すばらしくてNICE CHOICE

暇な時に、
本・音楽・漫画・映画の
勝手な感想を書いていきます。
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2021.02.10 Wednesday | - | - | -
2017年ベスト映画
映画を劇場の大きいスクリーンで見る本数は、新宿にTOHOシネマズができた2015年からほぼ50本台を維持していて、今年もちょうど50作を鑑賞できた。以前の右下がりだった頃に比べれば良い傾向ではある。ただ、ここ数年は記録(ブログ)をつけずに、面白かったつまらなかったと呟いてそれで終わりになっているため、こうして年末に苦労することになる。それはともかく、記憶とトゥイログを頼りに並べてみた。

過去ランキング:2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年

<劇場鑑賞作品>

1位 メッセージ / Arrival

映画でも音楽でも鑑賞後に"ああ、これは今年イチだ"と確信できる作品がある。本作がまさにそれで、地味にハードSFな世界観にサスペンスが加わり、驚きの真相が待っているという展開の妙、圧倒される映像のセンス、そして何より大事なテーマが備わっている。監督のドゥニ・ヴィルヌーヴはその名前を確認したらとりあえず映画館に足を運ばなければいけない監督のひとりになった。だからこそ『ブレードランナー 2049』はなかったことに。


2位 沈黙 -サイレンス- / Silence

日本を舞台に信仰心の深淵が描かれ、無宗教の身(厳密にはそうではないにしろ、かなり適当な信心しか持たないわけで)にはイマイチ分かりにくさはあるが、それでも妥協のない演出と俳優陣の演技力のおかげでその重いテーマが理解でき、場内が明るくなってからも座席から動けないという体験を久し振りに味わった(まあ確かに2時間40分強という上映時間の長さもあったかもしれないが)。


3位 アシュラ / 아수라

3月は怒涛の韓国映画公開月間だった。『哭声/コクソン』、『お嬢さん』、そして本作。どれも違った持ち味がある上に完成度は格段に高く本当に素晴らしかった。その3本全てを入れるべきで、その内の1本を選ぶというのはおかしな話ではあるのだけど、直近でそんな傑作が並ぶとついつい比べてしまうのも事実。この『アシュラ』は加速するバイオレンス描写が韓国映画に惚れ込んだ頃のそれに一番近く、こういうのが見たかったんだよ!と唸った作品。


4位 新感染 ファイナル・エクスプレス / 부산행

これも韓国産。こちらは真っ当なゾンビ映画。しかもゾンビ史に燦然と輝くレベル。邦画のゾンビ物といえば『アイアムアヒーロー』が迫力のカーアクションを披露していたけれど、あれは韓国で撮影したからこそできたことで、隣国との力の差に色々と考えさせられもした。ゾンビらしい気持ち悪さに、緊迫感、笑い、最後には泣きまである傑作。外国映画での子役のレベルの高さにも改めて驚嘆させられた。


5位 ダンケルク / Dunkirk

その名前を見ただけで劇場での鑑賞は必須といえるクリストファー・ノーラン監督の最新作。彼が初めて挑んだ実話ベースの物語で、しかも彼にしては短い106分。本作は面白いというよりも常に緊張を強いられるという意味で非常に疲れた戦争映画。陸海空それぞれの戦場に自分が一兵卒として送り込まれ敵に命を狙われる感覚を味わうことになる。本物の戦争がそうであるように安易なカタルシスなんてものはない。


6位 ハードコア / Hardcore Henry

昨年The WeekndのPV『False Alarm』(YouTube)に度肝を抜かれ、慌てて調べてみたら映画監督が制作したと分かり、しかも新作が日本でも公開されると知り、首を長くして待っていた。期待通りのド派手な一人称視点アクション。低予算ホラーを中心に浸透している主観撮影法(POV)は主人公、あるいは主人公に近い人物がカメラを持ち、その映像が作品そのものになるというフェイクドキュメンタリーな演出を取るわけだけど、本作は主人公の視点そのままを体感できる演出になる(ゲームをする人にはおそらく一般的なのかもしれない)。POVよりも迫力が増している上に、その臨場感をこれでもかと活用しまくりのやりたい放題なアクションが最高。眼球疲労も大変なものだけど、こうしたアイディア演出は楽しい。


7位 エル ELLE / Elle

フランス映画らしく、筋立てと演出、演技、それとブラックな笑いで魅了する作品(ただ、監督はオランダ人のポール・バーホーベン)。ドラマ的には決して楽しくなるような内容ではないが、見応えあるから引き込まれてしまう。普段見ている映画がハリウッド産なこともあって、物語の進め方が新鮮に感じられたのも良かった。


8位 IT/イット "それ"が見えたら、終わり。/ It

本作の原作の作家スティーヴン・キングのファンにとって『イット』の映像化はもはやトラウマといっていいレベルで記憶されている。公平な目を持てば、キング作品の映像化は失敗が多いのだけど、『イット』は群を抜いていた。だから、本国アメリカで大ヒットと聞いても一切期待していなかった。そうした心理的ハードルの低さが功を奏した部分はあるのかもしれないが、普通に映画として、どちらかといえばホラーというよりも青春物として楽しめた。


9位 ベイビー・ドライバー / Baby Driver

エドガー・ライト監督にはついつい大きな期待を抱いてしまう。それだけの面白い映画を作ってきたからなわけだけど、そうした初期作との比較で見るともう少しやれたのではないかとも思う。だからといって、失敗作かといえばそんなことはなく、カーアクション、サスペンス、音楽、女の子とたくさんの魅力が詰まっている。


10位 キングコング:髑髏島の巨神 / Kong: Skull Island

作品全体の評価でいえば、上の下といったところだけど、クライマックスでのモンスターたちのCGの出来が素晴らしかった。今年は他に『ワンダーウーマン』や『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』、『LOGAN/ローガン』、あるいは『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』や『スター・ウォーズ 最後のジェダイ』、『ゴースト・イン・ザ・シェル』、『エイリアン:コヴェナント』といったCG大作映画を見てきたけれど、このリブート版『キングコング』第2弾以外に良かったのは『トランスフォーマー/最後の騎士王』と『ドクター・ストレンジ』。前者は予想外なことに前4作より楽しめた。さすがのマイケル・ベイ監督で出し惜しみのなさが素晴らしい。後者も話題になっていた映像の驚きだけではなく、意外に物語も魅せるもので悪くなかった。また、モンスター繋がりでいえば『シンクロナイズドモンスター』はいかにも低予算作品ではあるのだけど、今まで見たことのない趣向のため、話がどう転がっていくのか分からないワクワクがあった。主演のアン・ハサウェイもかわいくて○。



【ソフト鑑賞作品】

古いのも見てはいるのだけど、選んだのはここ数年にリリースされた作品から15本。


1位 湯を沸かすほどの熱い愛 (2016年10月公開)

今年映画館で見た邦画は『三度目の殺人』と長編アニメの『メアリと魔女の花』のわずか2本。世間的には邦画の方がヒット作を出し、洋画の衰退が著しいようだけど、私の中ではいまだ"洋高邦低"の価値観が根強くある。とはいえ、この作品は面白かった!"難病物"といってもいい例のジャンルで物語が進行しながらも、様々な仕掛けを配し、最後で思いもしないオチを持ってきて、全身で愛する人のエネルギーを浴びるという痛快さ。素晴らしい。


2位 テイキング・オブ・デボラ・ローガン / The Taking of Deborah Logan (2014年 / 未公開)

M・ナイト・シャマラン監督の前作『ヴィジット』(新作の『スプリット』はこちらの期待値が高過ぎた)や、『ドント・ブリーズ』と老人ホラーに良作が続く中、アルツハイマー患者の老婆に密着取材するテイのドキュメンタリータッチの本作も負けていない。というよりも勝っている気すらする。単純な恐怖表現だけではなく、サスペンス色を強めているのが素晴らしく、そこに痛みを感じさせるエグさも加わったりして、エンタメのとしてのバランスが良い。


3位 アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場 / Eye in the Sky (2015年 / 2016年12月日本公開)

少女ひとりの命か大規模テロの危険性の排除か。ひとりの命を守るためにというきれい事はとても魅力的に映るが、現実ではかなり難しい。そうした問題を見る側が身をもって理解できる作品。作戦に従事する最前線の一兵士から"世界一安全な戦場"にいるトップの立場まで、まるでそこにいるかのような緊張感を味わえる。ただ、邦題に付けられた副題の"世界一安全な戦場"には皮肉を含ませ否定的なニュアンスを持たせているが、本作を見れば決して正しくないのが分かる。どちらの立場が良いのか、あるいは悪いのかという話ではなく、自分が社会でどの立場に立っているのかということも突きつけてくる。アラン・リックマンの遺作らしいが、最後の最後まで素晴らしい演技を披露している。


4位 インビジブル・ゲスト 悪魔の証明 / Contratiempo (2016年 / 2017年3月日本限定公開)

傑作と名高い『ユージュアル・サスペクツ』に近い印象のよく練られたミステリー。前半と後半で様相が180度反転し、さらに一転二転する面白さはこのジャンルの醍醐味。他にも韓国産ミステリー『荊棘の秘密』は100分と短い尺の中に詰め込みすぎた面もあるが見応えはある。いくつもの伏線を張り巡らしてきれいに騙される『手紙は憶えている』も見事。


5位 ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール / God Help the Girl (2014年 / 2015年8月日本公開)

英国バンドのベル・アンド・セバスチャンのスチュアート・マードックが監督脚本を務めたミュージカル青春映画。時代が時代ならオリープ少女御用達みたいなドリーミーさではあるのだけど、チャーミングな劇中歌はどれも最高だし、ガール・ミーツ・ボーイな青春物であり、成長物語でもある。、映画のセオリーを時折無視しながら自分の撮りたい絵を押し通した演出もこの世界観の中では破綻がなく、完全にやりきっているのが良い。クーラ・シェイカーのボーカルが監督した作品もあると聞くので見てみたい。


6位 クーパー家の晩餐会 / Love the Coopers (2015年 / 2016年2月日本公開)

往年のハリウッド映画の良さが満喫できる逸品(名作をほとんど見てもいないのに断言できることではないが)。家族物らしい温かみはありつつも、鋭い刺激はしっかりあって、かつ上品さも失わず、ベタな展開は嫌いと文句垂れながらも見入ってしまう。役者たちの芸達者ぶりも見所のひとつ。


7位 彼は秘密の女ともだち / Une nouvelle amie (2014年 / 2015年8月日本公開)

ここ10年のフランソワ・オゾン監督作の中では群を抜いてる(前作『17歳』も悪くはなかったけど)。キャラクターたちの心の動きが丹念に描かれていて、実感として分かりにくい世界とはいえ、胸に迫るものがあった。


8位 ブルックリン / Brooklyn (2015年 / 2016年7月日本公開)

すごく映画的な作品。セリフだけではなく表情でも自然な演技をするというとても当たり前のことができているだけで、筋立て自体はどうってことはない普遍的な物語であっても、魅せてしまうことを改めて確認した。"いやぁー、映画って本当にいいものですね"と真似したくなった(彼がこの名ゼリフの使い分けをしていたとは知らなかった)。


9位 『パトリオット・デイ』 (2016年 / 2017年6月日本公開)

2013年に起きたボストンマラソン爆弾テロ事件を描いた作品。今の今まで911事件を『ユナイテッド93』として映画化したポール・グリーングラスが監督したと思い込んでいたのだけど、本作は『キングダム 見えざる敵』や『ハンコック』、『バトルシップ』、『ローン・サバイバー』を手掛けたピーター・バーグ監督によるものだった。何故そんな勘違いをしていたのかといえば、主人公となる警察、犯人、巻き込まれた市民たち、ボストン周辺の警官たちといった多角的な視点で丹念に時系列に沿って描き、入念なリサーチによる説得力と迫力があるからだ。この作風はポール・グリーングラスと思い込んでしまったのだ(付け加えれば、グリーングラス監督はボーンシリーズにも関わり、その主役はマット・デイモン。本作の主演はマーク・ウォールバーグ。ね?)。いずれにせよ見応え十分な作品で、また本作と同じ監督・主演コンビで作られ、実話ベースであることも変わらない『バーニング・オーシャン』(2016)も良かった。


10位 キル・コマンド / Kill Command (2015年 / 2016年6月日本限定公開)

これまで視覚効果を担当してきたスティーヴン・ゴメスによる初監督作。しかもイギリス人でジャンルもSFとなると、『モンスターズ/地球外生命体』でデビューし、すぐさまハリウッドで活躍するようになったギャレス・エドワーズを思い浮かべるが、彼も同じ道を辿るかもしれない。それぐらいにCGの出来がハリウッド大作並みにしっかりしている。低予算らしくCGの利用そのものは限定的ではあるのだけど、効果的な使い方をしていて、貧相な印象を受けない。物語自体も悪くなく、演出にも隙がない。


11位 ジェーン・ドウの解剖 / The Autopsy of Jane Doe』 (2016年 / 2017年5月日本公開)

よくできたホラー映画。基本的には葬儀屋の地下にある検死室を舞台にしたワン・シチュエーション物で、運び込まれた謎の死体が解明されていくにつれて不気味さが増し、恐怖は限定的なその状況だけではなく、見ているこちらにも確実に伝染してくる。明らかにされた真相もなるほどと思えるものだし、続編が作られる余地を残しているのもいかにもホラーらしくていい。限定された空間でのホラーでいえば、『ラスト・シフト 最期の夜勤』も記憶に残る。深夜の警察署を舞台に、洋ホラーにしては珍しく具体性のない怖さを表現していて面白い。


12位 ハロウィン 2016 / Tales of Halloween (2015年 / 未公開)

こちらは怖さではなく、面白さを追求したなかなかレベルの高いコメディホラー。ある町のハロウィンのひと晩を描いた総勢11人の監督によるオムニバス作品となる。ひと口にハロウィンといっても様々な切り口があるものだと感心する。


13位 ホワイト・バレット / 三人行 (2016年 / 2017年1月日本公開)

ジョニー・トー監督の最新作。多作な彼の作品を網羅しているわけではなく、アクション物に限定しての鑑賞になるのだけど、ここ数作の内では一番。クライマックスでの宙吊りシーンではCGと丸分かりでお金をかけていないのが明白な作品ではあるのだけど、歌1曲分の長さのワンカット的な演出を始め、製作費の多寡と作品の出来は関係ないと断言できる仕上がりになっている。


14位 SING/シング (2016年 / 2017年3月日本公開)

ディズニー作品の『モアナと伝説の海』や本作と同じイルミネーション製の『ペット』、邦画だと劇場で『メアリと魔女の花』も見たものの、どれもイマイチだったが(あ、今頃見た『君の名は。』は意外なことにとても良かった)、『SING』は楽しんで鑑賞できた。とてもありがちなコテコテ感のある物語とはいえ、そうした王道ならではの安心感とやはり歌の力が素晴らしい。


15位 愚行録 (2017年2月公開)

登場人物の行状はまさに題名が示す通りであり、後味の良い作品ではない。ただ、次第に明らかになる仕掛けの巧みさと、俳優陣の演技の巧さで見入ってしまう。邦画でいえば、『怒り』も俳優たちの確かな演技力に魅了される作品だった。
2017.12.31 Sunday 23:58 | 映画 | comments(1) | trackbacks(0)
2017年ベスト漫画
一昨年ぐらいから再び漫画を読み始めている。一時期は気に入った作家の新刊ぐらいしか追えずにいたが、そうした期間がしばらくあると不思議なもので漫画のコマを読むことに苦痛を覚えるようになる。とはいえ、一度乗れるようになった自転車と同じで、少しのリハビリで脳は漫画のルールを思い出す。当時何がきっかけで漫画読みを再開したのかもう忘れたが、勧められたり、新聞で紹介されている作品を中心に色々手に取り、この1年もよく読んだのでランキングを付けてみた。

漫画と一口にいっても様々なジャンルに分かれているし、以前とは違って今はウェブ誌もあるわけで、膨大な量の作品が発表されている。今は雑誌を全く読まず、単行本で読んでいるため、その星の数ほどありそうな作品の中から目を通しているのはほんのわずかだ。それなのにランキングというのはおこがましい話だが、まあそこは個人ブログの特権。私が今年読んだ中で面白かったという一点を基準に選んだ。



1位 大童澄瞳 『映像研には手を出すな!』

文句なしにコレ!アニメ制作に取り組む女子高生3人の青春物。妄想/空想世界に飛び込んでいく時の描写がすごく素敵で、性格も育ちも違う3人がクラブを作り、念願だったアニメに打ち込む様子は痛快でもある。決して巧い絵でもないけど、いい意味での省略や割り切りが逆に絵の魅力になっていて、静止画であるのにキャラクターがやたらと動いているのも良い。


2位 出水ぽすか (原作:白井カイウ) 『約束のネバーランド』

テレビ番組「アメトーーク!」で広瀬すずの姉が確か紹介していて試しにと買ってみた作品。そしたら当たりだった。孤児院で暮らす少年少女たちがある秘密を知り、逃げ出すことを決意するという"脱獄ファンタジー"。当初は『わたしを離さないで』を元ネタにしたのかなと思ったものだけど、そこから次第に離れ、世界観が壮大になっていくとこれが本当に「週刊少年ジャンプ」で連載されているレベルなのかと驚くばかり。院を脱出した彼らに待ち受ける更なる試練は今も続行中。刊行ペースがさすが少年誌で怖いほど速い。コンスタントに新刊を読めるのはなんともありがたい話。


3位 板垣巴留 『BEASTARS』

オスのハイイロオオカミを主人公にした動物学園物。これも映画でいえば昨年ヒットした『ズートピア』を連想させる。同じように肉食獣と草食獣の共存した世界が描かれ、そこには襲う本能のある者と襲われる者との葛藤がドラマになるわけだけど、『ズートピア』ほどは寓話にせず、共生する動物界を舞台にした青春物語にしている点が反対に面白くさせている。最新刊では"犬"の誕生の経緯が描かれたりしてユニーク。「週刊少年チャンピオン」連載。


4位 相澤いくえ 『モディリアーニにお願い』

東北の美術大学を舞台にした男子3人組の青春物。『映像研には手を出すな!』の女子高生3人組とは異なり、こちらは夢/やりたいことと現実との間でもがくさまが描かれる。きれいごとだけでは片付かない外の世界を横目で見ながら制作に打ち込み、時に残酷にして素早い現実に飲み込まれ、それでもあがこうとするさまはとてもエモい。2014年末から連載が始まり、ようやく第2巻が出たところ。もっと読みたい気持ちもあるが、作者はかなり自分をすり減らして描いてる印象を受けるので妥当な刊行ペースなのだろう。


5位 竹良実 『辺獄のシュヴェスタ』

これはトゥイッターで教わり、5巻までようやく揃えてまとめて読んだ直後の12月に出た第6巻で終わってしまった作品。魔女狩りが行われていた16世紀のヨーロッパを舞台に、育ての親を魔女として処刑された少女エラが修道院に送られ、復讐を誓う話。馴染みのない設定であるわけだけど、グイグイ読ませるハリウッド映画のようなストーリー展開でこれが新人の作品なのかと驚かさた。しかし、意図せずにだけど、ここまでの5作全てが作者のデビュー作になっているのに今気づいた。


6位 小林有吾 『ショート・ピース』

現在『アオアシ』というサッカー漫画がヒットしている作者による映像制作物語。天才だけど変人というよくあるキャラクター設定ではあるものの、映画やドラマへの周到な下調べ等が醸し出す説得力に、心に響く良い話がプラスされることで実に読ませる物語になっている。


7位 冬目景 『空電ノイズの姫君』

ギター天才女子高生と謎多き黒髪ロングの同級生というフックに、カリスマ的ボーカルを失い空中分解寸前のロックバンドに加入するという設定やキャラクターはありがちと思わせつつも楽しく読ませるところが冬目景らしさか。とはいっても、『イエスタデイをうたって』しか読んだことないのだけど。また長い連載になるのだろうか。


8位 桜井亜門 『亜人』

今年実写映画化もされた人気作。シリーズが長くなると、物語の持つ当初のテンションが大幅に下降することは往々にしてある。ストーリー漫画であるならば程良い長さでクライマックスに向かってグッと盛り上げ、潔く終わらせるのがベストだと、『ドラゴンボール』や『キン肉マン』を読んで育った身としては思うわけだけど、本作はそのクライマックス的な高まりを生み出しながらも、それがただのひとつの峠でしかなく、さらに先があり、それはもっと面白いと思わせる物語作りがなされてるところに強く惹かれる。


9位 沙村広明 『波よ聞いてくれ』

なんといっても会話劇の妙。当意即妙なやりとり、切り替えしは読んでいてひたすら楽しい。「アフタヌーン」誌を定期購読していた時は、『無限の住人』をだらだら続けている作家という印象だったのだけど、なかなかどうして愉快な漫画を描ける人だったよう。嬉しい誤算。


10位 都留泰作 『ムシヌユン』

沖縄・八重山を舞台にした昆虫SFエロ絵巻。前作『ナチュン』はあまりに肌の合わない絵柄さに途中で挫折したのだけど、今回その画力にはやはり上達が見られないものの、設定自体の荒唐無稽さに毎回よく分からねー面白いんだかつまらないんだかもよく分からねーでも読む!みたいな感じになっている始末の悪い作品。


上の10作から漏れたとはいえ十分良かった作品。

・九井諒子 『ダンジョン飯』
 これも『亜人』と似ていて、当初の目的が達成し終わらせてもいいようだけど、そこから新たな展開が始まってそれがただの延命措置ではなくしっかり面白くなっているという意味ですごいとなった。

・羽海野チカ 『3月のライオン』
 前作『ハチミツとクローバー』は好きだったし、このシリーズも第1巻だけは読み、そのままにしていたのをようやく集めて最新刊まで一気読みした。いや、面白い。さすがは羽海野チカ。しかも物語作りの点で進化してる感はすごい。

・近藤聡乃 『A子さんの恋人』
 好きな作品。だって人間だものといった雰囲気がとても良い。

・佐々大河 『ふしぎの国のバード』
 これもなかなか新刊が出ないけれど、楽しみに待ってしまうシリーズ。

・ろびこ 『僕と君の大切な話』
 高校生カップル版の『セトウツミ』かと思いきや第2巻で趣向を変えたことに違和感を覚えはしたけれど、先月出た第3巻になると、周りのキャラクターに愛着が出てきたこともあり、なんだか物語がいい感じに回り始めた印象がある。
2017.12.31 Sunday 23:57 | 漫画 | comments(0) | trackbacks(0)
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