すばらしくてNICE CHOICE

暇な時に、
本・音楽・漫画・映画の
勝手な感想を書いていきます。
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2021.02.10 Wednesday | - | - | -
無料配信ミックステープ10月号(2013)
国産ヒップホップを中心としたフリーダウンロード・ミックステープの2013年10月発表分の一覧。主に日本語ラップ専門情報サイト2Dcolvicsに紹介されたものとなる。先月末に現在のフリーDLブームを牽引してきたJPRAP.COMが閉鎖となり、情報発信源がひとつなくなったことは大きな痛手ではあるのだけど、ヒップホップ精神のひとつである"ディギン"を今ひとたび見直すのにいい機会なのかもしれない。

ただ、私自身は村の外に住んでいるので、自らの手で情報を獲得するという謙虚さに乏しく、結局誰かを頼るという楽な道を探してしまう。まあ、そんな篤志家はあまり存在しないのが現状であり、2Dcolvics以外で便利なサイトをいくつか挙げようと思ってもふたつしかないわけだけど。

・にんじゃりGang Bang [link]
 主に洋物ミックステープを扱うが、思い出したように日本語ラップも取り上げてくれる。
・netrap mag. SCUBA [link]
 ニコニコ動画に特化していて勉強になる。ただ、最近は停滞気味(人の事いえない)。

あと、なんだかんだいって頼りになるのはトゥイッターのフォロワーで、例えばハードなサウンドクラウドライフをおくる@igusigusさんや@bamuletさん、自身でもミックステープを発表したり時にはラッパーのアルバムにスクラッチでクレジットされてたりしてオオっと驚くことがある@hititlanさん(ブログではアーティストのインタビューなども)、また@djcolaboyさんからも有益な情報を頂くことが多い。4人は宣伝用アカウントではなく、個人で呟いているものなので趣味趣向に違いがあるし、必ずしも日本語ラップ関連というわけでもないが(どちらかといえば洋物の情報が多い)、彼らがいなければ私は今以上に情報弱者となっていたことだろう。

それと、最近見かけた"日本語ラップ×フリーダウンロード"というアカウントは何度も同じ呟きをするのでうんざりさせられるが、50回に1回ぐらいはそれ知らなかったという情報がある。

他はこれといって変わったことをしているわけではないが、気になるアーティストのサウンドクラウドをRSSリーダーに登録することか。バンドキャンプはできないので不便でしかない(自分のページを持てばいいらしいけど、面倒で作っていない)。前者は単曲フリーDLがほとんどで、ミックステープ発表の場となるのはバンドキャンプであることが多く、いかんともしがたい。やはりアカウントを作成するしかないのか。

最後は、人力でトゥイッターでのワード検索。"フリーダウンロード"や"フリーDL"、"フリーアルバム"、"ミックステープ"といった語彙で地味に探す手もある。結構ひっかかる。ただ、最近はロック勢も無料配信を始めているので、今後は煩雑になりそうだ。それと、フリーDLを活発に行っている地域やコミュニティの誰かひとりのトゥイッター・アカウントを時折覗くこともある。身内が音源アップするとRTせざるを得ないわけで全員を見ずともひとり押さえておけば便利。それ用のリストを作ればいいのかもしれないが、それはなんか嫌なのだ(変なこだわり)。

しかし、こうして考えるとJPラップコムを運営していたbenzeezyさんの偉大さが明らかになるというもので、相当にマメでないと日々あれだけの情報を集められないし(実際に閉鎖後はDL量が明らかに減った)、失ったサイトの大きさに改めて悲しんでいる。



<"これだけ聴いとけ作品"を簡潔に教えてくれというせっかちな人のための3枚>

左端は今月唯一飛び抜けていた1本で、バイリンガルラッパー兼トラックメイカーAtsuの作品。真ん中は東京の新世代ラッパー。右端は信頼のインディーズレーベルLow High Who?の新世代トラックメイカー。全曲で無名ながらも有望な文系ラッパーが客演。ジャケットをクリックするとDL先に飛びます。



【○】DJ6月 『DJ6月音源集』
2013.10.01 / 全8曲27分 / 320kbps / Twitter
Paranel率いるLow High Who?所属のトラックメイカーの初作。初めて名前を見るラッパー(詳細)が多くて興味深いが、みな言葉を大事にしている人たちで、不可思議/wonderboyや神門を好きなリスナーにはたまらなそうだ。知名度よりも自分が見込んだ才能あるラッパーを起用する姿勢の気持ち良さは、音にもよく表れている。耳馴染みが良く、またビートにひと工夫加えられていて、なるほどこれが先読みの才があるパラネルが選んだ人材かと納得する。M7だけフロウで遊んでいるで、その実遊ばれているだけのラップであり違和感が残る。


【○】NICE GUY$ 『Love Situation』
2013.10.05 / 全6曲20分 / 320kbps / Twitter
東京のヒップホップグループ・ナイスガイズの、昨年末の『Kissin n Dreamin』に続く第2弾。ERAを彷彿させる、フリースタイルの延長線上のような詰めの弱いリリックと自由度の高いフロウで、今回はエロネタ、時に下品なまでのオッサン臭のする強烈な言葉でラップする。M5冒頭のオリーブ油を使った"巧み"な比喩表現はかなり好きだ。


【○】VA 『UNITED BATTS EP1』
2013.10.04 / 全5曲19分 / 192kbps / Twitter
1週間限定。DJ RYOWがネットで募集し競い合った「Don't Stop Remixコンテスト」でベスト8入りした記念で配信されたもの。UNIVERSAL TOSHIKIとDJ K.A.I、Dogg-J、神獅の4人がUNITED BATTSを名乗り、参加していたようで、その曲はM2となる。他の曲はおそらく4人の仲間たちの曲となり、作品としてのまとまりは当然のようになく、何度も繰り返し聴くものではないが、ところどころで鈍く光っている1本でもある。ユニヴァーサル・トシキは昨年聴きごたえのあるミックステープ(DL先)を出していただけに、次に繋がる何らかの動きが欲しいところ。


【○】虹夢 『等身大の僕』
2013.10.09 / 全13曲45分 / 128,192kbps / Twitter
新潟出身1993年生まれのソロラッパー虹夢の、1年ぶりとなる4本目(もしかしたら漏れあるかも。検索したら昨年末に『最終楽章 Another 〜ソラのまち〜』(DL先)という5曲入りを発表していた)のミックステープ。2011年2月からラップを始めたという彼は、当初出来の酷いラップをそのまま作品にしていて、フリーDLブームの負を体現していたものだったけど、1年ぶりの本作を聴くと、一生懸命やっていれば何事も上達するのだと実感する。言葉をリズムに乗せられるようになったことが大きい。反面その技術を手に入れるために参考にしたフロウがくっきり残ってしまっている。二十代になったようだし、直接的な自分語り以上のラップをそろそろ聴きたい。


【○】Small Circle of Friends 『Superstar Instrumentals』
2013.10.10 / 全13曲46分 / mp3,flac,... / bandcamp
2日間限定。男女ヒップホップデュオ、スモール・サークル・オブ・フレンズの10枚目のアルバム『Superstar』の発売1周年を記念して無料配信された。SCOFは日本語ラップファンの間では話題にのぼることはないが、日本語でヒップホップを行うことに何ら違和感を抱かせない独自の進化を遂げているグループだ。ただ、ここ2作は低調であることは否めず、今回インストで聴いても明らかなことが分かる。


【○】Stag Beat 『EXtra Virgin EP』
2013.10.10 / 全5曲20分 / 320kbps / HP
ラッパーのDOPE MENとトラックメイカーMolphobiaによるヒップホップデュオ・スタッグビートの初音源集。今年1月からラップを始めたとかで、宇多丸が好きなんだなとよく分かるラップは確かにイマイチだが、ビートの方は90年代のシンプルな良さを鳴らしている。テレビ番組「テラスハウス」に出演していたちゃんもも◎という人がライブ音源のM4で客演(当番組を未見なので知らなかったのだけど、トゥイッターのフォロワー数がすごいことになっているので人気者のよう)。24歳ドープメンの本業は"現代美術家"(YouTube)だそうだけど、どうして今マイクを持とうと思ったのだろう。


【○】Atsu 『Shiva』
2013.10.10 / 全11曲37分 / 320kbps / YouTube
新しい才能が出てきたことを感じさせる作品。中学からニューヨークに渡り、現在はイギリスで研究生活を送るというラッパー兼トラックメイカー。自分のiTunesを検索してみたところ、結果的にミックステープ1本(分)(DL先)を残し19歳の若さで亡くなった日本とパラグアイのハーフラッパーStouchも在籍していた3人組グループJapanovasとして、JPRAP.COMが2011年に発表したミックステープ『#Nibiru』にも参加していた。LHW?が4月に出した青田買いコンピ『GOLDEN DEMO 3』(DL先)にもM3が収録されている。バイリンガルではあるのだけど、自然な発音の日本語であり、英語ができないスワッグラッパーたちの奇形なそれとは大きく異なる。自作ビートはサンプリングを生かしたもの人肌の温もりがあり、その上で絶妙なタイミングで言葉を落とし込んでいき、何とも気持ち良いラップだ。後半で客演が入り世界観が広がると、それまであった親密さが拡散されてしまうのがもったいない。


【○】IZZY 『melancholy summer』
2013.10.10 / 全9曲26分 / mp3,flac,... / bandcamp
9月までニューヨークで暮らし、現在は東京在住のラッパー兼トラックメイカーの初作。上のアツとは異なり、日本語を英語のように発音する今のはやりのラップ。というより、ただのSALU。ビートはまだしも、そのラップはまだ人に聴かせる段階ではないような・・・。私の言葉はそのままの意味で、"裏の意味"はないのであしからず。


【○】SOMA奏間 & Dizzy×Franz Snake 『HyperTom Transfer Protocol EP』
2013.10.14 / 全6曲20分 / mp3,flac,... / bandcamp
名古屋のトラックメイカーSOMA奏間と、ラッパーDizzyとトラックメイカーFranz Snakeのコンビというふた組によるスプリット。ふたりのビートはゴルジェと呼ばれる新しい音で編み上げられている(ここ!説明させないで。知らないんだから)。フリーDL配信と驚異的な量の呟きでも注目を集め、躍進目覚ましいディジー(旧DRO)のラップは3曲で聴ける。最新のビートを軽く乗りこなし、音の源である山や森を盛り込んだ言葉遊びを見せる。


【○】NICK ANIMA & DIZZY 『MakeSome...』
2013.10.14 / 全7曲15分 / mp3,flac,... / bandcamp
配信・公開終了。ディジーがNICK ANIMAという今年からラップを始めたラッパー1年生と組んだ1枚。ふたりでラップした曲はもちろんソロ曲も収録している。ニック・アニマはどこかYASURIを彷彿させる。


【○】VA 『Yamagata Trackmaker's Beat Tape』
2013.10.16 / 全8曲32分 / 320kbps / Twitter
その名前の通り山形在住のトラックメイカーIchiroとSUNTOWER、ZIG-RAW、SLAPSTICKSの4人が各2曲ずつ持ち寄ったビート集。この中では8BLOX所属のスラップスティックスしか名前を知らないのだけど、レゲエの人(@ZIG-RAW)もいたりするようで、でも音自体はEDM寄りが並ぶ。静謐さと不穏が混じり合うM1で始まり、これはアタリかと期待させるも、その気持ちはだんだんしぼんでいく。


【△】SHOWGO×DJ Casin 『MICROPHONE BLEND』
2013.10.17 / 全14曲47分 / 256kbps / SoundCloud
次も東北・仙台の4人組ヒップホップグループ独眼竜貿易舎のショウゴが2007年にリリースしたアルバム『くそオリジナル』収録曲を中心に、彼と同郷のDJカシンがリミックスしたミックステープ。初めて聴くラッパーで、今も活動しているのかは不明だけど、ともかくこうして昔の曲をよみがえらせてもらえるということは地元で一定の支持があるのだろう。エロネタも含めRHYMESTERの影響下にあり、宇多丸とMummy-Dを上手にブレンドさせている。ただ、彼らよりもう少し下品にやるのが好きなようだ。その分好き嫌いも分かれるわけだけど。同性愛者を中傷している時点で不快でしかない。


【○】Lil'諭吉 『Ghetto Pop Idol -Deluxe Edition-』
2013.10.20 / 全19曲66分 / 320kbps / Tumblr
配信限定とはいえようやく初音源をリリースしたラッパーCherry Brownのトラックメイカー名義リル諭吉として、昨年末に発表した5曲入りの同名ミックステープに14曲も追加した豪華版。増量分の詳細はリンク先にある。オリジナルは女性アイドルポップスを素材にして、彼のセンスを爆発させていた。今回楽曲が増えたことでそのコンセプトは薄まったが、すでにサウンドクラウドにない楽曲もあるわけで、資料的に意味のある作品だ。


【○】Cookie Crunch 『COOKIES』
2013.10.24 / 全9曲31分 / 256kbps(m4a) / Twitter
クッキー・クランチ。詳細はネットで検索してるだけでは全く分からないが、話題のFla$hBackSからjjjやKID FRESINOが参加しているし、そのラップは強面でも不良でもない東京(というよりも池袋bed)独特の見得を切るもので、新世代に括られるものだ。ラップ自体はとりたてて好みではないが、M4以降からトラックがとにかくかっこよくなる。


【○】Bell & Sugar Back 『Bishop Arcade Presents "Coffee Break"』
2013.10.25 / 全5曲15分 / 192kbps / blog
ラッパーのBellとトラックメイカーSugar Backによる5曲入り。ビート強めのシンプルでまったりとしたトラックに、日々のつれづれや仲間との他愛ないやり取りを綴るまったりな内容を自業自得感皆無のクリーンなBESといった印象のまったりとしたラップが乗せられる。


【△】JIRO-K 『JIRRO MAN ON DA FLOOR!』
2013.10.30 / 全6曲19分 / 192kbps / Twitter
東京・練馬区出身のソロラッパー。時折単曲フリーDLを行い、またKOOGIのミックステープに参加していたので、名前は覚えていたが、まともに作品を聴いたの初めて。彼が夢中になったバスケットボール・ゲームで使われていた楽曲を使って、バスケネタのラップで統一したコンセプト・ミックステープ。確かにバスケ用語がつかわれているけれど、彼のラップスキルも多分に影響しているが、躍動感が皆無でバスケに伴う興奮は影も形もない。ゲームだけでジローK自身が実際にバスケをしたことがないのだろう。元ICE DYNASTYのKNZZが1曲で参加している。


【○】蛇 『SNAKE IN THE GRASS』
2013.10.31 / 全10曲27分 / mp3,flac,... / bandcamp
今回は聴かなかったことにする。以前はNakajiを名乗り、昨年から蛇と改めた近江音盤を率いる滋賀のラッパーの通算5本目となる新作。

今回彼はレゲエを取り入れている。これまでもダブステップやジュークに手を出したりとジャンルの越境に意欲的だったし、そもそも歌謡曲や古いスウィングを盛り込んだトラックの上でラップをしていたわけで、腕の確かさも手伝って様々な冒険をしたいと思うのは理解できる。ミックステープといっても先を見ている人にとってはデモテープみたいなものだ。この時期に試行錯誤するのは当然だろう。

ただ、今回は持ち味だった鋭く狡猾で端正なライミングを捨て、替わりに自暴自棄と紙一重の荒々しさを手にしてる。一度組み上げたスタイルをゼロに戻し、また新たに積み上げていく作業もあるのだとは思うが、今年いよいよ市販流通盤をリリースする予定と聴いていたのに、それが実現できなかったのはスタイルの新しい試みがまだ納得できる域に達しなかったためという理由なら納得だ。全10曲中満足に聴けたのはM5だけ。

彼が昨年12月に出した『悶談蛇頭』(DL先)や、同年7月に以前発表した作品に数曲増量し音質も改善させた『音洒落吐露 (改)』(DL先)は今聴いても素晴らしい出来だし、これまでアップされた数多くの日本語ラップ・ミックステープの中でも十指に入る傑作だ。







【○】かるえるら 『B.S.I.T. EP』
2013.09.26 / 全5曲11分 / 320kbps / Twitter
8月に出たネットレーベル・不思議な庭のセッション音源(DL先)にも参加していたラッパーの初作。難しそうな言葉が列をなす中に時折印象的な単語が放り込まれる。5曲と少ないのに全て同じ調子で唱えられるものだから、曲の違いが分からない。本作のように1文が長い時こそ押韻が力を発揮するわけで、それは言葉遊びの楽しさにもなるし、ラップの節を円滑にもする。語彙はありそうだし、できそうなものだけど。


【○】mocsmall 『Refuge Tunnel』
2013.09.20 / 全15曲46分 / VBR / Twitter
以前はLHW?に所属し、今はtokomanonkaと共にエレクトロニカユニットLeasekaとしても活動(DL先・DL先)しているモックスモールの"過去曲をまとめた"ビート集。個人名義でのミックステープは昨年の7月以来(DL先)だろうか。これまでは夢見心地だったり空間的な音を作り出すトラックメイカーという印象だったが、本作では躍動的で時に攻撃なビートを叩き付けてくる。


【×】Key (MC U-KEY) 『SPACE (Remixes)』
2013.09.01 / 全15曲43分 / wav,128kbps / blog
一週間限定。"俳優とラッパー二足のわらじ"を履く16歳高校2年生。演技は知らないが、ラップはまあ酷い。とりあえずどんな作品でも落として、最低1回は通そうとしているのだけど、4曲目で放り投げた。クレバがかわいそう。最近は中学生でも巧いラッパーが出てきているわけで、高校生だからと侮ることはないが、それでも成長速度は人それぞれだと身をもって知った。ラップはダメだけど、歌はまだマシってこともないんだからすごいよ。




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<まとめ>
2010年〜2011年1月〜9月分 Tegetther
2012年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
2013年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月

・「JPRAP.COM presents "The Se7en Deadly Sins"」 →記事(2011.05.26記)
  2010年の主要フリーダウンロードミックステープについてもある程度まとめてある。
・「昨今の国産ヒップホップ・無料DLミックステープ事情」 →記事(2011.09.30記)
  2011年前半の作品に焦点を当てた記事。
・「VA『Fat Bob's ORDER vol.1』」 →記事(2011.10.07記)
  記事の最後に名古屋関連のミックステープのまとめた。
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2013.10.31 Thursday 23:59 | 音楽 | comments(0) | trackbacks(0)
黒木渚『黒キ渚』

2013年3月20日リリースのファーストミニアルバム。
/5点中

2010年12月福岡で結成された、ギターボーカル黒木渚率いる3ピースバンド。ベースがサトシで、ドラムは本川賢治と男女混合グループ。

昨年末に発表された九州限定のシングル『あたしの心臓あげる』が人気を博し今年1月の全国発売に結び付いた、ということのようだけど、根岸孝旨をプロデューサーに迎えていることからおそらく話題作りの戦略だろう。数字的にも、12月24日付オリコンシングルチャートで九州盤は初登場178位363枚。翌週には200位以下に沈むが、翌々週の1月14日付で259枚売り上げて194位に復活。全国盤がリリースされた21日付では308枚で150位、さらに28日付では397枚・121位、2月4日付で292枚・185位と続く。その翌週からは再び200位以下に転落してしまうが、この時点でオリコン加盟店での売上枚数は2,000枚弱だろうか。ちなみに、本作の初動は1,655枚(67位)。


ここ10年ほど日本のヒップホップを中心に聴いていたせいか、価値観がそちらに染まってしまっている傾向がある。つまり、オリジナルのスタイルこそが最も大切だという考え方だ。ラッパーは歌い方(ラップ)を真似をすると即座に批判される。特にそれまでのスタイルを捨て、流行のラップを取り入れた時にはもう大変だ。ただ、"流行の"とあるように、真にオリジナルなスタイルなどよほどの天才でもない限り生み出せないわけで、ある程度は似てしまうのが実情ではある。

ロックやポップスではメロディなどのパクリに目くじらを立てても、スタイルについては比較的寛容だ。ヒップホップよりも歴史があり、オリジナルへの幻想など意味がないと悟っているからかもしれない。好きなアーティストからの影響をはっきりと出すことに躊躇いはないし、それを誰も批判しない。そうした環境の中で成長していったDragon AshのKjが日本語ラップ界の大御所Zeebraからきついお叱りを受けてしまったことは異文化交流の不幸な例なのだろう。


そうしたヒップホップ視点で本作を聴くと、黒木渚は椎名林檎過ぎる。はい、終わり、出直してきなとなるところだが、彼女たちはロックバンドなので微笑ましく受け入れられているようだ。ファーストシングルでもあるM1「あたしの心臓あげる」冒頭の息を吸うイントロからして、椎名の「ここでキスして。」を意識している。高音の出し方にも影響が存分に見られるし、M4「赤紙」の歌詞では「歌舞伎町の女王」がちらほら透けている。

椎名と同じ福岡出身であり(黒木自身は宮崎らしい)、正統な後継者(フォロワーか)がようやく誕生したと喜ぶべきなのかもしれない。ただ、大御所然として目立った動きがない椎名の代わりとしての受け皿になり得るには、今はまだ似ている以上の何かを本作から感じるとることは難しく、今後に期待というところだ。墓石に点数を彫ってしまうM3「骨」を始め、歌詞で不思議なユニークさを発揮してはいるものの、やや独善的な抽象さがあり、まだまだ荒削りでもある。



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2013.01.08 1st SG『あたしの心臓あげる』
2013.03.20 1st mini AL『黒キ渚』
2013.10.16 2nd SG『はさみ』
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2013.10.31 Thursday 23:58 | 音楽 | comments(2) | trackbacks(0)
コズモポリス / Cosmopolis

40点/100点満点中

デヴィッド・クローネンバーグ監督最新作。人間ドラマ。主演は「トワライト」シリーズのロバート・パティンソン。共演に監督の前作『危険なメソッド』にも出演していたサラ・ガドン(クローネンバーグ家のミューズになりつつあるらしい)。『007 慰めの報酬』の宿敵グリーンを演じたマチュー・アマルリックがパイ投げ野郎で、他に『ある日モテ期がやってきた』のジェイ・バルチェルが仲間のひとりとして、ソマリア出身のラッパーK'naanが死体役、終盤の重要人物には名脇役の道を突き進むポール・ジアマッティなどがほぼチョイ役で登場。製作費2050万ドル。2013年公開作品。

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大改造を施した高級車リムジンをオフィス代わりにする28歳ながらも金融投機で巨万の富を築き上げた青年実業家エリック・パッカー。大統領のニューヨーク訪問の影響で街では大勢の市民がデモに繰り出し、あらゆるものを手に入れた資本主義の申し子なはずのパーカーは行きつけの床屋に辿り着けない。一方で人民元取引で壊滅的な損失を出したことが明らかとなる。
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ずいぶんとやらかしたなクローネンバーグ、というのが正直なところ。主にリムジンの中を舞台に、若き投機王エリック・パーカーとその部下やボディガード、知人女性たちとの会話劇になる。分かったような、その実意味不明な言葉を弄し、観念的に哲学的にそして極めて即物的なやりとりが延々と続く。"現代米国を代表する小説家であり、近年はノーベル文学賞の常連候補として名前が挙がっている"というドン・デリーロが書いた原作小説がそもそもどういうものなのか知っておくぐらいの前知識が必要な映画なのかもしれない。ただ、こういった寓話を読み解くのは頭の良い人に任せておけばいい程度にしか思えない作品でもある。

すでに十分なキャリアを積んでいながらも、毎回趣向を変える意欲的な創作活動を続けているという意味では、本作はダメだったが、クローネンバーグの新作にはこれからも何かしらの期待を抱いてしまうのだろう。
2013.10.31 Thursday 23:57 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
Max Roach『Drums Unlimited』

Max Roach / Drums Unlimited
邦題: 限りなきドラム
Label: Atlantic
Release: 1966

Personnel:
Freddie Hubbard - trumpet (Tr.2, 4, 6)
Roland Alexander - soprano sax (Tr.4)
James Spaulding - alto sax (Tr.2, 4, 6)
Ronnie Mathews - piano (Tr.2, 4, 6)
Jymie Merritt - bass (Tr.2, 4, 6)
Max Roach - drums

Recording Date:
1965.10.14: Tr.1, 4
1965.10.20: Tr.2, 6
1966.04.25: Tr.3, 5

Song List:
01. The Drum Also Waltzes
02. Nommo
03. Drums Unlimited / 限りなきドラム
04. St. Louis Blues
05. For Big Sid / シド・カトレットに捧ぐ
06. In The Red (A Xmas Carol)
2013.10.31 Thursday 00:00 | ジャズ | comments(0) | trackbacks(0)
小室哲哉『DEBF3』

2013年3月6日リリースの"Digitalian is eating breakfast"シリーズ第3弾。
/5点中

哲っちゃんの新作だ。彼は今再評価されているようで、勝手に居心地の悪さを感じている。90年代小室ブームが音楽チャートを席巻しているころは音楽好きを自認する人たちから忌み嫌われ、数年前に詐欺罪で有罪判決を受けてからは世間的にも完全に終わった人扱いだった彼が実はすごいんじゃね?的な評価を得ているとかいう。

彼は2009年5月に懲役3年、執行猶予5年の刑を受けるも、翌年から楽曲提供を中心に活動を本格化させた。風向きが変わったと私が気づいたのは2011年にDOMMUNEでストリーミング配信されたライブを見ていた時だ。例のキーボード櫓の中で彼は颯爽と演奏していたが、終盤に打鍵が激しすぎて爪が割れたのか鍵盤が血で染まった。冷静に考えれば、プロとしてミスタッチで爪を割って血を出すのはどうなのよと思うのだけど、それを見ていた熱心なファンはもちろん、小室なんてといかにもいいそうな"良心的"音楽ファンまでもが血が出るまで・・・と好意的な捉え方をしていて、ひどく驚かされたものだった。

小学生高学年で小室が率いていたTM NETWORKと出会い、一番最初の音楽ヒーローが彼だったなんていうのは、その後に"ちゃんとした"音楽を聴き始めてからはずっと黒歴史として封印してきた過去であり、今もその考えは変わらない。ただ、例えばトゥイッターなどで交流のあるセンスがいいなと思っている人が現在の小室を評価する呟きをしたりするとなぜだかすごい居心地の悪さを覚える。自分でもよく分からない。敬愛の度合いがすごかっただけに、一旦否定し出すと止まらなかったし、今も自分の中でそのポジションが定まっていないのだろう。


それはともかく本作は2011年の『Digitalian is eating breakfast 2』に続くシリーズ3作目となる。1作目は1989年に発売され、全編に小室の粘つく歌声が入るというファンにしか受け入れらない代物だったが、2011年にリリースされた22年ぶりの第2弾はゲストが多く、小室のボーカルトラックがほとんどないという一点でがっかりさせられた。しかし、本作ではもはや小室がリードボーカルを取ることはない。デジタリアン〜の名称だけでパブロフの犬のようにあの気持ち悪い歌声を期待してしまうので、この題名はもう止めて欲しい。

今回はEDMを取り入れたという触れ込みだが、ここでのEDMは小室が一度咀嚼した上でのダンスミュージックとなっていて、場が盛り上がることだけを追求したあの下品なまでの高揚感はない。意外にスマートなダンス音楽をストイックに作ろうとしているので、日本人の耳を優しく包み込んでいたかつてのメロディ、小室節もほとんど聴かれない。リスニングというよりもダンスフロアでこそ機能することを第一に目指した感がある。

それは小室自身がプロデューサーの位置に座るのではなく、Nick Woodという英国で生まれ、1991年から日本で活動しているプロデューサーによるところが大きいのかもしれない。彼はサッカーの代表戦などの時に流れるCM曲を作った人で、今回の客演陣も彼の人脈が生かされている。後半は日本、ブラジル、インド、ヨーロピアン耽美といった曲調の流れがあり、さながら世界旅行気分を味わえる(強引)。

日本語ラップファンにとってはM5「The Generation」が聴きどころだろう。日本語ラップ初期から一線で活躍を続けるZeebra、その第一世代の背中を見て成長し、チャートでも結果を残したDABO、そして新世代のひとりとしてメキメキと力を付けているSIMONという世代の違う3人が参加している。ただ、この中で最もラップの技術が高いサイモンがサビ担当で終わり、ラップさせてもらえないというのは不幸でしかない。ジブラはこの手の派手な鳴りのビートとの相性は、Dexpistolsとの「Fire」で実証済みなので今回も無難にこなし、ダボはスカスカの内容でもなんかこの人ラップ巧いのかもしれないと思わせる達人であり、当たり障りなく2ヴァース目を陣取っている。

そして、アメリカのヒップホップ好きなら、この中からもしかしたら将来メジャーになるラッパーが出てくるかもしれないと想像して楽しむこともできる。とはいっても、他にラップ曲はM1「WATCH the MUSIC」しかないが。しかし、前作には若き日のNipsey Hussleが参加していたという事実があるのだ。彼は先日無料配信したミックステープ(DL先)を1枚100ドルで自ら店頭に立って売り出しわずか1日で1000枚(うち、100枚はJay Zがお買い上げ)を売り切った西海岸の要注目ラッパーだ。2007年当時のラップらしい。小室の慧眼侮るべからずといったところだろうか。

まあ何にせよ哲ちゃんが元気で何よりだよ。
2013.10.30 Wednesday 23:59 | 音楽 | comments(0) | trackbacks(0)
ハード・ラッシュ / Contraband

61点/100点満点中

マーク・ウォールバーグ主演のクライムアクション。監督は次作『2ガンズ』でもウォールバーグと組むアイスランド出身のバルタザール・コルマウクル。共演には「アンダーワールド」シリーズのケイト・ベッキンセイルや、『テッド』でウォールバーグの親友のクマのぬいぐるみを盗み出す男ダニーを演じていたジョヴァンニ・リビシ、サム・ライミ版『スパイダーマン』で名物編集長役だったJ・K・シモンズら。監督が俳優時代に主演した2008年のアイスランド映画『Reykjavík-Rotterdam』のリメイク。製作費2500万ドル。2013年公開作品。

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"世界一の運び屋"と称されたクリス・ファラデイは、愛する家族のために裏稼業から足を洗い、妻ケイトとふたりの息子と共に幸せな生活を過ごしている。ところが義理の弟アンディが密輸でドジを踏み、ティム・ブリッグス率いる組織から命を狙われることに。クリスはアンディと家族を守るため、相棒のセバスチャンやかつての仲間を呼び寄せ、パナマからの偽札密輸計画を決意する。
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アメリカで封切られ初登場1位になったのが昨年1月(ちなみに翌週の1位作品は本作のヒロイン役ベッキンセイルが主演する「アンダーワールド」の新作)。それから4週にわたり10位内に入っていて、これは日本公開もあるかなと待ち続けたわけだけど、実現したのが今年の夏で、待ち望んでいたにも関わらず行かずじまいという例によって例のごとくな感じだったのだけど、ソフト化が早すぎると批判が多いのに、今回はその恩恵に与る形になってしまった。これでは率先して非難することもできない。

劇場の大スクリーンで迫力ある大音量で鑑賞したならば、もう少し違った感想を持つのかもしれないというサスペンスアクションにはありがちな作品。前へ前へ進もうという物語の勢いは悪くない。テンポがいいというのとはまた違い、物語る力の荒削りさがアクションならではの魅力となってはいる。漫画でいえばジョジョの主人公たちのような、実はこうした計略を張り巡らしていたのだという周到さがあるのが伝説的な運び屋として名を馳せたクリスの技で、そのサスペンス要素は堪能できるが、最後の救出シーンではそれまでも決して緻密と呼べるものではなかったものの、それなりに見せていたクリスのそうしたしたたかさが剥ぎ取られ、急にご都合主義な展開になるのが一番もったいない。

撮影は最近のハリウッド作品では『ハート・ロッカー』や『グリーン・ゾーン』を手掛けたバリー・アクロイドで、それらの撮影法がどうだったのか覚えていないが、本作では臨場感を出したいのかドキュメンタリー的ともいえる性急なズームが随所にあり、映画では苦手なカメラワークだ。

特典映像ではアクションシーンのこだわりが説明されているが、それほど目新しいカットがあるわけでもない。パナマ編での輸送車襲撃シーンで、変装用にマスクをかぶるのではなく、テープを顔に乱雑に巻くというのは初めて見た演出でそれは新鮮だったし、不思議な生々しさがあった。
2013.10.30 Wednesday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
Archie Shepp『Life At The Donaueschingen Music Festival』

Archie Shepp / Live At The Donaueschingen Music Festival
邦題: ワン・フォー・ザ・トレーン
Label: MPS
Release:

Personnel:
Archie Shepp - tenor sax
Roswell Rudd - trombone
Grachan Moncur - trombone
Jimmy Garrison - bass
Beaver Harris - drums

Recording Date: 1967.10.21 Live at Donaueschingen Musiktage 1967, West Germany

Song List:
01. One For The Trane - Part I
02. One For The Trane - Part II
2013.10.30 Wednesday 00:00 | ジャズ | comments(0) | trackbacks(0)
ウソから始まる恋と仕事の成功術 / The Invention of Lying

60点/100点満点中

英国人コメディアン、リッキー・ジャーヴェイスが共同で監督・脚本・製作を務め、主演までした2009年のコメディ映画。共演にはジェニファー・ガーナー、ロブ・ロウ、ジョナ・ヒルら。DVDレンタルのみ。製作費1850万ドル。

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嘘がないまま人類が進化した世界。才能も外見もイマイチな映画脚本家マーク・ベリソンは美女アンナとデートをするも、交際を断られてしまう。仕事はクビになり、家賃も払えない。崖っぷちのマークはふとした閃きから嘘をつくことを覚える。誰も持っていないその能力を利用し、お金も名声も手に入れ、今度こそアンナを振り向かせようと奮闘するが・・・。
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今後公開されたら見るつもりの映画を列挙する"期待する映画"という記事をブログ内に設けているのだけど、本作をそこに入れたのが2009年10月13日。同年10月5日付チャートで初登場第4位だったということで、設定の面白さもあり、鑑賞するつもりだったのに、結局見られたのがそれから4年後というのは何ともはや。劇場公開はもちろんされず、DVDの一般発売もなく、レンタルのみであり、それ自体は翌年の12月から開始されてはいたのだけど。

虚構という概念がそもそも存在しない世界。人は誰も嘘をつかない。いつだって本音で話し、建前でつくろうことをしない。かわいくない赤ん坊を見れば、まるでネズミのようだと思ったことをそのまま口にしてしまうし、テレビから流れるコカ・コーラのCMでは、"要は砂糖水。糖分が多く、高カロリー。飲みすぎると肥満に繋がる飲み物です。でも買って下さい"と宣伝する。ライバル会社ペプシの広告はこうだ。"コークがない時に"。

嘘も建前もないから皆思ったことをストレートに口にする。その中で太っちょで豚鼻で会社をクビになったマークは銀行から口座の全額を引き出そうとする時にひらめいてしまう。300ドルではなく、800ドルと申告したらどうなるだろうと。今手元に800ドルがなければ家賃を収めることができず、今日にも家を追い出されてしまう。窮地に立たされていたマークのとっさのひらめきは成功する。こうして世界で彼だけが嘘をつけるようになる。その後は仕事での成功と、ジェニファー・ガーナー演じるヒロイン・アンナとの関係が描かれていく。

むりやりな世界観だとは思いつつも、そこに突っ込みを入れても仕方ないわけで、テーマも悪くない。ただ、嘘がない世界という面白さが生かしきれていない。神という存在自体は人が作り出した嘘の産物だから、宗教がそもそもないという黒い笑いを散りばめてはいるものの、監督で脚本・主演のリッキー・ジャーヴェイスが3年連続で務めたゴールデン・グローブ賞の司会で発揮したその毒舌のキレが映画内では続かないのだ。非常にもったいなく思える。

バーテンダー役でフィリップ・シーモア・ホフマン、その後の飲酒運転を取り締まる交通巡査にはエドワード・ノートンが、そして母親を診る医師役に『JUNO/ジュノ』ではジェニファー・ガーナーの旦那を演じていたジェイソン・ベイトマンらがカメオ出演している。
2013.10.29 Tuesday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
Wes Montgomery『A Day In The Life』

Wes Montgomery / A Day In The Life
Label: A&M
Release: 1967

Personnel:
Ray Alonge - french horn
George Marge - flute
Joe Soldo - flute
Romeo Penque - flute
Stanley Webb - flute, woodwind
Phil Bodner - woodwind

Herbie Hancock - piano
Wes Montgomery - guitar
Ron Carter - bass
Grady Tate - drums

Ray Barretto - percussion
Jack Jennings - percussion
Joe Wohletz - percussion

Margaret Ross - harp

Julius Brand - violin
Peter Buonconsigilio - violin
Mac Ceppos - violin
Lewis Eley - violin
Harry Glickman - violin
Harry Katzman - violin
Leo Krucczek - violin
Sylvan Shulman - violin
Gene Orloff - violin
Tosha Samaroff - violin
Jack Zayde - violin
Harry Urbont - violin
Harold Coletta - viola
Emanuel Vardi - viola
Alan Shulman - cello
Charles McCracken - cello

Don Sebesky - arranger, conductor

Recording Date: 1967.06.06-07, 26

Song List:
01. A Day In The Life
02. Watch What Happens
03. When A Man Loves A Woman / 男が女を愛する時
04. California Nights
05. Angel
06. Eleanor Rigby
07. Willow Weep For Me
08. Windy
09. Trust In Me
10. The Joker
2013.10.29 Tuesday 00:00 | ジャズ | comments(0) | trackbacks(0)
illion『UBU』

2013年2月26日にリリースされたRADWIMPS・野田洋次郎のソロプロジェクト、イリオンのファーストアルバム。
/5点中

野田が作詞作曲し実質的に要であるラッドウィンプスは、5枚目のアルバム『アルトコロニーの定理』で低調となり、2011年に発表された6枚目の『絶体絶命』は聴けたものではなかった。その6枚目で一番の不満が演奏の拙さだ。野田が生み出すメロディを支えるべきバックが不甲斐なく、彼と同じ歩幅で成長していないことが"聴いてられない"に繋がった。

だから、野田がソロ活動をするというニュースを見て、何ら不思議に思わなかったし、本作を聴いた今では、12月に出るというラッドウィンプスとしての7枚目のアルバムでバンドの技量が相変わらずイマイチなままなら、ソロで続けた方が表現者としてこれまで以上の高みに昇ることができると確信できる。

このアルバムには日本語詞と英詞の曲が混在する。インストを抜かした残り13曲のうち3曲が日本語詞で、やや古風な語彙やいいまわしが使われる。ラッパーの志人も最近その傾向にあるが、この路線は手垢のついていない言葉を使うということで表現者として興を覚えるのだろうけれど、やりすぎるとポップミュージックに大事な聴き手の共感を得にくくなる。日本語詞が乗せられたメロディ自体もこれまで以上に和を感じさせるもので、本作が一応世界流通したことを考えると、オリエンタルな風味づけとして機能するのだろう。

聴きどころは英詞曲だ。どれも耳馴染みの良いメロディであることが魅力ではあるのだけど、何よりとても洋楽っぽい。英語で歌われるのだから洋楽風なのは当然と思うかもしれないが、旋律のあり方自体がすでに邦楽のそれとは異なっていると感じる。具体的なコード進行や曲の構造がどうとかは分からないが、英語とメロディの馴染み方に違和感がないのだ。

アフリカからアメリカに強制的に運ばれた黒人奴隷たちに英語が与えた音楽的な影響について書かれた本をちょうど読んでいて、本作と関わりそうなのでざっくりと引用する。


アフリカ大陸西海岸の黒人たちは奴隷として運ばれた先は北アメリカだけではなく、南アメリカにも向かった(時期的にはこっちが先)。ブラジルやポルトガルで生まれた音楽(サンバやボサノバ)のリズムは、彼らの故郷アフリカのそれと陸続きなのに、米国で黒人が作り出したジャズだけは独特のリズム表現を有している。それはどうしてなのかといえば彼らが英語を習得させられたことが原因ではないかという。

ポルトガル語やスペイン語は黒人奴隷たちの故郷のアフリカ西海岸の言葉と同じ"音節拍リズム言語"に分類され、対して英語やドイツ語などのゲルマン語は"強勢拍リズム言語"に分けられるという。つまり、前者を使う宗主国の植民地ではアフリカで培ったリズムが大きく変わることなく残り、一方で英語を強いられたアメリカの黒人奴隷は新しい言葉のリズムを反映した音楽(ジャズ)を生み出すに至ったというのだ。ちなみに日本語は大きく分ければ前者のくくりに入るそうだ。

専門用語や具体的なリズムを書ければいいのだけど、表層をざっとなぞっただけなので私自身が深く理解しているわけではないので突っ込んだことまでは書かないが、英語が持つリズムが作り出す譜割と日本語のそれは当然変わってくると理解した。


翻って本作の野田が英詞で歌う時のメロディに話を戻すと、英語が自然に聴こえる。英語で歌うパンクが一時期はやったが、ああいうのとは明らかに違う、極めて洋楽らしい音楽がここにはあるのだ。もともとこういうメロディが書けたからイギリスでまずリリースしようと考えたのか、あるいは外国での販売を考慮してこのメロになったのかは知らないが、とても滑らかで聴きやすい。

それと大事なことはほとんど野田ひとりで作り上げた本作には、『絶体絶命』のような聴いていてもっとギター頑張れといった足を引っ張る要素がないことだ。これほどの作品をひとりで作ることができるならば、彼はソロで活動した方が良いのかもしれない。ただ、その時はM2のような日本語詞でお願いしたい。彼の最大の武器は作詞能力なのだから。
2013.10.28 Monday 23:59 | 音楽 | comments(3) | trackbacks(0)
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