2012年10月に発表された国産ヒップホップのフリーダウンロードミックステープの一覧。今回も
JPRAP.COMや
2Dcolvicsに感謝です。
てっとり早くお勧めを教えてくれという方には上の3枚!左端は東京は墨田区の下町ラッパー掌幻が邦楽ポップスをリミックスした実に楽しい作品。真ん中はKUTS DA COYOTE率いるグループEMERALDのメンバーのソロ作。エメラルドはその実態が部外者には不透明なのだけど、タレント揃いだというのがここからもよく分かる。3枚目は長野と新潟のラッパーによる越境コラボ。真っ直ぐなヒップホップを堪能できる。ジャケットクリックでDL先に飛びます。
【○】CHIEF ROKKA『IN MY DUB』
2012.10.07 / 8曲38分 / 320kbps /
HP
ERONEにSATUSSY、DJ KANと韻踏合組合の半分チーフ・ロッカが今年5月にリリースしたセカンドアルバムをミンちゃん絡みでもお馴染みのThe LASTTRAKやPsychesayboom!!!、環ROYの作品にもしばし参加しているYasterize、フリーDLの活動が著しい若手のGesubiらがリミックス。ネットレーベルLowfer Recordsからの発表ということで重量のあるラップであっても強引に上を向かせ、踊れる音に仕上っている。
【○】kyoh3i & DJ ATSUSHI『Life Is Good』
2012.10.07 / 15曲47分 / 160kbps /
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JPラップコムが昨年発表したミックステープ『#Nibiru』(
DL先)にも参加していた秋田県横手市のラッパー・キョウヘイの初作。『#Nibiru』ではS.l.a.c.k.っぽさをにじませるラップだったが、1年後の本作ではより個性が強まった印象だ。半径1メートルの日常だけではなく、秋田という故郷を軸に本来のヒップホップらしい部分でもある社会に物申すラップは日本ではまだまだ珍しい。原発批判だけではなく、"戦争のせい なぜ無駄なことをした天皇"という一節はファックバビロンを連呼する日本人ラッパーでもなかなかお目にかからない突っ込んだリリックだ。もちろんそれだけではなく、スクッと伸ばした脚が踏みしめている足元の生活も歌うわけだが、全曲を手掛けるDJアツシのこれまたヒップホップ温故知新な抑制の利いたトラックに救われているのは否定できない。
【△】虹夢『最終楽章』
2012.10.08 / 13曲49分 / 128,192kbps /
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1993年新潟生まれのソロラッパー虹夢の4本目となるミックステープ。ラップを始めて半年で1作目を出し、今年に入ってすでに2本目とその旺盛な創作意欲には感心するばかりだが、どの曲も3ヴァース揃えてきて、それが13曲もあり、しかも客演がいないとなると、初期作に比べるとずっと聴きやすさが増したとはいえ、さすがにお腹いっぱいになってしまう。
ラップはポップスやロックに比べより多くの言葉を詰め込める表現形式であり、虹夢の場合はフロウやパンチラインで魅了するラッパーではなく、M6のようにリリックの中身で勝負するMCだ。でも、3ヴァースしっかり書き込んでも、結局言葉数が多いだけで何がいいたいのか不明のままの曲がたいていだ。
例えば、M3ではenmakuの「何をGET」をリミックスし、曲名通りのテーマを歌っている。しかし彼が手に入れたい物が何なのか聴き手に伝わらない。ヴァースの数が少なくてもいいから言葉を吟味し取捨選択し一番伝えたいことを表現するのにどの言葉が最適なのか。その見極めが本当に大事だと思う。
M11でリミックスしている「Red Pill」が良い例だ。AKLOの深く印象に残るフレーズ、"病むなんて結局デフォルトだよ"をそのまま引用している。ふたりのラッパー人生は対照的なものだとは思うが、そんな彼でさえも思わず取り入れてしまうほどしっかり練られた一節だ。際立ったフロウのない冗長な文字の集合体ではいつまで経ってもラップが面白くならない。
【○】GL WORD『AUTHENTIC SHIT!!!』
2012.10.09 / 全5曲20分 / 320kbps /
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配信終了。"クール"と読むらしいキラキラネームな句潤とLA GLORIAという横浜のふたりのラッパーによるユニットGLワード。同じく横浜の「AUTHENTIC STUDIO」からの発表で、日本語ラップの"正統"ともいえるさんピンCAMPの頃のスタイルを彷彿させるラップと全曲プロデュースしているMOMO-Gのループトラックには懐かしさがある。ラップの熱量が時代を逆流することは往々にしてあって、彼らは古いスタイルとはいえ今も十分聴けるし、そのこだわりの姿勢こそが今のはやり言葉でいえばスワッグだ。横浜ということであるまやNONKEYも客演していて、特にあるまが光っている。
【○】K.E.N.『Re:Start』
2012.10.10 / 全6曲23分 / 320kbps /
bandcamp
静岡県御殿場市で活動するG.O.FAMILIA所属のラッパー・ケンがトラックも全て自分で手掛けた3枚目となるミックステープ。上で紹介したGLワードではないけれど、極めてオーセンティックなトラックとラップスタイルで、とてもヒップホップらしいヒップホップ。Dev Large周辺にいたラッパーの匂いもする。鼻をつまんでマイクに吹き込んでいるような特徴的な声も効果的で、初めて聴くラッパーだったがまだまだ面白い才能が眠っているのだなと現在のミックステープブームに感謝したくなる出会いだ。ただ、全6曲(ボーナストラックのフリースタイルを含めると7曲)といえども、ビートは悪くないのだけどラップが後半だれてくるのは否めず、曲を締める客演がもう少し欲しいところ。リンク先のバンドキャンプから既発作をダウンロードできるが、本作を先に聴いてしまったのならその2枚を試すことはお勧めしない。
【○】Beats Zan『ASSERTIVENESS』
2012.10.11 / 全10曲31分 / 320kbps /
SoundCloud
まだ19歳と若いながらも洋邦問わずのリミックス集を3枚出し、すでに実績があるトラックメイカー・ビーツザンがフリーDL界隈でもコンスタントに作品を発表し続けている同年代のラッパーを集結し作り上げたプロデュース作。前半のイケイケドンドンなビートにはよくある音という印象しかないが、トライリンガルラッパーJulian Naganoが客演するM5から途端にメロディが輝きだし、魅力的になる。リミックスをしていた時も若さに似合わない落ち着いた音を基調にしていたことを思い出した。トラックにも支えられM5以降のラッパーはそれぞれ持ち味を発揮し、尻上がりに良くなっていく。参加ラッパーは町田の孔雀からMEKAと威神、大阪のWARUSHIやT@K、ジュリアンナガノ等。
【○】龍道『LIFE is POEM』
2012.10.12 / 全6曲16分 / 160kbps /
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神奈川県平塚市出身のソロラッパー龍道。1994年生まれというからこのラッパーも10代だ。博多親不孝のPOCKYのラップを最初に聴いたときのような気持ちの良い真っ直ぐさを覚える。題名にポエムと付けてしまうぐらいに純粋なリリックはよく情感が込められている。一方でそのメロウさと対比になる"動"の曲がありがちなラップに終始しているのはもったいない。
【○】asamiya『Blue Coffee』
2012.10.12 / 全5曲28分 / 192kbps /
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愛媛県在住でLOH HIGH WHO? PRODUCTIONにも所属するビートメイカーの新作。得意のピアノ曲を集めた先月の『Comming Into Bud』(
DL先)とは打って変わり、ビートを前面に押し出したインストトラックが並ぶ。その中でもアコーディオンにも近い哀愁帯びた音色が響くM2やビブラートを利かせたM3ではもの悲しい主旋律がどこまでも深く体に染み込む。
【○】tototeruru『tttrrrmx』
2012.10.13 / 全14曲58分 / 320kbps /
bandcamp
上のアサミヤと同じくParanel率いるLHW?に所属する夫婦フォークデュオの曲を同じレーベル仲間が中心となりリミックスした作品。最近注目を集め始めているDJ6月が5曲を手掛け、瑞々しい音をよせている。また、1曲で参加している観音クリエイションもさもこれがオリジナルだとばかりの音を仕上げていてさすがだ。LWH?の面々らしく真摯に音楽と向き合い、音を丁寧に紡いではいるものの、14曲は正直盛り込み過ぎだろう。
【○】Goofy『Feat.King Haze』
2012.10.15 / 全6曲17分 / 256kbps /
blog
カッツダコヨーテがリーダーを務めるエメラルドに所属する長野出身のラッパー・グーフィが実弟キングヘイズのビートの上でラップするソロ作。サックスの音にグラスの氷を響かせながら語りから始まる本作はかなり良い。今の日本に言及するM2でのその認識の是非はともかくとして、社会情勢や裏道事情への距離の取り方がNORIKIYOを思い出させる。彼ほどにはフロウを小難しく考えていないようなのが功を奏していて、非常に気持ち良く頭が振れるラップをする。声質自体も深さといい高さといい正しいツボを突き、またキングヘイズのビートも同様に的確で、男の苦み走った生き方を魅力的に見せる。ただ、後半の3曲のファイルに不具合があるのは残念。
【○】Naoto Taguchi a.k.a. Andherpackage『Allwys For Yew Prt.2』
2012.10.15 / 全33曲51分 / 320kbps /
bandcamp
配信終了。プロデュースはナオトタグチ、リマスタリングには別名義のAndherpackageがクレジットされ、過去作をまとめた作品らしいのだけど、確認できたのは7月発表の『Dope Chef EP』の曲が収録されていることだけ。モゴモゴとしたビートで向こうのラップ曲のリミックスが並ぶが、最初に彼の作品を聴いた時に比べるとずいぶんと聴きやすくなっている。彼流の調理を施した日本語ラップ曲も聴いてみたい。
【○】Active & Nahquon『mellow mood ep』
2012.10.18 / 全9曲23分 / 320kbps /
bandcamp
前月にもあおりんごとのコラボ作(
DL先)を出しているアクティブが、京都のトラックメイカーでmisosoupやnah-q名義でも活動しているNahquonと作り上げたミックステープ。前作でも感じことだが、アクティブはスラックに大きく影響を受けた柔らかい声音が魅力で、気持ち良く耳に入ってくるラップを持ち味としているのだけど、妙に言葉を詰め込む瞬間があり、それがトラック共々題名通りにメロウな統一感を出している中で棘となっている。意図したものなら成功といえるが、滑らか仕上げを目指しているのならもったいない。
【◎】掌幻×Yue Cue『Jackin' 4 JP Vol.1』
2012.10.19 / 全8曲29分 / 320kbps /
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2010年の
BBOY PARK U20 MCバトルで準優勝に輝いた墨田区生まれのソロラッパー掌幻と、彼の
ファーストアルバムでは全曲でビートを提供していたユーキューがラッパーとしてコラボレイトした作品。題名から分かる通り"Jackin' 4 Beats"をひと捻りさせ、邦楽ポップスにラップを乗せてしまう誰が聴いても楽しめる快作に仕上がった。
ファーストでこんなに楽しげだったかなと訝るぐらいに溌剌とPerfumeの「レーザービーム」に乗って弾んでいる姿は意外ですらある。しかしその耳馴染の良い曲を選んでいるおかげもあり、彼の聴き取りやすいラップがますます映えることになる。
彼のラップスタイルは、KEN THE 390を引き合いに出すのが良さそうだ。ケンザ390といえばバトルでのフリースタイルやレーベルを立ち上げ若手をフックアップしながら自主イベントを開催していることは評価できても、音源ラッパーとしては限りなく低い位置づけでしかないが、その歯切れの良いラップや聴き取りやすいリリック、前向きなテーマといった点から一部で受け入れられているのは理解できる。
掌幻もまた、ケンザ390の数十倍巧みなラップではあるが、おかしなイントネーションもなく日本語の自然な文章のままビートの上を嫌みなく駆け抜けて行くスタイルという意味で彼に通じるところがある。大ヒットした福山雅治の「虹」や、清水翔太のシングル曲、ドラマSPECの主題歌であっても違和感なくラップを乗せ、さも最初からラップ曲だったかのように聴かせてしまう。
【△】Ovall『In TRANSIT』
2012.10.19 / 全9曲24分 / wav /
HP
無料配信終了。origami PRODUCTIONSに所属にする3人組インストバンドが自身のサイトのウェブショップの会員になることを条件にその見返りとしてDLできた作品。ベースのShingo Suzukiや、ドラムのmabanuaはそれぞれプロデューサーとして国産ヒップホップの作品に深く関わっていることから、凄腕ミュージシャンたちの本気の作品と期待すると前半では大きくずっこけることになる。アイデアを練らずにそのまま出してしまったような構成と、とってつけたテーマっぽいフレーズを年季に任せて演奏している。ただ、インストを聴く耳を持っていないだけともいえるが、ボーカルが入るM5や、ラップが乗るM7やM9ではもっと楽しんで聴けるようになる。
【○】VA『IDOL GANG MAGIC』
2012.10.21 / 全9曲45分 / 320kbps /
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LoconyanやBeatPoteto、ザ・ラストトラック、アイドル大好きラッパーCherry Brownの別名義Yuuyu Aensland、ゲスビといったアイドルには一家言ありそうなそうそうたるメンバーが、ももいろクローバーZやSUPER☆GiRLS、板野友美、でんぱ組inc.たちの曲を好き放題してるリミックス集。ももクロでいえばたまたま聴いた「Z女戦争」はオリジナルなのに、すでに色々な要素を詰め込んだある意味リミックスみたいな楽曲だったわけで、リミキサーも今のアイドル曲はいじり甲斐があるのだろう。
【△】Dragon One『Spread One's Wings(The Street E.P)』
2012.10.21 / 全7曲19分 / 320kbps /
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唯一聴いたことがある音源がDARTHREIDER率いるDa.Me.Recordsが数年前に出していた
月刊ラップシリーズに収録されたMCバトル決勝戦での彼の雄姿であり、その印象が強いのか、池袋のクラブbedにいそうなラップをする。今年に入ってから過去音源も含めて頻繁に
サウンドクラウドで曲を発表するようになったが、どれもイマイチだったのと同様に、おそらく最新曲を収めたと思われる本作も変わらない出来だ。走りすぎるラップを聴くと、まあ落ち着いてひと息入れて何かいいたいことがあるなら焦らなくても大丈夫だよといいたくなる。
【○】VA『Street Khemistry 8: An Introduction To Kut (Special Japanese Edition)』
2012.10.23 / 全17曲52分 / 320kbps /
datpiff
OZROSAURUSの『JUICE』を手掛け広く知られるようになったROMERO SPに参加していたLuchaが現在はKutと名乗り、ニューヨークのプロデューサーDJ Instynctzと共に制作した作品。彼の周辺で活動する日本人ラッパーの曲と、彼のビートにアメリカ人ラッパーが乗った曲が交互に配置されている意欲作だ。紹介文でコラボと謳うがDJインスティンクツは音にはほとんど関わっていないようで、泊付けの名義貸しにも思えるが、参加しているニューヨーク出身を中心としたラッパーたちの人選などに大きく貢献しているのかもしれない。不勉強でほとんど知らない中、辛うじてCam'Ronが分かるぐらい。Nicki Minaj似の女性ラッパーが歌うM10が面白い。
一方で、日本人ラッパーたちはBlind Cinema Directionという、LUCK-ENDの一部も参加しているグループのメンバーが中心となる。千葉出身のDizzy Doeswellや、彼と昔から組んでいたJazee Minor、ZONE THE DARKNESSの
セカンドの特典曲に参加していたYoung Freez、そのヤングフリーズとはLOCAL BABYLONで一緒だったKnell、NAOYAといった初めて名前を聞くラッパーが東京のいわゆる育ちの悪そうなラップの系統をそのまま引き継ぎつつ、しかしテクニックもしっかりあるところを見せつけるラップを披露する。
カットがトラックメイカーとしてヒップホップの本場でも遜色ない音を作り出せることを証明するためにアメリカ人のラップを収録することは彼にとって重要なことだろうが、ブラインド・シネマ・ディレクションの曲だけを集めたミックステープでも面白かったのではと思わなくもない。それほど聴かせるラップを彼らはしている。
【△】VA『水』
2012.10.23 / 全6曲23分 / 320kbps /
HP
1990年生まれの札幌在住のトラックメイカーPARKGOLFが参加しているということで聴いてみた6曲入りのオムニバス作品。他のミュージシャンは知らないが、ヒップホップというよりもエレクトロニカ方面のインスト集で、タイトルが示すとおりに何かしら水に関係する音がサンプリングされている。可もなく不可もなし。
【△】Mc BROVAS『Beginning The Mixtape』
2012.10.26 / 全11曲33分 / 320kbps /
blog
B.I.G. JOEが立ち上げたレーベルTRIUMPH RECORDSに所属するマックブラヴァス。ひとりは先月ミックステープ(
DL先)を出したばかりの長崎出身のラッパーMARCOで、もうひとりが以前はBIJYUとして活躍していたラッパー兼トラックメイカーのMister Bee(こちらは札幌生まれ)という1987年組によるユニット。マルコのソロ作はそれほど悪い印象を抱かなかったが、ふたりで作り上げた本作は中身のないスカスカなラップに終始し、半端に技術があるものだから耳触りとまではいかないものの、いくら耳を凝らしても彼らがラップをする意味を見出せない。PVや自分たちのプロフィールを丁寧に同封する点のみ評価できる。
【○】CHAKRA & GO『Weed and Malt』
2012.10.27 / 全5曲15分 / 192kbps /
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大阪のヒップホップグループCRACKPOTZのCHAKRA MENTHOLと、奪還CLANのGOによるコラボ作。誤はMADSの一員でもあり、そのグループに所属するPEPCEEが8月にGhost DogのRADOOと共にやはりミックステープ(
DL先)を発表している。梅田サイファー以外はどうも大人しい印象のある最近の大阪だけども、こうして若手の動きが垣間見られるのは嬉しいし、もっと活気づいて欲しいとも思う。ジャジーでお洒落なループトラックの上で本気を出してラップするのはかっこ悪いとばかりにどこか余裕綽々なマイクさばきを意識しつつ、ふたりはメロウに言葉を吐き出していく。絶賛はできないが、もっと聴きたいと思わせるラップではある。
【△】Andherpackage『Palladium EP』
2012.10.27 / 全9曲13分 / 320kbps /
bandcamp
無料配信終了。10月のビートとの説明があるナオトタグチの別名義でのビート集。13分と短い作品ではあるけれど、聴き終える頃には日常生活のどんなにタイミングにもイェイ、イェイと声を挟み込みたくなる呪力を持つ。
【○】一統×CAIBEATZ『Timescale』
2012.10.29 / 全11曲24分 / 192kbps /
HP
アメリカ在住の日本人ラッパー・一統(最近は"Dr. Pancho"を名乗るのは止めたのかな?)と名古屋のトラックメイカー・キャイビーツがこれまで
サウンドクラウド上で発表してきた音源を中心にまとめたコラボ作。単曲で発表されていた時はそれほど打率の良いラッパーではないと判断していたのだけど、こうしてまとめて聴いてみると歌フックの良さも相まって、心地良い緩さがある独特の雰囲気を持つラッパーだなと認識を改めた。無料音源ならこの程度でもと考えているのかもしれないが、1曲だけでもただ気持ちいいだけで終わらない突き抜けた完成度の楽曲があれば良かった。そういう意味ではとても惜しい作品。
【△】D&U MINATI『THE LIVE EP』
2012.10.29 / 全9曲24分 / 256kbps(m4a) /
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下でも新作ミックステープを紹介している長野のラッパーBGYの実弟にあたるA2SHITと仲間のひとりであるK-CORSEによるラップユニット。"今年参上超新星 若手俺たち超ルーキー 止まることないノーブレーキ エンジン全開突き進め発進"というM2のフックが全てを示している。がむしゃらで粗削りで勢いだけのラップといえるが、初作とは打算のない情熱だけが詰め込まれているものだろうし、これはこれで正解なのだろう。
【○】Takachangman『Halloween』
2012.10.31 / 全10曲25分 / 128kbps /
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ソロでは通算5本目となる東京在住の二十歳のソロラッパー・タカチャンマンの新作。ねちょねちょした声が全開となる今回は気持ち悪さも解放されるわけだけど、個性的であることはヒップホップでは"悪"ではなく賞賛されることであり、多分これまでで一番マシなミックステープといえる。ただ、この声でライブできるのだろうか。最後に「証言」を仲間と共にリミックスしている。偉大な先達であってもそれを腐すのが若者の特権ではあるが、オリジナルを越えようとする努力は必要だ。また最後に歌われる愛国主義的な歌詞には嫌悪感しかない。
【○】Lagsharks『We're the Lagsharks』
2012.10.31 / 全6曲19分 / 256kbps(m4a) /
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長野のラッパーBGYと新潟のSoullumpによるコラボ作。芯のある発声をするBGYとやや粘りのあるフロウを聴かせるソウルランプとのコンビネーションは期間限定ユニットにしておくにはもったいない相性の良さがあり、6曲と少な目ではあるが、よくある自己紹介的な曲だけではなく、恋愛をテーマにした楽曲があるのもいい。とてもバランスがいい1枚だ。不満というよりも、どうなんだろうと思うのはラグシャークスというユニット名ぐらいか。
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<まとめ>
2010年〜2011年1月〜9月分
Tegetther
2012年1月分
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2012年2月分
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2012年3月分
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2012年4月分
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2012年5月分
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2012年6月分
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2012年7月分
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2012年8月分
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2012年9月分
blog
・「JPRAP.COM presents "The Se7en Deadly Sins"」 →
記事(2011.05.26記)
2010年の主要フリーダウンロードミックステープについてもある程度まとめてある。
・「昨今の国産ヒップホップ・無料DLミックステープ事情」 →
記事(2011.09.30記)
2011年前半の作品に焦点を当てて書いた記事。
・「VA『Fat Bob's ORDER vol.1』」 →
記事(2011.10.07記)
記事の最後に名古屋関連のミックステープのまとめがある。
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