6月にフリーダウンロードとして発表された国産ヒップホップ・ミックステープ一覧。日本語ラップ専門サイト
JPRAP.COMや
2Dcolvicsの情報を元にしている。本当にありがたい。
<"これだけ聴いとけ作品"を簡潔に教えてくれというせっかちな人のための3枚>
左から新世代日本語グライムラッパーCatarrhの初作、博多親不孝の若手によるコラボ作、沖縄発のコンピ。ジャケットをクリックするとDL先に飛びます。
【○】waniwave 『アージくんEP』
2013.05.30 / 全5曲19分 / mp3,flac,... /
bandcamp
躍進するインディーズレーベルLOW HIGH WHO?所属のラッパー兼トラックメイカー・ワニウエイブが7月のファーストアルバムリリース前に発表した5曲入り。キリコやDOTAMAのような強いクセは聴く人を選ぶが、凡百のラッパーでは一生かかっても生み出せない言葉と思考があり、はまれば面白い。
サウンドクラウドで最初聴いた時も楽しんだM4やM5はその好例。"金銭を脱構築していく戦争! 歯向かうんだ国家に!"。
【○】The Novelestilo 『Mix Playings』
2013.05.31 / 全11曲41分 / VBR /
YouTube
サードアルバムを出したばかりのヒップホップバンド、ザ・ノヴェレスティーロの初となるミックステープ。JPラップコムが企画した一昨年の『#Nibiru』(
DL先)にも参加していた、ギター・ベース・鍵盤・ドラムに1MCスタイルの彼らはNasやJay-Z、あるいはKendrick LamarやLupe Fiascoのヒット曲を弾き直し、その上にRomancrewのALI-KICKを彷彿させるラップを乗せる。テーマに幅があるラップは優等生的ではあるが、この手の生音ヒップホップバンドのお約束通りに彼が弱い。気持ちの良いグルーヴを邪魔しないという一点では正しいのだけど。もうひとつ挙げるなら、ビートのもたつきが気になる。このラッパーにはもっとタイトなビートが合いそうだ。
【○】JINTOKU 『EMBLEM』
2013.06.01 / 全16曲48分 / mp3,flac,... /
bandcamp
青森は八戸在住のラッパー。東京・池袋のクラブbedが中心となっている(と思われる)スタイルを見事に模倣している。彼が東京のラッパーなら評価されるかもしれないが、せっかく距離を置いているのに全く同じことをしていたら面白味に欠く。もちろん日本のほとんどのラップが米国の物真似と指摘もできるわけだけど、本作でのジントクがDNCらと遜色ないフロウを聴かせるだけに余計にそう思えてしまう。
【○】SUMICO PLUE 『I JUS WANNA CHILL ep』
2013.06.01 / 全7曲25分 / mp3,flac,... /
bandcamp
配信数上限到達。5か月ぶりとなるBeat Train Recordings企画の月刊ビート集第4弾。今回はDJ SUMICOとして餓鬼レンジャーと関わり、またラッパー・海との
コラボ作などをリリースしてきたスミコ・プルー。久し振りにその音を聴くが、分かりやすい人工甘味料を排し、自然のままの味わい深さを今も追い続けているのだなと嬉しくなる。
【○】MONBEE 『REMIXTAPE01』
2013.06.02 / 全5曲19分 / mp3,flac,... /
bandcamp
長野のトラックメイカー・モンビーがTrey SongzやChris Brown、CiaraといったR&B勢とLudacris、T.Iらの楽曲をリミックス。同郷のラッパーらに楽曲提供をし、フリーDL界隈で最近よく見る名前で、こうして洋楽のリミックスとなると、それまで日本語の歌詞にどうしてもとらわれてしまう耳が音に集中できる。
【○】Arµ-2 『Check Me (Compact Edition)』
2013.06.02 / 全5曲14分 / mp3,flac,... /
bandcamp
埼玉県川口在住のトラックメイカー・アルツー。1993年生まれと若く、確かな才能を感じさせる。5lack(S.l.a.c.k.)とOlive Oilの『50 REMIXES』のトリを飾るのは彼のリミックスだ。本作にもかなり恣意的に改変したスラックのラップが収録されている。冷ややかでスペーシー、そしてジャジーな音が妙に心休まる。
【○】龍道 『NEW COMER』
2013.06.02 / 全5曲14分 / 192kbps /
YouTube
神奈川県・平塚出身、1994年生まれのラッパー。昨年10月の『LIFE is POEM』(
DL先)に続き、本作で3本目とのこと。グイグイと耳を圧迫する冒頭3曲にはヴァースに自然な緩急が付けられ、フックで耳馴染みの良いメロディが飛び出すなど聴きやすさが向上。一方、M4ではテレビに登場するラップグループのようなポップなフックを持つ応援歌で、前半の勢いに喜んだ向きを戸惑わせそうだ。それはそれで幅であり面白い。
【△】秀吉a.k.a.自称アイドルラッパー 『HDKC』
2013.06.04 / 全6曲11分 / mp3,flac,... /
bandcamp
公開・配信終了。リミックスを中心にフリーDL界隈で活躍するトラックメイカーyzoxのプロデュースで、女性ラッパー秀吉が2月に発表した新曲「HDKC -Planetarium Version-」(
DL可)をyzox含めた4人のリミキサーが思い思いに手掛けたリミックス集。
【○】mosaic404 『dofrolet beats』
2013.06.05 / 全16曲33分 / 160,320kbps /
Twitter
配信終了。沖縄のトラックメイカー・モザイク404のビート集。どこまでも落ち着いたループミュージックを奏でる。M4やM7といった楽曲では一瞬派手目な音を紡ぐも、すぐに終わらせてしまう控えめさ。ただ、そのおかげもあるのか、作品に統一感がある。
【○】舌坊 『シンプルとバランス』
2013.06.05 / 全10曲28分 / 192kbps /
Twitter
配信終了。ネット社会を切ってみたり、抱えている感情や思考を自分なりの言葉で表現しようとしているのは分かるし、またポップであることを厭わない心意気も評価できる。が、ミキシングがまずく(端的に書けばラップが音に埋もれている)、耳にそのせっかくの言葉がバシッと入ってこない。
【○】XenRoN×BGY 『WONDER DOOR』
2013.06.06 / 全10曲31分 / 320kbps /
Tumblr
昨年突如現れた新鋭トラックメイカー・シェンロンと長野のラッパー・バギーが、昨年7月に発表したフリーDLシングル『KILLA SHOUT』(
DL先)で互いに相性の良さを確認したのか丸々1本、客演なし全くふたりだけのコラボ作を制作。"XenRoNの音が背中を押してくれる"とのリリック通りに、音は気持ち良くポップで小気味良くスウィングするが、肝心のバギーのラップが鈍重でグルーヴがなく、音と絡めていない。リリックにしても毎回同じで、「ピーチちゃん」以外に楽しめるものがない。本作の見どころはジャケット。
【○】OMSB + KenOne & JUMA 『2013 5/31ライヴセッション』
2013.06.07 / 1枚ファイル24分 / wav /
SoundCloud
配信数上限到達。"スクラッチの鬼"DJケンワンとMPCの"鬼ヤバい"使い手オムスビ(SIMI LABの屋台骨)が先月末にclub axxcis SHIBUYAで行ったセッション。ふたりが繰り出す音の先進性も確かに耳を引くが、それ以上にオムスビのラップの迫力はそれこそ"鬼ヤバ"だ。中盤辺りからふたりのラップ(同じシミラボのジュマが6分過ぎから顔を出す)を音が圧倒し始め、そのせめぎ合いも良い。DJケンワンが
ブログで解説している。
【○】ILL DE CABEZA 『Genocide Cutter』
2013.06.09 / 全7曲30分 / mp3,flac,... /
bandcamp
奈良在住のトラックメイカーがドイツのネットレーベルより発表したビート集。ジャンル的にはよく分からないのだけど、まあ題名通りに敢えてカッターで虐殺しちゃってる感じか。戦闘力を高めたい時には下手なエナジードリンク飲むより高まるはず。曲名に「ジャブローの嵐」とあるが、思い出すこと出来ず。
【○】MIYABINA 『捨て曲ビート集』
2013.06.11 / 全5曲15分 / 128kbps /
SoundCloud
公開・配信終了。以前ほどではなくなったものの
サウンドクラウドに頻繁に新作ビートを発表している東京のトラックメイカー・ミヤビナが酷い名称で発表したビート集。その名前から聴く気はなかなか起きないが、これが意外に良い。冗長さが否めない瞬間がなくもないが、少なくとも彼が普段アップしているビートより挑戦的な音が鳴らされる。
【○】Mr.office 『Little沖縄BEAT集 for jorke』
2013.06.12 / 全8曲24分 / 160,192kbps /
HP
昨年末に『無言以降』(
DL先)を出している大阪のトラックメイカー兼ラッパー・Mr.オフィスの新作。なんでも大阪大正区にある平尾がリトル沖縄なのだという。ジャケット(裏ジャケ最高!)はその商店街で撮影されている。三線の音を利かしたビートは確かに観光客が思い浮かべる沖縄そのもので、下記の沖縄発コンピよりもずっと南国情緒豊かだ。ビート集と銘打ちながらラップ曲が3曲あり、全曲で言葉を乗せてくれたら良いのに。
【○】VA 『PIPE DREAM COMPILATION VOL.1』
2013.06.12 / 全7曲32分 / mp3,flac,... /
bandcamp
札幌の音楽レーベルPIPE DREAMが編んだビート集。2月に『sink』(
DL先)を発表しているNinja Drinks Wineの優しい音の乱反射に始まり、初めて名前を見るトラックメイカー(馴染みなのはPARKGOLFぐらい)が大半な上に普段聴かない音のジャンル(エレクトロ、ベースミュージック)ではあるのだけど、どの音も一元さんお断りの張り紙が取っ払われていて(ただM4は難度高い)、耳に馴染む聴きやすさがある。
【○】MOMENT 『The Game Waits Me Vol.1』
2013.06.14 / 全8曲25分 / 128,320kbps /
Twitter
大阪大学に留学中だったが、現在2年間の兵役義務に就いている韓国人ラッパー・モーメントが休暇を利用して制作したミックステープ。既存曲をまとめた作品(
DL先)を先月出したタイミングで、間を置かずに日本にいなかろうがその存在を忘れさせないとばかりに新作を発表する貪欲さはいい。ただ、軍隊での母国語のためか、日本語詞の割合がさらに減り、m-floのVERBALのような有様になっている。韓国人が英語でもなくどうして日本語でラップするのか(嬉しくはあるが)という奇異な印象が強まってしまう。ケンドリック・ラマーの曲をリミックスしながら萌を語るコミカルなM5が白眉。
【○】VA 『Spit Stock Vol.3』
2013.06.15 / 全5曲分 / 320kbps /
Twitter
先月2作も出したのに、早くも続編となる第3弾。大阪・船場のレコーディングスタジオBLUE VERY STUDIOが企画し、同所に集まる若手ラッパーやトラックメイカーの楽曲を所属グループとは関係なく自由に組み合わせて制作された楽曲が収録される。ZIOPSのDFKのソロとなる1曲目だけが異質で聴く作品を間違ったかなと慌てるが、それ以降は例の黒く燻された空気を充満させるラップと音に戻り、安心する。
【○】Ryuuta Takaki 『Clockwork Love Songs (HALO-demo)』
2013.06.15 / 全11曲23分 / mp3,flac,... /
bandcamp
公開・配信終了。LHW?に所属する東京在住の17歳現役高校生トラックメイカーの5本目となるビート集。前半はよくいえば静謐で理知的、悪くいえば退屈な音の連なりで、今回もこの調子かと思った矢先、表題でもあるM5(
視聴のみ)で耳を奪われる(よくよく聴けばその兆しはM3にも)。重みのある厚い音は曲に立体感を生み、楽曲を躍動させる。
【△】1618 & Youtaro 『Fallin Stones』
2013.06.15 / 全8曲10分 / mp3,flac,... /
bandcamp
配信数上限到達。日本のヨウタロウとロシアの1618というふたりのトラックメイカーによるスプリットミックステープ。"ニュースクールな音"ということで、古い耳の持ち主の私にはその良さがさっぱり。短いことが救い。
【○】DJ KENN 『American Dream』
2013.06.15 / 全16曲59分 / 160,192kbps /
datpiff
SEEDAがDJ ISSOと共に始めたフックアップ企画のミックスCD、CONCRETE GREENシリーズが今夏復活するが、その3人目のメンバーとして選ばれたのがこのDJケン。経歴が本当に面白く、そのうちポプラ社から自伝が出てもおかしくないぐらい。シカゴの犯罪多発地域サウスサイドに英語もろくにできないのに単身乗り込み、幸運も重なり今を時めく同地の悪童Chief Keef(
YouTube)と繋がりを得て、彼の初期(といっても2011年)ミックステープの大半の曲を手掛けることになる。今はヤンチョンオンナビートのYoung Chopが彼の片腕となり、シカゴ勢以外のトラックでも彼の名前と音を聴くようになっているが、出だしの頃のチーフ・キーフを支えていたのが日本人だったというのはなんとも誇らしい話だ。その本場仕込みのビートに、キーフを始めとしたシカゴの面々(多分)がラップを乗せるのが本作。その音が面白いのかといえば、かなり大味でどれも同じにしか聴こえないが、それでも題名通りにアメリカン・ドリームを体現した偉大な男であることに変わりはない。
【○】VA 『THE MIX TAPE VOL.1 hosted by 115Studio』
2013.06.16 / 全14曲44分 / 320kbps /
HP
沖縄本島浦添市にあるレコーディングスタジオ115Studio企画のミックステープ。2007年のUMB沖縄大会の覇者切刃(当時はKILLHA名義)とフリーDL曲が好印象だったMIROKU(弥勒)以外は初めて耳にするラッパーたちで、2MC1DJグループZ-GYARからQ.G.SMOOTHとSakuがそれぞれソロで参加し、味のある柔らかいラップが持ち味のChibayu(
YouTube。視聴可)、yuki foot、禅(アカペラ収録のシングルが
DL可)らが数曲ずつ提供している。
肩ひじを張り、無駄に強面な表情を作るのではなく(弥勒以外)、形からではなく音楽が好きでヒップホップをしているのが伝わるラップが多く、好感が持てる。ただ、本作の良さは音だ。15$oulを中心とし、前述のモザイク404も顔を見せ、また切刃はKI-1名義で2曲で参加する。どの楽曲も栄光の黄金年代・東海岸の美学を形作った太いビートをやっぱりヒップホップはこれだよねという具合にかっこよく響かせ、それに圧倒されて何もできずに終わっているラップもあるほどだ。
最近では沖縄出身のラッパーというとRITTOの評判を耳にするし(個人的には微妙)、切刃はCD-Rではあるものの先月フルアルバムをリリースしている。MSCのO2は沖縄に移り住んだそうだ。MSCといえばSATELITEに所属していたNORが昨年ミックステープを発表している(
DL可)。独自の音楽文化を擁し、ポップ音楽では成功した先達たちも多く、言葉は悪いけれど、ラップするネタが豊富でレベルミュージックとしてのヒップホップがまさに機能しやすい土地にも思える。
本来はお金になる形での作品の発表が好ましいのだろうけれど、離れた地でうごめく日本語ラップの胎動にこうして光を当てる企画はありがたい。
【○】ILLBUSTA TRAIN & KBN-ぬ 『Bai-u EP』
2013.06.17 / 全6曲17分 / 160,192kbps,VBR /
Twitter
福岡のイルバスタ・トレイン(A-rick、BUB、CREMの3MC)とクボンヌ(エリックと093-心理betというユニットを組む)の4人が、シミラボ・オムスビが昨年発表したビート集『Kitajima "36" SubLaw』のインストトラックにラップを乗せる意欲的な作品。4人が高い技術の持ち主だとか、テーマの特異さやキャラ立ちの良さがあるなどということもなく、極めてオーソドックスなラップを繰り広げるのだけど、なぜだか惹かれるものがある。その自然体やなんとなく伝わる仲の良さみたいなものが聴き手を和ませるのだろうか。オムスビのビートも単体で聴くよりもラップが乗ることでずっと魅力的になる。無欲の勝利なのかもしれない。
【○】Kerberos 『kitaoka whut EP』
2013.06.18 / 全8曲29分 / 192kbps /
HP
最近はPigeondustとしてよりもこの名義での活動が活発な印象のケルベロスがNF Zessho(絶招)、番犬、SAT.Uを客演に制作された楽曲をYoshinumaを始めとしたリミキサーにより4パターンの改変と原曲、さらにはアカペラ、インストまでが収録された1本。冒頭4曲がそのリミックス曲で、どれも聴かせるが、例えば吉沼の手によるM1ではNF絶招が、ケルベロスのM2だと3ヴァース目が輝くが、全ヴァースに光を与えるものがなく、どうなのだろうと思ったところに、締めに置かれるオリジナルがまさに求めていたビートだったというオチ。リミックス集が原曲越えをできずにいる時点で失敗と括られてもおかしくないが、それでも若手トラックメイカーの競演ではあり、聴く価値はある。
【○】Catarrh 『Exhale』
2013.06.20 / 全14曲41分 / mp3,flac,... /
bandcamp
神戸のグライムラッパー・カタルナイシンの初のミックステープ。今年に入り、日本語グライムの先達たちに交じり行ったセッション(
DL先)が発表されていたが、ここにきてようやくまとまった作品を出してきた。2011年から
サウンドクラウド上にアップした音源が半分を、最後に発表された昨年5月以降に制作された新曲が残り半分を占めている。最初の数曲は古い曲ということもあるのか、ラップを高速で射出しようとするも、口の筋肉が思い通りにいかない感があるけれど、偽りの人間関係をぶった切るM4から快調に飛ばし始め、滑らかになった口にさらにDekishiやRitzzzといった心強い援護射撃もあり、強いメッセージ性がグライムという表現形式にもともと内在している暴力性と融合し、M7からは無敵状態で爆走する。良い。
【○】T@K 『H.I.Phone』
2013.06.20 / 全20曲60分 / 192kbps /
YouTube
昨年末に発表した『Let'S Dance』以来5本目のミックステープ。これまでで一番のボリュームだ。1曲目から自身のスワッグをこれでもかと誇り、その輝きを燦然と光らせ、新旧のどんなビートにも対応してみせる。最初はフロウだけの中身のないラップに思える(最後の3曲で憑き物が落ちたように自然なラップを聴かせる)けれど、よくよく考えればアメリカで頻繁にミックステープを出しているラッパーたちのそれもまた内容までは分からないので気にしていないがきっとそんなものなのだろう。彼らのごとくタクはこの日本で、またあんな長尺のミックステープを出したのかといわれるようなラッパーになれば面白いのかもしれない。DREAM BOYSが和気あいあい録音していた「My Name」を、その彼らに冷や水浴びせるが如くものすごいスワッグを見せつける技術の高さがあるわけで、このまま突っ走って欲しい。
【○】poivre 『Juked Out2』
2013.06.22 / 全7曲22分 / mp3,flac,... /
bandcamp
今月のジューク/フットワークはこの1本のみ。長崎在住のトラックメイカー・ポワーヴル(コショウを意味するフランス語らしいけど、この読みが正しいのかは不明)の3月に続くシリーズ第2弾。前作(
DL可)はすぐに200回のダウンロード制限に達してしまったが、今はリミットが解除されて無料で落とせる。チキチキに改変されている順に原曲アーティストを挙げていくと、Jimi Hendrix、ケンドリック・ラマー、SOCCERBOY、Major Lazer、The Cinematic Orchestra、Rhye、井上陽水となり、この大御所の中にサッカーボーイがいるのは面白い。オリジナルは
ここでDL可。M5は幻想的なボーカルの裏でチキチキ鳴らされ、そのバランスが面白い。
【△】狩音とchappo 『鹿』
2013.06.24 / 全10曲36分 / 320kbps /
ニコニコ動画
ニコニコ動画出身者たちの活躍を見るにつけ彼らへの偏見は以前ほどは持たなくなったものの、それでもこうしたダサいラップを聴くと、ホラやっぱりといった気分にさせられる。このふたりが昨年2月発表した『パルス!!』(
DL先)は内容以前の問題でとても人に聴かせる代物ではなかったが、今回はその辺りの最低限の体裁は整えられているのがせめてもの救い。しかし、これを聴くなら無料の素晴らしい作品が他にまだたくさんある。
【○】BTS 『Red Tide』
2013.06.28 / 全9曲23分 / 320kbps /
YouTube
2月にラッパーとしての側面を押し出したミックステープ『Ice Age』(
DL先)を発表しているBTSが今度はトラックメイカーとしてそれぞれのラッパーの曲をリミックスしている。昔の言葉を使えば"インダストリアル"と形容されていた金属的で重武装の音に負けないだけの個性的なラッパーを取り揃えているため、特にM4、M6、M7辺りは良い化学反応が生まれている。
【○】Green Assassin Dollar 『Human Assassin Beat Tape』
2013.06.28 / 全12曲14分 / mp3,flac,... /
bandcamp
公開・配信終了。東京のトラックメイカー、グリーン・アサシン・ダラーの初となるビート集。上音で鍵盤をきれいに響かせながらも、ビートはJ Dillaな生っぽさを大切にすることで、よくあるきれい目ジャジーヒップホップに堕ちるギリギリで踏みとどまっている。本当に初作なのかと疑ってしまう完成度だ。
【○】Kenny Does×ホシノコプロ 『New Basic』
2013.06.28 / 全8曲32分 / 320kbps /
blog
UMB新王者R指定やKOPERUと共にコッペパンを組むdoikenがKenny Does名義で、京都のトラックメイカー・ホシノコプロ(昨年8月のソロ名義作⇒
DL可)と発表したコラボ作。ドイケンといけば、梅田サイファーの仲間KZと共に昨年出したミックステープ『Plain』(
DL可)は何度聴いても「手紙」や「Family」で目頭を熱くさせられる素晴らしい作品で、その"平凡一般家庭 不自由なし"の方の新作となると当然期待してしまうわけだけど、『Plain』越えは難しかったようだ。出来自体は悪くはない。M2やM5、M7と聴かせる曲はあるし、彼のラップとポップなトラックも合っている。ただ、KZという対比がないためか、一本調子に聴こえる。
【◎】KAKATO 『KARA OK 2nd Edition』
2013.06.30 / 全20曲50分 / 320kbps /
Tumblr
ソロラッパーとしても活躍する環ROYと鎮座DOPENESSによるユニット・カカト。タッグでのMCバトルの
動画が注目を集め、ふたりでの音源も期待されたが、散発的な発表に留まっていたところに、2011年11月突如としてフリーダウンロードの形で出されたのが『KARA OK』だ。邦楽の有名曲を大胆に使ったトラックは一般販売するには問題が多すぎて、フリーDLもむべなるかなであり、その第2版が本作となる。
大きな変更点は新曲3曲の追加だ(1曲はスキット)。またビットレートが192から320kbpsに高音質化が図られ、歌詞カードも付属(当初のDL版にはなし)。
本作初版以降も多くの無料配信ミックステープが発表されたわけだけど、好事家はもとより普段ヒップホップを聴かない音楽ファンたちの口からもいまだ話題に上る作品であり、また市販流通作に比べると、無料配信曲やミックステープは一度聴いたらそれで終わりと批判されたり侮蔑されやすいが、アイデアと才能次第でそこらの値札が付いただけのつまらない作品よりもずっと素晴らしいものができることを本作は証明している。日本語ラップ界では鬼子扱いのDragon Ashを取り上げ、しかもZeebraの有名パンチラインをも颯爽と引用する彼らのひょうひょうとしながらも、とことん音楽で遊んでやれという遊び心の揺るぎなさには改めて驚かされる。
【○】VA 『Spit Stock Vol.4』
2013.06.30 / 全5曲19分 / 320kbps /
Twitter
毎回5曲入りとはいえ、ブルーヴェリースタジオ企画のミックステープ第4弾。これまで通りRadooやCHAKRAなどを中心としながら、東京からU2KやAJ-FlyHigh(Vol.2でも)が加わり、さすが夏が近いこともあるのか、やや爽やかな楽曲が多く詰め込まれている印象だ。DL先⇒
Vol.1、
Vol.2、
Vol.3。
【○】%C 『the DIGI』
2013.06.30 / 全9曲25分 / mp3,flac,... /
bandcamp
配信数上限到達。HAIIRO DE ROSSI率いるforteに所属し、4月にはファーストアルバムをリリースしたトラックメイカー%Cの、フリーでは2011年5月に発表した『About 1 Percent』(
視聴)以来となる2本目のビート集。端正な音だ。鉛筆なら1本1本小刀で丁寧に削り出しているようだし、野球なら内野安打を積み重ねて着実に打率を上げるバッターのよう。賞賛されてしかるべきだし、実際に高い評価を得ていると聞く。が、上記のグリーン・アサシン・ダラーの作品ではそのビートの短さに物足りなさを覚えたのとは反対に、本作ではもっと短くまとめればいいのにと思ってしまう。
【○】Yellow Hippy 『CREEPING』
2013.06.30 / 全13曲32分 / 128kbps /
HP
グループ名を見て鼻で笑ってしまった人は正しいし、ジャケットにげんなりした人も正解だ。聴かなくても大丈夫だという匂いがプンプンするし、実際に耳にすればよくあるスワッグラップだ。イエロー・ヒッピーは大阪のクルー名で、その下には昨年ミックステープ(
DL先)を出したSolid Kickerz(TEACE、Tsuge、BRAIN-N改めBlainの3人)や、同時期に同じように2本目のミックステープを出したDouke-MC(現在はDOOKE名義のよう)、NTとBuckyのラップユニットDIRTY TRASH GHOST、
他多数が所属する。JPラップコムを主宰するBenzeezyさんが絡んだ有望な若手ラッパーを集めたフリースタイル
動画にブレインが選出されていることからも(『REV TAPE VOL.1』[
DL先]にもクルー名義で1曲参加)、もしかしたらここから後のラップスターが生まれるかもしれない。SALUの例もあるのだ。ブレインも確かに悪くないが、変化球なブーキーに一票入れたい。
【○】N9nety-One 『SUPERTRAMP』
2013.06.30 / 全5曲18分 / 160kbps /
YouTube
2013年の偶数月はナインティ・ワンの月だ。これで今年3本目、通算では7本を数える。以前は批判的な見方をしていたが、2月の『Rollin' Stoned』(
DL先)以降、新作を楽しみにするようになったグループ(ひどい掌返し)。冒頭2曲は持ち味でもあるコミカルさがよく出ているが、やはりM3とM4が興味深い。前者はいってみればチャート向けのアレンジがなされている。その是非はともかくとして、ここではおそらく本来鳴らしたかった音でやれているわけではなく、本物のストリングスを使いセルフリメイクした楽曲をいつか聴いてみたい。M4はロックオペラならぬヒップホップオペラともいえそうな壮大さが面白い。コテコテのヒップホップをやりながらも常に前進を忘れないのは好印象だ。
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<まとめ>
2010年〜2011年1月〜9月分
Tegetther
2012年
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
2013年
1月 2月 3月 4月 5月
・「JPRAP.COM presents "The Se7en Deadly Sins"」 →
記事(2011.05.26記)
2010年の主要フリーダウンロードミックステープについてもある程度まとめてある。
・「昨今の国産ヒップホップ・無料DLミックステープ事情」 →
記事(2011.09.30記)
2011年前半の作品に焦点を当てた記事。
・「VA『Fat Bob's ORDER vol.1』」 →
記事(2011.10.07記)
記事の最後に名古屋関連のミックステープのまとめた。
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