すばらしくてNICE CHOICE

暇な時に、
本・音楽・漫画・映画の
勝手な感想を書いていきます。
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首藤瓜於『指し手の顔 上下』

読了。
☆☆/5点中

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脳男』の続篇。鈴木一郎が逃亡してから1年。愛宕市では精神科を退院したばかりの人間による残虐な事件が相次いでいた。県警本部の捜査一課に転属した茶屋は、鈴木を鑑定した精神科医・鷲谷真梨子の助けを借りつつ、犯人を追いかける。
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『羊たちの沈黙』の続篇『ハンニバル』がそうだったように、本作も前作以上に風呂敷を広げて頑張ってはいるが前半のテンションを最後まで持っていけず、尻すぼみで終わる。茶屋刑事や鷲谷医師だけではなく、まだ謎の多い男・鈴木一郎ももちろん活躍し、その過去が語られたりもするわけで、その点では楽しく読めただけに下巻の下降線が残念。

終わり方をみると、次こそ鷲谷と鈴木の闘いが始まるようだ。執筆にまた7年ぐらいかかるのかもしれないが、シリーズものということで一応楽しみ。
2010.03.09 Tuesday 23:58 | | comments(0) | trackbacks(0)
首藤瓜於『脳男』

読了。
☆☆☆/5点中

2000年第46回江戸川乱歩賞受賞作品。

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連続爆弾犯のアジトで拘束された心を持たない男・鈴木一郎。この男は共犯者なのか。男の精神鑑定を担当する医師・鷲谷真梨子は、彼の本性を探ろうとするが・・・。
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受賞したときに一度読んでいるけれど、当然内容なんて忘れているわけで楽しく読み終わることができた。先日読んだこのミス大賞作品はどうしようもなかったけれど、文学賞の受賞作品なら本作のように読み応えのある小説であって欲しい。

連続爆弾犯のアジトで見つかった不審者・鈴木一郎。彼の精神鑑定を担当することになった医師・鷲谷真梨子は鈴木の特性に気づく。そこから彼の過去を探り始めるのだが、謎が謎を呼びながらも展開がスムースでページをめくる指を止まらない。クライマックスも分かりやすく盛り上がり、モンスターは実に怪物らしい逃亡を企てて終わる。

本作のクラリスは経験を積んだ医師ではあるが、『羊たちの沈黙』を下敷きにしているのだろう(あとは映画『セブン』も見え隠れしているような)。博識だが審美眼を持たないレクター博士というのも面白い。

鈴木一郎という平易な名前を目立たせるためなのかよく分からないが、重要な登場人物の名字がどれも変わっているのが不思議だった。あとタイトルが秀逸。まさに"脳男"の物語だ。


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首藤瓜於(しゅどう うりお)
1956年、栃木県宇都宮市生まれ。上智大学法学部卒。
2000年、『脳男』で第46回江戸川乱歩賞受賞。

2000年 『脳男』(講談社)
       →講談社文庫
2002年 『事故係 生稲昇太の多感』(講談社)
       →講談社文庫
2006年 『刑事の墓場』(講談社)
       →講談社文庫
2007年 『指し手の顔 脳男II』(講談社)
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2010.03.02 Tuesday 23:58 | | comments(0) | trackbacks(0)
伊坂幸太郎『SOSの猿』

読了。
☆☆/5点中

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他人の"SOS"信号を見逃せない遠藤二郎は、"辺見のお姉さん"にひきこもりの息子・眞人の相談を受ける。一方、桑原システムの社員・五十嵐真は株誤発注事故の調査を命じられていた。遠藤は眞人から不思議な予言を聞かされ、かたや五十嵐は異形の猿を見る。
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ふたつの話が交互に描かれる。まず"私の話"と題された章にはエクソシストとしても活躍する遠藤二郎の視点で、"これから語るのは、因果関係の物語だ"と始まる"猿の話"では、主人公は五十嵐真だが、視点は神の視点となる。文学で使われるところのいわゆる神の視点ではなく、実際に著者が五十嵐をまさに駒のように恣意的に動かし、これまでの伊坂作品とはずいぶんと趣が異なる。

遠藤は知り合いのひきこもりの息子と対峙し、五十嵐は"神(語り手)"に追い立てられながら株の誤発注の事故調査を進める。

やがてふたつの物語が交差し、そこに摩訶不思議な力が実はそうではなく、さらには前半の背景として語られていた伏線が回収され始めると、ようやく伊坂幸太郎らしい作品になる。だけど、物語の閉じ方にキレがなく、また伊坂作品の売りともいえる会話の妙も少なめであり、物足りなさが残る。ただ、いつもと同じような展開ではなく何か新しいことをやってみた作品(漫画家・五十嵐大介との競作でもある)であり、いつの日かもっと豊かな物語に結実するプロトタイプなのかもしれない。

"「物語を想像するのは、救いにもなるのです」"という本作のテーマとなる台詞はちょうど同じ日に見た映画『ラブリーボーン』にも当てはまる話でそのシンクロが面白かった。
2010.03.01 Monday 23:59 | | comments(0) | trackbacks(0)
柚月裕子『臨床真理』

読了。
☆/5点中

2009年第7回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作品。

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臨床心理士の佐久間美帆は、藤木司という20歳の青年を担当することになる。司は同じ福祉施設で暮らしていた少女・彩の自殺を受け入れることができず、美帆に心を開こうとしなかった。根気強く向き合おうとする美帆に司は彩の死は他殺だと告げる。根拠は、彼が持っている特殊な能力による。信じられないものの、司の治療のために調査を始めるのだが・・・。
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この年は大賞が2作あり、もう1作は山下貴光の『屋上ミサイル』になる。巡回ブログでその感想を読んだが、とても酷い出来のようだ。4人いる選考委員は真っ二つに分かれ、しかも『屋上ミサイル』を推すふたりは最下位に本作を、本作を支持するふたりは『屋上ミサイル』を最下位につけるほど評が割れたそうだ。で、結局同時受賞となったわけだが、本作も酷い。

作者がフリーライターをしているとはとても思えないほど文章が稚拙であったり、主人公佐久間美帆の後先考えないあまりに短絡的な言動に嫌気が差したりするだけど、まあデビュー作でもあるわけで我慢して読み進めた。

共感覚については、医学知識のない人間でもすぐに思い当たることだ。また知的障害者の福祉施設でまだ若くて美しい女性が自ら手首を切ったとなれば、そこにどんなことが横行していたのかはミステリー小説(実社会でもそうだろうけど)ならまず疑うことであり、名前が出た瞬間にハイ、あなたが犯人ねと分かる筋書きはかりにもミステリーと付く賞を受賞する作品としてはあまりに浅い。無断で忍び込んで手に入れた証拠で公判を維持できるのかも疑問。

良かったのは正義の味方がすばやく助けに来るはずのところで、やや遅刻気味のために意外にもコトが進行したことか。筆致も急に生き生きとしだしたのでそっち方面で書いていた人なのかなと最初は思ったほど。


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柚月裕子(ゆずき ゆうこ)
1968年、岩手県生まれ。フリーライター。
2009年、『臨床真理』で第7回「このミステリーがすごい!」大賞受賞。

2009.01 『臨床真理』(宝島社)
       →宝島社文庫
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2010.02.23 Tuesday 23:58 | | comments(4) | trackbacks(1)
スティーヴン・キング『夜がはじまるとき』

読了。
☆☆☆/5点中

中短篇集『Just After Sunset』(2008)を二分冊にしたうちの2冊目。全13篇のうち後半の6篇が収録されている。「N」「魔性の猫」「ニューヨーク・タイムズを特別割引価格で」「聾唖者」「アヤーナ」「どんづまりの窮地」。

1冊目の『夕暮れをすぎて』も良かったが、今回も期待を裏切らない。特に楽しめたのが最初の「N」。精神科医ボンサントの元にやってきた強迫性障害を患うN。手紙や診療記録を通してメイン州中部の小さな町で起きている異様な出来事が徐々に明らかになっていく。クトゥルーの影が少しちらつく、ホラー作家として本領発揮した中篇(キングにとっては短篇だろうけど)。

最強の猫をこれでもかと残忍に描いたのが1977年初出の「魔性の猫」。終わり方がいい。「ニューヨーク・タイムズを特別割引価格で」は最近の文芸路線。「聾唖者」や「アヤーナ」も悪くないし、どんなに短くてもキングらしい粘つく筆致を堪能できるわけだが、最後の最後に据えられた「どんづまりの窮地」が強烈すぎて、その2篇を霞ませる。

「どんづまりの窮地」の臭気溢れる文章はオチがなんとなく読めるにもかかわらず、また鼻がもう十分だ止めてくれと哀願しているにもかかわらず、読み進めてしまう。とてもキングらしいいたずら心に満ちた中篇。最近は上品な内容をめざしているように思えて少し物足りなさを覚えたりもしていたわけだけど、やっぱりキングはキングと思わせてくれた。
2010.02.09 Tuesday 23:58 | | comments(0) | trackbacks(0)
北村薫『秋の花』

読了。
☆☆/5点中

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文化祭準備中に墜落死した女子高生・津田真理子。その幼馴染みの和泉利恵は抜け殻と化したように憔悴していた。ふたりの先輩である"私"は、春桜亭円紫師匠の力を借り、事件の核心に迫ろうとするが・・・。
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『円紫さん』シリーズの第3弾。長篇。主人公の"私"が大学4年生となり、卒業論文を書くことになる第4弾『六の宮の姫君』を先に読んでしまっているのだけど、こちらはまだ大学3年生の"私"や正ちゃん、江美ちゃんに出会える。

話の筋立ては不慮の事故で亡くなった女子高生の死が実は他殺かもしれないとの疑いが出てきて、少しだけ付き合いのあった"私"が核心に迫るというもの。「日常の謎」ミステリーの第一人者らしく、本当に何気ない日常のひとこまが端正な文章で綴られ、別に謎解きなんてしなくても、"私"の話が描かれるだけでも十分楽しめるからすごい。

謎そのものは後半に登場する春桜亭円紫があっさり解決。それはもう見事すぎる腕前。
2010.01.09 Saturday 23:58 | | comments(0) | trackbacks(0)
海堂尊『螺鈿迷宮』

読了。
☆☆/5点中

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東城大学医学部付属病院でのバチスタ・スキャンダルから1年半。東城大学の医学生・天馬大吉は幼なじみの新聞記者・別宮葉子から奇妙な依頼を受けた。"終末医療の先端施設として注目を集めている碧翠院桜宮病院に潜入してほしい"。経営者一族には黒い噂が絶えないのだという。看護ボランティアとして潜入した天馬の前で、患者が次々と不自然な死を遂げていく・・・
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刊行順としては『チーム・バチスタの栄光』、『ナイチンゲールの沈黙』に続く3作目に当たるが、時系列的には4作目の『ジェネラル・ルージュの凱旋』より後となるので、読んで分かりやすいのは時系列順だ。氷姫との異名を持つ姫宮が本作で大活躍するとあるが、『ジェネラル・ルージュの凱旋』を読んでいないとその面白さが理解できない。

著者の作品を読むのはこれで4冊目となるが、本作が一番鼻についた。極めて漫画的に際立たせたキャラクターとミステリー要素を多分に含んだエンターテイメント性に溢れる作品のなかに、現在の医療の問題点や著者が提言したいオートプシー・イメージング(Autopsy imaging=Ai=死亡時画像〔病理〕診断)などをうまくすり込ませ、読者に考えさせる作風が特徴だったわけだけど、本作ではその著者の伝えたい医療のあり方の部分があまりに露骨になりすぎている。

また、キャラに頼りすぎて状景描写が疎かとなり、"でんでん虫の外見"とやらは最後まで頭に思い浮かべることができなかった。物語の展開も雑だ。著者の見せたい場面だけを読者の首根っこを鷲掴みにしてまずこれ、次はこれ、だからこう来て、最後はこうなるの! 日本の終末医療も大変でしょってな感じで不快極まりない。

刊行スピードを考えたら当然なのかもしれないけれど、もう少し丁寧な小説が読みたい。
2010.01.06 Wednesday 23:58 | | comments(0) | trackbacks(0)
大藪春彦『野獣死すべし』

読了。
☆☆/5点中

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大学院に籍を置く伊達邦彦は戦争で心に傷を受けた世代の生き残りだった。物静かな秀才としての表向きの顔とは違い、彼の心の奥底には暗い憎悪と怒りが渦巻き、射撃・スポーツ・特殊技術の習得に没頭していた。やがて彼は、心に巣食う闇と日頃培った能力を解き放つかのように、空前の完全犯罪を計画するのだが・・・。父の敵を討つ『復讐編』も同時収録。
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ウィキペディアによれば、本書はまず1958年に早稲田大学のワセダミステリクラブの同人誌「青炎」に掲載。会長である千代有三の手をへて、名誉顧問だった江戸川乱歩に紹介され、雑誌「宝石」7月号に掲載、大反響を生んだとのこと。

日本ハードボイルド小説の元祖と称される作品でもあるわけで、読んでみたいとはずっと思っていたのだけど、実際に手に取ってみたら自分がこれまで読んできたハードボイルドとはだいぶ異なっていて、驚きと少しの嫌悪感、それとご都合主義な展開が多分にあることで生まれる圧倒的なスピード感に酔いそうになった。

主人公・伊達邦彦の経歴はどう見ても大藪春彦のそれと合致するわけで、執筆当時二十歳過ぎだった著者の焦燥や羨望がこれでもかと練り込められたかのような文章・展開はデビュー作らしい粗削りさはありながらも、読ませるものがある。

ウィキ情報によれば、作中の伊達邦彦と同様に大藪も大学時代にアメリカのハードボイルドを愛読したらしい。"レイモンド・チャンドラーやロス・マクドナルドなどの人間の心理を描く作品よりも壮絶なバイオレンス・アクション小説を得意としたダシール・ハメットやミッキー・スピレーンらの作品を好んだ"とのこと。これで納得。チャンドラーやロス・マクドナルドの方が私は好きだもの。


<伊達邦彦シリーズ>
1958年 『野獣死すべし』(講談社)
1960年 『野獣死すべし・復讐編』(新潮社)
1960年 『野獣死すべし・渡米編』(『歯には歯を』荒地出版社)
1961年 『血の来訪者 野獣死すべし第3部』(新潮社)
1965年 『諜報局破壊班員 伊達邦彦地球を駆ける』(徳間書店)
1978年 『日銀ダイヤ作戦』(光文社・カッパノベルス)
1979年 『優雅なる野獣 牙を秘めたローン・ウルフ伊達邦彦』(角川書店)
1979年 『不屈の野獣 孤独のマンハンター伊達邦彦』(角川書店)
1980年 『マンハッタン核作戦』(光文社・カッパノベルス)
1992年 『野獣は甦える』(光文社)
1995年 『野獣は、死なず』(光文社・カッパノベルス)


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大藪春彦(おおやぶ はるひこ)

1935年、朝鮮・京城(ソウル)生まれ。早稲田大学教育学部英語英文学科中退。
1958年、処女作にして「伊達邦彦シリーズ」の第1弾『野獣死すべし』刊行。
1964年、『蘇える金狼』刊行。
1969年、『汚れた英雄』刊行。
1996年、死去。
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2010.01.06 Wednesday 23:57 | | comments(0) | trackbacks(0)
神山裕右『カタコンベ』

読了。
☆☆/5点中

第50回江戸川乱歩賞受賞作品。

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水没するまでのタイムリミットは約5時間。それまでに洞窟に閉じこめられた調査隊を助け出さなければならない。"もう同じ過ちは繰り返さない"と強い決意を秘めたケイブダイバー東馬亮は単身救助に向かう。
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落石により前人未踏の巨大洞窟に閉じ込められてしまう一行。そこにいくつもの思惑が絡まり合う。そして、水没の時間までに彼らは抜け出せるのか。設定は面白いのだけど、肝心要の洞窟の閉塞感だったり、闇の深さだったり、状況が伝わってこない文章であり、また登場人物もそれなりに数は出しているのに、書き分けが拙く、誰が誰だか分からなくなる。


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神山裕右(かみやま ゆうすけ)
1980年、愛知県生まれ。名古屋経済大学法学部卒業。
2004年、『カタコンベ』で第50回江戸川乱歩賞を24歳3ヵ月の史上最年少で受賞。

2004.08 『カタコンベ』(講談社)
       →講談社
2005.11 『サスツルギの亡霊』(講談社)
       →講談社
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2010.01.03 Sunday 23:59 | | comments(0) | trackbacks(0)
海堂尊『ジェネラル・ルージュの凱旋 上・下』

読了。
☆☆/5点中

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不定愁訴外来担当の田口公平の元に匿名の告発文書が届いていた。"将軍(ジェネラル)"の異名をとる、救命救急センター部長の速水晃一が特定業者と癒着しているという。調査に乗り出した田口は倫理問題審査委員会による介入や、新人看護師と厚生労働省のロジカル・モンスター、白鳥圭輔の登場でさらに複雑な事態に巻き込まれていく。
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「田口・白鳥シリーズ」の第3弾。前作『ナイチンゲールの沈黙』と同時進行で進む話で、同時に読むと分かりやすい。

今回のテーマは緊急医療の実態。ただ、小説としては完全なるキャラクターもので、各キャラの魅力だけで読ませてしまう。1作目2作目でも顕著だった傾向ではあるが、今回はミステリーに包み込むのではなく、完全に開き直った印象だ。特に優秀な外科医にして、病院長をも意に介しない傲岸不遜な速水はありがちな設定ではあるものの、姑息ならやからを切って切って切りまくるシーンでの爽快感はファンならずとも前のめりになって読ませる勢いがある。
2009.12.21 Monday 23:58 | | comments(0) | trackbacks(0)
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