2012年5月にアップされた国産ヒップホップ・フリーダウンロードミックステープ一覧。
JPRAP.COMに、
2Dcolvics、そして
@KSK1988さんのおかげで今月も色々聴くことができました。本当にありがたいことです。JPラップコムを批判する人の気がしれません。
てっとり早くお勧めを教えてくれという方には上の3枚!左端はLBとOtowaとしても活躍するLBのソロ作。日本語ラップのミックステープ界隈でラップ技術と作品としての完成度で一番なのを挙げろといわれたら間違いなく本作。真ん中は名古屋のラッパーHASANがようやく出した処女作。右端は同じく名古屋のラッパーUNIVERSAL TOSHIKI。フリーDLにも積極的なためか名古屋から続々と才能あるアーティストが出てきている印象がある。ジャケットクリックでDLリンク先へ。
【△】Naoto Taguchi『Law.End.Low.EP』
2012.05.01 / 全7曲10分 / 320kbps /
bandcamp
配信終了。今月も精力的に動き続けるOilworks Rec所属、東京在住のトラックメイカーのビート集。音量を上げたり下げたりの波状攻撃はまだまだ続く。"Bandcampは便利だけど何かインテリ感出るから使いたくない"と呟いていたラッパー兼トラックメイカーがいたことを思い出す。もちろんこの作品に言及してのツイートではないけれど。
【△】PRG『アミーゴ』
2012.05.01 / 全15曲57分 / 192kbps /
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2月にソロ作を出したDo or DIEとその2歳下の実弟GOD-machineによるユニット金持ち兄弟で一躍名を馳せた東京最後の秘境・国立ゲットーを根城にするJWEWLL RECORZからついに3人目の男が姿を現した。ドゥーオワダイと同い年の1982年生まれ。サグ生活をユーモラスに描いた先の2作とは異なり、ヒップホップ黎明期のように少ない音数の上で、ラップに無駄な技巧を凝らすのではなく、生身のリリックでその生き様を刻む。
【○】菊禅『DEFECTION E.P.』
2012.05.01 / 全6曲19分 / 192kbps /
blog
長野県松本で活躍するラッパーの2作目。前作『菊禅は君に語りかける』(
DL先)から8ヶ月、安易に流行のフロウに流されず、抱いた気持ちを率直に言葉にし届けようとする真っ直ぐなラップに揺るぎはなく、非常に好感が持てる。が、成長という観点で考えると、先の作品に収録された13曲の良いところをギュッと凝縮した印象であるのは否めない。分かりやすい変化が見たい。
【○】N▲OTO T△G▼CHⓘ『Gяavity.EP』
2012.05.03 / 全5曲12分 / 320kbps /
bandcamp
配信終了。あれ?上記と同じナオトタグチのリミックス集だけど、こちらは楽しんで聴ける。ウェーブ具合が弱めてあるからか。でも後半に行くと辛くなる。
【△】河童樹桜『早良区TRACKS』
2012.05.03 / 全7曲27分 / 320kbps /
SoundCloud
福岡のトラックメイカーによるビート集。貴重な30分弱の時間を無駄に費やした者だけが味わえる純粋な憤りをあなたもぜひ。
【○】VA『FOGPAK #2 (mediafire edition)』
2012.05.04 / 全14曲64分 / 320kbps /
bandcamp
"春風が運んできたもの"をテーマにした楽曲をネット上で募り、まとめたインスト集。4月27日にアップされるもすぐにリミットの200DLに達したため本作はそれにボーナストラック2曲を追加し、優良アップロードサイト・メディアファイアに上げられたもの。エレクトロ音楽を語る言葉を持たないので前半の抽象画のような音は苦手だが、具象を目指した印象のM5からの3曲は楽しめる。kobori akiraも参加し、唯一のラップ曲ではhimeshiがいる。
【△】OROCHI『START LINE』
2012.05.05 / 全6曲22分 / 128kbps /
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"処女作含めた初期の音源"ということでニコニコ動画にアップした2010年、2011年の楽曲から6曲を選出。早口で言葉を詰め込むラップながら、抑揚をしっかり付けることで聴きやすさがある。反対に行き過ぎたS-WORDといった印象のドスを利かした声音は気持ち悪く右傾化したテーマと共にうんざりさせられる。ただ、問題はそこではなく、楽曲に曲順が振られていない点やiPodで聴く際にはなぜか前半の曲が飛ばされてしまうことだ。
【○】HASAN『Randam magik』
2012.05.05 / 全13曲41分 / VBR /
Twitter(プロフィール欄)
JPラップコムが企画し有望な若手を集結させた昨年のミックステープ『#Nibiru』(
DL先)にも参加していた名古屋のラッパー兼トラックメイカー・ハサン。新曲PVをアップしてはすぐさま消すという謎の行動を繰り返し、2DColvics主宰者がよくこぼすのを見ていたけれど、ようやくその才能の全容が明らかになる。喜び勇んで何度も何度も全13曲を聴き入るもその底が見えない。スワッグなラップは当然のようにできるし、訴えるべきテーマの曲では荒々しいフロウで聴き手の心の奥の方にまで届けようとする。またJinmenusagiのように考え抜いた上でキュビスムに行き着いてしまったがごとくなスタイルまで持ち合わせてもいる。ただ、耳に残るパンチラインが乏しく、ラップを聴く楽しみというよりはビート(全曲ハサン作)を含めた音楽というもっと広いくくりで楽しむというのが正直な実感だ。一方で良さが全然分からないという意見があってもなるほどなとも思ってしまう。この魅力を論理立てて言葉にするのは難しく、買いかぶっているだけかもしれないという危惧があるからだ。とはいえ1〜2回聴けばそれで終わりなミックステープがほとんどである中、強く惹かれるのは確かだ。
【○】LM Session『60 Munits』
2012.05.01 / 全12曲60分 / 128kbps /
blog
ひとりユニットLadymedia名義でも活躍するJun-ichi Yamashiroが他ふたりと共に生音を一部取り入れつつ、ジャズセッション風にプログラミングした作品、ということでいいのかな。インスト作。流暢な鍵盤とぎこちないビートはつまりそういうことなのかもしれないけれど、パッと聴いた分には全部生音に聴こえる。すごいもんだね。
【○】gesubi『#okodayo E.P』
2012.05.04 / 全7曲27分 / 320kbps /
blog
"GESUBEATS"から"Gesu B"を経てついには"gesubi"になった若手トラックメイカーのリミックス集。ゲーム音楽に始まり、ももいろクローバーZやTomato n' Pineなどのアイドル曲、BIGBANG、2NE1といった韓国勢まで、人気ジャンルの楽曲をテンションの高いいつものビートで補強し、非常に聴きやすく誰でも楽しめる仕上がりに。特に最後に収録されている33分の「MoombahPsy キメセクMIX」での常時アゲっ放しの展開は見事。
【○】Nogizaka『近況報告ep.』
2012.05.08 / 全5曲12分 / 320kbps /
ニコニコ動画
乃木坂といえば今の私にとっては俄然46なんだけど、それはともかく20歳のニコ動ラッパー・ノギザカの処女作。Jazz LiberatorzやPete Rockのジャジーなビートの上で初めての音源ということでいろんな表情を見せてくれるため(どちらが客演のラップなのか分からなくなるほど)、これこれこういうラッパーと断定することは難しい。が、自分の言葉で書けているリリックだからこそニコニコ動画のような狭い中で牙をむく(しかもそうした態度に照れつつ)のではなく、M1の前半のように自分自身を表現する方向性に進む方が良いとは思うのだけど。いずれにせよ、苦手なニコ動ラップ臭は比較的少な目で楽しめる。
【○】Jinmenusagi『Gold On Deck MixTape』
2012.05.07 / 全7曲20分 / 160kbps /
blog
リンク先で彼が説明しているように、Soulja Boyが昨年末に出した同名のミックステープから7曲分のインストを使いリミックスし、曲単位ではなくミックステープ単位で競い合おうという企画に応募した音源。賞金は1000ドル。結果は6月5日に出るらしい。抑制されたビートに囚われてしまったのか、ラップが単調になり、リリック面でも面白みに欠けるが、貪欲に挑戦するというそのフットワークの軽さは本当に素晴らしい。正規アルバムを1枚出して、以前のようにミックステープや単曲でのフリーDL曲発表は途絶えるのかなと思いきや、まだまだアグレッシブに動くようで楽しみなラッパーのひとり。
【○】SUPER SONICS『SUPER SONICS THE MIXTAPE Vol.2 (Short ver.)』
2012.05.08 / 1枚ファイル19分 / 320kbps /
blog
配信終了。TARO SOULとDJ威蔵によるユニット・スーパーソニックスの第2弾ミックステープ発売を前にしての販促版。タロウソウルといえば、ダメレコ時代は良かったけどメジャーに行って失敗とか、ライブで実力は十分証明されるのに如何せん顔が残念で・・・などと(主に私によって)揶揄されているが、何か吹っ切れたのかかっこいいラップをしている。DJにも花を持たせているため彼が完全な主役ではないが、それもまたヒップホップなのだろう。
【○】NOIZE『Demo Album Vol.1』
2012.05.08 / 全5曲13分 / 256kbps /
blog
2月に発表したミックステープ『NEXT』のDL数が1400に達した記念に再配布された、北海道のラッパー・ノイズの初期作。これだけ落とせていなかったのでありがたい。曲名からも2010年頃の楽曲を集めたもののよう。RAU DEFの影響下にある現在のスタイルでは当然なく、ビートにやや翻弄されている感もあるが、それでも最初から十分聴かせる実力があったのだと分かる。リンク先にはこれまでの4作品すべてが再アップされている。
【△】N▲OTO T△G▼CHⓘ『Sunrise.EP』
2012.05.09 / 全5曲7分 / 320kbps /
bandcamp
配信終了。今月3本目。まあ、うん、そう、ひとつひとつは短いんだけどね。
【△】うき『秘密の箱』
2012.05.10 / 全11曲32分 / 320kbps /
ニコニコ動画
ニコニコ動画を主戦場にするラッパー。ニコ動特有の言葉を詰め込むラップはやはりイマイチとしか思えないが、彼らのもうひとつの特徴であるポップなフック作りは本作でも発揮されていて聴きやすい。狭い世界だけで純粋培養されたラップであることに変わりはないが、ひとり4役をやっているとはクレジットを見るまで気づかなかった。
【◎】LB『KOJUN』
2012.05.11 / 全20曲41分 / 192kbps /
YouTube
前作『AOAOAO』(
DL先)も他とは一線を画す出来だったが、今回はさらにユーモアを過剰にまぶしつつも(歌詞欄が特に)、仲間のフックアップを忘れず、ポップさも加速させ、エンターテイナーぶりを際立たせている。RANLがぶっこまれる中盤がハイライトではあるが、M15でのさわやかな俺節や、女性ボーカルIKに大胆に歌わせたSAI BEATZによるM19での分かりやすさは魅力的だ。しかし、なぜ皇潤?胡散臭さを笑う精神は納得できるけど。
【○】SIGNATOR AND MARMELLO『tokyo slump』
2012.05.11 / 全6曲16分 / 320kbps /
bandcamp
米国東海岸での暮らしが長かった(?)日本人トラックメイカー・MARMELLOと、ロサンゼルスのラッパーSIGNATORとのコラボ作。ラップは当然英語で、有名か無名なのかは知らないが、その辺の日本人ラッパーより年季の入ったフロウがあり、素人に毛が生えた技量のラッパーのミックステープも載せているこの記事にはずるいのかもしれない。ビートは上記の経歴が頭にあるからかもしれないが、国籍のはっきりしない音の猥雑さが興味深く、深みがある音も特筆すべきで、しっかり利いている低音にも惹かれる。
【△】N▲OTO T△G▼CHⓘ『Twilight.EP』
2012.05.12 / 全5曲11分 / 320kbps /
bandcamp
配信終了。ナオトタグチの4本目。dope.
【○】SKRILL『RAIN FREE EP』
2012.05.12 / 全9曲38分 / 160kbps /
YouTube
那覇にある服屋CRACKLIMBが企画した沖縄のラッパーを紹介するミックステープシリーズ。1本目はAUDIO REVEL FOUNDATIONに所属するスクリル。2010年にSKRILL a.k.a. 桜 the ILL名義で
リリースした『BLACK RAIN』を基に未発表音源をも収録した作品となる。序盤の古臭い俺々ラップには"小首を傾げ"ざるを得ないが、M3のトラックに惹かれ、心の無駄な鎧を外したM5やM7は悪くない。
【○】NOR『BANMIKASS』
2012.05.12 / 全9曲36分 / 160kbps /
YouTube
上記のスクリルに続く那覇の服屋クラックライム企画の2本目。MSCの下部組織SATELITEに所属し、昨年リリースされたアルバム『FULL SMOKE』ではNOE'名義で1曲で参加した経験を持つノアが、2008年に
限定発売した『BANGMECUSS』を基にしたミックステープ。沖縄のラッパーと知れば手を伸ばすようにしているのだけど、カクマクシャカ以外に政治に言及したリリックを聴いたことがなく、そういう意味では物足りなさを覚えることが多い。ノアも序盤こそはよくある強面ですごんでみせるが、同じ村の住民に当たり散らすのも飽きたのかM5からは琉球言葉を使い、もっと広い視点で噛みつき始める。そのM5とM6がハイライトであり、この2曲だけでもダウンロードする価値はある。
【△】Studio Cocoon『Weekly Rivalry』
2012.05.13 / 全11曲23分 / 320kbps /
YouTube
昨年5月設立のネットレーベルのスタジオ・コクーンが2ヶ月間にわたり行なった企画をまとめたコンピ。所属ラッパーたちが同じトラックの上で同一のテーマでラップし、毎週1曲ずつ発表、最後に人気投票を実施し、その投票結果に基づき順番や小節数を決め、参加者全員でマイクリレー曲を作るというもの。それ自体は非常に面白い試みだが、コクーンの常としてラッパーの質が悪く、従って企画の面白さにラップが追い付いていない。
【○】LASTorder『risk allocation』
2012.05.14 / 全11曲42分 / 320kbps /
HP
彼の名前を初めて見たのは、Shing02が客演したシアトルのトラックメイカーMarcus Dの2010年の楽曲「Parallel Universe」で、親しみやすい温かい音で包み込んだ良リミックスだった。トゥイッターを見ると19歳とあり、当時は17歳ということか!それはすごい。本作はその曲も含めた"1・2年位前までの曲を詰め込んだ"作品集。キラキラした木漏れ日のような音色をふんだんに取り込んだダンスミュージックであり、オシャレ度数も高い。ただ、それだけではないと証明するかのように攻めた楽曲もあり、この流れの中では無粋な印象を抱く。
【△】yuuki a.k.a. y2DAk『trippy』
2012.05.14 / 全16曲60分 / 320kbps /
Twitter
22歳と若いトラックメイカー兼ラッパーの作品。事前に配信していたドラマ「SPEC」のフレーズをサンプリングしたM8など発想自体はユニークだが、全16曲中9曲もの割合を占める本人ラップ曲が酷い。RHYMESTERやAKALITTLEのリミックスワークなども収録されている。
【○】UNIVERSAL TOSHIKI『BEST IS "C"HEAPEST-UNIVERSAL IS BACK-』
2012.05.15 / 全9曲32分 / 160kbps /
Twitter
またもや名古屋のラッパー。2010年にファーストアルバムを全国流通させていて、2作目に当たる。リズムを完全に掌握したラップはそれだけですでにビートにも楽器にもなりえる。最新のフロウからあの土地特有のアクの強さまで兼ね備えているのも素晴らしい。疑問に思えるのはMC名ぐらい。
【△】Thrive『Talk Box』
2012.05.17 / 全12曲35分 / 192,VBR /
ニコニコ動画
ニコニコ動画に曲をアップしているラッパーのすらいぶ。M1、M2とジャズトラックが続き、その雰囲気の良さに期待を抱かせるも、M3で急に音が大きくなり鼓膜を破壊する。そのM3はDハマービーツ製であり、音量調整から設定を変更し我慢もするが、M4でアウト。それまで丁寧に隠してきた粗が一気に吹き出る。ミキシングがどうのいう前に基本的な音のボリューム設定は統一して欲しい。
【△】シロクロ『シロクロのEP』
2012.05.18 / 全5曲11分 / VBR /
Twitter
Twitterのアカウントには"下手糞で楽しくてニヤニヤできる日本語ラップをやる"と書かれている。それが端的なこの作品の説明だろう。自分たちが一番分かっている。楽しいのが何より。でも、ジャケだけは昨年のシングル『雑』の流用だし、変えた方が良かったのでは。
【○】PAN PACIFIC PLAYA『PAN PACIFIC PLAYA 3』
2012.05.18 / 全9曲35分 / 320kbps /
bandcamp
日本語ラップファンにもお馴染みのトークボックス・デュオLUVRAW & BTBも所属するパン・パシフィック・プレイヤのコンピ第3弾。前2作と異なり、今回はフリーでの放出。アーバンでエギゾティックでシャレオツ、メロウでチルってブッ飛んでゴージャスかつアダルトなヨコハマのダンサブル海風を堪能できる1枚。
【△】Solid Kickerz『Medicine For Ear』
2012.05.19 / 全11曲30分 / 320kbps /
Twitter
大阪のYELLOW HIPPYというクルーに所属する3人組グループで、TEACEとTsuge、BRAIN-Nの2MC1DJからなる。M1のラップが誰なのかは知らないが、SNEEEZEかSALUが加わっているのかと聴き違う。珍妙な笑いやすわっぐすわっぐ歌うのは結構だけど、物真似はスワッグでもなんでもない。一方で猿真似ではない方は朴訥としすぎていて、これなら真似っこでもビートに乗れている方がいいのかもしれないと思えてくる。が、やはりその後もQNだったりS.L.A.C.Kだったりに節操なく憑依する様子は、若いにしても、表現者としては微妙だ。
【○】國枝UrbanCamp『How To"Kunieda"』
2012.05.20 / 全14曲57分 / 192,320kbps /
Twitter
NIHA-CやDJオカワリ、先月はソロでミックステープを発表したShintalowを擁する名古屋の若手クルー・國枝UrbanCampの全貌がついに明らかになる1枚。かなり期待をしていたためか拍子抜け感は否めない。マイクリレー曲が多いわりに各自のキャラ立ちがまだ弱く、そうなると一番耳を惹くのはやはり"黒人よりやばい日本人"ニハシであり、次にColaか。もう少しガツンと来る楽曲を聴けると思っていただけに残念。
【○】YONTZ『Epic』
2012.05.21 / 全11曲36分 / 320kbps /
bandcamp
ニコニコ動画ではラップも披露している北海道在住のトラックメイカーによる初のビート集。前半はやや単調だが、軽快なポップさが全面に出てくるM4から一気に聴きやすくなる。似たような音色の電子音もまた飽きを誘うものの、親しみやすいメロディはやはり正義であり、終盤の長尺曲も含めて前半の不安は嘘のように楽しんで聴ける。
【○】YAGI, HSUS & God Dam『Azalea MUSIC』
2012.05.21 / 全9曲29分 / 320kbps /
bandcamp
3人のラッパーのソロ作が3曲ずつ収録されているミックステープ。3人の関係性は不明だが、ガデムは川崎で、『#Nibiru』にも参加していたヤギは日本で生まれ育ったハーフで現在米国在住。若い頃はやんちゃもしたが、今は更生し仲間にも恵まれ、そして音楽という生きがいを見つけられて感謝しているという少し前にはやったテーマをラップする。3人とも声質に特徴があり、確かに使い回されたネタではあるが、非常に聴きやすく思わぬ良盤。
【○】A$K×DJ ABELT『The Promotion Mix Tape Project A』
2012.05.25 / 全21曲35分 / 192kbps /
YouTube
昨年末の5曲入りミックステープ(
直リン)は日本人が手掛けるオリジナルトラックで揃えてきたが、今回は洋楽ヒップホップのリミックス。ただ、DJアベルトによるDJプレイの中で原曲の前後にそのリミックスを差し込んでくるという趣向を取るために、ラップがパーティを盛り上げるサイドMC的なもので終わっている事が多い。タロウソウルのミックステープとも似ているが、彼の場合はアクが強いのでそれを巧みに回避した。しかしSIMONスタイルのアスクだと向こうの音にはまりすぎて、ちょっとあのサイド、DJの邪魔じゃないという損な役どころに陥ってしまう。
【○】GASFACE『T.O.K.Y.O』
2012.05.25 / 全9曲23分 / 192kbps /
YouTube
2010年10月の『NEW TYPE VIRUS』(
bandcamp。視聴のみ)以来となる2本目のミックステープ。JPラップコム企画の「
七つの大罪」でも起用され、期待の若手のひとりだったが、規模だけは一向に大きくならないものの、流れだけは速い今の国産ヒップホップ界では少し忘れられた存在だ。本作では向こうのヒット曲をリミックスしているわけだが、その音を楽しむ以上のラップがあるわけではない。本場のビートを乗りこなすだけで賞賛される時代ではもうなく、今やそれが前提であり、その上でどんな内容を語るかが問われている。
【○】Y.G.S.P×2NE1『REMIX EP Pt.2』
2012.05.27 / 全5曲19分 / 320kbps /
SoundCloud
1年半も前になる1作目(上記リンク先からDL可)に続く第2弾。ミニアルバム『NOLZA』からの楽曲が使われているが、日本語版ではなく韓国語バージョンを使用しているためにずっこけることなく2NE1本来のかっこいい歌やラップを楽しめる。原曲にある装飾を外してより機能的なダンスミュージックになってはいるのだけど、M3のようにもう少し壊しに入っても面白いのかなとは思う。けれど、一連のリミックス仕事(彼らの
ブログの左枠からDL可)を聴く限り商業的に通用する地点を目指しているのだろう。M5をラストに持ってきて大団円を迎える構成も5曲と短いながらも作品としての完成度を意識してるからか。
【△】村上ヒデキ『showcase BEST』
2012.05.27 / 全25曲79分 / 192,256,320kbps /
ニコニコ動画
ニコニコ動画で活躍するトラックメイカー・村上ヒデキがこれまでに4作出した「showcase」シリーズのベスト盤。80分弱で25曲も収録されているのにピンとくる曲が少ない。ニコ動はラッパーはともかくとして音に関しては聴かせるビートが多いだけにちょっとした落胆を味わえる。
【×】おまんちん『友達ん子☆仲間ん子』
2012.05.27 / 全8曲27分 / 320kbps /
直リン
岩手在住のラッパーで、その技量からもおそらくニコニコ動画で活動しているのだろう。そんな彼の客演曲を集めた作品集らしいが、Anarchyをさらに不器用にした彼と一緒に曲を作ろうとする仲間なのだからたかが知れてるわけで、相当な忍耐力がなければ聴き通せない。しかし、DJ PMXは偉大だ。「4 MY CITY」のリミックスが収録されていて、その曲だけは幾分ラップが輝いている。
【○】Da.I『Comma』
2012.05.28 / 全14曲59分 / 192,320kbps /
blog
オリコンチャートで1位になった曲だけをサンプリングしてビートを作るというユニークな試みのミックステープを2010年に出した兵庫県のトラックメイカー・ダアイがようやく発表した新作。ラップを乗せることを前提にしたというよりも音を使って自分の好きな絵を自由に描いた印象のM7までの前半が魅力的だ。聴き手もそのキラキラと光る荘厳な光景だったり、沈鬱な雲が立ち込める広大な大地だったりを踏みしめることができる。
【○】秀吉a.k.a.自称アイドルラッパー『第壱拾弐次元』
2012.05.28 / 全5曲17分 / VBR(m4a) /
Twitter
1992年生まれ東京在住の女性ラッパー・ヒデキチ。"2.5次元浮遊中の軽度の腐女子"とのこと。色物としか思えないMC名や、最初に聴いた時に受けた粗いミキシングの衝撃、あるいは日本語として聴き取れても何をラップしているのか意味が分からないリリック、さらに最悪なのは曲順がナンバリングされていない点など、マイナス材料が多いにも関わらず、ついつい聴いてしまうのは、不安定さすらも艶として昇華しているラップがあるからだろう。女性ラッパーの原型ともいえるCOMA-CHIの影響は大きく、当然のようにRAU DEFも顔を出すが、リリックを読むと表現力の面白さも確認できるわけで、意外に期待できるのかもしれない。
【○】蓮臥『支離滅裂EP』
2012.05.28 / 全6曲19分 / 320kbps /
bandcamp
UMB東海地区代表のNAGIONが在籍する岐阜のヒップホップクルーFree Dial Foundationで、ラッパー兼トラックメイカーとして活躍する蓮臥。本作は彼の自主流通盤『
事実無根 EP』に続く作品となる。今回はフリーDL。呂布カルマのサードアルバムに不穏なビートを提供していたトラックメイカーとしての印象が強いが、本作ではラッパーとしての凄味を見せる。ミンちゃんの地位を脅かすM2ではヴァースはともかくついつい口ずさんでしまうフックの魔力たるや。一方でM3やM4のテーマは非常に耳が痛い。同時に先日のラッパー・Guinnessの
一件を持ち出すまでもなく、トゥイッターの流行でアーティストとリスナーの距離がさらに近くなったことで不幸な衝突がたびたび起きるようになっている。その際に呟きで罵倒を返すのではなくラッパーならラップで返せよという無茶な声も聞かれるけれど、それを実際にラップにしてしまった楽曲でもあり、ぐうの音も出ないその切れ味の鋭さは本当に素晴らしい。
【○】Douke-MC『MIX TAPE VOL.2』
2012.05.29 / 全10曲26分 / VBR(m4a) /
HP
本作の10日前に無料配信ミックステープを出しているソリッド・キッカーズと同じく、大阪のイエロー・ヒッピーに所属するソロラッパー・ドウケMC。前出のふたりと同じくすわっぐなフロウで埋め尽くす1枚で、新鮮味はない。これならば年末に出していたミックステープ第1弾の方がずっと楽しめた。流行のフロウとTwigyのいいところ取りをし、しかも曲のテーマが多岐にわたっていたからだ。今回のはスニーズがよくやる千本ノックのような修行ラップでしかない。
【○】XenRoN『I'm YELLOW JEAN PAUL HEVIN Vol.2』
2012.05.29 / 全10曲31分 / 192kbps /
Tumblr
注目が集まりつつある東京在住のトラックメイカー・シェンロンの新作。Better HalvesやSEEDAなどの既発リミックス曲(
音雲でDL可)のインストなどを収録しつつ、『Vol.1』(
直リン)と同じく新作ビートも4曲聴ける。洒脱なM1は特に素晴らしい。またM10でのMichael Jacksonの「Billie Jean」リミックスは彼がこれまで見せてこなかった引き出しであり、センスの高さを改めて確認できる。
【○】SNEEEZE『We Only Know(s)』
2012.05.31 / 全13曲29分 / 320kbps /
DatPiff
月刊スニーズ・ミックステープの第5号。前々作から米国ミックステープサイトDatPiffに本格的に参入し、その
第3号のDL数が1000、
前作で2800ときて、今回すでに9000を超えているわけで、ジャケットの力はあるかもしれないが、日々あれだけ多くのミックステープがアップされている中で相当に立派な数字だ。内容的にも力強いラップが多く、ここ数作の中では一番楽しめる。
【△】HakobuNe『失い得るもの』
2012.05.31 / 全5曲22分 / 320kbps /
HP
トラックメイカー名義はHakobuNe、ラッパーとしてはNoahと使い分けをしているようで、今回はハコブネとしてのビート集。昨年初頭に"はこぶね"と平仮名表記のラッパーが『The Black 方舟』というフリーDLミックステープを出していたけれど、似たアーティスト名を持つだけあって、こちらも負けず劣らず酷い。曲としての展開の凡庸さはともかく高音が鼓膜を直撃し、低音があまりにも出ていなさすぎる。また彼が立ち上げたレーベルに所属する次郎(仮名)が最後の曲で客演しているが、ニコ動ラッパーにもこんな実力者がいるのかと唸ったあの記憶を霧散させるに十分だ。
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<まとめ>
2010年〜2011年1月〜8月分
Tegetther
2012年1月分
blog
2012年2月分
blog
2012年3月分
blog
2012年4月分
blog
・「JPRAP.COM presents "The Se7en Deadly Sins"」 →
記事(2011.05.26記)
2010年の主要フリーダウンロードミックステープについてもある程度まとめてある。
・「昨今の国産ヒップホップ・無料DLミックステープ事情」 →
記事(2011.09.30記)
2011年前半の作品に焦点を当てて書いた記事。
・「VA『Fat Bob's ORDER vol.1』」 →
記事(2011.10.07記)
記事の最後に名古屋関連のミックステープのまとめがある。
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