すばらしくてNICE CHOICE

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2021.02.10 Wednesday | - | - | -
無料配信ミックステープ3月号(2013)
2013年3月に発表された日本のヒップホップを中心としたフリーダウンロード・ミックステープの一覧。日本語ラップ専門サイトJPRAP.COM2Dcolvicsの情報を元にしている。感謝です。

<"これだけ聴いとけ作品"を簡潔に教えてくれというせっかちな人のための3枚>

左がMUMAの2本目のミックステープ。真ん中はJinmenusagiの今年1発目。そして右端が人気、立ち位置的には若手ナンバー1のSALUの2本目。ムマ22歳、ジンメンウサギ21歳、サル23歳。さんピン世代ラッパーたちの居場所がすでにないのではと思うこと必至だ。ジャケットをクリックするとDL先に飛びます。



【○】VA 『Urban Sampler Session #8』
2013.03.01 / 全31曲81分 / mp3.flac,... / bandcamp
久し振りに復活したBeat Train Recordingsの名物企画コンピ。お題ビートを使い、72時間で新しいトラックを作りましょうというもので、今回はエキゾチックな音がサンプル曲に指定されたためか、収録時間が長いにも関わらず、飽きることなく最後まで聴ける。EeMuやlee、Ryuei Kotoge、DJ HARAKIRI、katafutaらが参加。


【○】Catarrh, Dekishi, Beyond & Ritzzz 『MTMTE201302』
2013.03.02 / 1枚ファイル34分 / VBR / SoundCloud
以前から日本で"グライム"に取り組んでいるラッパーに、西はデキシを始めとしたリッツ、ビヨンドら、東ではKITAKANTO SKILLZらがその代表格と理解しているわけだけど、本作はその西の代表に2年前からサウンドクラウドに高速ラップを発表し始めた期待のカタルナイシンを加えた4人衆が30分強を一瞬で駆け抜ける高揚感溢れるセッション。親切なコメント欄もありがたい。


【○】Gudamanss 『desire』
2013.03.05 / 全8曲15分 / mp3.flac,... / bandcamp
以前は"絶招"を名乗っていた福岡のラッパーNF Zesshoのトラックメイカー名義グダマンスでのビート集。これまでもラップ曲のトラックやリミックスを手掛けているし、その音自体は知らないわけではないけれど、ラップを乗せることを前提としないビートでは、ラップ有りに比べるとずいぶんとやさぐれ感があり興味深い。


【○】lee 『---yello---』
2013.03.05 / 全8曲26分 / mp3.flac,... / bandcamp
小倉在住のラッパー兼トラックメイカー・リーのフリーDLでは2本目となるビート集。今回は邦楽をネタに楽しそうに遊んでいる。有名曲もあるが、そうでない曲であっても、誰が歌っている曲なのかその曲名にヒントがあってそれがまたパズルみたいで面白い。最初なんでこんなタイトルなんだろうと思ったが、気付いたらあーなんだ!となる。


【○】yzox 『MV$HVP』
2013.03.05 / 全17曲52分 / mp3,flac,... / bandcamp
これまでもサウンドクラウド上(こっちも)に様々なリミックスを発表してきた"ゅずㄘん"ことyzoxが自身の主宰するネットレーベル第一弾として発表したマッシュアップ集。迷われレコードから昨年発表した『vs Beatles EP』(DL先)を中心に、そのビートルズ対決やJungle BrothersとPizzicato Five、あるいはThe Jackson 5とPizicatto Fiveなど組み合わせが大物同士ということもあり、かなり楽しめる仕上がりになっている。


【△】Goku Green 『Super High EP』
2013.03.06 / 全5曲18分 / 320kbps / Tumblr
配信終了。北海道は旭川の17歳・現役高校生ラッパー、ゴク・グリーンの3本目のミックステープ。まんまなストーナーラップは変わらず。その手のアメリカ人ラッパーたちのラップは英語が分からないために単純に音楽として楽しんでいるが、もしある日突然意味が通じるようになってその歌詞をよく聴いたら、ゴク・グリーンと同じように語彙も内容も乏しい代物だったらかなり嫌だ。


【○】TRACTION 『TNGHT (REMIX)』
2013.03.10 / 全5曲14分 / 320kbps / Twitter
ラッパーのLIGHT YEARとミンちゃん絡みで耳にするVector Beatzによるふたり組。そのライト・イヤーがHudson MohawkeがLuniceと結成したユニットTNGHTで昨年Warpから発表した5曲入りEPをマルッとリミックスしたのが本作。ピコピコとしたビートの上の低体温ラップはフロウで聴かせるだけではなく、テーマにキャッチーさがあり、心の叫びを響かせるM3や浴びるようにアルコールをたしなんだ翌日を歌うM5などリリックも楽しめる。


【○】ARISTO×OSUREK 『BASICK EP』
2013.03.10 / 全8曲24分 / mp3.flac,... / bandcamp
東京の下町足立区のトラックメイカー、オシュレック・バートップと、同地出身のラッパー・アリストが組んだ1枚。アリストのラップは以前はよく見かけたが、その凋落と共に今では絶えたかに思えるTHA BLUE HERBのILL-BOSSTINOのダンディズムを受け継ぐ。近しい関係にあるforteの面々に提供してもいいほどの本気のトラックをアリストは貰い受けているのだから、曲の後半になっても前半までのテンションをもっと保つ必要がある。オシュレックといえば年末に"ラッパーコンテスト"(DL先)を独自に行っていて、その時に発表された7曲のビートがどれも素晴らしく、ラップがしたいけれどインストがないというラッパーは落として損はないし、ビート単体で聴いても申し分ない出来だ。


【◎】MUMA 『MUMA SAMPLE DEMO』
2013.03.10 / 全5曲18分(+4曲) / 192kbps / Twitter
横浜の仲間を中心としたグループLUXAMの一員としても活躍する22歳のラッパー兼トラックメイカーのムマ。昨年に出したミックステープ(DL先)も素晴らしかったが、今回も期待を裏切らない。一般流通盤もまだ出していないにも関わらず、この世代には有望と断言できるラッパーは多いが、その中でも彼は飛び抜けている。リミックスなしのオリジナルトラックのみで勝負して、この品質は本当にすごい。ラップっぽい言葉に終始し、フロウに逃げているラッパーは彼の刺さる言葉を浴びるといい。


【○】VA 『拝啓、不可思議/wonderboy / それぞれの生き方』
2013.03.11 / 全13曲54分 / mp3.flac,... / bandcamp
2011年に急逝した不可思議/wonderboyが3.11後にすぐさま発表したチャリティーシングル『生きる』をラッパーやトラックメイカー、詩人たちがそれぞれの方法でリミックスし、所属していたレーベルLHW?がまとめたもの。原曲の雰囲気を大切にするリミックスも良いが、M3のような刺激は新鮮に響く。"正しい"言葉や内容を紡ぎがちなラッパーの中で、M9には谷川俊太郎、ワンダーボーイの言葉の中に短いながらも深く鋭利な言葉を差し挟んで来て、涙腺をわやにさせる。他にM1、M11、M13が聴きどころ。


【○】Ghost2Ghost 『Zombie Powder』
2013.03.11 / 全10曲14分 / mp3.flac,... / bandcamp
LHW?所属のトラックメイカーEeMuの別名義ゴースト2ゴーストでの3本目のビート集。ホラーラップという特殊ジャンルがあるが、本作は音でのそれ。単に映画『サイコ』の戦慄のシャワーシーンでの音楽を全編でサンプリングしているからだけではなく、日本が誇る語り部稲川淳二も参加し、日本人の怖さのツボを押しまくる。


【○】VA 『NERDSTEP COMMUNE 3』
2013.03.10 / 全9曲43分 / 320kbps / HP
ネットレーベルLowfer Recordsの、"Nerd×Bass Music"を標榜する人気コンピの第3弾。1曲目からアニメ「PSYCHO-PASS」の主題歌を原曲以上に気持ち良く疾走させ、その後はナードの名にふさわしくそれっぽいアニメの曲がダンス曲に改変され、ふむふむと勉強しつつ、AKIRAでホッとひと息つき、「四季ノ唄」の良リミックスにさすがUSYNとひとりごちる。トリは日本語ラップファンにもお馴染みのThe LASTTRAK!


【○】DJOKWR 『THE BEST OF FREE "BUSY NEEZY" (NIHA-C ONLY MIX)』
2013.03.13 / 全40曲59分 / 320kbps / Twitter
名古屋の若手ヒップホップグループ國枝Urban Campに所属し、旺盛なソロ活動からそろそろ全国区になろうとしているニハシが2011年4月に発表した『世舞い唄』からの4本のミックステープやシングルなど(DL可)から彼のヴァースを中心に、これまでの2年間の軌跡を仲間のDJオカワリがまとめたもの。よくもまあこんなに曲を発表したものだと驚くし、そうした膨大な曲をテーマごとに聴きやすくまとめたDJの手腕も含め、最後までだれることなく聴ける。istが関わっている楽曲では、ビートの品質はもちろんのこと、ラップされる内容の面白さが格段に上昇していて、いい組み合わせであることに改めて気づかされる。


【○】SALU 『BIS2』
2013.03.14 / 全13曲50分 / 320kbps / Twitter
同年代の若者が熱狂的に応援している感はあるものの、期待の若手といわれているラッパーの中で頭ひとつ抜けたのは確かだ。それは本作での余裕のある態度からもうかがえる。デビューアルバム前に出された『Before I Signed』(DL可)は当時ぐらいから徐々に熱を帯び始めたミックステープブームに便乗し、箔をつけるためだけに出したお手軽で粗悪な作品だったが、本作ではどこからどう聴いてもサル印のフロウで余裕綽々なラップをかまし、その姿勢がまさにスワッグを体現し、ノリに乗っているアーティストが持つ強い輝きをまとっている。


【○】YU$HI 『TINK TWICE』
2013.03.15 / 全6曲18分 / wav / blog
渋谷を中心に活動するDUST 4 LIFEというグループに所属するユーシのソロ作。巻き舌に語尾伸ばしのエセバイリンガルフロウ、さらに数々のパクリ。ただそれをとことんまでわざとらしく突き詰めると、面白さに変換するという不思議さを味わえる。最後の曲では、Zeebraも所属しているコミックバンド・カイキゲッショクからボーカルのTxBONEがベースで、JESSEがギターで参加している。


【○】maemon 『Understand?』
2013.03.15 / 全16曲31分 / 128kbps / blog
ニューヨーク在住の日本人トラックメイカー・マエモンの昨年1月以来となるビート集。前作もそうだったのだけど、サンプリングの味を生かしたビートは悪くはない(M6、9、11、14)けれど、格別すごくもないというもの。ニューヨークに渡ったということは自分の才能にそれなりの確信があったからだろうし、そうなると聴き手としてもついついハードルを上げてしまう。


【△】桂マザファキ乃輔 & atmos 『Unthology』
2013.03.18 / 全8曲29分 / 128,192kbps / ニコニコ動画
桂マザファキ乃輔とアトモスの2MCは、先月ミックステープ(DL先)を発表しているtrimnicaのメンバーだが、それ以前に大阪で活動していたDUFF-ZA-NYZというグループでも一緒だったそうだ(トリムニカのトラックメイカー鶴も在籍し、本作ではミックスを担当している)。先のミックステープでは目覚ましいラップを披露していたアトモスだけれど、ここではその出自であるニコニコ動画ラッパーのスタイルを引きずったものであり、聴ける曲は少ない。M1とM3、M5、曲としてまともなのはM7。デュオを同じグループのメンバーと組むなら彼ではないだろう。


【○】ROSE 『NEW FACE』
2013.03.19 / 全6曲18分 / 160kbps / YouTube
ロゼと読む横浜からの新顔ラッパー。1993年生まれ。ビートに言葉を乗せることができるという意味では音楽をしているが、フロウはRAU DEFのそれであり、エセバイリンガル風のすわっぐはもうそれだけで賞賛される時代はとっくに過ぎている。後半に歌物フックの曲があるのは悪くなく、ジャケットからはオリジナルと思われるトラックもM6を始めとしてとても聴きやすい。"水面映し出す今宵の月よ 想いは光繋げる明日へと"や、"次向かう場所は楽しいはず だってみんな帰ってこないから 俺も今旅立つ"といった自分の言葉があるのだから、誰もが使うありがちなリリックから脱却すべきだ。


【○】Lidly 『core EP』
2013.03.20 / 全10曲29分 / mp3.flac,... / bandcamp
最近だとJinmenusagiのセカンドアルバムにトラックを提供するなどその活動の幅を少しずつ広げている東京在住のトラックメイカー・リドリーのビート集。昨年11月から2月までの間にサウンドクラウド上で発表した音源をまとめている。私が存在を知ったのは2011年末だったのだけど、確かに2012年後半ぐらいから気になるビートを作り始めた印象がある。本作に収録された楽曲だとM3やM8は特に刺激的だ。


【○】Ventla 『Hell Days To Remember』
2013.03.25 / 全10曲19分 / 320kbps / Tumblr
ネットの荒波の中には途方もない才能が往々にして眠っているもので、彼もそうしたひとりなのかもしれない。この1作しか聴いてないので断言はできないが、彼のサウンドクラウドの横に並ぶフリーダウンロード作品一覧を見ると本作はなんと22作目とのこと。渋谷系から派生した宅録ポップスは趣味よく爽やかに鼓膜を癒してくれる。


【○】Jinmenusagi 『R2BA』
2013.03.26 / 全5曲20分 / 320kbps / HP
ラッパー名義ではこのジンメンウサギ、トラックメイカーの時はGhost Cheekとして活動する21歳のミュージシャンの新作ミックステープ。"Reborn 2 Be Alive"を意味する題名を冠し、M1でも心境や決意を赤裸々に語り、その自信のほどを見せるが、確かに本作はかなり良い。正規流通の1枚目のアルバムは驚異のラップ技術を見せつける出来だったものの、到達地点がはるかかなた過ぎて凡人の耳にはその内容が入ってこなかった。今年頭にリリースされた2枚目は歌詞の聴き取りという意味では改善されたものの、今度は反対に高度な技術を抑えたようにも映り、迫力を失っていた。聴き手というものは本当に勝手だと自認してはいるがそれが正直な感想でもある。そして、本作はスキルの高さの証明と分かりやすさのバランスがちょうど良くなっている。当人としては憤懣やるかたないだろうがアルバム2作よりも本作、あるいは昨年アップされたミックステープ『I MAY SICK』に軍配を上げたい。


【○】Stouch aka MC JIN 『Unbelievable』
2013.03.28 / 全11曲35分 / 128,192,256,320kbps / YouTube
ちょうど1年前の2012年3月28日にまだ19歳でこの世を去ったラッパーが残した音源をまとめたミックステープ。日本人とパラグアイ人のハーフとして日本で生まれ、10代半ばをパラグアイで過ごした彼は、2012年1月に帰国し東京での音楽活動を始めた矢先だった。パラグアイということでスペイン語と日本語の2ヶ国語でラップしている。JinmenusagiやRAqが参加。


【○】Narvubeats 『Borrowed.Times.Ep.Prt.1』
2013.03.28 / 全8曲10分 / 320kbps / bandcamp
OILWORKS所属の恐るべき速さでビートを生み出し続けるNaoto Taguchiの、Andherpackageに続く新名義がこのNarvubeatsとのこと。気づいたら1月だけで7作もアップされていて(すでにフリーDL分はリミットに)、本作はこの名義での10作目のビート集となる。特徴的な揺れる音はそのままにヒップホップらしい音に立ち返った印象。


【○】OMSB 『KITAJIMAFIOSO』
2013.03.29 / 全8曲28分 / mp3.flac,... / bandcamp
正規アルバムリリース後もコンスタントにフリーDLのビート集を出し続けるSIMI LABの屋台骨オムスビの新作。昨年6月発表の『Kitajima "36" SubLaw』はサウンドクラウドにアップしてきた楽曲をまとめたものだったが、今回はその音雲への熱情が薄れてきた表れか最近はさびしい更新状況でもあり、その分新作がたんと収録されている。生きの良さや無料の時の彼らしくへんてこりんさがあればまだ面白いが普通な仕上がりでいまいち。


【○】Ryuuta Takaki 『PLANKTON.EP』
2013.03.30 / 全9曲17分 / mp3.flac,... / bandcamp
今年からLHW?に所属している17歳高校生トラックメイカーの4作目のビート集。曲名から連想するに生態系にとってなくてはならないプランクトンの生きざまを描いているようだが、それはともかく例の静謐さと共に印象的なメロディを備えるビートが生まれていて聴きやすさが増している。LHW?主宰のParanelはミュージシャンという側面だけではなく有望な新人を発掘するその手腕もかなり素晴らしいものがあり、その彼のお眼鏡にかなった17歳となるとそれだけで先入観の入った耳で聴いてしまう面は否定できないわけだけど。


【○】BETA PANAMA 『BALEARIC HAWAII』
2013.03.31 / 全6曲23分 / 320kbps / bandcamp
やけのはらの新作にも参加しているオーストラリア在住のトラックメイカーのビート集。"バレアリック・トラックをリエディットし"、スティールギターを加え、"過去の偉大な架空ハワイアン作品の続きを自己解釈"という説明通りに浜辺で聴きたくなる心地よさがある。"バレアリック"という言葉に馴染みがなかったので、検索したらあのイビサを含む"バレアレス諸島"と出たけれど、ハワイとの繋がりは勉強不足で不明。でもスティールギターの浮遊感が良く効いていて難しいことを考える必要もない。


【△】泉まくら 『卒業と、それまでのうとうと 〜Another Remixes〜』
2013.03.31 / 全5曲20分 / 320kbps / blog
昨年11月に術ノ穴から音源デビューを果たした福岡の女性ラッパー。若い女性アーティストを面白がって実力あるミュージシャンがサポートする例は昔からあるわけだけど、彼女についてもそれがいえて本来の実力とは不釣り合いなメンツが参加していたデビュー作だった。本作ではフリーDL界隈で活躍するトラックメイカーたちが彼女のラップを調理する。赤裸々な思いを舌足らずなラップで表現するそのギャップに面白味があるわけで、M3やM5のように声にエフェクトをかけないのが正解だと思うが、それでもかけてしまう曲が3曲もあるということは使わずにいられないほどラップが下手っぴということなのだろう。


【○】Yuuyu Aensland 『Export』
2013.03.31 / 全8曲29分 / VBR / Tumblr
ラッパーCherry Brownの、Lil'諭吉とはまた別のトラックメイカー名義ユーユ・アースランドでのビート集。リミックス主体となった昨年の『Reeemix EP』(DL先)や、2011年の力作『Her Memories』(DL先)がそうであったように、本人が今一番聴いていて作って楽しんでいるヒップホップに囚われない音が詰め込まれている。組み上げたビート全てがお金になる世の中がきっと一番良いのだろうけれど、こうした作品を聴くと今関心のある音をすぐさま発表できる無料配信ミックステープという形式はそれはそれで自由度をより発揮でき、有効なやり方であることが分かる。チェリー・ブラウンとしての処女作を今年こそ期待したいが。


【○】Gudamanss & Fullownin 『Halfmoon EP』
2013.03.31 / 全6曲12分 / mp3.flac,... / bandcamp
共に今年で20歳になるという若いふたりのコラボ作。グダマンスのビートの上にラッパー浮浪人の言葉が乗る。せっかく特異な言語感覚を持っていてもそれを伝えるラップの力量がなければ、宝の持ち腐れだ。どの言葉も同じ力を込めて発声されている。自分が生み出した子供たちに平等に接する気構えは大事だが、ラップ全体が平坦となり、山が作られず、耳の奥深くまで言葉が入ってこない。雰囲気のあるM3がいい。




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<まとめ>
2010年〜2011年1月〜9月分 Tegetther
2012年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
2013年 1月 2月

・「JPRAP.COM presents "The Se7en Deadly Sins"」 →記事(2011.05.26記)
  2010年の主要フリーダウンロードミックステープについてもある程度まとめてある。
・「昨今の国産ヒップホップ・無料DLミックステープ事情」 →記事(2011.09.30記)
  2011年前半の作品に焦点を当てた記事。
・「VA『Fat Bob's ORDER vol.1』」 →記事(2011.10.07記)
  記事の最後に名古屋関連のミックステープのまとめた。
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2013.03.31 Sunday 23:59 | 音楽 | comments(0) | trackbacks(0)
素晴らしき哉、人生! / It's a Wonderful Life

67点/100点満点中

アカデミー監督賞を3度受賞している名匠フランク・キャプラ監督が1946年に撮ったファンタジードラマ。主演は"アメリカの良心"ことジェームズ・ステュアート。敵役にはライオネル・バリモア(彼の妹と共に"バリモア三兄弟"として当時名を馳せた弟のジョン・バリモアはドリュー・バリモアの祖父にあたる)。製作費318万ドル。

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夢がありながらも父親の急死に伴い家業の建築貸付組合を継ぎ、故郷の小さな町に留まざるを得なかったジョージ・ベイリーは、町一番の金持ちの銀行家ヘンリー・ポッターから圧力を受けつつも、人々の暮らしが少しでも良くなるよう努力し続けていた。しかし事業資金をミスで紛失した彼はクリスマスの晩に自殺を図ろうとするが、彼より先に身投げをし、助けてくれと叫ぶ男がいた。慌てて川に飛び込み助けた男は自分は見習い天使だとジョージに告げる。
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お笑いコンビ・浅草キッドの水道橋博士がやっているラジオを偶然聴いていた時に、ちょうどテーマが子供に見せたい映画ということで、ゲストの人だったか、彼だったか、あるいはアシスタントの女子アナウンサーだったのかは忘れたが、その内のひとりが選んでいた1本。さすがに題名ぐらいは聞いたことがあったが、こういう機会を逃すと昔の作品はなかなか見ようという気にならないので、見たいと思う気持ちが薄れる前に急ぎ手に取った。

今ではアメリカの大学のどの映画学科でも必ず鑑賞させる(ウィキペディア情報)ほどの名作中の名作で、無冠には終わったもののアカデミー5部門で候補となった。しかし、興行的にはイマイチだったらしく、その失望から監督のフランク・キャプラはその後製作本数が激減したそうだ。

クリスマス・イヴに神が天使を遣わし、それまで真っ正直に生きてきた男を自殺から救うというファンタジックな物語となる。ラジオでは水道橋博士が画期的な後半の展開について熱弁を振るい、後世に与えた影響を語っていた。天使クラレンスは主人公ジョージの自殺を思い止まらせるために、もし彼が生まれてこなかったらというイフの世界を体験させる。弟のソリー事故に始まり、アルバイト先の店主のチョンボなどの伏線を回収させる辺りは確かに今見ても巧いし、当時は画期的だったのだろう。

モノクロ作品が苦手ということはないが、スター女優に照明を強く当てて顔を白く飛ばす演出はやはり慣れない。ヒロイン・メアリーを演じるドナ・リードの美しさは進んで認めるし、キャラクター的にも良妻賢母で本作で唯一ぐらいに落ち着いて見られる登場人物(悪役の銀行家ポッターのブレのなさも素晴らしい)ではあるのだけど、古典は資料的価値としての存在意義しかないという感想に終わってしまうのが正直なところだ。

『めまい』や『ロープ』などヒッチコック作品でも活躍した主演のジェームズ・ステュアートは、第二次大戦中に従軍し、爆撃機パイロットとして活躍。俳優としては最高位となる大佐にまで昇進したそうだ。その戦争の英雄をハリウッドが見逃すはずがなく、戦争映画の主演への誘いは多かったそうだが、"本物の戦争を見てきた人間が戦争映画に出たいと思いますか?"と語り、本作(1946年)のような軽いタッチの人間ドラマに出るようになったというエピソードは本作以上にいい話だ。
2013.03.31 Sunday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
星の旅人たち / The Way

72点/100点満点中

エミリオ・エステヴェスが実父マーティン・シーンを主演に、監督脚本製作出演の4役をこなした2010年のロードムービー。シーンが道中で知り合う男のひとり(ダイエット目的のヨスト)を演じるヨリック・ヴァン・ヴァーヘニンゲンは、デヴィッド・フィンチャー版『ドラゴン・タトゥーの女』で卑劣な後見人ビュルマンを演じていた俳優。

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アメリカ人眼科医トム・エイヴリーのもとに、ひとり息子ダニエルの訃報が届く。ダニエルがスペインにある聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼の旅に出た矢先のことだった。巡礼出発の地であるフランスとスペインの国境の町にやって来たトムは、息子が巡礼の旅に求めたものが何だったのかを知ろうと、彼の遺灰を携え、旅をすることを決意する。
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フランス南部の町サン・ジャンを出発し、ピレネー山脈を越えて、スペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラに至る全長800キロメートルにもなる(東京・九州間ぐらいらしい)歴史ある巡礼の道を旅する物語となる。

テーマ自体は早すぎる我が子の死をどう受け入れるのかというとてもありふれたものであり、キリスト教の巡礼地を題材にしながらも宗教色はそれほど強くないことや、マーティン・シーンのさすがの名演ぶりと個性的な旅の道連れたちとの交流もあり、2時間と比較的長めの作品ながら楽しんで鑑賞できる。

とはいえ、シーン自身が語る通りに、巡礼の旅は"外から見ればただの旅"ではあり、初めて見るフランスからスペインに至る田舎道の風景は最初のうちは新鮮だが、それが延々続くとさすがに飽きてくるのは否めない。唐突に挿入されるジプシー問題については意識が高いと感心はするものの、その唐突さがやや鼻につく。

40歳にもなって世界が見たいとプラプラ旅を続ける息子ダニエルが、"僕の道に賛成しなくてもいいけど、勝手に判断しないで"と父親のトムに話す場面が冒頭にある。ダニエル役はシーンの長男エステヴェスが演じるが、その役柄やセリフからは、かつては青春映画の人気俳優として活躍し今では監督業まで行い、優等生ともいえるエステヴェスよりも、いまや奇天烈キャラで再ブレイクというか、その言葉通りに壊れている感がある次男チャーリー・シーンが思い出されてきて、そうした見方を始めてしまうと、作品の意味合いが変わってきて面白い。

邦画でいえば、荻上直子監督が撮っている一連の作品(『めがね』しか見たことないけれど)にも通じる印象のエコだとか自己啓発だとかいったどこかうすら寒い匂いを本作に感じてしまう部分は正直あるのだけど、ゴシップ誌を騒がせる不肖の息子を受け入れる話だと思いながら見るとそれはそれでなかなか楽しい。
2013.03.29 Friday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
プレイヤー / Les Infidèles

69点/100点満点中

2012年のフランス製作のオムニバス・コメディ映画。

7人の監督が名前を連ねる中には、モノクロ無声映画『アーティスト』でアカデミー作品賞を獲得したミシェル・アザナヴィシウス監督や、ハリウッドリメイクもされた『すべて彼女のため』や『この愛のために撃て』のフレッド・カヴァイエ監督らも参加している。

主要エピソードの主演には『アーティスト』のジャン・デュジャルダンと、『この愛のために撃て』で看護助手役だったジル・ルルーシュのふたりが務める。『世界でいちばん不運で幸せな私』のギョーム・カネ(妻の留守中に浮気を楽しむティボー役)や、『Ricky リッキー』でシングルマザーを演じたアレクサンドラ・ラミーが私生活と同じくデュジャルダンの奥さん役で出演している。

男女の性愛をコメディにしているというよりも、浮気に興じる男たちのセックス絡みの面白おかしいエピソードを集めている。最後にラスベガスに行くからという安直な理由からだけではないが、どこか『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』へのフランス流コメディの返答にも思える。オムニバス形式になっているため、かの作品と比較するにはややパンチに欠くものの、ラスベガスで奮闘するオチは読めたにせよ(いくらマブダチだからといって、隣り合って騎上位を楽しみ、そのエクスタシー寸前の顔を相手に見せるか?)、ハリウッドではなかなか持って行けなさそうなネタであることは確かで、それだけでも十分楽しめる。

しかし、他のエピソードにしてもアメリカで作られたならもうちょっと下品になりそうだが、おフランスだとかなり直接的な猥談にも関わらず、洒脱に映るわけでそのバランス感覚はさすが。

どんなに巧く話を持ってこられたとしても浮気を素直に白状してしまうのはそれは馬鹿でしょという話の「質問」だけは監督が女性で、それまでのエピソードと印象が異なるのもまた良い塩梅だ。



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1「プロローグ / Le Prologue」
監督:フレッド・カヴァイエ
出演:ジャン・デュジャルダン - フレッド
    ジル・ルルーシュ - グレッグ
    ジェラルディン・ナカシュ - グレッグの妻
"家庭がありながらも週末になるとふたりでナンパに繰り出すフレッドとグレッグ。"

2「ベルナールの挿話 / Bernard」
監督:アレクサンドル・クールテ
出演:ジル・ルルーシュ - ベルナール
    エリック・ド・モンタリエ - 救急医
"恥ずかしい状態で救急病院に運び込まれたベルナール。そこに妻が見舞いに現れる。"

3「良心 / La Bonne Conscience」
監督:ミシェル・アザナヴィシウス
出演:ジャン・デュジャルダン - ローラン
    ジル・ルルーシュ - アントワーヌ・カスタン
    イザベル・ナンティ - クリスティーヌ
"地味で冴えない中年男ローランが泊りがけの有機農業セミナーに出席。"

4「ロリータ / Lolita」
監督:エリック・ラルティゴ
出演:ジル・ルルーシュ - エリック
    クララ・ポンソ - イネス
    ジャン・デュジャルダン - ジェームズ
"女子大生の若い愛人イネスに振り回される妻子持ちの歯科医エリック。"

5「ティボーの挿話 / Thibault」
監督:アレクサンドル・クールテ
出演:ギヨーム・カネ - ティボー
"妻子の留守中に自宅で浮気を楽しんだティボーだったが、妻子が急に帰ってきて・・・。"

6「質問 / La Question」
監督:エマニュエル・ベルコ
出演:ジャン・デュジャルダン - オリヴィエ
    アレクサンドラ・ラミー - リザ(オリヴィエの妻)
    ジル・ルルーシュ - オリヴィエの親友ニコラ
"妻リザが冗談めかして夫オリヴィエに浮気経験の有無を問いただしたことから・・・。"

7「シモンの挿話 / Simon」
監督:アレクサンドル・クールテ
出演:マヌ・ペイエ - シモン
"妻子の留守中にSMプレイを楽しむシモン。そこへ妻と子供が帰ってくる。"

8「浮気男 友の会 / Les Infidèles Anonymes」
監督:アレクサンドル・クールテ
出演:ジャン・デュジャルダン - フランソワ(証券マン)
    ジル・ルルーシュ - ベルナール
    ギヨーム・カネ - ティボー
    マヌ・ペイエ - シモン
    サンドリーヌ・キベルラン - マリ=クリスティーヌ(女性セラピスト)
"浮気中毒の夫たちのためのグループセラピー。"

9「ラスベガス / Las Vegas」
監督:ジャン・デュジャルダン & ジル・ルルーシュ
出演:ジャン・デュジャルダン - フレッド
    ジル・ルルーシュ - グレッグ
    マチルダ・メイ - フレッドの妻
    ジェラルディン・ナカシュ - グレッグの妻
"妻を何とかごまかし、ラスベガスにやって来たフレッドとグレッグは、"目覚めて"しまう。
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2013.03.28 Thursday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
塔の上のラプンツェル / Tangled

72点/100点満点中

2010年製作となるディズニー長編アニメの記念すべき50作目。原作はご存じグリム童話。監督は『ボルト』のバイロン・ハワードと初監督となるネイサン・グレノのふたり。脚本は同じく『ボルト』や傑作ラブコメ『ラブ・アゲイン』を手掛けるダン・フォーゲルマン。製作費なんと2億6000万ドル!

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驚くほど長い魔法の髪を持つ少女ラプンツェル。深い森に囲まれた高い塔の上に住む彼女は、下界は恐ろしいから絶対に出るなと母親に戒められ、一度も外の世界を知ることなく生きてきた。好奇心旺盛なラプンツェルは、毎年誕生日になると夜空に現われる神秘的な"灯り"の正体を確かめることを夢見ている。18歳の誕生日前日、王冠を盗み追っ手を逃れようと塔に迷い込んだ大泥棒フリンと遭遇。魔法の髪で彼を捕らえた彼女は自分を塔から連れ出し、"灯り"の場所まで案内することを条件に解放する提案。ついに外の世界へ彼女は踏み出す。
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各所で聞いていた高評価通りに、確かにディズニーらしいお行儀の良い作品だ。どこを切ってもその品位は損なわれておらず、はっきりと提示されるメッセージは子供に見せるのに最適。馬のマキシマスやラプンツェルのペット兼友人でカメレオンのパスカルといった生き生きしたキャラクターはどこまでも愛らしく、躍動するカメラワーク(フリンを乗せたマキシマスが城から疾走する場面)も、音楽に関しては時折入るミュージカルがアレだけど(趣味の問題)、脇役たちも小気味良く活躍し、正義は悪を滅ぼし、ついでに女性の権利をもしっかり描く。

信頼すべきウィキペディアによれば、19世紀初頭にドイツに広く伝わる民話を採取したグリム兄弟が、版を重ねるごとに性的な要素を修正していった物語として本作は特に有名とのこと。

本作のラプンツェルにしても塔の最上階に18年間囚われていて(本人は当然そうは思っていない)、外に出ようと思い立つのは18歳の誕生日の数日前だ。つまり、アメリカでは煙草も酒もまだだけど、州によっては結婚できる年齢だ。そうした古臭い価値観・道徳に添った物語は、ヒロインやその手助けをする強盗フリンの魅力のおかげもあり、薄まってはいるものの、それでもやはり濃厚なディズニー臭を嗅いでしまう。ピクサーがディズニー傘下になった時に恐れたのはこの説教臭さを身にまとってしまうのではないかという恐れであり、ドリームワークス製作の『シュレック』の1作目を面白がったのもそういうことだ。

DVDだったため2Dでの鑑賞になったが、ランタンが空を覆う光景は3D上映ではさらに美しく映ったことだろう。

しかし、魔女ゴーテルに非はふんだんにあるものの、それでも18年間彼女を育てた"親"であることには変わりないわけで、それをあっさり切り捨てる非情さはアメリカらしいといえばそれまでだが、そら恐ろしくも思える。
2013.03.26 Tuesday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
グリーン・ランタン / Green Lantern

53点/100点満点中

ライアン・レイノルズ主演による2011年のアメコミヒーローもの。共演にはこれが縁でレイノルズと結婚することになるブレイク・ライヴリー。監督は『007/カジノ・ロワイヤル』『復讐捜査線』のマーティン・キャンベル。製作費2億ドル。

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数十億年前、宇宙最強の力を手に入れ守護者となった不死身の種族が創設した宇宙警察機構"グリーン・ランタン"。強い意志を持ち恐怖心を克服できる者だけを選び出す宇宙最強の万能武器"パワーリング"により様々な星から厳選されたメンバーによって宇宙の均衡が保たれている。しかし、伝説の戦士アビン・サーが封じ込めた最大の敵パララックスが復活。その復讐を受け、致命傷を負ったアビン・サーは後継者を求めて地球へ。パワーリングが白羽の矢を立てたのは、腕は一流だが自信過剰でお調子者の戦闘機テスト・パイロットのハル・ジョーダンだった。
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緑のコスチュームの男が宇宙の危機を救う話。そんなアホらしい映画を誰が見るのだろうと思っていた。アメコミ映画がここのところずっと数字を取っているが、とうとうネタが尽きてきたのかと感じてしまう作品でもあった。

ただ、ブレイク・ライブリーが出ていることだけは気になっていた。ゴシップガールのエスこと、セリーヌ役の彼女は、テレビドラマでは十分な魅力を放っているものの、映画となるととんとその実力を発揮できずにいて、ベン・アフレックの『タウン』など話題になる作品には出ているが、エスの良さが発揮されておらず残念に思っていたのだ。やはり本作でも「アイアンマン」シリーズのグウィネス・パルトローのようにはいかず、ただの華やかさ演出装置の一部に成り下がり、映画自体のしょぼさも加えると、出演したことが明らかに間違いだったとしか思えないが、彼女個人にとっては主演のライアン・レイノルズと出会うというかけがえのない作品になったようだ。

そうなると、ますます見る必要がない映画にも思えるが、先日爆笑した『テッド』にそのレイノルズがカメオ出演し、本作が笑いのひとつになっていて、ふと見てみようとなったのだ。

製作費をかけて派手に作り込み、大人の鑑賞にも耐えうる練り込んだ脚本があってこそのアメコミ映画の現在の興隆だとは思うのだけど、このランタンから緑色のわけの分からないエネルギーを得て、ダークサイドに堕ちた(このモチーフは使われ過ぎて擦り切れている状態ではあるが、一体元ネタはどのあたりまで遡れるのだろう。手をかざすことで病気を治したり、水をワインに変えた偉大なヒーローのひとりを裏切った男ユダより以前にも、ギリシャやローマ、中東で勃興した古代文明にも似たような話があるのか?)悪の化身を倒す話は、おそらく原作コミックを大幅に圧縮したのだろう、そのダイジェストを見せられている気になるほどスピーディに問題が起き、問題が解決され、みんなが幸せになっていく。

アメコミ映画ってやっぱり駄目だよね、フツーのハリウッド映画以上に見る価値がないよという偏見に安心して力を与えてくれる作品だ。
2013.03.23 Saturday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
TIME/タイム / In Time

55点/100点満点中

ジャスティン・ティンバーレイク主演の2011年のSF映画。監督脚本は『ガタカ』『トゥルーマン・ショー』のアンドリュー・ニコル。共演にはアマンダ・セイフライド、キリアン・マーフィーら。製作費4000万ドル。

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遺伝子操作により老化を克服した近未来。全ての人間の成長は25歳で留まり、それ以降は体内時計が刻む残り時間によって余命が左右される。時間が通貨となり、富める者は永遠ともいえる長さを生き、貧しい者は時間を手に入れられず早死にする。"スラム"で暮らす青年ウィル・サラスは社会への不合理を目の当たりにして、現在のシステムに立ち向かう決意を固める。富裕層地区に潜入したウィルは、大富豪フィリップ・ワイスの娘シルビアと出会う。
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方々で語られていることだろうが、設定自体は面白い。不死が可能となった社会で、時間が通貨となり、裕福な人々は人類が夢見続けてきたその技術革新の恩恵に預かるものの、持たざる者たちはその腕に表示される持ち時間がゼロになると死ぬしかない世界が舞台となる。

歌手活動を復活させ、期待のアルバムがもうすぐリリースされるティンバーレイクが演じるウィル・サラスは、母を目の前で亡くしたことで社会への不満を募らせ、またひょんなことから100年分の時間を手にしたことで富裕層が暮らすニュー・グリーンウィッチへの潜入を果す。同時に同地区の代表ともいえるフィリップ・ワイスの娘シルビアと出会い、互いに惹かれ合う。ウィルが当局から追われる際に、彼が彼女を人質にしたことからより接近し、やがて退屈な日常に倦んでいたシルビアはウィルの考え方に感化されていく。

若者が"搾取"なんて言葉を使い始めたら、それはもう何とやらな話であり、ウィルと共に父親の"時間銀行"を襲い始める彼女の姿は70年代に左翼組織に誘拐され洗脳された新聞王ウィリアム・ランドルフ・ハーストの孫娘パトリシア・ハーストの生き写しであり、義賊ぶって強盗を働くカップルの姿からはボニーとクライドを連想させもする。

ただ、終わり方は非常にしょぼくれている。時間取引の流れを監視し、ふたりを逮捕しようとする"タイムキーパー"のリーダーを演じるキリアン・マーフィーは強力な敵役を担うのだけど、あまりにお粗末な最期を遂げる。何だか不憫に思えてくるほどだ。そうした詰めの甘さは随所に見られ、『ガタカ』で独特な雰囲気を持ったSF作品に仕上げていたアンドリュー・ニコル監督にしては、4000万ドルという決して少なくはない製作費がありながらも、冷ややかな青を基調とするありきたりな未来の絵に終始し、作り込みが足りない。

また、主役のティンバーレイクも坊主頭でスラムの住人を気取るが、その地区に不似合いな清潔感をまとってしまっていて、スタイリッシュなSF映画としては上出来なのかもしれないが、この世界の中で浮いてしまう。ガイ・リッチー映画に登場するようないかにもな労働者階級然とした風貌が欲しいところだ。
2013.03.15 Friday 23:57 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
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