2012年6月にアップされた国産ヒップホップ・フリーダウンロードミックステープ一覧。
JPRAP.COMや
2Dcolvics、そして
@KSK1988さんのおかげで半年間続けることができました。ありがたいことです。本当にありがとうございます。
てっとり早くお勧めを教えてくれという方には上の3枚!左端がまだ20歳のラッパーJinmenusagiの新作。Ghost Cheek名義でトラックメイカーとしても活躍している。聴いて損なし。真ん中はAKLOやKLOOZと肩を並べる実力とセンスの持ち主であり、CDデビューを一向にしない点でも似ているmikE maTida。今回はKREVAのビートの上で遊ぶ。右端はERAの『3 WORDS MY WORLD』をshot-arrowというトラックメイカーが丸ごとリミックスした作品。聴きやすさが増している。ジャケットクリックでDL先に飛びます。
【△】J-MAC『1street Mix Tape』
2012.06.02 / 全14曲28分 / 192kbps /
JPRAP
配信終了。ツテも何もないからネットにフリーで音源をアップしてまず自分の名前を知ってもらうという姿勢こそは素晴らしいと思うが、語尾上がりのフロウを駆使したラップは次第に煩わしさを加速させ、中盤は幾分聴けるようになるものの、作品的には制作への意気込みを買うのみというのが正直なところ。
【○】sugarkane『Best Of JP Rap vol.1 -chopped & screwed』
2012.06.03 / 1枚ファイル49分 / 320kbps /
SoundCloud
曲のピッチを落とすチョップド&スクリュードのリミックス手法で日本語ラップに次々と紫の魔法をかけている東京在住のトラックメイカー・シュガーケインによるお仕事まとめ集。基本的にはサウンドクラウドに上げている自身のリミックスを繋げたもので、ここでしか聴けないものもある。単に間延びさせたとしか思えず退屈な印象を抱きがちな手法ではあるが、選曲の妙(AKLOの「HARLEM」など)もあり、本作は最後まで楽しんで聴ける。
【○】Maah.『Hello!』
2012.06.04 / 全10曲36分 / 128kbps /
直リン
ラップ始めて1年という岩手在住のソロラッパー・マーのおそらく初音源。BACHLOGICが好きなのか、彼がプロデュースした曲のリミックスが多めだ。ただ、自分なりのフロウが完成されていないため、原曲のラッパーのフロウに引き寄せられてしまい、ただの物まねになりがち。それは何も彼だけではなく、ラップを始めたばかりのラッパーによく見られる事だ。ビートへの考え方を学べるなど良い点もあるのだろうが、独自性こそが強く問われるジャンルでもあるわけで、誰も使っていないオリジナルのビートが無料でたくさんアップされているのだから、それを使い、自分のフロウを探求していけばいいのにと思ってしまう。
【△】R's『The Album 2nd (demo)』
2012.06.04 / 全24曲94分 / 160,320kbps /
blog
配信終了。札幌の23歳のソロラッパー・アールスによる24曲入り1時間半以上にもなる力作。"一年引きこもって作った"と書かれてしまうと批判するのをためらうが、稚拙な上に似たようなテーマの楽曲が並び、しかもきっちり3ヴァースあり、長くなるのも当然だろう。インタールードや短い曲で緩急をつけて、せめて40分ほどの長さにでもまとめないと、数寄者でも最後まで聴きおおせる人は少ないだろうし、何よりせっかくの努力が報われない。
【○】Hyrakane『Hyrakane Remix Vol.1』
2012.06.05 / 全8曲27分 / 320kbps /
bandcamp
配信終了。Dj Takada名義でも活躍するトラックメイカーHyrakaneによる洋物リミックス集。何も知らずに聴くと正規リミックスかと思うぐらいに上質なビートを作り出している。Oh Noを手掛けたM2やDweleのM4が特に良い。それと、
サウンドクラウドでは無料使用する場合アップロードできる曲の合計時間に制限があるため、ある程度まとまったらバンドキャンプに移して1枚の作品とするのはうまいやり方だ。
【○】NOIZE『REMIX ZIP』
2012.06.08 / 全9曲23分 / 320kbps /
blog
北海道のソロラッパーの5枚目のミックステープ。インストやアカペラも収録さえているためラップ曲自体は6曲と少ないが、どれも良曲かつ路線が違うので楽しめる。特にM1はRAU DEFぽいと思っていたこれまでの彼のラップスタイルを速度を出すことで振り切ることに成功していて、次が見えているのかもと思わせる。日本の日曜の夕方にお馴染みの磯野家のサザエラップもいい感じの仕上がり。同曲はインストも入っている。
【○】maemon『Dark Gray EP』
2012.06.10 / 全9曲27分 / 256kbps(m4a) /
Twitter
米国では地下でのみ脈々と受け継がれている90年代黄金期の良質なヒップホップを血肉化しているラッパーたちの比較的最近の音源を、ニューヨーク在住の日本人トラックメイカーがリミックスした作品。手掛けているのはSmif-n-WessunやLarge Professor、Mos Defといったレジェンドから若手のBluやRshadまで。特にM4がいい。でもまあとにかく、何いってるのか分からないにしても、ラップがストレスなく聴けるのがいい。
【○】Hyrakane『Hyrakane J-HipHop Remix Vol.1』
2012.06.10 / 全8曲32分 / 320kbps /
bandcamp
配信終了。上の洋楽リミックス集と同じく、サウンドクラウドに上げていた日本語ラップ既発リミックスをバンドキャンプでまとめたもの。音雲発表時にもそのセンスに驚かされたけれど、改めて聴いても惹かれる。リリックを理解できない洋楽では分かりにくかったが、日本語だとラップを引き立たせる音作りを心掛けているのがより明快で、またしっかり低音を利かしている点にもフリーらしい音の貧しさがなく素晴らしい。
【○】Syldra『EP』
2012.06.11 / 全5曲16分 / 320kbps /
bandcamp
NAO-K名義でも活動するトラックメイカーのビート集。タグにエレクトロニカとあるように単純にヒップホップにジャンル分けできない音ではあるのだけど、BUNにも通じる都会の夜の匂いがする。BUNが闇に沈む歩道のBGMであるならば、こちらは曲名の明るさに似合わず、暗渠に流れる黒い水だったり、アスファルトに下に埋設された光ファイバー網を連想させる。ジャケ同様にかっこいい音。
【○】OMSB(OMSB'Eats)『Kitajima "36" SubLaw』
2012.06.12 / 全36曲97分 / 192kbps /
Twitter
SIMI LABのラッパー兼トラックメイカーのオムスビーツが、"今まで
サウンドクラウドにアップした曲に加え、一曲をプラスし"て発表したビート集。昨年7月に最初にアップされたM30から、本作発表時点での最新曲M7までを発表順とは関係なく収録している。実際は「San Andreas」(
音雲)と奇怪な「My Song」(
音雲)が収録されておらず、また昨年クリスマス直前にトゥイター上で公開された「X Day Massacre」が、曲名とは違いかなりの美曲だっただけに漏れたのは残念。新曲はM20とM26の2曲あるように思うが、こちらの勘違いかもしれない。
いずれにせよ、サウンドクラウドに発表されるビートは今やシミラボの屋台骨となったオムスビーツがその時々で興味を持った音をあれこれするための実験場だ。だから必ずしも良曲ばかりではない。特に初めの頃はシミラボに提供したトラックとの差に驚かされたもので、しかし試行錯誤をそのまま表に出す場と理解するようになってからは次は何が飛び出すのかと気楽に楽しめるようになった。最近は面白ジャケットを付けた興味深いビートを次々にアップするようになり、それに比例してDLリミット数の100に達するのが速くなっている。そんなわけなので、すぐに落とさないと手元で聴けなくなってしまう彼のビートをこうして改めて落とせる機会はありがたい。
最初にアップされたfirestorage版はほとんどの楽曲でビットレートが320kbpsだったが、やわと定評のあるストレージサイトなだけあってすぐに詰まってしまったために、容量を落としてsharebeastに上げ直された。それが上のリンク先となる。しかし、いくつかのファイアストレージではまだリミットに達していないため、320kbps版が落とせるようだ→
その1、
その2
【○】DJ HARAKIRI『makibishi beat tape』
2012.06.13 / 全25曲52分 / 320kbps /
bandcamp
新潟のトラックメイカー・DJハラキリによる"過去作から色々選んでまとめた"ビート集。同郷のラッパー舌坊とのコラボ盤や数々のリミックスワークをフリーDL音源としても精力的に発表している人だ。ただ、ここ数日
サウンドクラウドに上げられている(おそらく)新作ビートが凡庸な出来栄えで、本作も不安に思えたものだが、際立った逸品には出会えないものの、それなりに楽しめる楽曲が揃っている。
【○】HAIIRO DE ROSSI『特に考え変わってなEP』
2012.06.14 / 全9曲35分 / 192,256kbps /
blog
来月早くも4枚目のアルバムを出すソロラッパー、ハイイロ・デ・ロッシの、"以前からYOUTUBEにしか上がってない音源や、未発売の別テイクVer.の音源"をまとめた作品集。YAKKLEとShing02のコラボ曲のリミックスや24時間空手道場リミックス(SUIKAの遅筆ラッパーATOMがなぜか参加している)、show-kとのビーフ曲、またアルバム曲の別テイクが収録されていたりとファンには嬉しい1枚。
【○】Jinmenusagi『I MAY SICK』
2012.06.15 / 全7曲20分+全5曲15分(Bonus Track) / VBR /
blog
次々に若手ラッパーが台頭する中でひと際才気走ってる感のあるジンメンウサギ。そんな彼のもう何枚目に当たるのか分からないぐらいに出ているミックステープの最新作。スキルがありすぎるがゆえに凡人には追いつけない/理解できないレベルにまで行ってしまうことがしばしばで、先のファーストアルバム(正規盤)はまさにそういう作品だったわけだけど、本作はややこちら側に降りてきてくれているラップを披露している。ラップを音楽として聴かせながらもメッセージの込められたリリックや魅力的なフックがある。こうなると自信を持っていえる、あなたはすごいよ、と。
【○】XenRoN『SPREAD MY WING』
2012.06.16 / 全12曲45分 / 320kbps /
tumblr
DIORI a.k.a. D-Originuが昨年リリースしたソロ作を新進気鋭のトラックメイカー・シェンロンがマルっとリミックス。"十分伸ばしな君の才能を"と投げかけられて黙っていないのが若手だろうし、"自分の才能を十分開花させる"べく実際に音にすることこそがその才能の証明となる。そうしてこれまで実証してきた彼の相変わらずの創作ペースには舌を巻く。毎月のように何かしらの楽しみをもたらしてくれる。原曲ラップへの解釈の違いが興味深いし、M6に至ってはオリジナル越えも果している。ただ、決定的に後れを取っているのが音の深みだろう。プロとアマチュア。録音環境にかなりの隔たりがあることを考慮する必要はあるが、今回は原作を愛聴していたこともあり、その点での物足りなさが最後まで尾を引く。
【○】lee『past(a) ---2009-2010----』
2012.06.16 / 全7曲17分 / 320kbps /
bandcamp
福岡のラッパー兼トラックメイカー、リーがバンドキャンプ開設記念にアップした、タイトル通りに過去の未発表音源をまとめたビート集。トラックメイク自体は2009年から始めたらしいので初期音源も含まれているのかもしれない。鍵盤を中心とした穏やかな音が並び、奇才とも称されるその奇天烈ぶりはそれほど感じられない。
【○】炎楽, fif & NipA『MADE IN MUSASHINO』
2012.06.17 / 全13曲39分 / 192,320kbps /
ニコニコ動画
ネットレーベル・武蔵野RECORDSに所属している3人のトラックメイカーたちのソロ作をまとめたビート集。米国で暮らしていたこともある日本人トラックメイカー(先月には向こうのラッパーとのコラボミックステープ[
DL先]も出している人と先日
トゥイッター上でやりとりする機会があり、その時に彼が指摘したのが、日本人とアメリカ人との"根本的な音楽との向き合い方の違い"だった。"日本は大きい音で鳴らさない代わりにメロディー重視。向こうはドラムやベースなどのリズム重視で踊るのが前提"だという。いわれてみればもっともな指摘であり、それは良い悪いの問題ではなく、そういう国民性なのだ。ただ、ダンス音楽でもあるヒップホップにはもう少し強いビートが欲しいと思うことが日本人トラックメイカーの音を聴いて思うことが多々ある。話はそれているが、本作での3人の音は時に旋律を磨き時にビートを強調させるバラエティに富んだもので楽しめる。その一方で気持ちの良い低音の利きとは別にグルーヴを感じさせるビートがあればなお良いのにとも思うのだ。"踊る"こと、あるいはラッパーが思わずラップを乗せたくなるグルーヴだ。
【○】mikE maTida『"Katteni" FreeStyle Mixtape on DJ 908 a.k.a KREVA』
2012.06.18 / 全12曲44分 / 320kbps /
Tumblr
クレバが2月にリリースしたインストミックスCD『BEST OF MIXCD No.2』を丸々使ってのミックステープ。クレバ自身がかなり手を加え、原曲の派手な装いを脱いだシンプルなトラックがその盤には収録されている。彼の親切設計な装飾過多な音にあきれがちなヒップホップファンも楽しめるはずだ。それはともかく本作の前半はフリースタイル気味なラップが続き、"実質、3日で全て作りあげた"というマイキーの言葉が謙遜ではなくただの予防線かと思わせるが、M6辺りからはさすがマイキー!という余裕とユーモアと鋭さの詰まったラップとなる。先月のLBのミックステープ(
DL先)でも感じられたことなのだけど、フリーDLのミックステープであっても自分をアピールする作品として捉えると共に聴き手を楽しませるためにエンターテイナーであろうとする姿勢にすごく好感が持てる。それはとても当たり前なことなのだろうが、どこか気恥ずかしさが透けて見えるラッパーが多い中で、彼らがミックステープの完成度を格段に上げている要因のひとつだろう。
【○】狂四郎『demoCD kyousirou silly talk vol.3』
2012.06.18 / 全5曲17分 / 128kbps /
Twitter
茨城県土浦市在住のラッパー兼トラックメイカー。しゃがれ声と言葉本来の意味でのもたつくラップはそれだけですでに独自色があり、語りたいテーマも経験もありそうだ。あとはそれを伝えるリリックが紋切型でなくなると面白いのかも。不幸な生い立ちのラッパーが綴るよくあるパターンに陥っている。
【○】ERA『3 WORDS MY WORLD shot-arrow REMIX』
2012.06.19 / 全11曲35分 / 192kbps /
Twitter
新作も高評価なエラが昨年リリースしたデビューアルバムのフルリミックス作。MASS-HOLEのを含めると3作目の丸ごと改変盤。アルバムにも参加していたトラックメイカーたちが手掛けた
公式盤も良かったが、本作は作り手が無名に近く、名に囚われれずに聴けることもあり、ラップと音とのすりわせの絶妙具合も含め、彼のラップがこれまで以上にすんなりと耳に入ってくる。
【○】WARUSHI『Dreamin' Dreamin'』
2012.06.20 / 全5曲17分 / 320kbps /
Twitter
大阪のラッパー兼トラックメイカーによる4枚目のミックステープ。リミックスではなく、同じくフリーDL界隈で活躍するトラックメイカーからオリジナルのビートをもらっての意欲作。自らの技量を把握しているのだろう。誇大妄想や妄言などで無理することなく、今自分でやれることから精一杯表現しようと試みているのが伝わる。分類するなら神門タイプのラッパーだと思うのだけど、フロウで魅せる代わりに言葉で魅了させようとするわけで、そろそろ誠実さ以外の武器も必要かもしれない。
【○】大猫『軒並みEP』
2012.06.24 / 全5曲14分 / 320kbps /
YouTube
ネットレーベルStudio Cocoon主宰のひとりでもある大猫の5曲入りミックステープ。これまでもラップは聴いていたが、それよりも注目するならトラックメイカーとしてだった。今回2曲で披露されるラップはこれまでの人生を語るという彼にしかできないリリックであり、惹かれるものがある。そして、やはりビートがいい。少ない音数でのループが太いグルーヴを生み出すM1や中盤での展開に視界が一気に開けるM5と素晴らしい。5曲と少ない(ボーナストラックもあるけれど)こともあり、非常によくまとまっている。
【△】オンレイ『ToyBox#3 -onrei remix-』
2012.06.24 / 全10曲36分 / 160kbps /
ニコニコ動画
題名からすると3作目なのだろう。ニコニコ動画で活躍するラッパーが他人のトラックをリミックスした作品。ニコ動特有のあのラップスタイルを受け入れることができる人にはかなりドンピシャなラップをしている。ニコ動にアップされるミックステープを聴くようになり抱いた印象は、ダンス音楽としての側面もあるヒップホップを日本語にどう取り込むのかということに努力を重ねたのが主たる流れだとすれば、それとは別のところで、ラップという歌唱法を利用しながらも、その実早口で言葉を詰め込むという部分だけを特化させていき、結果的に日本独自の特異なヒップホップを作り上げてしまったのがニコニコ動画のラッパーたちなのかなというものだ。ラップとヒップホップは入れ替え可能な言葉程度に考えているし、これもそれもヒップホップだが、グルーヴの感じられないラップには不満を覚える。また、ないならないで言葉を磨けばいいわけだけど、本作にはそれもない。
【○】N▲OTO T△G▼CHⓘ『Silent Real.EP』
2012.06.25 / 全12曲15分 / 320kbps /
bandcamp
7枚目のミックステープとなるOilworks Rec所属、東京在住のトラックメイカー・ナオトタグチのリミックス集。4月2本、先月4本とフリーで出しつつも、バンドキャンプ上では有料配信も始めいていて、目覚ましい活躍を見せている。本作はこれまでの作品に比べるとグッと聴きやすくなりありがたい。
【○】yΔGi『fL◇wErs EP』
2012.06.25 / 全8曲17分 / 320kbps /
bandcamp
ILL.SUGIともコラボ作を出しているトラックメイカー・ヤギのビート集。冒頭から頭を押さえつける音の圧力が尋常ではなく、しかも同時に華やかさや上品さといったものまで内包している音が鳴らされ、あまりありえないような不思議な組み合わせに魅了される1枚。
【○】ICE 2 BLAST『ICE 2 BLAST』
2012.06.27 / 全8曲27分 / wav /
blog
高音がSALUで、低い方がAK-69なふたり組。KCとS2-AKからなる新潟県長岡市のラップデュオ。S2-AKは昨年末にミックステープ(
DL先)を出しているので、低い方が彼だと分かる。ビートにはよく乗れてるが、それだけでもある。言葉が驚くほど残らない。こうなると原曲の洋楽ラップを教えてくれる機会を与えてくれる作品と捉えることもできる。英語を織り交ぜる活きのいいラッパーにISH-ONEやKOJOEらがいるけれど、彼らは印象に残る日本語のフレーズをどの曲でも盛り込んでくるわけで、改めてすごいんだなという確認にもなる。終盤、特にM6とM8で低音が頑張ることもあり、不満は解消されつつ聴き終えることができる。
【○】DJ 大自然『空耳ックス』
2012.06.28 / 全37曲41分 / 160kbps /
blog
"空耳アワード2012"の覇者DJ大自然による過去のアワード曲を盛り込みつつ伝説の空耳曲をミックスした作品。どうしてこれまでなかったのか不思議だ。もちろんあの面白映像があってこそ空耳度が強まるという側面は否定できないわけだけど、曲名欄に空耳された言葉が記入されているため、それがどこなのか探すのも楽しいし、テレビで流れた時にどんなビデオだったのか思い出すのも乙だ。通な方はきっと自分ならこんなVにすると想像力の翼を羽ばたかすことだろう。最高。ちなみに彼が栄冠に輝いた空耳曲はM3。いわずと知れたOl' Dirty Bastardの「Goin' Down」。
参考:空耳アワーのデータベースサイト→「
空耳アワーアップデート」
【○】Otokaze『O T O K A Z E』
2012.06.29 / 全9曲34分 / 320kbps /
bandcamp
昨年4月にtaka a.k.a otokaze名義で発表したミックステープ『World Peace』に続く作品。そのテープではShing02やSEEDA「花と雨」のリミックスとオリジナルのインスト曲が半分ずつ収録されていたが、今回は全て彼のビートとなっている。四季をひと巡りする構成からも明らかなように和を強く意識した音作りになっていて前作よりもはっきりと個性が打ち出せている。MichitaやNomak好きな美メロファンにはたまらない1枚だろう。
【△】SheepHorse『Beat Jackin's』
2012.06.29 / 全曲37分 / 128,256(m4a) /
Twitter
NYKとRAZUによる大阪のラップデュオ。2月頃から地道に
サウンドクラウドにアップしてきた曲をまとめたもので、新曲はなし。ミチタやBLAZO、観音クリエイションなどの美メロトラックやおそらく彼らに多大な影響と希望を与えたであろうKICK THE CAN CREWのリミックスによる11曲。プロフィールに"日本語ラップ愛好家"と書いているように、最近はただのリスナーに甘んじるのではなく自ら積極的にラップをしようというムードがトゥイッターを中心にしておきていて、それは日本のヒップホップの裾野を広げる動きでもあり、良いことなのだろう。ただ、スリーコードを学んだからすぐに名曲を弾けるわけでも、写ルンですでいくら撮っても明日からHIROMIXになれるわけでもなかったように、どんな名曲トラックにラップを乗せたからといって偉大な曲になるわけではない。概してそうしたリスナー兼ラッパーたちは、本職ラッパーたちがひた隠しにする最初期の音源すらもそのまま表に出す傾向にあり、だからこそ急速に磨かれるという側面は否定しないまでも、まあよくやるよねと思ってしまう。本作も頑張っているのは分かる。
【○】092 A.K.A. Skunky『Think Twice EP』
2012.06.30 / 全7曲23分 / 320kbps /
SoundCloud
和歌山のラップデュオ・アストニッシュから092が7曲入りのソロ音源を無料配信。アストニッシュでは2枚の作品があり、彼が参加した客演曲などでおそらくそのラップに触れてはいるのだろうけれど、ほ記憶にない。それなりの活動歴が示すようにラップの技術に不満はないが、パンチラインに乏しく、だからどうしたという印象に留まる。唯一面白かったのがM5ぐらい。韻シストのBASIが1曲で参加しているがこちらもかなり不満の残る出来。
【○】Yasuark『Y's Ark』
2012.06.30 / 全12曲分 / wav,256kbps(m4a) /
blog
名古屋のソロラッパー。この人も活動歴自体は長いが、スタイルがいささか古臭く、ソロ曲では忍耐を必要とする。が、客演が入ると一気に聴きやすさが増す。名古屋産のビートが中心であることには好感が持てるし、先月同じくフリーDLミックステープ(
DL先)を出したUNIVERSAL TOSHIKIも参加していて、勢いのある名古屋が気になる人には楽しめるかも。
【○】MNU『The Crecy』
2012.03.19 / 全6曲13分 / VBR /
HP
Low High Who?が4月に出した無料コンピ『GOLDEN DEMO 2』(
DL先)にも収録されていたラッパー兼トラックメイカーMNU/万年ユウの初作品。なぜかM3「Evanz」がない。先のコンピでは特に気に留めなかったが、こうしてまとめて聴いてみるとそのヌメッとした声質のラップはそれだけでもすでに特徴があり、オリジナリティを獲得している。ただ、クセの強い声質とトリッキーなラップ以上に魅せられるところがあるかといえば微妙ではある。
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<まとめ>
2010年〜2011年1月〜8月分
Tegetther
2012年1月分
blog
2012年2月分
blog
2012年3月分
blog
2012年4月分
blog
2012年5月分
blog
・「JPRAP.COM presents "The Se7en Deadly Sins"」 →
記事(2011.05.26記)
2010年の主要フリーダウンロードミックステープについてもある程度まとめてある。
・「昨今の国産ヒップホップ・無料DLミックステープ事情」 →
記事(2011.09.30記)
2011年前半の作品に焦点を当てて書いた記事。
・「VA『Fat Bob's ORDER vol.1』」 →
記事(2011.10.07記)
記事の最後に名古屋関連のミックステープのまとめがある。
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