すばらしくてNICE CHOICE

暇な時に、
本・音楽・漫画・映画の
勝手な感想を書いていきます。
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2021.02.10 Wednesday | - | - | -
無料配信ミックステープ11月号(2014)
国産ヒップホップを中心としたフリーダウンロード・ミックステープの2014年11月発表分一覧。日本語ラップ専門情報サイト2Dcolvicsで紹介された作品を主に取り上げている。



【】Geminis Azul 『2 Be 6』
2014.11.02 / 全6曲15分 / mp3,flac,... / bandcamp




【】DJ BEERT & Jazadocument 『The Documentary remixes -Based on northside stories-』
2014.11.04 / 全9曲33分 / 320kbps / audiomack




【】CBS 『TOWN Shun'ei Remix』
2014.11.05 / 全11曲36分 / mp3,flac,... / bandcamp




【】Lui Hua 『&』
2014.11.05 / 全19曲60分 / 320kbps / audiomack
配信終了。



【】Steez 『Da Wait Iz Ova』
2014.11.05 / 全12曲39分 / 160kbps / YouTube




【】エンヤサン 『寄せて上げてLP』
2014.11.06 / 全10曲44分 / 192kbps / HP




【】TOYBOX 『LEADERS OF NEWSCHOOL』
2014.11.07 / 全8曲31分 / wav / Twitter
配信終了。



【】show-k 『愛国ラップ』
2014.11.09 / 全14曲36分 / 192kbps / audiomack




【】Yo∞Hey 『Love Drugs』
2014.11.11 / 全7曲25分 / 128kbps / audiomack




【】VA 『FOGPAK #11』
2014.11.11 / 全28曲104分 / mp3,flac,... / bandcamp




【】VA 『ハローグッバイコンピレーション 二(ni)』
2014.11.12 / 全5曲20分 / 320kbps / HP




【】MCポテト a.k.a ST 『Favorite』
2014.11.12 / 全10曲33分 / 128kbps / SoundCloud
配信終了。



【】AGROW 『PLAYBALL』
2014.11.12 / 全6曲18分 / VBR / SoundCloud




【】LIL'B 『BACCANO EP』
2014.11.13 / 全10曲40分 / 128,192,320kbps,wav / Twitter




【】Xem 『KronoL』
2014.11.14 / 全1曲23分 / mp3,flac,... / bandcamp




【】ANTHEM MAN 『THE ANTHEM FREE VOL.1』
2014.11.15 / 全10曲38分 / 160kbps / Twitter
配信終了。



【】CENJU 『EXTRAPACKAGE』
2014.11.17 / 全6曲33分 / 128kbps,wav / blog, Twitter




【】A-shura Beats 『antiquity』
2014.11.19 / 全13曲22分 / bandcamp




【】POD & MATATABI 『FEEL AND THINK ep』
2014.11.19 / 全10曲27分 / mp3,flac,... / bandcamp




【】BCDMG 『6』
2014.11.22 / 全6曲分 / 320kbps / audiomack
配信終了。



【】WATA the FreeMen 『Music & Me』
2014.11.23 / 全14曲36分 / 160kbps / audiomack




【】JinY 『アクセサリー』
2014.11.25 / 全5曲16分 / 256kbps / Twitter




【】dizzy 『生活感と怠慢』
2014.11.27 / 全12曲35分 / 320kbps / SoundCloud




【】Kyandy 『THE EP』
2014.11.28 / 全6曲18分 / 320kbps / audiomack




【】Lidly×TiMT 『ShinKanSen EP』
2014.11.28 / 全7曲14分 / mp3,flac,... / bandcamp




【】M 『twilight EP』
2014.11.29 / 全5曲17分 / 320kbps / HP




【】KANDYTOWN 『KOLD TAPE』
2014.11.29 / 全23曲75分 / 320kbps / audiomack






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<まとめ>
2010年〜2011年1月〜9月分 Tegetther
2012年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
2013年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
2014年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

・「JPRAP.COM presents "The Se7en Deadly Sins"」 →記事(2011.05.26記)
  2010年の主要フリーダウンロードミックステープについてもある程度まとめてある。
・「昨今の国産ヒップホップ・無料DLミックステープ事情」 →記事(2011.09.30記)
  2011年前半の作品に焦点を当てた記事。
・「VA『Fat Bob's ORDER vol.1』」 →記事(2011.10.07記)
  記事の最後に名古屋関連のミックステープをまとめた。
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2014.11.30 Sunday 23:59 | 音楽 | comments(0) | trackbacks(0)
アミスタッド / Amistad

91点/100点満点中

1997年のスティーヴン・スピルバーグ監督作。1839年の「アミスタッド号事件」を描く歴史物。主演は本作が映画デビューとなり、後に『ブラッド・ダイヤモンド』や『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』に出演する西アフリカ出身のジャイモン・フンスー。共演にマシュー・マコノヒー、アンソニー・ホプキンス、モーガン・フリーマン、『それでも夜は明ける』で主役ソロモン・ノーサップを演じたキウェテル・イジョフォーもアフリカ生まれの英国軍人役で出ている。オスカーには4部門で候補になるが無冠。船名のアミスタッドはスペイン語で"友情"の意。製作費3600万ドル。

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1839年、キューバのハバナを出航したスペインのラ・アミスタッド号の黒人奴隷53人たちはシンケをリーダーに蜂起する。船を乗っ取った彼らの目的は母国アフリカ西海岸に帰ること。6週間の漂流の末、北米ロング・アイランド沖でアメリカ海軍に拿捕され、コネチカット州ニューヘイブンに連行される。黒人奴隷が白人を殺したことで死罪、あるいは所有者への返還が確実視される中、同地で始めった裁判で、奴隷制度廃止論者ルイス・タパンと黒人活動家ジョッドソンに雇われた不動産訴訟専門の弁護士ロジャー・ボールドウィンが彼らを助けんと尽力する。
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第6代アメリカ大統領にして、史上ただひとり大統領後も下院議員として政界に留まったジョン・クインシー・アダムズを演じるアンソニー・ホプキンスがようやくその貫録を発揮する場面。先達者たちによって定められた独立宣言にある尊い理念、"基本的人権の尊重"を思い出させてからこう語る。

"今こそ我々は正義を行う勇気が必要であり、そのための内乱なら起こるがよい。それがアメリカ独立戦争の最後の戦いとなるのです"

最高裁での発言であり、史実を忠実に再現したと誇るメイキング映像からも実際に彼が語った言葉でいいのだと思うが、ともかく後にスティーヴン・スピルバーグが『リンカーン』を制作したのは、唐突にエイブラハム・リンカーンの物語が生まれたわけではなく、本作があった上での彼なりの決着でもあるのだと知れたことは興味深い。そうなると、彼が奴隷解放令を宣言しても、その後約100年近くも公の場での差別が続いたわけで、その間の物語も彼は描くのだろうか。もしそうならかなり楽しみだ。


映画は冒頭から嵐の中アフリカ人たちが船上で起こす暴動の様子が迫力十分に映し出される。しかも彼らはアフリカ西海岸の部族であり、当然英語でも白人船員が話すスペイン語でもない。リアリティ重視は結構だけど、この映画一体どうなるのだろうと思っていると、やがて彼らが連行されたアメリカでの法廷劇となる。

裁判では船とその積み荷(つまり黒人)の所有権を巡る争いになる。スペイン船籍ということで、まずはスペイン女王イザベル2世が声を挙げ、本来の奴隷商人も自分のものと当然主張し、ホラバード地方検事、拿捕した米海軍士官のふたり、さらには奴隷制度廃止論者たちは黒人たちは本来の奴隷制度内の奴隷ではなく、アフリカから拉致されてきた被害者(奴隷商人はハバナで買ったとしか認めない)だと自説を発表し、互いに相容れぬ主張を述べ合う。そこに第8代大統領ヴァン・ビューレンの再選という政治が絡んできてしまうためにより厄介になる。黒人を守ることは南部の怒りを買い、票集めに不利となり、反対に南部のいう通りにすると北部で進む廃止論が一層過激になる。しかも、南部のジョン・カルフーン議員からは内戦の可能性まで示唆される。

必然、"単純な事件に抽象的な重みを積み上げてしまう"ことになる。つまり、法の正義とその独立性、あるいは基本的人権の尊重をどう守るのかという、単なる黒人の所有権だけの問題(当事者にとっては"単なる"では済まされない話で、モーガン・フリーマン演じるジェッドソンが同志で白人のルイス・タパンに怒りを露わにするのは当然だ)ではなくなり、国のあり方に関係してくるとても大きな物語となる。


実際に当時の街並みを再現した撮影は素晴らしく(反対に砦破壊などのCG感あふれるシーンはがっかり)、俳優たちもよく熱演している。ボールドウィンに扮するマシュー・マコノヒーは本作の1年前の現代劇『評決のとき』でも黒人の権利を守る弁護士を演じていたが、今回は長いもみあげのせいか、すぐに判別できなかったが、ひょうひょうとした人物を好演する。実際の彼は後に政界に進出したそうだ。アンソニー・ホプキンスはもうさすがとしかいいようがない演技で、反対にモーガン・フリーマンは控えめだ。ただ、アフリカ人奴隷の末裔であるが、白人から教育を受けたフリーマンの演じるジョッドソンが、シンケに政府が上告したと伝えるのに帯同するシーンで、同じ肌の色をしているものの、西洋社会とは別の世界で生きてきたシンケが爆発させる活力に圧倒される時の表情は印象的だ。

TVドラマシリーズ『ルーツ』でもアフリカ西海岸から拉致された黒人たちが奴隷船に乗せられ、過酷な船旅を強いられるという描写はあったが、本作は映画であることもあるのか、さらにむごたらしい光景が広がる。そこをしっかりと描く努力があるから、アミスタッド号に乗船させられた黒人たちの怒りをしかと理解できるし、制度そのものが間違っているというアダムズの言葉にも説得力が生まれる。ただ、その船上シーンはスペイン語の白人たちだったこともあるし、裁判が行われたニューヘイブンが北部だったことも影響しているのか、不思議とNワードが出てこない(もちろんレイティング問題を考慮してというのもあるだろうが)。そういえばリンカーン』はどうだったのだろう。まだその点を意識して鑑賞してたわけではなく、記憶にない。


映画を見れば、「アミスタッド号事件」の流れやその意義を理解できるが、結審までにどれぐらいの時間がかかり、彼らは何年間拘留されていたのか具体的な数字としては分からない。そこでウィキペディアを参考にすると、船がスペイン領キューバ・ハバナの港を出港したのが1839年6月28日。7月2日にはシンケが蜂起し、その後8月26日ロング・アイランド沖でアメリカ海軍のワシントン号に拿捕される。39年9月ニューヘイヴンの地方裁判所で審議が始まる。40年1月、地裁は奴隷廃止運動家の主張を認める判決を下す。

しかし、政府は"巡回裁判所へ即時抗告"を行い、1840年4月巡回裁判所は"地方裁判所の判決を支持しつつも、国際的重要性を鑑みて、最高裁判所へ案件を送致"する。1841年3月9日最高裁はシンケたちアフリカ人の自由を認め、翌1842年彼らは故郷に帰還できた。


ところで、余計な口出しをするスペインの女王イザベル2世を演じるのは、1993年の『ピアノ・レッスン』でわずか11歳ながらアカデミー助演女優賞を受賞したアンナ・パキンになる。女王は米国の政治家たちから11歳のわがまま娘といった具合に罵倒される存在と描かれので(実際彼女は最後までそうだったらしい)、何かの皮肉なのかしらと捉えてしまいそうになる。
2014.11.28 Friday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
チャールズ・スワン三世の頭ン中 / A Glimpse Inside the Mind of Charles Swan III

78点/100点満点中

2012年のチャーリー・シーン主演コメディ。フランシス・フォード・コッポラの次男ロマン・コッポラによる2001年のデビュー作以来となる2作目の監督・脚本作。共演には従兄弟でもあるジェイソン・シュワルツマン(彼の母で女優のタリア・シャイアがフランシス・コッポラの妹)、ビル・マーレイ、パトリシア・アークエット、オーブリー・プラザら。ヒロインのイヴァン役はウクライナ系カナダ人のキャサリン・ウィニック。原題にある"glimpse"は"ひと目、ちらりと見えること"の意。DVDスルー作(WOWOWでは昨年12月に放送済み)。

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1970年代。売れっ子グラフィック・デザイナーのチャールズ(チャーリー)・スワン三世はハリウッドの豪邸で若い恋人イヴァンと幸せに暮らしている。しかし、彼の些細な無精が原因で溜まっていた不満が爆発し、彼女は家を出ていく。彼は散乱するイヴァンの靴を投げ捨てた直後、事故を起こし入院するハメに。友人のカービーや妹イザベル(イージー)が見舞いに来てくれる中、不幸は連鎖するもので会計士のサウルがデザイン事務所の経営が危ういと話す。
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70年代という時代設定のおかげで、あの頃のファッションや色使いがよく生かされてるいることもあるのだろうけれど、作品に手作り感があり、おかげで心地良い温もりがある。そのハンドメイドの良さは十分あるのに、ウェルメイドでないのが残念なところだ。出演している俳優のみならず、監督を始め周囲も楽しんで作ったのは伝わる。ただ、その作り手が覚えてただろう楽しさ、あるいは手応えがそのまま物語に出せていない。そのため、現場に充満していたに違いない熱意を鑑賞しながら想像で補完していく必要がある。本作で完璧なのは音楽。とにかく素晴らしい。

主役のチャールズ・スワン三世を演じるのは、お騒がせ有名人として完全に定着してしまったチャーリー・シーン。スワン三世の愛称もチャーリーなので、彼と同一視せざるを得ないし、そもそもシーンの出演が前提で作られた物語でもあるのだろう。そのチャーリーには過剰な妄想力があり、彼の妹いわくその事がイヴァンを疲れさせたのだということだけど、ともかく妄想の力によってデザイナーとしては成功を収めている。

本作の面白さは現実でのチャーリーの言動の他に、妄想世界で繰り広げるドタバタにもある。友達のカービー(ミュージシャンらしいが、やってることはスタンダップコメディ)が病室で聞かせる新作ネタを聞き、ダメ男撃滅組織SSBBに追われる自分たちを映像で再現してしまう。現実と想像世界を行ったり来たりするだけではなく、現在と過去を行きつ戻りつするため戸惑うこともあるが、音楽ビデオ的(そういえば彼はPV監督としてのもあるそうだ)な自由さと好意的に解釈もできる。

シーンはいい役者だと今回改めて思った。おかしな騒動ばかり起こしていないで、真面目に俳優キャリアを積めばいいのにと思わなくもないが、今は『レスラー』までのミッキー・ロークが味わっていたどん底期みたいなものなのだろうか。

物語そのものは最愛の恋人イヴァンにフラれたチャーリーがその現実とどうにか折り合いをつけるというとても簡単なものであるし、ハリウッドの地価の高そうな一帯を舞台に、二世タレントたちが大挙として出演し、私自身は嫌味とまでは思わなかったが、それでもお金持ちのお遊び感が漏れ出てしまっているのか、あまり評価されていないようだ。

"二世タレント"を挙げていくと、もちろん監督のロマン・コッポラを筆頭に、主演のチャーリー・シーン、監督の従兄弟で父は映画プロデューサー、母が女優のジェイソン・シュワルツマン、パトリシア・アークエットも芸能一家に生まれ育ち、チョイ役(イヴァンの浮気相手の俳優ステーヴ)でスティーヴン・ドーフもそうだ。まあ、才能がない二世たちではなく、しっかり活躍し実績のある俳優たちで、そのおそらく幼いころから周囲にあっただろう華やかさを自然なこととして受け入れてたものが醸し出す雰囲気が目にははっきりと見えないけれども、いい意味で重要な要素なっている。同時にそれが嫌われる部分にもなるのだろう。


ロマン・コッポラ監督の2001年の『GQ』は評価が高いらしく見てみたい。ウェス・アンダーソン監督の『ダージリン急行』と傑作『ムーンライズ・キングダム』では監督と共同脚本を務めていたそうで、他に父が監督した『ドラキュラ』や『ジャック』、『レインメーカー』、『コッポラの胡蝶の夢』、『テトロ 過去を殺した男』、あるいは妹ソフィア・コッポラの『ヴァージン・スーサイズ』や『マリー・アントワネット』では第二班監督として参加してたという。


70年代の音楽として何ら違和感のない温かい音を付けていたのは以前はPlush名義で活動し、現在は本名のリアム・ヘイズで活躍するシカゴ出身のミュージシャンとのこと。サントラはバンドキャンプで視聴もできる。クレジットを見ると、彼の2002年のアルバム『Fed』、2009年の『Bright Penny』、今年リリースされた最新作『Korp Sole Roller』から選曲されている。どの作品もそのバンドキャンプに同じようにアップされている。知らないミュージシャンだったけれど、魅力的な音を紡ぎ出していて、とても良かった。
2014.11.27 Thursday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
デッドマン・ダウン / Dead Man Down

55点/100点満点中

2013年の犯罪サスペンス。本国版『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』のデンマーク人監督ニールス・アルデン・オプレヴが再びノオミ・ラパスをヒロインに起用し、コリン・ファレル主演で撮ったハリウッドデビュー作。共演はテレンス・ハワード、『デビルズ・ダブル -ある影武者の物語-』のドミニク・クーパー、ラパスの母親役にはイザベル・ユペール。製作費3000万ドル。

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米ニューヨーク。裏社会のボス・アルフォンスは、何者かにこの3ヶ月間脅迫され続け、手がかりを追っていた仲間のポールは死体で見つかる。殺し屋として組織に入り日の浅い下っ端ヴィクターの相棒ダーシーは手柄を立てようと彼が掴んでいた情報を追い始める。一方、ヴィクターはポールを殺す様子を向かいのマンションに暮らす顔に傷のある女性ベアトリスに見られる。彼女は通報しない代わりに顔に傷を付けた男を殺して欲しいと交換条件を持ちかけてくる。
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コリン・ファレル演じる主人公ヴィクターはハンガリーからアメリカに移住し、家族3人で幸せな家庭を築こうとした矢先の2年前、裏社会の実力者のひとりアルフォンス(テレンス・ハワード)によるアルバニア人ギャングを使った強引な地上げがもとで、妻と幼い娘を殺され、彼も命からがら逃げ出すことになった。アルバニア人たちはヴィクターも死んだと勘違いしていたが、彼は義父を通してハンガリー人組織の支えを受け、復讐に乗り出す。そして、9ヶ月前アルフォンスの組に潜入し、いまや彼の望みが叶えられるところまで来ていた。

内容に大幅に踏み込んでしまっているけれど、このサスペンス要素に、偶然知り合った向かいのマンションに母と二人で暮らすベアトリスとの恋愛が絡んでくる。彼女もまた恨みを抱き生きている。交通事故で彼女の顔に大きく残る傷を負わせた男に対してで、逮捕はされたものの短期間の服役で出所したことに強い憤りを覚えているのだ。その過去に囚われているふたりの男女が長い期間かけて練ってきた計画と思惑、惹かれ合う感情、狙われた組織、家族を養うために功を焦る同僚といったエピソードを含ませて、最後には1対たくさんのマフィアという派手なドンパチで締めるわけだけど、これがどうにもこうにもつまらない。

思えば、『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』も謎解きと恋愛を絡めて描き、上映時間が3時間と長さに余裕があったこともあり、バランス良く映し出していたのが印象的だったが、今回はノオミ・ラパス扮するヒロイン・ベアトリスの配分を増やし過ぎているのか、状況・設定の伝え方からして心もとないし、ベアトリスが筋をたびたび邪魔するため緊迫感が生まれるはずもなく、ナンみたいな顔のラパスと眉毛の代わりに板海苔を貼りつけたファレルが互いに意識し合ってもどうでもいいとなってしまう。

しかも、ニューヨークの路上で銃を乱射しようとも警察の出動が遅かったりと、当局の動向が映画にまるっきり関係してこない様はジョニー・トーの野放し香港ノワールのようでもあり、それがいい顔の男たちが演じるならまだしも(ダーシー役のドミニク・クーパーは悪くない)、憂鬱なファレルでは何ともかんとも。


"シャルトリューズ色のウサギの足"が出てくる。フランスのグランド・シャルトルーズ修道院で作られる伝統の同名リキュールは知っているが、色の名前にもなってるとは知らなかった。"黄緑"と訳されるが、具体的には、"明るく淡い黄緑色"とのこと

一方の"ウサギの足"は映画に時々出てくるので向こうのお守りだというのは知っていたが、ウィキペディアによると、"ウサギは多産で非常に繁殖力が高い動物であり、生命力のシンボルであるとされ、ウサギの足を持つことが多産と繁栄の恵みをもたらすからという由来や、アナウサギが穴の中に巣をもつことから、ウサギが聖霊たち(当時は聖霊は地下に住むと信じられていた)と交流していた動物であるからという由来からきているとされる"そうだ。

ウサギの後ろ足に"留め具を取り付け、携帯所持しやすいように加工したもので"、現在はフェイクファーを"用いてキーホルダーやストラップの形で売られることが多い"ともある。"アメリカやイギリス、メキシコなどで人気が高い"のに反し、"欧州大陸ではあまり知られていない"というのは興味深い。
2014.11.26 Wednesday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
死霊のしたたり / Re-Animator

71点/100点満点中

1985年のホラー映画。ゾンビもの。日本公開時の邦題は『ZOMBIO(ゾンバイオ)/死霊のしたたり』。原作はH・P・ラブクラフトの短篇「死体蘇生者ハーバート・ウェスト」。ダンを演じるブルース・アボットは『ターミネーター』のリンダ・ハミルトンの当時の旦那。その恋人メグに扮するバーバラ・クランプトンはこの26年後の『サプライズ』で結婚35周年を家族に祝われる夫妻の奥さん役で出演。製作費90万ドル。

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ヨーロッパの脳研究の権威グルーバー博士の下で研究していたハーバート・ウェストは博士の死後、スイスから米国マサチューセッツのミスカトリック医学校に移り、アメリカで随一といわれるカール・ヒル博士に学ぶことに。彼は同じ門下生ダン・ケインのルームメイトになる。ダンの恋人でカール・アラン・ホルジー学長の娘メグは彼を訝しみ危惧するが、その予感通りにダンの愛猫ルフェスがウェストの部屋の冷蔵庫で見つかる。
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「ゾンビコメディ・ベスト12」という映画記事で紹介されていた作品。ただ、コメディというよりはしっかりしたスプラッタホラーであり、同時にそのスプラッタと笑いは紙一重のところがあるにせよ、これをコメディと分類するならばそこには作品への嘲笑の念が混ざっているように思う。

マッド・サイエンティストが独自研究で死体蘇生薬を開発する。原題は"Re-Animator"。"animate"とはオタクたちの聖地ではなく、動詞では"〜に生命を吹き込む"などを意味する。最初は動物実験から始まり、研究者の底知れない探究心からお決まりの人体実験に移行する。しかし、死後の経過時間と蘇生可能性が比例することで、ゾンビまがいの生ける屍が誕生し、てんやわんやになる。

原作となるH・P・ラブクラフトの短篇の上梓が1922年だという。その原型はメアリー・シェリー『フランケンシュタイン』(1818)なのだろうが(そういえばそのフランケンシュタイン博士もスイス出身だ)、猫を最初の実験対象にしたりオチの展開などからもスティーヴン・キングの1983年の『ペット・セマタリー』を楽しく思い出したし、取れた首を胴体が持ち歩くシーンではそれをネタにしていたのだろうアラレちゃんを懐かしく思ったりしたのだけど、今調べたら『Dr.スランプ』って1980年から84年までの連載だった(わずか4年というのも驚き)。

スプラッタといっても血ノリがやけに明るい発色でそれほどおぞましさは覚えない。医学の授業で献体の頭皮を剥いだり、医療用電ノコで体を貫通させたりといったエグめの描写が中盤までにあり、ヒルが首を切り落とされてからは残酷さが幾分加速する。とはいえ、現在の残忍描写や設定に比べるとまだかわいいものだし、当時は驚きがあったのかもしれないが、タネの分かる特殊効果が逆に新鮮でもあり、ショックを生み出すために考えられたアイデアの数々も楽しめる。

ラストシーンは現代にも通用するかっこよさがある。暗転した中で蛍光色の死体蘇生薬だけが光り、シリンダーを押し込むことで完全に暗くなる。そして悲鳴。


ヒットホラーの定石のままにシリーズ化されたようで、続編の『死霊のしたたり2 / Bride of Re-Animator』が1989年に、3作目はなんと2003年に『RE-ANIMATOR 死霊のしたたり3 / Beyond Re-Animator』として製作された。続編2作の監督はデビュー作だったスチュアート・ゴードンに代わり、本作の製作総指揮ブライアン・ユズナが担当している。内容はというと、2作目ではいまだ医学校に在籍するウェストとダンが"死体から新たな生命を生み出そうと実験"する完全オリジナル脚本で、『フランケンシュタインの花嫁』を下敷きにしているそう。3作目は投獄中のウェストが刑務所で・・・という話らしいのだけど、allcinemaやアマゾンの感想では悪くないようなので、もしかしたら見るかも。
2014.11.25 Tuesday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
ON AIR オンエア 脳・内・感・染 / Pontypool

89点/100点満点中

2008年のカナダ産ホラー映画。ゾンビもの。主演は、本作と同じく意欲的なゾンビ映画『夜明けのゾンビ』やパスカル・ロジェ監督の最新作『トールマン』にも出演しているカナダ人俳優スティーヴン・マクハティ。DVDスルー作。製作費150万ドル。

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2月14日カナダ・オンタリオ州の田舎町ポンティプール(原題)。地元のラジオ局CLSYのディスクジョッキー、グラント・マジーは吹雪の中いつものように出勤し、助手のローレル・アンや女性プロデューサー、シドニー・ブライアーと共にその朝も番組を始める。早々に天気レポーターのケン・ロニーから不穏な情報が伝えられた。局から5キロしか離れていないジョン・メンデズ医師宅が暴徒に囲まれ、死人が出るほど現場は混乱しているという。
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昨日の『ビハインド・ザ・マスク』に続き、『キャビン』に出てくるホラーネタ紹介記事で、"今までのルールを取り入れつつもひねりの効いたホラー"として挙げられている中で未見だった作品。

これは"ひねり"というよりも作り手の挑戦的な姿勢が強く印象に残る。小さいラジオ局を舞台にしたソリッドシチュエーション・ホラーとして頑なに登場人物を外に出さないのに、それでも魅せてしまう物語作りがなされ、しかもゾンビものでもあり("ゾンビ"と断定するセリフはないが、まあそういう生き物に変質する)、主要人物は渋い低音のDJ、グラント・マジーとアシスタントのローレル・アン、責任者シドニー・ブライアー、それと医者のジョン・メンデズ(彼はほぼ事態の説明役)のわずか4人しか登場せず、ゾンビとして十数人出はするものの、物語は緊張感をしっかり保たせたまま会話主体で進んでいく。

舞台劇と表現してもいいが、ラジオ局を舞台にし、外からの情報が断片的にしか入らない状況を思うと、オーソン・ウェルズの伝説のラジオドラマ『宇宙戦争』を念頭に制作されたのだろう。宇宙人の代わりが謎のウイルスに感染したゾンビだ。舞台が限定されているにも関わらず、もし実際にゾンビによって町が襲われたらという緊迫感がよく描かれている。

しかも、本作を面白くし、同時に胡散臭くもさせているのがウイルスの宿主の設定で、これは確かにひねりが効いているといえるかもしれない。いち早く気づいたメンデズ医師から説明されたマジーがなかなか信じられなかったように、見ている側はもっと眉唾な気分となり荒唐無稽過ぎると思ってしまうのだけど、でも同時にカナダには英語圏とフランス語圏で対立とまではいかなくても、そこにある種の軋轢が今も根強くあると聞いたことがあるので、もしかしたらプロパガンダ的な意味合い、あるいはユーモアを忍ばせてもいるのかもしれない。

その点での深いところまでは分からないが、ゾンビ映画として人体をむさぼるシーンが例えなくても彼ら(まあ彼女か)の行動は十分不気味であり、また局から一歩も出ずともかなり面白い映画として成立させている。アイデア次第で映画はどこまでも魅力的になるという見本のような作品。



【追記】2014.11.25
エンドロール後のおまけ映像の意味が分からなかったのだけど、アマゾンのカタスマーレビューになるほどとなるものがあった。作品全体のテーマについても。→ amazon
2014.11.24 Monday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
300 <スリーハンドレッド> 〜帝国の進撃〜 / 300: Rise of an Empire

60点/100点満点中

紀元前480年に起きたギリシャとペルシャの戦いを独自の視点で描いた2007年の歴史アクション『300 <スリーハンドレッド>』の続編。原作はそのままフランク・ミラー。前作の監督ザック・スナイダーは脚本と製作(共に共同)に留まり、今回はノーム・ムーロがメガホンを取る。主演は『アニマル・キングダム』や『L.A. ギャング ストーリー』で脇を固めてきたサリヴァン・ステイプルトン。敵役に旧ボンドガールのエヴァ・グリーン。なお、音楽はJunkie XLが担当。公開時は3Dだが2Dで鑑賞。製作費1億1000万ドル。2014年公開作品(4ヶ月後にソフト化)。

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紀元前490年、ペルシア帝国のダレイオス王率いる大艦隊をマラトンで迎え撃ったギリシア軍は、アテナイの戦士テミストクレスが王に致命傷を負わせる活躍をみせ、ペルシア軍を撤退させる。代替わりし、ダレイオス王の息子クセルクセスが王となり、10年後帝国は再び進撃を始める。スパルタ王レオニダスが300人の戦士で100万の軍勢に立ち向かうのと同時期にテミストクレス率いるギリシア連合軍は海軍司令官アルテミシアの束ねる帝国海軍の大艦隊と対峙する。
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前作『300 <スリーハンドレッド>』で陸戦"テルモピュライの戦い"を描いたので、今度は海戦。ギリシアを率いるのは勇猛にして知略にも優れたアテナイのテミストクレス将軍。10年前の"マラトンの戦い"で、ペルシアのダレイオス王に致命傷を与えている。一方のペルシア海軍を統率するのはそのダレイオス王が、実の息子クセルクセスより武人として優秀だったことから、娘のようにかわいがっていた女戦士アルテミシア。彼女はギリシア生まれだが故国に激しい恨みを抱くという因縁ドラマもある。

陸から海に戦場を変えただけで魅せ方や演出は前作をそっくり踏襲しているため、かつて覚えた新鮮な驚きはもはやない。それでも史実や現実の動きよりも見得を重視した劇画調の絵柄は嫌いにはなれないし、裸だらけのギリシア軍よりずっと凝っているベルシア軍の衣装はかっこいいのだけど、総じて物語自体の面白みに乏しく、好きだったはずの絵柄や演出に飽きがあるのか、一度目の鑑賞では30分ぐらいで睡魔にあっけなく負けてしまった。

ペルシアから守るために立ち上がったスパルタ王レオニダスの前作のセリフに、イランに対するアメリカの姿勢が浮き彫りになるような類のものがたびたびあったと記憶しているが、今回はペルシア(イラン)への糾弾よりも、"民主主義を守る戦い"や"自由な精神を(守れ)"といったトーンに収まっている印象だ。

迫力ある殺陣や、海戦で馬を使う無理矢理感、あるいはオイルを撒き散らす戦術を取るのに、アホなほど爪が甘い点、戦っているように猛々しい濡れ場とそれなりに見所はあるのだけど、一番興味深いのはメイキングだ。撮影がグリーンルームで行われているのは想像できるが、海での戦いを描くのに水を一切使わずに制作していたというのは面白い。

エンディングで流れるのはBlack Sabbathの「War Pigs」のジャンキーXLによるリミックス

あと、エンドロールの一番最後に出るCruel and Unusual Filmsという映画会社のロゴが気になり調べたら、ザック・シュナイダーの会社とのこと(wiki)。"『エンジェル ウォーズ』のヒロイン、ベビイドールをアニメにしたもの"だという。なるほど。
2014.11.20 Thursday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
V/H/S シンドローム / V/H/S

59点/100点満点中

2012年のオムニバスホラー。『キャビン・フィーバー2』『インキーパーズ』のタイ・ウェスト、『サプライズ』のアダム・ウィンガード、そのウィンガードの『ビューティフル・ダイ』と『サプライズ』では役者として、またウェストが出演した恋愛映画『ドリンキング・バディーズ』を撮ったジョー・スワンバーグ等、計6人の若手監督が参加。

どれもファウンドフッテージ・ホラーであるが、同時期の同じオムニバス形式ホラー『ABC・オブ・デス』とは違い、忍び込んだ家で大量に見つけたビデオテープを次々と見ていく形で、それぞれの作品が披露されていく。


「Tape 56」
監督・編集はアダム・ウィンガード、脚本はその右腕サイモン・バレット。これが本作全体の枠組みとなる。ブラッドを演じるのはウィンガード監督自身。

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強制わいせつ行為を動画に収め売り捌くなどする無軌道な若者グループに、老人がひとりで暮らす家から1本のビデオテープを取ってきて欲しいと依頼が入る。深夜に早速押し入ると、男がイスに腰かけたまま死んでおり、その部屋に並べられたテレビはどれも砂嵐を映し出していた。テープを求めて家探しを始める一方で、その部屋のビデオデッキに残っていた数本のテープをブラッドが確認し始める。
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「Amateur Night」
監督がデヴィッド・ブルックナー、脚本は監督とニコラス・テコスキーの共同。

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いかにも体育会系なシェーンとパトリックにうながされ、もやしタイプのクリントはビデオカメラ内蔵眼鏡を掛け、3人で街に繰り出す。バーで盛り上がり過ぎ追い出されるも、女性ふたりのお持ち帰りに成功するが・・・。
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トップバッターなだけあって一番面白かったかもしれない。ドラゴンヘッドみたいな女性が大活躍し、最後には『クロニクル』な展開を見せる。ファウンドフッテージ形式ということで、どの作品もPOV方式(主観撮影)なのだけど、これは特にウェアブルカメラを使っていることや、クライマックスがほぼワンカット(多分)でよく頑張ってる感がある。メイクの助けがあるにしてもハンナ・フィアマンという女優から漂うヤバさはかなりのもの。


「Second Honeymoon」
監督・脚本・編集:タイ・ウェスト。サムを演じるのはジョー・スワンバーグ。

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サムとステファニーの社会人カップルは休暇を利用し車で旅をしている。西部の田舎町の安宿に宿泊した晩、不気味な少女が相乗りを求めて部屋にやって来るが、サムは断る。その夜、不審者がカメラ片手にぐっすり寝入るふたりを撮り始める。
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ブラッドが先のドラゴンヘッド女のテープに当惑しながらもさらに別のテープを見始めると画面に流れるのが本作となる。一応オチは用意されているけれど、唐突感は否めない。


「Tuesday the 17th」
監督・脚本・編集はゾンビコメディ『セール・オブ・ザ・デッド』を2008年に撮っているグレン・マクエイド。

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ウェンディは彼氏のジョーイと、女友達サマンサ、それとジョーイの親友スパイダーを伴い、週末旅行に以前行ったことのある人里離れた森に向かうが・・・。
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3本目をデッキに入れるブラッドが目にしたのはある意味Ninja映画。ファウンドフッテージなのだからそもそもオチなど用意しなくてもいいのだという傲慢さが悪目立ちする。


「The Sick Thing That Happened to Emily When She Was Younger」
監督はジョー・スワンバーグ、脚本に「Tape 56」と同じくサイモン・バレット、編集がアダム・ウィンガード。

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ジェームズとエミリーの幼馴染カップルはジェームズが離れた医大で学んでいることもあり遠距離恋愛となるが、ビデオチャットで毎日のように連絡を取り合う。エミリーはアパートに子供の幽霊が出ると不安を訴えながら、腕にできたこぶを気にし執拗に引っ掻いている。
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地下でも大量のビデオテープを見つけたふたりがブラッドの元に戻ってくると彼はいない。最初にこの依頼を受けたゲイリーが探索に出た後、ザックがデッキに差し込んだのがこのビデオ。

パソコン上で行われるビデオチャットの録画動画が旧メディアのビデオテープになぜ収められているのかといった奇妙さはあるが、遠方のふたりが行うビデオチャット画面のみで物語を展開させ、しかも強引とはいえ意外性もあり、それなりに面白い。でもどうなんだろう、やはり強引過ぎか。


「10/31/98」
4人組映像製作集団レイディオ・サイレンスが監督・脚本・編集・主演とほとんど全てをこなす。

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ハロウィンの夜。着ぐるみの頭にカメラを仕掛けて出かけた仲良し4人組。パーティ会場と思った邸宅は無人で不審に思っていると上の方から奇妙な声が聞こえてきて・・・。
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ゲイリーが戻ってくると部屋にいたはずのザックもいない。直後、ゲイリーもまた襲われる。そして最後に映し出されるビデオ映像がこれ。ハロウィン・パーティに仮装して臨んだのに怪しげな儀式を目撃してしまい、女性を助けたまでは良かったけれど・・・というありがちなホラー。


長い。ひとつのエピソードは20分弱ぐらいなのだろうけど、それぞれに前振り(日常の光景)を用意せざるを得ないため、余計に冗長さが出てしまう。6つではなく4つぐらいなら、揺れるカメラの連続にも我慢できたかもしれない。予告編が良過ぎたことも大きい。初めて見る恐怖映像が多く楽しみが大きかった分、本編ではその予告編のただ間延びした物語で終わっていてがっかりするのだ。見終えた後では予告がファウンドフッテージ・ホラーの魅力を凝縮したいいとこ取りの秀逸な編集だったことがよく分かる。ネタバレし過ぎともいえるわけだけど。
2014.11.17 Monday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
PTU / PTU

69点/100点満点中

ジョニー・トー監督による2003年のサスペンス映画。香港。出演はトー作品常連のサイモン・ヤム、ラム・シュー、マギー・シュー、ロー・ホイパン等。

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機動部隊PTUの隊長ホー・マンジンが夜の香港を警邏中に、友人で組織犯罪課の刑事ロウ・サァからチンピラのマーの一味に拳銃を奪われたと聞かされる。上に報告しようとする部下を制し、勤務終了の午前4時までに探し出すことを決断。一方、マーは敵対勢力ギョロメの部下に刺され、マーの父親でマフィアのボス・ハゲが報復に乗り出す。マー殺害で犯罪捜査課CIDのチョン・ライクワン刑事も調査を開始することでそれぞれの思惑が尖沙咀を舞台に交錯する。
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題名の"PTU"とはPolice Tactical Unit(香港警察特殊機動部隊)の略称で、その業務は特典映像として収められているジョニー・トー監督のインタビューによれば、所轄の遊軍的存在とのこと。

夜間パトロールを行っていたホー隊長率いるPTUは、明らかに暴行によると思われる酷い傷を負い倒れていたサァ刑事を発見する。本部に報告しようとすると、サァは腰元の拳銃がないことに気づき、まだ知らせないでくれとホーに頼み込む。ひと晩かけて探したいと。昇進を目前にしているとサァに懇願されたホーはそのいい分を聞くことに。

こうして物語が始まる。当局側からは町の治安を預かるPTU、奪われた拳銃を見つけようと闇雲になる組織犯罪課サァ刑事、そして犯罪捜査課CIDの女性刑事チョンの三者。裏社会側は息子のマーが殺されたことで憤るマフィアのボスのハゲと対立するギョロメのふたりが状況を完全に把握しないまま動き始める。

そうした一夜の物語を生々しい不穏さでもって綴っていく。これまでに見たトー監督作の中では本作が一番古いこともあって、彼特有のケレン味が意外なほど抑制された上に、閑散とした深夜の尖沙咀の街(昼間は相当な賑わいを見せるそうだ)をホーの部隊がゆったりとした独特の歩調で銃の行方を追う様子にはハードボイルな質感や美意識成分が多めなことにも驚く。同時にチンピラへのホーの執拗な殴打などどこかアンバランスな怖さや、自転車に乗る少年といったよくある光景を不気味に描いてもいて、それがまた静かな中にも緊張感のあるリアルさの維持に繋がってるのかもしれない。人物の視線の切り取り方も独特で興味深い。そんな雰囲気を一気に壊すと共に盛り上げるのがクライマックスで、やや無理矢理な感はあるものの、関係者を勢揃いさせドンパチを始める。そうなるとこれはよく知ってるジョニー・トーと安心できる展開ではある。
2014.11.16 Sunday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
人類滅亡計画書 / 인류멸망보고서

67点/100点満点中

2012年の韓国映画。題名通りに人類の滅亡を予感させるエピソードをSFやホラーの形で描いた3篇からなるオムニバス作品。「シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション2013」の1作でもあり、これで2013年の全6作『アフターショック』『バーバリアン怪奇映画特殊音響効果製作所』『ロスト・ボディ』『恐怖ノ黒洋館』『人類滅亡計画書』『道化死てるぜ!』を鑑賞したことになる。


「素晴らしい新世界」
監督・脚本(共同)は『南極日誌』『ヘンゼルとグレーテル』のイム・ピルソン。主演は『生き残るための3つの取引』『ベルリンファイル』のリュ・スンボム。その相手役には『ヘンゼルとグレーテル』で主人公のガールフレンド役で特別出演していたコ・ジュニ。ゾンビ物。38分。

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家族が海外旅行に行くのに兵役中のため居残らざるを得ない軍属研究職のソグは、ものぐさな母親が始末しなかった大量のゴミを分別せずに捨てたところ、街に謎のウィルスが発生し、人々はゾンビ化する。
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腐ったリンゴが処理場に回され、その過程で謎のウィルスが誕生するも、誰に気付かれることなく家畜用の飼料となり、それを牛が食べ、やがて解体され、焼肉屋で生レバーとして出され、合コンで出会った女性ユミンと焼肉デート中の主人公ソグが食べる。結果彼もゾンビになり、韓国全土でもゾンビ禍が瞬く間のうちに広がる。噛まれるなどの体液感染により、暴力衝動や性欲などの"人間の弱点"が制御できなくなるのがミソであり、親切にもオチで創世記が説明されるが、それがなくても禁断の果実ならぬ腐ったリンゴがどういうものかは想像付くわけで、その寓話っぽさは面白い。


「天上の被造物」
監督・脚本は昨年『ラストスタンド』でハリウッドデビューを果たした『悪魔を見た』『グッド・バッド・ウィアード』のキム・ジウン。主演は『マリン・ボーイ』のキム・ガンウ。共演に『プンサンケ 豊山犬』のヒロインだったキム・ギュリ、美脚のミン・ユニ本部長には『黒い家』『ダブル・キラー』『『ベルリンファイル』』のキム・ソヒョン。ロボットRU4の声は『極楽島殺人事件』『神弓 -KAMIYUMI-』のパク・ヘイル。SF。31分。

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ロボットが広く活用されている近未来。ロボットR4Uが悟りを開き説法の境地にまで達したと連絡が入る。世界的なロボットメーカー・URインターナショナルの修理士がそのチョンサン寺に赴き、仲間の僧侶たちからインミョンと呼ばれるR4Uを調べるも回路の異常は見つからない。しかし、事態を重視したUR社会長のカン・ソンチョルはユン・ミン本部長を伴い、直接寺に出向き、ロボットの解体を厳命する。
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『アイ,ロボット』に近い外見をしたロボット・インミョンが、懸命に修行している僧侶であっても困難な悟りを開いてしまうという物語。3篇の中では最もハードSFな絵柄であり、テーマもまたロボットが進化した結果、人の領分にまで大きく踏み込むことになり、それは人類とロボットの境界線が危うくなることを意味するという、最近ではどこか懐かしさすら感じさせるSF的問題が描かれる。車イスのカン・ソンチョル会長にしても機械に助けられて生活しているわけではあるが、そこに一線を引くという考えはよく理解できるし、それは人と機械の関係だけではなく、身近な例でいけば人と動物もそうだなと思ったところで、主人公の修理士が暮らすマンションの住人が持ち込んだペットの犬ロボットのエピソードを盛り込んだのはそういうことなのかもしれないと気づいた。何事もバランスか。


「ハッピー・バースデイ」
監督・脚本(共同)は「素晴らしい新世界」と同じイム・ピルソン。主演は監督の『ヘンゼルとグレーテル』で次女を演じたチン・ジヒ。その父親役には『The Phone』に主演の同僚役で出ていたイ・スンジュン。DVDのジャケットになぜか堂々と顔が描かれているペ・ドゥナは"友情出演"として最後の数分間顔を出す。SF。39分。

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父親が大切にしていたビリヤードの8番のボールを壊してしまった少女ミンソは、叱られるのを恐れてインターネットで密かに新しいのを注文する。2年後、側面に"qkr0109"と読める謎の小惑星が地球に接近し、世界は破滅に怯える。少女とその両親、それと叔父のファンの4人は地下シェルターに避難するが・・・。
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迫りくる小惑星が実は・・・というコメディタッチの終末もので、アラレちゃんで似たような話があったようななかったような。遠い昔に読んだ漫画だから定かではないけれど、ともかく銀河鉄道999の実写版車掌を楽しめる作品でもある。人類滅亡を前にして、テレビキャスターの男女が積もり積もった不満をぶっちゃけるコメディパートはそれなりに面白いし、最後まで商魂のたくましさを発揮する通販CMなど国は違っても理解できる風刺具合も悪くない。


それぞれは小粒でも、趣向を変えてるため、3篇を足すとそれなりの長さはあるが、最後まで飽きずに見られる。
2014.11.16 Sunday 23:57 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
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