国産ヒップホップを中心としたフリーダウンロード・ミックステープの2013年2月発表分一覧。日本語ラップ専門情報サイト
JPRAP.COMや
2Dcolvicsのおかげで毎月楽しめています。感謝。
ところで、ここ数年音楽配信サイトbandcampを利用していながらとても大事なシステムを今さら知って驚愕している、というか自分に呆れていることがある。たいていの人にとっては承知の事実だろうけど、私のようにえっーー!と驚く人が万が一にもいるなら私も心強いので図を盛り込んで一応書いておく。
よく見慣れたバンドキャンプだ。ジャズからのサンプリングを得意とする若手トラックメイカーArtbakelyの
サイトを見本に使わせてもらう。アーティストが指示するDLリンクをクリックし、飛んだ先がバンドキャンプだったら、しめたとばかりに指先アイコンがすでに待っているように、図の"Free Download"をまずはクリックする。
そして、飛んだ先が左の図だ。ここでも何ら疑問に思うことなく今までは指先アイコンが示している"Download"をクリックしていたわけだけど、これまでバンドキャンプから音源を落とすといつも320kbpsのmp3ファイルだったのに、最近VBRのmp3ファイルになっていて仕様が変わったのかな嫌だなと思い続
けていたのが、ようやくその原因が判明したのだ!!知ってる大方の人にとっては何を今さらという話であることは重々承知の上で、敢えてもう一度宣言したい。そういうことだったのだ!!
で、何がそういうことなのかといえば、右の図である。ひとつ前の左図でいえば、"Download"とある下の"MP3"とあるそのすぐ右。あるいは指先アイコンのすぐ左にある逆三角形をクリックするとプルダウンできるのだぁぁ!!そうするとこの右図になって、mp3はVBRと320kbpsが選択でき、それ以上に重要なことはflacやaacなどのもっと音の良い(けど重い)ファイルでもダウンロードすることが可能なのだ。知らなかった・・・。
バンドキャンプを利用しているアーティストに尋ねたところ、音源をアップロードする際にはwavファイルやaiff、あるいはflacであることが求められ、mp3への変換はアップした際にバンドキャンプ側が自動で行っているとのことだった。(画像はクリックで拡大OK)
気を取り直して、さて本題。
<"これだけ聴いとけ作品"を簡潔に教えてくれというせっかちな人のための3枚>
左はニコニコ動画を拠点に活躍するグループで女性ボーカルとatmosというラッパーがとにかく素晴らしい。真ん中はうるさ型のヒップホップファンからの信頼が厚いトラックメイカーのビート集。右端は東京を拠点に活動しているグループによる覚醒を果たした感がある5本目。ジャケットをクリックするとDL先に飛びます。
【○】Shinobi 『Fish & Rice: The Culture Tape』
2013.01.23 / 全10曲21分 / VBR /
HP
Budamunkが
紹介していたアメリカ西海岸のラッパー。日本生まれだが、父親が米国軍人だった関係で幼い頃LAに引っ越した
そう。未収録の「Katana」(
YouTube)という曲では日本語でラップしている。今回は英詩曲のみだけど、日本への想いは並々ならぬものがあり、ちょいちょい外国人好みの日本のイメージが挟み込まれ、面はゆさを抱きながらもそれなりに楽しめる。
【△】R's 『Happy Set』
2013.01.25 / 全12曲43分 / 192kbps /
blog
北海道の24歳のソロラッパー。時間がある人向け。ここでも客演しているTakachangmanを始めとした、ラップが好きな気持ちは分かるけど、広く人に聴かせようとするなら、とりあえず技術を磨こうよレベルの作品を取り上げる必要があるのかそろそろ考える頃かも。フロウが無理なら人とは違う表現、あるいは内容が大事だ。稚拙なラップながら良かったのは客演の女性ラッパーの一節、"青いLANケーブル いつか赤い糸にできたら"。
【△】TOSI 『DIG THE HEARTS』
2013.01.31 / 全9曲26分 / 160,320kbps /
blog
配信終了。神奈川県海老名市在住の19歳のソロラッパー・トシ。ブログのプロフィールによれば、昨年7月から活動を始めたらしく、わずか半年で作品を作り出すというその行動力と無鉄砲さに若さだなぁと感心するばかり。
【○】Majikichi Crew 『HEHEHE』
2013.02.02 / 全16曲84分 / 320kbps /
Twitter
ネットの仲間で結成したマジキチクルーの新曲「HAHAHA」(初出はコンピ『おならBOOの「BOOST COMPI」vol.1』[
DL先]。数日後にXenRoNのリミックスを収録したEPも発表された[
DL先])のリミックス集。Pigeondustの別名義kerberosを始めとした14パターンと、M'Bomaによるオリジナルトラックに大阪の注目ラッパーALWAIOや梅田サイファーでも名を馳せているdoikenらがラップを乗せた2曲のリミックスが収められている。RAqがラップではなくトラックメイカーとして参加。初めて聞く名前だとM8のModel SwanとM9のyakohbayが気になる。
【○】trimnica 『mr.walker』
2013.02.02 / 全11曲44分 / VBR /
ニコニコ動画
詳細は知らないが、ニコニコ動画を活動の拠点にしているグループのようで、桂マザファキ乃輔とhinotomi、atmosの3MCと女性ボーカルのyucca、それと全ビートとミックスまで担当する鶴というトラックメイカーからなる5人組のようだ。M1は飛ばして、とりあえずM2を再生したらこのグループの魅力が一目瞭然だろう。ロックバンドにしても女性ボーカルひとりだけが抜きん出て素晴らしいパターンはよくあるが、彼らにはアトモスというラッパーがいる。声質、テーマ、言葉の選択、感情の込め方等々、スワッグ全盛の昨今のラッパーにはない文系ならではのラップの面白さに魅了される。忘れてはならないのはトラックメイカー鶴の存在だ。前に出すぎず、かといって後方からの支援だけに甘んじるのではなく、的確にふたりの言葉を彩豊かに飾り立てていく。
【○】Ryuuta Takaki 『stillness』
2013.02.04 / 全8曲15分 / mp3,flac,... /
bandcamp
Low High Who? Productionに今年から加わった1995年生まれのわずか17歳のトラックメイカー。東京在住で1年前から音作りを始めたそうだ。題名通りに電子音が静寂を紡いでいく中で、チキチキとスネアを連打するトラップミュージックが顔を出し、一瞬激情をのぞかせたりもするが、基本となるトーンが静謐さというのは面白いのかもしれない。
【○】Warushj 『in bloom (Demo Album)』
2013.02.07 / 全8曲20分 / 320kbps /
SoundCloud
大阪の21歳のラッパー兼トラックメイカーのデモ音源集。昨年は単曲でのフリー音源を始め、4本のミックステープを配信し、1枚のアルバムをリリースと常にその活躍を耳にしていた。"ひたすらに等身大"とリリックにあるように、誇大妄想を弄することなく、誠実に言葉を吐き出していくスタイルは変わらない。歌メロを多めで、デモと割り切ったことが良い方に作用したのか肩の力が抜け、耳馴染の良いフロウの楽曲が揃っている。
【○】VA 『W Record vol.02』
2013.02.07 / 全5曲21分 / 320kbps /
HP
渋谷のライブハウスWWWが立ち上げたネットレーベル企画のコンピ第2弾。前回はYOUNG-GやOMSBなど日本語ラップ勢も加わっていた(
DL先)が、今回は"分解系レコーズ"というネットレーベルの特集となる。"サウンドとカルチャーを分解再構築することをコンセプトに独創的な活動を続けるレーベル"とのこと。どのように音と文化が分解され再構築されているのかうかがい知ることはできないが、耳当りの良い粒揃いのビートが並ぶ。
【○】ZOOL.GΣL 『Natural Human』
2013.02.07 / 全14曲42分 / mp3,flac,... /
bandcamp
異色のヒップホップグループALTでMPCを叩いていた鈴木携人がゾルゲル名義で発表したビート集。現在は"液体やゲル状の物質を用いた"作品を制作する気鋭のアーティストとしても活動しているようだ。前半はそのアーティスト活動の発表の場で使われる音なのだろうか、無機質なビートが多く、また猫も杓子も状態のトラップまで飛び出したりするが、そのM7以降は様相が少し変化し、インスト単体としても聴けるようになる。
【○】GolbySound 『The Sound of Music』
2013.02.08 / 全13曲44分 / 128,192kbps /
Twitter
東京のトラックメイカー・ゴルビーサウンドのビート集。"マイクロフォンペイジャーのP.H.に見出され"たそうだ。これまでにも
サウンドクラウドに発表してきたリミックスワークはヒップホップ愛好家をうならせてきたわけだけど、私自身はそれほどの感銘を受けず、最初にその名前を聞いたERAのファーストアルバムへのビートもしかりだった。が、本作に収録された音は、どれも3分とけして長くはない時間の中で、大きな展開があるわけでもないが、1曲ずつよくまとまっていて、全体を通してもひとつの物語が感じられる。深く垂れ込める雲の下を歩く前半からM6でかすかに光を感じ、M7ではついに陽光の中を散策するかと思えば、次第に重力のくびきから解き放たれ、M10ではのびやかな遊覧飛行を味わい、M11、12とさらに弧は上向きを描く。
【○】DRO 『#DROisDEAD』
2013.02.08 / 全6曲13分 / 128,160,192kbps /
Twitter
配信終了。ネット中心に活躍する面々で結成したグループK.H.BROTHERSの一員として先月いち早くミックステープ(
DL先)を発表したドロがようやくソロでまとまった作品を出してきた。曲ごとにフロウを大きく変えるが、今回はSIMI LABのOMSBにも似た黒く粘りつくスタイルで殺伐とした言葉を吐き、野郎臭が高い。死哭腐屍鳥の名曲「殺人、レイプ、Twitter Remix」に彼が加わった再リミックス版も収録。
【○】DRO 『#裏DROisDEAD』
2013.02.08 / 全7曲18分 / 128,160,192kbps /
Twitter
配信終了。こちらは"裏"と銘打つだけあって、ラッパーと歌手のコラボ曲(表のM2で歌物ヒップホップと批判していたような曲)があったり、Lil'諭吉が宇多田ヒカルの「SAKURAドロップス」をネタにした曲にラップを乗せたりと、ややごった煮気味ではあるが、作ったキャラではなく自然なリリックのおかげもあり表より聴きやすい。
【○】LEO 『GRRR』
2013.02.08 / 全9曲26分 / 320kbps /
Twitter
東京・世田谷のヒップホップクルーYaBastaのR&B担当だというLEOのミックステープ。今のEDMなそれではなく、ひと昔前のR&Bの音であり、やや憂いを帯びた歌声が魅力だ。少し尊大な歌詞もまた向こうのR&Bマナーに則っていて頼もしい。コーラスもしっかり利かせているし、このジャンルが好きなら十分楽しめる。一方で、弾ける曲にもノリの良いグルーヴを生み出せればさらに良いのだが・・・。メロウに歌っている時の良さが急に失せてしまう。
【○】Ninja Drinks Wine 『sink』
2013.02.10 / 全8曲29分 / VBR /
HP
札幌のトラックメイカーのビート集。もはやヒップホップではなく、門外漢なので詳しいジャンル分けまでは知らないが、煎じ詰めれば電子音楽のそれだ。ひとつの音が生み落されると、共鳴するように次の音が湧き出てきて、その質感が面白くもあるが、それ以上に魅了されるのはしっかりとした物語性のある音になっていることだ。普段この手の音を聴かない身でもおかげで楽しむことができる。
【○】Madegg 『Alone Breath To My Family EP』
2013.02.11 / 全9曲41分 / mp3,flac,... /
bandcamp
無料配信終了。春に流通盤をリリース予定の高知出身、京都在住のまだ若干20歳のトラックメイカー・マッドエッグのビート集。上で紹介しているWWWが企画したBunkai-Kei records特集ミックステープにも参加しているが、そのレーベルから18歳の頃発表した作品がまだ
DL可能だ。角ばった音でありながら同時にどこかいたずらっ子のような笑みも見え隠れしていて、海外からの評価が高いのも納得できなくもない。
【○】VA 『off the RAWS (rework)』
2013.02.11 / 全18曲38分 / VBR /
bandcamp
1時間行われるジャズのセッション後、その録音素材を使いトラックメイカーたちが1時間で腕を競い合うOggy企画のイベント「RAWS」。その第2回の音源を使い、ネットでビートを公募したのが本作。前作(
DL先)より参加人数が大幅に増えただけではなく、企画云々とは関係なくビート単体でも十分聴ける充実した曲が増えた。それとひとりで何曲も収録しているピジョンダストの曲がどれも素晴らしい出来だ。
【○】Otomitsu 『APOLLO BEATSSS vol.2』
2013.02.11 / 全6曲12分 / mp3,flac,... /
bandcamp
ヒップホップクルーOddboseに所属するオトミツ。今年はビートテープを毎月発表していく予定らしく、先月(
DL先)に続く、2月分が本作。1作目は様々な曲調のビートを揃えていたが、今回はスペーシーで統一。
【○】Ryuuta Takaki 『Vol de nuit [a work from the past (〜2012)]』
2013.02.17 / 全10曲19分 / mp3,flac,... /
bandcamp
LHW?所属の17歳のトラックメイカー・高木隆歌の今月早くも2本目となるビート集。曲を作り始めてまだ1年という話からも、本当に最初期の楽曲をまとめたものなのだろう。展開が少ないシンプルなビートが並ぶ。すでに美意識を確認できる。
【○】Momose×Gotakozo 『The halfway point of a misapprehension』
2013.02.20 / 全14曲39分 / mp3,flac,... /
bandcamp
LHW?のモモセと同郷長野のトラックメイカー・ゴタコゾのコラボ第3弾。1年ペースで発表するものと思っていたのでうれしい誤算。今回はモモセが2年前にリリースしたソロアルバムの楽曲にゴタコゾがビートを差し替えたリミックスが中心で、新作ラップは少ないようだ。モモセの文系ラップは影響元が透けつつも十分魅力的で、さらに素晴らしいのはゴタコゾの温もりのあるビートだ。ふたりとももうちょっと注目されてもいい。良いコンビだ。
【○】Ryuuta Takaki 『宇宙獣 soramonsta』
2013.02.21 / 全9曲16分 / mp3,flac,... /
bandcamp
17歳のトラックメイカー高木隆歌。次々に曲が湧き上がってきているようで、溜めるのは我慢できないとばかりに今月3本目となるビート集。音数を抑制した尺の短いミニマムなエレクトロニカを展開していく。トキモンスタならぬソラモンスタという題名のかっこよさほどには音に惹き込まれないのが残念なところ。
【○】PRIST 『THE PURPLE』
2013.02.22 / 全11曲28分 / 192kbps /
Twitter
東京は荒川区出身のラッパー。KLOOZやU2Kらと共にサイコロ一家としても活動し、2009年にはいち早く
作品をリリースし、2010年にはBBOY PARKへの
出場なども果たしてはいるものの、次々に現れる同種のフロウ重視ラッパーたちの後塵を拝することになってしまっている。それはまあ本作を聴けばなるほどと納得もできる。実力不足ではない。ただ、AKLOやクルーズ、mikE maTidaといったフリーDL界隈を騒がせた(ている)同世代にはもっと強い個性がある。テーマはお馴染みのものが多いが、トラックがバラエティに富み、仲間も多く参加していて聴きやすさはある。中国育ちだという、ISSUGIを彷彿させるフロウのAmiesというラッパーが気になる。
【○】NakanishiDRO 『REMIX ALUBUM PURPLE_&_BLACK_BITCH』
2013.02.22 / 全15曲28分 / mp3,flac,... /
bandcamp
配信終了。DRO名義を封印してからMC名が揺れているドロの今月3本目のミックステープは、題名通りに洋楽有名曲のリミックスを中心にしたもの。ビートに合わせるだけのフリースタイルのようなリリックで、ほとんどの楽曲を1ヴァースで乗りこなしていく(あるいは使い捨てていく)。その中では単曲フリーDLもしていたDrakeの最新曲リミックスM8が比較的まともか。
【○】VA 『BFD VD 2011-2013』
2013.02.22 / 全8曲23分 / mp3,flac,... /
bandcamp
2011年から今年にかけて広島で行われたイベントで配布、あるいは販売された音源から選別し収録したミックステープ。これまでもフリーDL界隈で活躍してきたRyuei KotogeやYONTZによるリミックスや吉沼のインストなどが聴ける。強烈な個性や派手さといったものはないが、それでもNF Zessho(絶招)のラップをmuzi9uestが心地良い音色で味付けしたM7は良いリミックスだ。
【○】BTS 『Ice Age』
2013.02.23 / 全15曲40分 / 320kbps /
YouTube
ネットレーベルStudio Cocoon所属のラッパー兼トラックメイカー。単曲での無料配信はあったものの、まとまった音源としてはおそらく本作が初なのかな。一番近いスタイルとしてはShing02が時々行っているSFラップを思い出させるが、それよりも使われている語彙は硬く、聴き手と曲世界の共有を求めない姿勢は非常に独特で、これでフロウがもっとなめらかで意味が通じずとも音楽的に楽しめるならば評価することもやぶさかではない。
【○】Syo 『GUMS SLIM DUNGEON』
2013.02.25 / 全5曲19分 / mp3,flac,... /
bandcamp
トラックメイカーSyoがKendrick LamarやDanny Brown、B.o.Bといった今を時めく向こうの実力派若手ラッパーの楽曲をリミックス。独特のタイム感を持ったビートは、ラップを主役とせずに、どちらが前に出るか競っている感もあるのだけど、でもこの目立つビートはかなり面白いし、クセになる。
【○】VA 『SPACE (Remixes)』
2013.02.25 / 全15曲42分 / 320kbps /
bandcamp
KEN THE 390を中心とするKREVAを慕う後輩ラッパーたちが彼の6枚目のアルバムに1週間先駆けてリリースされたインスト盤を使いまるっとリミックスしたミックステープ。スキットを抜くと計11曲、そのうち4曲でケンザ390のまずいラップを聴くハメになるものの、ソロは1曲のみで、他はコラボとなり、基本的には元気の良い若手を盛り立てている。こうした試みは現在のレーベル運営の功績も含め、評価できる。クルーズやLBといった音源を発売済みのラッパーから、NIHA-CやKOPERUといった今後の活躍が楽しみな有力若手、何より目玉は現役アイドルのSKY-HIが4曲で参加していることだ。その内のM4ではやり捨てのリミックスではなく楽曲としてしっかり練り上げ、かなりの完成度をみせる(istの活躍も素晴らしい)。
【○】mikE maTida 『SPACE (Remixes)』
2013.02.27 / 1枚ファイル9分 / 192kbps /
SoundCloud
<上の続き>、とはいうものの、ケンザ390が音頭を取ったリミックス集はありきたりな改変に終始し、面白味に欠けるのも事実だ。そんな不満を覚えながら聴いていると最後の曲で突然刺激的なラップが飛び出してきた。よく見ると、ケンザ390版には収録されていないマイク・マティーダによるリミックスだった。つまり本作だ。意図したのかは不明だ(いや、彼なら狙ってるはず)が、題名が同じために音楽携帯プレイヤーでアルバム名から選択して聴いていると、ひとつの作品扱いになってしまうのだ。1曲を丸々リミックスするのではなく、インストを9分のメガミックスさせたマティーダは、"すぐに群れたがる金魚のフン"と誰に向けたのか明白な揶揄を込めたラップをしつつ、リミックスするならこうすべしとばかりに9分間クレバ(と熊井吾郎)が制作したビートの上で本来の持ち主と対等にラップで渡り合ってみせる。オチも良い。
ラップではいいとこなしのケンザ390ではあるが、上記作のスキットの中で、"これ(インスト盤の購入)でアルバムが1枚作れると思えば安いもんだよね"と語る。それは全く正しい指摘で、わざわざ買わずともレンタルすればわずか200円でクレバのビートでラップができるのだ。
【○】Otomitsu 『APOLLO BEATSSS VOL.3』
2013.02.25 / 全6曲10分 / mp3,flac,... /
bandcamp
ひと月に1作ずつかと思ったら今月は2本発表するようだ。上でも紹介している『Vol.2』の流れを汲んだまま進むのかと思えば、M5で急に親しみやすい音が鳴り出しなごむ。
【○】DJ Koki a.k.a. 乳歯人BEATS 『-Mini Mix-』
2013.02.25 / 1枚ファイル13分 / 320kbps /
SoundCloud
配信終了。東京在住の20歳のトラックメイカー乳歯人BEATSが自作の未発表リミックスを中心にDJ Koki名義で発表したミニミックス。will.i.amとBritney Spearsのコラボ曲に始まり、Calvin Harrisや、PV(
YouTube)がユニークなDelta Heavyなどを経て、SkrillexとDamian Marleyのコラボ曲のリミックスで締めとなる。高揚感溢れるEDMを満喫できる。
【○】N9nety-One 『Rollin' Stoned』
2013.02.28 / 全5曲16分 / 192kbps /
YouTube
昨年8月にファーストアルバムをリリースしたナインティワンの5本目となるミックステープ。ここにきて突如覚醒した印象を受ける。これまでは誰々風のフロウが目立ち、悪印象しかなかったグループだったが、本作の1曲目では同じバイリンガルラッパーのL-VOKALの影響を感じさせるものの、尻上がりに個性を確立させていき、何かが吹っ切れたようにグッと良くなっていく。ところでRomancrewのALI-KICKのような掛け声が時々上がるけど、彼は参加してないよね?
【△】DOMINO-P 『#moremusiclife』
2013.02.28 / 全19曲55分 / 320kbps /
Twitter
1週間限定配信。北海道・札幌在住の25歳のソロラッパー・ドミノPが先月発表した『#musiclife』に新曲2曲を追加したノーDJ版。ラップを足した曲もあるようだ。しかし、1月の作品もそうだったが、限定にする意味が分からない。盤にしてリリースするつもりなのか。
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<まとめ>
2010年〜2011年1月〜9月分
Tegetther
2012年
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
2013年
1月
・「JPRAP.COM presents "The Se7en Deadly Sins"」 →
記事(2011.05.26記)
2010年の主要フリーダウンロードミックステープについてもある程度まとめてある。
・「昨今の国産ヒップホップ・無料DLミックステープ事情」 →
記事(2011.09.30記)
2011年前半の作品に焦点を当てた記事。
・「VA『Fat Bob's ORDER vol.1』」 →
記事(2011.10.07記)
記事の最後に名古屋関連のミックステープのまとめた。
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