となるミックステープ。大雑把に分けると、フリーDL中心で活躍するラッパーに提供した曲と、勝手にリミックス(LBやAKLO、mikE maTida等)曲をまとめたものでいわば最近のお仕事まとめ集。先のワルシのミックステープではリミックスが収録されていたが、ここで2曲オリジナルが聴ける。アクロのはL-VOKALの新譜に参加した曲とDIORIとのコラボ曲が収録されていて、改めて彼のファーストソロアルバム待望熱が高まる。
【△】katafuta『23』
2012.03.20 / 全11曲33分 / 320kbps /
bandcamp
三重のトラックメイカー・カタフタが24歳の誕生日を目前にして発表したミックステープ。2曲あるラップ曲(片方にはジェット・シティ・ピープルのコンピ盤でも活躍していたJEVAが客演!)ほどにはインスト曲に惹かれない。全くダメかというとそういうわけでもない。2曲のラップ曲には声なしのインストバージョンも収録されていて、はっきりしているのはラップの乗っている方が魅力的だということ。残り7曲もラップがあればまた別な印象になるかもしれない。
【△】katafuta『STOCK BEATS』
2012.03.20 / 全11曲35分 / 320kbps /
bandcamp
上記の『23』と同時に発表された昨年制作されたビートを集めたインスト集。今回はラップ曲がなく、従ってお手上げ。派手に攻撃的だったり、飽きのこない展開があったり、親しみのあるメロディでもてなしてくれるなどの分かりやすさがないと私のお子様な耳では太刀打ちできない。
【○】XenRoN『I'm YELLOW JEAN PAUL HEVIN Vol.1』
2012.03.21 / 全10曲38分 / 128kbps /
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1988年生まれ東京在住のトラックメイカー・シェンロンの初作品集。これまでに発表したリミックス(B.o.BやJay-Zといった外国勢からKOJOE、KEN THE 390等まで)のインストという既発ビートと、4曲分の未発表トラックを収録。今年2月頃からフリーDLでかなり精力的にリミックスを発表していて、平均点は高いものの、飛び抜けた当たりがまだないわけだが、こうしてまとめて聴いてみるとそのセンスの高さに驚く。新曲のM4とM5が特にいい。
【○】MICHO『The Album』
2012.03.21 / 全15曲55分 / 320kbps /
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先日SEEDAにブログで"ビートやばい"と賞賛されていたJOE IRONが全面的にバックアップしている女性ラッパー・ミッチョの3本目のミックステープ。前作を聴いてないので比較できないが、ジャケットからして南部意識が強かった1作目と比較すると格段の成長がみられる。イケイケドンドンな派手なだけのトラックを排し、歌を意識したラップスタイルはCOMA-CHIを彷彿させ、聴きやすさが増し、おかげでラップスキルも上達したように聴こえる。
【○】MOMENT『Season Of Love』
2012.03.22 / 全7曲21分 / 128kbps /
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韓国から大阪大学に留学し、日本語、英語、母国語の3ヶ国語を扱える韓国人ラッパー・モーメントが豪勢にも2本同時に発表。しかも、今月頭にはJPラップコムのbenzeezyさんが立ち上げたレーベルrev3.11から5曲入りミニアルバムをリリースしている。それもこれも徴兵制により4月から2年間の兵役に就く彼の置き土産であり、心して聴きたい。"愛の季節"のこちらは主にメロウな曲調に感謝の言葉が述べられる。
【○】MOMENT『Season Of Fever』
2012.03.22 / 全7曲23分 / 128kbps /
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上の『Season Of Love』と同時にアップされたこちらは、比較的攻撃的なリリックのラップが収録されていて、タイトル通りに"熱さ"がある。また、客演ラッパーでも楽しめる。彼は3ヶ国語できるということで、リリックが時折ちゃんぽんになる。もちろん違和感なくフロウされてはいるのだけど、リリックを楽しむ身としては1曲のうちではどれかひとつの言語に統一してくれた方がラップに集中できて良いのになと思うことがある。
【○】LowPass『Interludes from "Where Are You Going?"』
2012.03.22 / 全7曲24分 / 320kbps /
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SIMI LABと同郷ということで彼らを紹介する際にどうしてもその名前を出してしまうが、昨年末のアルバム『Where Are You Going?』はシミラボ本隊のファーストアルバムよりも繰り返し聴いている作品であり、ハッタリやケレン味に薄く目立っていないが、なかなかどうしてQNに負けずとも劣らない才能を持ったふたり組だ。本作はそのアルバムのインタールードを本来の長さにしてラップを乗せてしまったというとてもエコな作品になっている。アルバムにインタールードなんてあったかなと思ったら、それぞれの曲の最後30秒ほどに別のビートが挟まっていて、曲数としてはカウントされないものの、確かに曲間を繋ぐいかしたビートがあった。本作を聴けば一目(聴)瞭然なようにかなり質の高いサンプリングトラックであり、それすらも曲間の繋ぎとして機能させているわけで、ならば本採用トラックの出来はさらにその上というのは推して知れようものだ。アルバムは買って損なし!
【○】Sim-Panella『de la xxx』
2012.03.23 / 全9曲29分 / 320kbps /
bandcamp
名古屋を飛び出しそろそろその名前が全国区になろうとしているラッパー・カンパネルラが昨年7月に出したミックステープ『DETOX』(
DL先)をYukutake"Kato"Shimpeiが全面リミックスしたもの。名義も"Sim-Panella"になっている。宣伝ツイートでタイムラインを淀ませるよりも、定型の宣伝文で無駄にブログを長くするよりも、こうして常に新しい音を提供し続けることが一番効果があると思う。『DETOX』のアカペラ→
DL先。
【○】TAKANOME toxicates CAMPANELLA『RETOX』
2011.12.25 / 全9曲31分 / 320kbps /
bandcamp
『DETOX』のリミックス集といえば、昨年クリスマスに発表された本作も。名古屋のレーベルJET CITY PEOPLEを呂布カルマと共に立ち上げたトラックメイカー鷹の目の初めてのまとまった作品でもある。彼はラッパーを鋭く刺しに来るリミックスに定評があるが、カンパネルラのラップの図太さは相当なものでかなり味わい深い闘いを繰り広げている。AK-69やSEAMO、ウェッサイだけではなく、名古屋には独自の音を出すヒップホップが根付いている。
【○】C.O.S.A.『REPLICAS』
2012.03.23 / 全16曲44分 / 320kbps /
bandcamp
COSAPANELLA名義でカンパネルラとのコラボ作品もリリースしている名古屋のトラックメイカーC.O.S.A.の3本目となるインスト集。違う世界を見せてくれる音の連なりがあるにはあるが、曲数や時間と比例させるとやや打率が低い。ボーナストラックとして収録されている最後のラップ曲が良い。
【○】NIHA-C『The Lantern』
2012.03.24 / 全9曲26分 / 192kbps /
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次も名古屋から。若手ヒップホップグループ國枝UrbanCampに所属するラッパー・ニハCの3本目となるミックステープ。全ビートを手掛けるのは、昨年のフリーDL曲「Brown Long Hair」(
YouTube)でちょっとしたリミックス祭を生み出したラッパー兼トラックメイカーのist。その彼の引き出しの多さは確認できるけれど、ニハCのラップとの相性はどうだろうと疑問に思っているところで登場するスキットになんだかほっこりさせられ、その後もイストの才能を上手に活用できていないように思えはするものの、M7での気持ちの乗せ方はいい具合だし、M9はエンディングも含め、気持ちの良い終わらせ方をしている。
【○】kobori akira『Who's Dope?』
2012.03.25 / 全7曲16分 / 320kbps /
HP
1989年東京生まれのトラックメイカー兼ラッパーのコボリ・アキラ a.k.a. privatebeats。これまでにKREVAやtengal6のリミックスでその名前を見かけたことはあったが、これほどの光る才能があるとは思わなかった。タイトル曲M2では安藤裕子の楽曲を使ったトラックの上にオートチューンをまぶしたラップが乗り、ラップ自体は決して巧いものではないのだけど、クレバの「瞬間SPEECHLESS」を彷彿させるメロウなメロディを生かした仕上がりで聴きやすい。すでに発表済みのM6を始めとするインストにも瑞々しい感性に満たされ、しかもそれが決して感覚だけで制作されているのではなく、やや頭でっかちな印象を持つ辺りもかなり好みだ。もっと聴きたくなり、
ホームページや
サウンドクラウドに上げられている無料配信のリミックス曲やシングルを慌ててダウンロードした。
【○】ピヨピヨブラザーズ『ピヨバム』
2012.03.26 / 全13曲52分 / 160kbps /
ニコニコ動画
ラップミュージックではあるけれどヒップホップではないというものいいをよく聴く。そういった差別化を図る人間にとってはこの音楽はまさにラップミュージックなのだろう。しかし、ラップとヒップホップはいい換え可能な便利な言葉として捉えている身にはどうでもいい話ではある。ただ、口ずさみやすいメロディを備えたフックと比べるとヴァースの魅力は絶望的で、そこはかとなくファンクでソウルなグルーヴを忍ばせていながら、音質が全く持って最悪な点はいかんともしがたい。もったいない。市販を考えていないフリー作品であっても、これだけ色々出てきる中で少しでも人に聴いて欲しいと願うならば、もっと気を使うべきだ。それとタイトルが壊滅的にださい。
【△】FATIGUE『FAREWELL』
2012.03.26 / 全9曲34分 / 128,320kbps /
ニコニコ動画
基本的にニコニコ動画を主戦場にラップしている人たちには否定から入る。けれど聴き進めるうちに評価できる点を発見し、貶められない悔しさを味わう。が、本作ではそういった思いをせず、一貫してダメだったので、やっぱニコ動だしねと溜飲を下げることができた。めでたし。ラップは童子-TやK.Jのスタイルを継承するもので、それまでは一体誰が評価しているのか不明だったが、こういう人たちがいるのかと納得できたのも収穫。
【○】XenRoN『The Se7en Deadly Sins Remix Tape』
2012.03.28 / 全7曲23分 / 128kbps /
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昨年4月に行われたJPラップコム企画の『The Se7en Deadly Sins』の全7曲をシェンロンがリミックス。当時はまだまだ無名だったが、今では若手の筆頭に躍り出たSALUや、ミックステープ攻勢をかける実績のSNEEEZE、ファーストアルバム発表間近のKOJOE、たった1枚のミックステープしか出してないのに依然として軽やかで自信満々な足取りが頼もしいKLOOZと活きの良い若手が揃う。全7曲のアカペラのDLは
DR.PAPから。
【○】thamesbeat『Portopia '81』
2012.03.28 / 全8曲19分 / 128kbps /
HP
"テムズビートは僕の大学の同級生です"とのひと言と共にtofubeatsがDLリンク先を紹介ツイートし、その直後にはネットレーベルMaltineRecordsからトーフビーツの紹介文付きで再配布されたラッパー兼トラックメイカーの作品。iTunesをよくよく見てみると彼が以前に配信したフリーDL曲2曲を持っていたが、記憶になかった。トーフビーツにも似た柔らかい感性を覚えるが、評価はもう少し色々聴いてから下しても良さそう。
【△】DJ D-LYTe『FAVORITEZ vol.9 -REPRESENT TSUYAMA JYO KA-』
2012.03.28 / 1枚ファイル57分 / 320kbps /
blog
岡山県津山市産ヒップホップのみで作られた作品。本来的な意味でのミックステープは取り上げないのだけど、津山のラップを聴く機会はあまりないわけで面白い試みだ。最近のラップに付いていけないとの声を耳にするが、そうした人たちには馴染みやすいラップがここにはある。古き良きスタイルが津山に眠っているともいえるかも。唯一の聴きどころは中頃に登場するAnty The 紅乃壱のヴァース。大海を知る蛙はさすがに貫録がある。
【△】親指フリック×ダナルDドック『踊る電波男』
2011.03.29 / 全11曲39分 / 320kbps /
blog
ニコニコ動画ラッパーたちの曲をダンスビートにリミックス。ダブルネームになっているが、大半の曲をダナルDドックが手掛けている。M1の軽薄で下世話なラップと分かりやすいビートにLMFAOのような展開を期待するも、M2からはいかにもなニコラップが始まり、げんなりさせられる。そんな中でVACONというラッパーが面白い。SOUL'd OUTのDiggy-MO'が急ぎ過ぎて言葉を落としてしまったようなラップをする。もっとまじめにラップをしている曲を聴いてみたい。ほとんど登場しない親指フリックがM8で全部持っていくのはずるいようにも思う。しかし、本当の聴きどころは"オマケ"として収録されているSPEEDや工藤静香のリミックスかもしれない。
【△】吉沼『EXTRACKS (2009-2012)』
2012.03.30 / 全6曲18分 / 192kbps /
bandcamp
2009年からの3年間で制作したリミックス集。原曲のラップにある程度魅力がなければ、いくら音を尽くしても改善するのは難しいわけで、先月リリースしたミックステープでは生き生きとした才気を発揮させていた吉沼でもここでは苦戦している。サックスの響きに引き込まれるM4や郷愁をかき立てるM5にしても、この音の持つ力を倍増させるラップが他にもっとありそうだ。
【○】WARUSHI『I'm alone (Free Demo EP)』
2012.03.30 / 全6曲20分 / 256,320kbps /
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今月2本目のミックステープ。既発曲が2曲(「帰り道」が収録されている!)に、新曲が3曲。内面を素直に言葉にした低音ラップはなかなかかっこよく、少なくなりつつある文系ラッパーのひとりとして頑張って欲しいが、真面目なテーマや言葉をいくら真摯に綴ろうとも、くだらない曲から飛び出してくる強烈なパンチラインには敵わないわけで、もう少し耳に引っかかる言葉が欲しいところではある。
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<まとめ>
2010年〜2011年1月〜8月分
Tegetther
2012年1月分
blog
2012年2月分
blog
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